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鉱山の街
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翌日は夜明け前に村を出発したおかげで予定よりも早く目的の鉱山の街に到着することができた。
まだ日も高い時間だというのに鉱山の街は人通りも少なく、殺伐としている。
「先の一件は街にも被害が出てな。未だに街の連中も怯えている。そりゃそうだ、アンデッドに襲われた家族や友人が襲ってくるなんて体験をしたんだ。みんな家の中に閉じこもっているよ。それでも鉱山夫達は必死で働いて街を立て直そうとしているがな」
「鉱山は封鎖しているのでは?」
「封鎖したのは遺跡を掘り当てた鉱山とその至近にある鉱山の2つだけだ。この街の周囲にはまだ4つの鉱山がある。休んでなんかいられないのさ。奴等には国の経済を支えている誇りがあるからな。恐怖をねじ伏せて山に向かうんだ」
確かに、人通りの少ない街並みだが、山に向かい、戻ってくる鉱山夫の姿は多い。
他に街に見えるのは巡回している衛士や冒険者の姿がちらほら。
「閉鎖した鉱山や周辺の警戒もあるからな、軍や衛士だけじゃ手が足りないから冒険者達も総動員さ」
そんな話を聞きながら街の冒険者ギルドに向かった。
鉱山の街の冒険者ギルドは風の都市のギルドに比べると小規模だった。
ギルド職員は数名、所属する冒険者も風の都市に比べて半数以下だ。
チェスターが受付のカウンターにいる職員にゼロ達が到着したこと報告している。
チェスターに説明を受けた若い女性職員はゼロのことを見て顔を引きつらせている。
ギルド内にいた他の職員や冒険者達も似たような反応だ。
無理もない、死霊に襲われた街に死霊術師がやってきたのである。
しかも実際に来てみれば顔の半分を不気味な仮面で覆い、残りの半分にも大きな傷がある全身黒ずくめのネクロマンサーだ。
事前に聞いていたとしても仕方のない反応だろう。
「一応、挨拶くらいは・・。と思っていたのですが、止めておいた方が良いでしょうか?」
呟くゼロの様子を見かねたレナが前に出る。
「いいわ、私が代わりに説明してあげる」
そう言ったレナはギルド職員にゼロやイズ、リズのことを説明しに行った。
「重ね重ねすまねえな。どうしてもあの一件の恐怖心が残っているんだ。決して悪気はないんだが・・」
「・・・・・さい」
申し訳なさそうにチェスターとカミーラだが、ゼロは別に気にしていない。
「自然な反応ですよ。ただ、やっぱり無理でしょうか?」
「何がだ?」
「いえ、街を見た限り、警備の人手が足りていないようでしたので、そちらでもお役に立てそうだな、と思っていたのですが」
「どういうことだ?」
「私のアンデッドに街の警備をさせることも可能なんですが、余計に怖がらせてしまいますね」
ゼロの言葉に職員への説明を終えたレナやイズ、リズも呆れ顔だ。
「そんなことを考えていたの?」
「「それはいくらなんでも・・」」
しかし、チェスターとカミーラの表情は違った。
「そんなことができるのか?アンデッドにこの街を守らせるなんてことが?」
ゼロに詰め寄るチェスター。
その声を聞いた職員達や冒険者も遠巻きにこちらを見ている。
「はい、それは問題ありません。私達が鉱山の調査をしている間、アンデッド達に街を守らせる。スケルトン30体程度とジャック・オー・ランタンの2体もいれば十分ですね」
「マジか・・・」
「・・・・・」
「ただ、やっぱり見た目があれですからね。街の人を怖がらせてしまいますし、事情を知らない兵士や冒険者に攻撃されてしまう可能性もありますね」
チェスターは受付カウンターに駆け寄ってギルド長を呼んできた。
でっぷりと太った中年のギルド長はゼロに深々と頭を下げた。
「遠い所からありがとうございます。早速なのですが、ゼロ殿のアンデッドにこの街を守ってもらうことが可能だとか?」
迫り来るギルド長の問いにゼロは少し引きながら頷いた。
「運用上は問題ありません。彼等は私がこの街を離れていても忠実に命令を守ります。まあ、風の都市に帰った後もというわけにはいきませんが、私が滞在している間ならば大丈夫です。聞いている下位アンデッド程度ならば問題なく対処できます」
ゼロの説明をギルド長は食い入るように聞いている。
「是非お願いできませんか?お恥ずかしい話、もう限界なのです。あの一件以来襲撃を恐れて軍も衛士も冒険者も不眠不休で事に当たっています。過労で倒れる者が後を絶たないのです」
縋るように頼むギルド長。
チェスターとカミーラも同じだ。
それを見たゼロは思案する。
「そういうことならば、こちらの警備隊に私のアンデッドを編入させてはどうでしょう?例えば冒険者達2人に私のアンデッドを5体を同行させて分隊を編成させる。こちらの人員が12名で6個分隊が編成できます。皆さんは交代で休息を取れますし、私のアンデッドは文字通り不眠不休で活動できますよ」
ゼロの提案にチェスターも頷いている。
「確かに、アンデッドに冒険者や衛士達が同行していれば誤解されることも防げるな」
どうやらこの街の状況は予想よりも深刻なようだ。
そうなると一刻の猶予もなさそうだ。
「分かりました。それでは早速警備のアンデッドを編成した後に目的の鉱山に向かいましょう」
ゼロ達は直ちに鉱山に向かうことにした。
まだ日も高い時間だというのに鉱山の街は人通りも少なく、殺伐としている。
「先の一件は街にも被害が出てな。未だに街の連中も怯えている。そりゃそうだ、アンデッドに襲われた家族や友人が襲ってくるなんて体験をしたんだ。みんな家の中に閉じこもっているよ。それでも鉱山夫達は必死で働いて街を立て直そうとしているがな」
「鉱山は封鎖しているのでは?」
「封鎖したのは遺跡を掘り当てた鉱山とその至近にある鉱山の2つだけだ。この街の周囲にはまだ4つの鉱山がある。休んでなんかいられないのさ。奴等には国の経済を支えている誇りがあるからな。恐怖をねじ伏せて山に向かうんだ」
確かに、人通りの少ない街並みだが、山に向かい、戻ってくる鉱山夫の姿は多い。
他に街に見えるのは巡回している衛士や冒険者の姿がちらほら。
「閉鎖した鉱山や周辺の警戒もあるからな、軍や衛士だけじゃ手が足りないから冒険者達も総動員さ」
そんな話を聞きながら街の冒険者ギルドに向かった。
鉱山の街の冒険者ギルドは風の都市のギルドに比べると小規模だった。
ギルド職員は数名、所属する冒険者も風の都市に比べて半数以下だ。
チェスターが受付のカウンターにいる職員にゼロ達が到着したこと報告している。
チェスターに説明を受けた若い女性職員はゼロのことを見て顔を引きつらせている。
ギルド内にいた他の職員や冒険者達も似たような反応だ。
無理もない、死霊に襲われた街に死霊術師がやってきたのである。
しかも実際に来てみれば顔の半分を不気味な仮面で覆い、残りの半分にも大きな傷がある全身黒ずくめのネクロマンサーだ。
事前に聞いていたとしても仕方のない反応だろう。
「一応、挨拶くらいは・・。と思っていたのですが、止めておいた方が良いでしょうか?」
呟くゼロの様子を見かねたレナが前に出る。
「いいわ、私が代わりに説明してあげる」
そう言ったレナはギルド職員にゼロやイズ、リズのことを説明しに行った。
「重ね重ねすまねえな。どうしてもあの一件の恐怖心が残っているんだ。決して悪気はないんだが・・」
「・・・・・さい」
申し訳なさそうにチェスターとカミーラだが、ゼロは別に気にしていない。
「自然な反応ですよ。ただ、やっぱり無理でしょうか?」
「何がだ?」
「いえ、街を見た限り、警備の人手が足りていないようでしたので、そちらでもお役に立てそうだな、と思っていたのですが」
「どういうことだ?」
「私のアンデッドに街の警備をさせることも可能なんですが、余計に怖がらせてしまいますね」
ゼロの言葉に職員への説明を終えたレナやイズ、リズも呆れ顔だ。
「そんなことを考えていたの?」
「「それはいくらなんでも・・」」
しかし、チェスターとカミーラの表情は違った。
「そんなことができるのか?アンデッドにこの街を守らせるなんてことが?」
ゼロに詰め寄るチェスター。
その声を聞いた職員達や冒険者も遠巻きにこちらを見ている。
「はい、それは問題ありません。私達が鉱山の調査をしている間、アンデッド達に街を守らせる。スケルトン30体程度とジャック・オー・ランタンの2体もいれば十分ですね」
「マジか・・・」
「・・・・・」
「ただ、やっぱり見た目があれですからね。街の人を怖がらせてしまいますし、事情を知らない兵士や冒険者に攻撃されてしまう可能性もありますね」
チェスターは受付カウンターに駆け寄ってギルド長を呼んできた。
でっぷりと太った中年のギルド長はゼロに深々と頭を下げた。
「遠い所からありがとうございます。早速なのですが、ゼロ殿のアンデッドにこの街を守ってもらうことが可能だとか?」
迫り来るギルド長の問いにゼロは少し引きながら頷いた。
「運用上は問題ありません。彼等は私がこの街を離れていても忠実に命令を守ります。まあ、風の都市に帰った後もというわけにはいきませんが、私が滞在している間ならば大丈夫です。聞いている下位アンデッド程度ならば問題なく対処できます」
ゼロの説明をギルド長は食い入るように聞いている。
「是非お願いできませんか?お恥ずかしい話、もう限界なのです。あの一件以来襲撃を恐れて軍も衛士も冒険者も不眠不休で事に当たっています。過労で倒れる者が後を絶たないのです」
縋るように頼むギルド長。
チェスターとカミーラも同じだ。
それを見たゼロは思案する。
「そういうことならば、こちらの警備隊に私のアンデッドを編入させてはどうでしょう?例えば冒険者達2人に私のアンデッドを5体を同行させて分隊を編成させる。こちらの人員が12名で6個分隊が編成できます。皆さんは交代で休息を取れますし、私のアンデッドは文字通り不眠不休で活動できますよ」
ゼロの提案にチェスターも頷いている。
「確かに、アンデッドに冒険者や衛士達が同行していれば誤解されることも防げるな」
どうやらこの街の状況は予想よりも深刻なようだ。
そうなると一刻の猶予もなさそうだ。
「分かりました。それでは早速警備のアンデッドを編成した後に目的の鉱山に向かいましょう」
ゼロ達は直ちに鉱山に向かうことにした。
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