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死霊の地下迷宮2
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ゼロ達は遺跡内を探索しながら進む。
途中、幾度となくアンデッドと遭遇したが、いずれも下位から中位アンデッドであり、その殆どはチェスターやカミーラ、シールド、サーベルによって倒されている。
また、戦いの最中、リズがレイス3体を召喚してチェスター達の援護を行った。
「・・・・っ!」
「あんたもネクロマンサーだったのか?」
突然アンデッドを召喚したリズに驚く2人。
「いえ、私はゼロ様の下で死霊術を学んでいますが、ネクロマンサーではありません。私はあくまでも精霊使いです」
言いながら自分の矢にサラマンダーを宿らせて放つ。
徐々にではあるが、精霊術と死霊術を両立させつつあるようだ。
一行は徘徊するアンデッドを殲滅しながら遺跡の奥へと進む。
「解せません」
そんな中でゼロが呟きながら更に5体のスペクターを召喚して遺跡内に放った。
「どうした?」
前衛に立つチェスターが振り返りゼロを見る。
「緩すぎます。ここまで深く進入しましたが、いるのは下位から中位アンデッドだけ。この状況で先に潜った冒険者達が誰も戻らないのは不自然です」
「確かに。調査に向かったのは上位冒険者達だ。この程度の敵に遅れを取るような奴等じゃない」
ここまで探索してきても異常は無かったし、見落としも無かった筈だ。
ゼロはその場に立ち止まりスペクター達の偵察結果を待つ。
しかし、得られた情報に変わりはなく、数こそ多いものの、ゼロ達にとって脅威となり得ないアンデッドが徘徊しているだけだ。
「やはり妙です・・・」
スペクターの報告で地下遺跡の奥に更に下の階層に降りる階段があることが分かった。
その階段の下にまでスペクターを潜らせてみたところ、下の階層も入り組んだ迷宮のような構造で、多数の部屋が設けられているようだが、やはり特異は認められない。
ただ、最深部にスペクターでも抜けることができない結界のような力に守られた大扉があり、その先の状況は分からない。
どうやらその大扉の先に進む必要がありそうだ。
「潜ってみるしかないですね」
ゼロの言葉に全員が頷いた。
地下遺跡の上階層の探索を終え、新たな情報を得られなかったゼロ達は下階層への階段を降りた。
階段を降りても周囲の状況は変わらなかったが、当然ながらゼロは油断していない。
万が一の退路を確保すべく階段にスピアを中心としたスケルトンナイトを10体、ジャック・オー・ランタン3体を配置しておく。
いずれもゼロが信頼する上位アンデッドだ、問題なく退路を確保してくれる筈だ。
下階層の探索を始めたゼロ達はこの階に幾つもある部屋を一つ一つ調べながら進んだ。
無数にある部屋だが、共通しているのは空の棺が置かれていること。
その棺には遺跡の入口の門に描かれていた月と太陽の紋章が描かれているが、その棺を調べていたゼロの目が鋭さを増した。
更にこの階には上の階との大きな違いがあった。
幾つかの部屋や通路上に真新しい冒険者の骸が放置されている。
「先に潜った冒険者達はこの階で倒れたようですね」
ゼロは冒険者の死体を検分する。
斬られた、刺された致命傷に喰い荒らされた痕跡のある死体。
中には致命傷も無く、目を見開いて驚愕の表情のままの死体もある。
「これはレイスやスペクター等の精神体のアンデッドに魂を刈り取られたのでしょう」
ゼロの説明にチェスターが首を傾げる。
「しかし、俺も此奴等のことはよく知っていたが、何度も言うがアンデッドごときに遅れを取るような奴等じゃないぞ?」
ゼロは首を振った。
「確かにそうかもしれません。ただ、アンデッドの真の恐ろしさは個々の能力だけではありません」
「真の恐ろしさ?どういうことだ?」
「・・・・・?」
チェスターとカミーラは顔を見合わせるが、ネクロマンサーとしてのゼロの戦いを知っているレナ達3人はその言葉の意味を知っている。
「数の脅威・・ですね」
死霊術を学んでいるリズが口を開いた。
確かにゼロが使役する上位アンデッドのように高い能力を持つ不死の戦士は敵に取って脅威である。
しかし、ゼロの戦い方を見てリズ達が知ったアンデッドの真の恐ろしさとは、倒しても倒しても死を恐れずに無感情に押し寄せてくる不死の軍勢だ。
例えば手練れの勇者ならば数十体、いや百体程度のアンデッドでも難なく殲滅するだろう。
しかし、それが数千、数万と濁流のように押し寄せるアンデッドの軍勢には飲み込まれ、押し潰されてしまうかもしれない。
それこそがアンデッド、ひいてはアンデッドを使役する死霊術師の真の恐ろしさなのだ。
「しかし、ここにはそんなに多くのアンデッドはいないぞ?それこそ拍子抜けしている程だ」
チェスターは周囲を見渡した。
正直いえば、ここに至る程度の状況ならばわざわざ国境を越えてゼロを呼ぶ必要もないだろう。
「いえ、これは罠です。最深部の扉の向こうに私達を誘い込むための」
全員の視線がゼロに向けられる。
「この階に無数にある部屋に置かれた空の棺。いえ、あれは棺ではなく死霊達を呼ぶ魔導装置です。今は作動していませんが、一度動きだせばあの棺から無数のアンデッドが這い出してきます。おそらく、先に潜った冒険者達はそのことを知らずにアンデッドの軍勢に飲み込まれたのでしょう」
そう聞かされると逆に今の静けさが不気味に感じられる。
「多分、この奥の扉を開くと装置が作動し、この階層はアンデッドに埋め尽くされるでしょう」
「そうすると、俺達が生きてここから出るためには?」
「選択肢は2つ。1つは今の間に引き返す。問題なく脱出できるでしょうが、問題の解決にはなりません。ただ、事実を報告して対策を考え、仕切り直しができます。もう1つ、このまま進むこと。大きな危険が伴いますが、うまくいけば問題を解決することができます」
ゼロの示した選択肢についてチェスターが思案する。
「1つだけ聞く。ゼロ、アンデッドや死霊術の専門家として、あんたは先に進んで勝算はあるか?俺の選択は先に進むだ。しかし、あんた達はある意味俺達の問題に巻き込まれたようなものだ。そんなあんた達を巻き込むわけにはいかない」
「・・・・・」
チェスターの横でカミーラも頷いた。
「勝算があるかと問われれば、正直分かりません。ただ、その勝算を拾うための方法はあります。それに、私達は仕事の依頼を受けてここに来ました。決して巻き込まれたのではありませんよ。そして、私は私の仕事を達成するためには手段を選びません」
レナ、イズ、リズが頷く。
どういうわけかオメガ、アルファ、サーベル、シールドまでもがゼロの言葉に頷いている。
「だったら前に進もう。よく分からないが、この遺跡を放っておいては駄目な気がする。ゼロ達がいてくれる間にけりをつけたい」
「・・・!」
チェスターの決断にゼロが頷いた。
「それでは先に進みましょう。目的の扉はもう直ぐです」
途中、幾度となくアンデッドと遭遇したが、いずれも下位から中位アンデッドであり、その殆どはチェスターやカミーラ、シールド、サーベルによって倒されている。
また、戦いの最中、リズがレイス3体を召喚してチェスター達の援護を行った。
「・・・・っ!」
「あんたもネクロマンサーだったのか?」
突然アンデッドを召喚したリズに驚く2人。
「いえ、私はゼロ様の下で死霊術を学んでいますが、ネクロマンサーではありません。私はあくまでも精霊使いです」
言いながら自分の矢にサラマンダーを宿らせて放つ。
徐々にではあるが、精霊術と死霊術を両立させつつあるようだ。
一行は徘徊するアンデッドを殲滅しながら遺跡の奥へと進む。
「解せません」
そんな中でゼロが呟きながら更に5体のスペクターを召喚して遺跡内に放った。
「どうした?」
前衛に立つチェスターが振り返りゼロを見る。
「緩すぎます。ここまで深く進入しましたが、いるのは下位から中位アンデッドだけ。この状況で先に潜った冒険者達が誰も戻らないのは不自然です」
「確かに。調査に向かったのは上位冒険者達だ。この程度の敵に遅れを取るような奴等じゃない」
ここまで探索してきても異常は無かったし、見落としも無かった筈だ。
ゼロはその場に立ち止まりスペクター達の偵察結果を待つ。
しかし、得られた情報に変わりはなく、数こそ多いものの、ゼロ達にとって脅威となり得ないアンデッドが徘徊しているだけだ。
「やはり妙です・・・」
スペクターの報告で地下遺跡の奥に更に下の階層に降りる階段があることが分かった。
その階段の下にまでスペクターを潜らせてみたところ、下の階層も入り組んだ迷宮のような構造で、多数の部屋が設けられているようだが、やはり特異は認められない。
ただ、最深部にスペクターでも抜けることができない結界のような力に守られた大扉があり、その先の状況は分からない。
どうやらその大扉の先に進む必要がありそうだ。
「潜ってみるしかないですね」
ゼロの言葉に全員が頷いた。
地下遺跡の上階層の探索を終え、新たな情報を得られなかったゼロ達は下階層への階段を降りた。
階段を降りても周囲の状況は変わらなかったが、当然ながらゼロは油断していない。
万が一の退路を確保すべく階段にスピアを中心としたスケルトンナイトを10体、ジャック・オー・ランタン3体を配置しておく。
いずれもゼロが信頼する上位アンデッドだ、問題なく退路を確保してくれる筈だ。
下階層の探索を始めたゼロ達はこの階に幾つもある部屋を一つ一つ調べながら進んだ。
無数にある部屋だが、共通しているのは空の棺が置かれていること。
その棺には遺跡の入口の門に描かれていた月と太陽の紋章が描かれているが、その棺を調べていたゼロの目が鋭さを増した。
更にこの階には上の階との大きな違いがあった。
幾つかの部屋や通路上に真新しい冒険者の骸が放置されている。
「先に潜った冒険者達はこの階で倒れたようですね」
ゼロは冒険者の死体を検分する。
斬られた、刺された致命傷に喰い荒らされた痕跡のある死体。
中には致命傷も無く、目を見開いて驚愕の表情のままの死体もある。
「これはレイスやスペクター等の精神体のアンデッドに魂を刈り取られたのでしょう」
ゼロの説明にチェスターが首を傾げる。
「しかし、俺も此奴等のことはよく知っていたが、何度も言うがアンデッドごときに遅れを取るような奴等じゃないぞ?」
ゼロは首を振った。
「確かにそうかもしれません。ただ、アンデッドの真の恐ろしさは個々の能力だけではありません」
「真の恐ろしさ?どういうことだ?」
「・・・・・?」
チェスターとカミーラは顔を見合わせるが、ネクロマンサーとしてのゼロの戦いを知っているレナ達3人はその言葉の意味を知っている。
「数の脅威・・ですね」
死霊術を学んでいるリズが口を開いた。
確かにゼロが使役する上位アンデッドのように高い能力を持つ不死の戦士は敵に取って脅威である。
しかし、ゼロの戦い方を見てリズ達が知ったアンデッドの真の恐ろしさとは、倒しても倒しても死を恐れずに無感情に押し寄せてくる不死の軍勢だ。
例えば手練れの勇者ならば数十体、いや百体程度のアンデッドでも難なく殲滅するだろう。
しかし、それが数千、数万と濁流のように押し寄せるアンデッドの軍勢には飲み込まれ、押し潰されてしまうかもしれない。
それこそがアンデッド、ひいてはアンデッドを使役する死霊術師の真の恐ろしさなのだ。
「しかし、ここにはそんなに多くのアンデッドはいないぞ?それこそ拍子抜けしている程だ」
チェスターは周囲を見渡した。
正直いえば、ここに至る程度の状況ならばわざわざ国境を越えてゼロを呼ぶ必要もないだろう。
「いえ、これは罠です。最深部の扉の向こうに私達を誘い込むための」
全員の視線がゼロに向けられる。
「この階に無数にある部屋に置かれた空の棺。いえ、あれは棺ではなく死霊達を呼ぶ魔導装置です。今は作動していませんが、一度動きだせばあの棺から無数のアンデッドが這い出してきます。おそらく、先に潜った冒険者達はそのことを知らずにアンデッドの軍勢に飲み込まれたのでしょう」
そう聞かされると逆に今の静けさが不気味に感じられる。
「多分、この奥の扉を開くと装置が作動し、この階層はアンデッドに埋め尽くされるでしょう」
「そうすると、俺達が生きてここから出るためには?」
「選択肢は2つ。1つは今の間に引き返す。問題なく脱出できるでしょうが、問題の解決にはなりません。ただ、事実を報告して対策を考え、仕切り直しができます。もう1つ、このまま進むこと。大きな危険が伴いますが、うまくいけば問題を解決することができます」
ゼロの示した選択肢についてチェスターが思案する。
「1つだけ聞く。ゼロ、アンデッドや死霊術の専門家として、あんたは先に進んで勝算はあるか?俺の選択は先に進むだ。しかし、あんた達はある意味俺達の問題に巻き込まれたようなものだ。そんなあんた達を巻き込むわけにはいかない」
「・・・・・」
チェスターの横でカミーラも頷いた。
「勝算があるかと問われれば、正直分かりません。ただ、その勝算を拾うための方法はあります。それに、私達は仕事の依頼を受けてここに来ました。決して巻き込まれたのではありませんよ。そして、私は私の仕事を達成するためには手段を選びません」
レナ、イズ、リズが頷く。
どういうわけかオメガ、アルファ、サーベル、シールドまでもがゼロの言葉に頷いている。
「だったら前に進もう。よく分からないが、この遺跡を放っておいては駄目な気がする。ゼロ達がいてくれる間にけりをつけたい」
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