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死霊達の戦い
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鉱山の洞窟から出たゼロは眼下の様子を見た。
鉱山の街を取り囲む数千のアンデッドの姿、ここまでは把握している。
もう少し時間があり、ゼロの予定通りに進んでいれば更に数を減らすことができた筈だ。
しかし、いずれは来ると想定していたアイラス王国の援軍がゼロの想定を上回る速度で鉱山の街に到着したため、ゼロの予定は変更を余儀なくされた。
「少し、早すぎですよ。・・・指揮官はイザベラさんに・・ヘルムントさんですか。イザベラさんは相変わらず私のペースを乱してくれますね」
アイラス軍はスケルトンの軍勢を突破して鉱山の街に接近しようとするが、更に出現したスケルトンの軍勢に阻まれて足を止めている。
千にも満たないアイラス軍が数千のスケルトンに囲まれているうえ、更にその周囲には数千のゾンビ等のアンデッドが彷徨っているのだ、下位アンデッドばかりとはいえ数で押されたら如何にイザベラとはいえ苦戦を強いられるだろう。
「仕方ありません。援護しますか」
ため息をついたゼロがアンデッドを召喚しようとした矢先、包囲されているアイラス軍から炎に包まれた3体の蜥蜴が躍り出た。
「あれは!ウィル・オー・ザ・ウィスプにサラマンダーの力を被せているのですか!」
3体の蜥蜴の内2体は制御不能に陥ったようだが、1体はスケルトンの包囲を切り裂き、アイラス軍の活路を切り開いた。
即座に部隊を前進させてその大半を鉱山の街に送り込むことに成功したアイラス軍だが、新たに出現したスケルトンに分断され、殿を守っていた部隊が孤立してしまう。
「無茶をしますね!サーベル、スピア、シールド!貴方達に任せます、アイラス軍を援護しなさい!」
ゼロはスケルトンウォリアーの軍団を召喚し、その指揮を3体のデス・ナイトに委ねた。
スケルトンロードから最終進化した3体のデス・ナイトに指揮されたスケルトンウォリアー達は大盾を並べ、槍を構えて一糸乱れぬ進軍を開始した。
サーベルを中心とした3体のデス・ナイトに指揮された複数のスケルトンナイトを部隊長とした軍団はまるで精強な軍隊の如く山道を駆け降り、鉱山の街を迂回してアイラス軍を取り囲むアンデッドに襲いかかった。
そこから先は一方的な展開であった。
街を包囲するアンデッド達はゼロの軍団に襲われて瞬く間に崩壊し、アイラス軍を取り囲むスケルトンに肉迫した。
スケルトン系のアンデッド同士の衝突となったが、イズやリズ、イザベラがゼロに気付いてくれたようで、混乱することなく防御に徹してくれている。
「よし。状況を把握し、瞬時に判断してくれましたね」
ゼロが呟くと傍らに立つオメガが頷いた。
「あの聖騎士やイズ様もそうですが、やはりお弟子様の存在が大きいようですね。マスターの意図をしっかりと読み取ってくれています」
オメガの言葉にあまり表情を変えないゼロが少しだけ不機嫌そうな表情を浮かべながらオメガを見た。
「リズさんは弟子ではありません。私は弟子を取るような偉そうな立場にはありませんし、弟子を取るつもりもありません。ただ、リズさんが死霊術を学ぶのに道を誤らないために道筋を示しているだけです」
主であるゼロに睨まれてもオメガの態度は変わらない。
「それが師弟というものですマスター。それにマスターが何と言おうとお弟子様・・リズ様はマスターを師と仰いでいます。これは紛れもない事実です」
「・・・・」
オメガの言葉に何も言い返せないゼロの様子を見るアルファ、シャドウ、ミラージュの3体。
感情が皆無のアンデッドの彼等だが、どこか微笑んでいるように見えた。
その間に戦場ではゼロが放った軍団がアイラス軍の行く手を阻むスケルトンを打ち崩し、その隙を突いてアイラス軍の残存兵力も鉱山の街に入ることができた。
「流石です。あれだけの死霊達に囲まれて損害らしい損害を受けることなく街に入りました。イザベラさん、相変わらず厄介な人ですね」
イザベラの指揮に感心しながらもゼロの目はアイラス軍を追撃しようとするスケルトンの軍勢を睨んでいた。
アイラス軍を取り逃がしたスケルトン達だが、即座に体制を立て直して更に数千のスケルトンを地中から呼び寄せて鉱山の街を包囲しようとしている。
その様子を観察していたゼロ。
軍勢のある部分を中心にして指揮が広がってゆくのが見て取れた。
「そこにいましたね」
不敵な笑みを浮かべたゼロが駆け出し、その後にオメガ達が続く。
ゼロは駆けながら更にジャック・オー・ランタン3体を召喚した。
山道を下り、鉱山の街の入口に到達したゼロはそのまま入口を潜り、街に駆け込んだ。
オメガとアルファは街を包む結界をものともせずにゼロに続いて街に入るが、入口を守るイバンス兵はゼロとオメガ達のために道を開いた。
シャドウとミラージュ、ジャック・オー・ランタン等は街を迂回して敵に向かう。
街の目抜き通りを駆け抜けるゼロにチェスターとカミーラが駆け寄る。
「ゼロ!俺達も行くぞ!」
「・・・!」
走りながら2人を一瞥したゼロ。
「好きにしてください!ただ、街を抜けたら乱戦ですよ!」
ゼロの言葉に頷きながら後を追う2人。
ゼロ達の行く手には街に入ったアイラス軍が集結していた。
「「ゼロ様!」」
オメガ、アルファの2体とチェスター、カミーラの2人を引き連れたゼロの姿に気付いたイズとリズだが、ゼロの様子を見てその意図を理解した。
「「私達もお供します!」」
武器を手にゼロに続くイズとリズ。
その様子を見たイザベラまでもがサーベルを抜いて走り出そうとするが、ヘルムントに羽交い締めにされながら止められていた。
「ヘルムント!お放しなさい!私も・・・・」
イザベラの金切り声を背にゼロは街を飛び出していった。
目の前に広がるのは死霊達の激戦。
ゼロの軍団とその数倍のスケルトンやゾンビ等の軍勢。
その戦いに街を迂回したシャドウ、ミラージュ、ジャック・オー・ランタンが突入してゆく。
「さて、そろそろ終わりにしましょう」
足を止めたゼロは剣を抜いた。
鉱山の街を取り囲む数千のアンデッドの姿、ここまでは把握している。
もう少し時間があり、ゼロの予定通りに進んでいれば更に数を減らすことができた筈だ。
しかし、いずれは来ると想定していたアイラス王国の援軍がゼロの想定を上回る速度で鉱山の街に到着したため、ゼロの予定は変更を余儀なくされた。
「少し、早すぎですよ。・・・指揮官はイザベラさんに・・ヘルムントさんですか。イザベラさんは相変わらず私のペースを乱してくれますね」
アイラス軍はスケルトンの軍勢を突破して鉱山の街に接近しようとするが、更に出現したスケルトンの軍勢に阻まれて足を止めている。
千にも満たないアイラス軍が数千のスケルトンに囲まれているうえ、更にその周囲には数千のゾンビ等のアンデッドが彷徨っているのだ、下位アンデッドばかりとはいえ数で押されたら如何にイザベラとはいえ苦戦を強いられるだろう。
「仕方ありません。援護しますか」
ため息をついたゼロがアンデッドを召喚しようとした矢先、包囲されているアイラス軍から炎に包まれた3体の蜥蜴が躍り出た。
「あれは!ウィル・オー・ザ・ウィスプにサラマンダーの力を被せているのですか!」
3体の蜥蜴の内2体は制御不能に陥ったようだが、1体はスケルトンの包囲を切り裂き、アイラス軍の活路を切り開いた。
即座に部隊を前進させてその大半を鉱山の街に送り込むことに成功したアイラス軍だが、新たに出現したスケルトンに分断され、殿を守っていた部隊が孤立してしまう。
「無茶をしますね!サーベル、スピア、シールド!貴方達に任せます、アイラス軍を援護しなさい!」
ゼロはスケルトンウォリアーの軍団を召喚し、その指揮を3体のデス・ナイトに委ねた。
スケルトンロードから最終進化した3体のデス・ナイトに指揮されたスケルトンウォリアー達は大盾を並べ、槍を構えて一糸乱れぬ進軍を開始した。
サーベルを中心とした3体のデス・ナイトに指揮された複数のスケルトンナイトを部隊長とした軍団はまるで精強な軍隊の如く山道を駆け降り、鉱山の街を迂回してアイラス軍を取り囲むアンデッドに襲いかかった。
そこから先は一方的な展開であった。
街を包囲するアンデッド達はゼロの軍団に襲われて瞬く間に崩壊し、アイラス軍を取り囲むスケルトンに肉迫した。
スケルトン系のアンデッド同士の衝突となったが、イズやリズ、イザベラがゼロに気付いてくれたようで、混乱することなく防御に徹してくれている。
「よし。状況を把握し、瞬時に判断してくれましたね」
ゼロが呟くと傍らに立つオメガが頷いた。
「あの聖騎士やイズ様もそうですが、やはりお弟子様の存在が大きいようですね。マスターの意図をしっかりと読み取ってくれています」
オメガの言葉にあまり表情を変えないゼロが少しだけ不機嫌そうな表情を浮かべながらオメガを見た。
「リズさんは弟子ではありません。私は弟子を取るような偉そうな立場にはありませんし、弟子を取るつもりもありません。ただ、リズさんが死霊術を学ぶのに道を誤らないために道筋を示しているだけです」
主であるゼロに睨まれてもオメガの態度は変わらない。
「それが師弟というものですマスター。それにマスターが何と言おうとお弟子様・・リズ様はマスターを師と仰いでいます。これは紛れもない事実です」
「・・・・」
オメガの言葉に何も言い返せないゼロの様子を見るアルファ、シャドウ、ミラージュの3体。
感情が皆無のアンデッドの彼等だが、どこか微笑んでいるように見えた。
その間に戦場ではゼロが放った軍団がアイラス軍の行く手を阻むスケルトンを打ち崩し、その隙を突いてアイラス軍の残存兵力も鉱山の街に入ることができた。
「流石です。あれだけの死霊達に囲まれて損害らしい損害を受けることなく街に入りました。イザベラさん、相変わらず厄介な人ですね」
イザベラの指揮に感心しながらもゼロの目はアイラス軍を追撃しようとするスケルトンの軍勢を睨んでいた。
アイラス軍を取り逃がしたスケルトン達だが、即座に体制を立て直して更に数千のスケルトンを地中から呼び寄せて鉱山の街を包囲しようとしている。
その様子を観察していたゼロ。
軍勢のある部分を中心にして指揮が広がってゆくのが見て取れた。
「そこにいましたね」
不敵な笑みを浮かべたゼロが駆け出し、その後にオメガ達が続く。
ゼロは駆けながら更にジャック・オー・ランタン3体を召喚した。
山道を下り、鉱山の街の入口に到達したゼロはそのまま入口を潜り、街に駆け込んだ。
オメガとアルファは街を包む結界をものともせずにゼロに続いて街に入るが、入口を守るイバンス兵はゼロとオメガ達のために道を開いた。
シャドウとミラージュ、ジャック・オー・ランタン等は街を迂回して敵に向かう。
街の目抜き通りを駆け抜けるゼロにチェスターとカミーラが駆け寄る。
「ゼロ!俺達も行くぞ!」
「・・・!」
走りながら2人を一瞥したゼロ。
「好きにしてください!ただ、街を抜けたら乱戦ですよ!」
ゼロの言葉に頷きながら後を追う2人。
ゼロ達の行く手には街に入ったアイラス軍が集結していた。
「「ゼロ様!」」
オメガ、アルファの2体とチェスター、カミーラの2人を引き連れたゼロの姿に気付いたイズとリズだが、ゼロの様子を見てその意図を理解した。
「「私達もお供します!」」
武器を手にゼロに続くイズとリズ。
その様子を見たイザベラまでもがサーベルを抜いて走り出そうとするが、ヘルムントに羽交い締めにされながら止められていた。
「ヘルムント!お放しなさい!私も・・・・」
イザベラの金切り声を背にゼロは街を飛び出していった。
目の前に広がるのは死霊達の激戦。
ゼロの軍団とその数倍のスケルトンやゾンビ等の軍勢。
その戦いに街を迂回したシャドウ、ミラージュ、ジャック・オー・ランタンが突入してゆく。
「さて、そろそろ終わりにしましょう」
足を止めたゼロは剣を抜いた。
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