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地下墳墓へ
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ゼロは地下墳墓の入口に立った。
「マスター、地下には有象無象がひしめいております。主に恵まれなかった哀れな者達ですが、なかなかに強力な連中です。お気をつけください」
「問題ありません」
オメガの報告を受けて頷いたゼロはスケルトンロード3体とジャック・オー・ランタン2体、スペクター2体を召喚した。
新たに召喚した6体にオメガ、アルファを含めてゼロに付き従うアンデッドは8体、空間が限られた地下での戦いに備えて少数精鋭の布陣だ。
「行きましょう」
ゼロを先頭にし、8体のアンデッドが続いて地下墳墓へと潜った。
地下墳墓の中は奥に向かって長い通路が真っ直ぐに延びていた。
通路の左右各所には宝物庫や皇帝の一族が埋葬された部屋が多数設けられており、地下墳墓全体に死霊達の気配が満ちている。
「マスター、私に先陣をお任せください」
オメガだけでなくスケルトンロードやジャック・オー・ランタンまでもが先陣、露払いを望んでいるが、ゼロは首を振った。
「不要です。使役者のいないアンデッド相手に本気になる必要もありません。皆は魔王との戦いに備えていてください」
地下墳墓の奥に向かって歩き始める。
周囲には死霊達の気配が満ちているが、ネクロマンサーであるゼロとオメガ達強力なアンデッドの気配に臆し、遠巻きに様子を窺っているだけで近づいてもこない。
「皇帝一族の霊だけではなさそうです。魔王の気配に吸い寄せられて迷い込んだ者が殆どですね」
周囲の死霊達を特に警戒することもなくゼロは足を進める。
「主様、この先に毛色の違う者がいます。お気をつけを」
アルファが進言し、オメガやスケルトンロードが前に出ようとするが、ゼロはそれすらも制し、剣を抜くことすらなく前に進む。
やがてゼロ達の前に10体程のスケルトンやマミー、ゴーストが現れた。
各々が高貴な装束で剣や杖を手にしてゼロの前に立ちふさがり、虚ろな敵意を向けてくる。
地下墳墓の本来の主達のようだ。
「国を支配した皇帝一族が今や魔王に支配されているのですね」
ゼロは目の前にいる死霊達を冷たい目で見据えた。
ゼロに見られた死霊達が後ずさる。
ゼロは剣を抜くどころか、何の術も行使しておらず、魔力すらも高めていない。
それでも、ゼロに見据えられて感情など無くしている筈の彼等が恐怖におののき、やがて塵となって姿を消した。
「マスターの眼力に屈したようですね」
賞賛するオメガに振り向くことなく、ゼロはじっと通路の奥を見ていた。
「先に進みます。私の獲物は最深部にいる魔王ゴッセルのみです。虚ろな彼等に用はありません」
ゼロは再びアンデッドを従えて歩き始めた。
その後も地下墳墓に住む死霊達がゼロのことを遠巻きに窺ってはいるが、近づいてくるようなことはなく、ゼロ達は地下墳墓最深部に近づいた。
「主達!強力な魔力が急速に近づいています。後方からです!」
アルファが叫び、オメガ、スケルトンロードが後背に備え、アルファ、スペクター、ジャック・オー・ランタンがゼロを守るように周囲を囲む。
アルファの報告のとおり、強力な力を持つ何者かが急速に近づいてくる。
ゼロを追ってきていることは明らかだ。
「オメガッ!下がりなさい!」
ゼロが叫ぶや否や後背に備えて構えていたオメガと3体のスケルトンロードが吹き飛ばされる。
ゼロは剣の鍔に指を掛けて鯉口を切った。
「追ってきましたか」
ゼロは目の前に立つ魔人を見た。
「ゴッセル様には近づけさせない!ここで貴様を殺す!」
怒りに満ちた黒い翼を持つ魔人、ベルベットはゼロにサーベルを向けた。
周囲では吹き飛ばされたオメガやスケルトンロードが立ち上がり、ベルベットを取り囲む。
「師匠やプリシラさんが貴女に敗北することはありえません。逃れてきましたか?」
「あの者達はゴッセル様を救うなどと世迷い言を話していた・・・。でも、あの2人はゴッセル様のことを何も理解していない。ゴッセル様は眠りなんかを望んではいない。あのお方は破壊の中でのみでしか安らぎを得られない!」
「その破壊の先に何があります?破壊の限りを尽くし、なにも無くなったとき、何を得られるのですか?それこそ自らの破滅を招くのではありませんか?」
「黙れ!貴様にあのお方の心の渇きは理解できない。だからゴッセル様を救うなど、あの2人の世迷い言を真に受けるのだ」
ゼロは薄く笑いながら首を振った。
「貴女こそ何も分かっていませんね。私はあの2人の言うことを真に受けているわけでも、ゴッセルを救いたいとも考えていません。それこそ世界を救いたいとも思っていません」
「どういうこと?」
「私がゴッセルを殺すのは私の欲求によるものです。このままだと私はいつまでも軍事利用されてしまうんですよ」
「なにっ!」
「歴史の中で幾度となく繰り返されてきた死霊術師の軍事利用。そうなるまいと心掛けてきた私がまんまと利用されてしまった。それが煩わしくて仕方ないのですよ。だからこそ、私は魔王ゴッセルを殺しにきたのです。だから、魔王ゴッセルを殺すという私を貴女が止めるというならば、貴女のことも殺します」
「矮小な人間に私を倒すことができるかっ!」
「倒すのではありません。殺すと言っているのです。魔王を殺そうとしている私がその配下たる貴女に負けるわけにはいきません」
ゼロは静かに剣を抜きながら周囲で身構えているアンデッドを見た。
「皆は下がりなさい。彼女は私が殺します」
しかし、アンデッド達は下がろうとしない。
自我のある上位アンデッド故に命令に反してでもゼロを守ろうとしているのだ。
ゼロはため息をついた。
「まったく、我が儘ですね。でも、皆はゴッセルとの戦いの貴重な戦力です。あくまでも命令に逆らうならば・・・冥界の狭間へ還れ!」
抗い難い召喚術にスケルトンロード、ジャック・オー・ランタン、スペクターが姿を消したのだが
「・・・私の召喚術にすら逆らいますか。貴方達2人は」
ゼロの背後には変わらずにオメガとアルファが控えている。
「私は主様の行く先、どこまでもお側にいます」
「マイマスター。私達2人は他の仲間達全てのために貴方の行く末を見届けさせていただきます」
話しながら2体は後方に退いた。
ゼロとベルベットの勝負に手出しするつもりはなさそうだ。
「貴方達にはいささか力を与え過ぎましたか。仕方ありませんね」
ゼロはベルベットの前に立った。
「さあ、殺り合いましょう!」
殺す者と守る者、ゼロとベルベットの互いに一歩も引くことができない2人の一騎打ちが始まる。
「マスター、地下には有象無象がひしめいております。主に恵まれなかった哀れな者達ですが、なかなかに強力な連中です。お気をつけください」
「問題ありません」
オメガの報告を受けて頷いたゼロはスケルトンロード3体とジャック・オー・ランタン2体、スペクター2体を召喚した。
新たに召喚した6体にオメガ、アルファを含めてゼロに付き従うアンデッドは8体、空間が限られた地下での戦いに備えて少数精鋭の布陣だ。
「行きましょう」
ゼロを先頭にし、8体のアンデッドが続いて地下墳墓へと潜った。
地下墳墓の中は奥に向かって長い通路が真っ直ぐに延びていた。
通路の左右各所には宝物庫や皇帝の一族が埋葬された部屋が多数設けられており、地下墳墓全体に死霊達の気配が満ちている。
「マスター、私に先陣をお任せください」
オメガだけでなくスケルトンロードやジャック・オー・ランタンまでもが先陣、露払いを望んでいるが、ゼロは首を振った。
「不要です。使役者のいないアンデッド相手に本気になる必要もありません。皆は魔王との戦いに備えていてください」
地下墳墓の奥に向かって歩き始める。
周囲には死霊達の気配が満ちているが、ネクロマンサーであるゼロとオメガ達強力なアンデッドの気配に臆し、遠巻きに様子を窺っているだけで近づいてもこない。
「皇帝一族の霊だけではなさそうです。魔王の気配に吸い寄せられて迷い込んだ者が殆どですね」
周囲の死霊達を特に警戒することもなくゼロは足を進める。
「主様、この先に毛色の違う者がいます。お気をつけを」
アルファが進言し、オメガやスケルトンロードが前に出ようとするが、ゼロはそれすらも制し、剣を抜くことすらなく前に進む。
やがてゼロ達の前に10体程のスケルトンやマミー、ゴーストが現れた。
各々が高貴な装束で剣や杖を手にしてゼロの前に立ちふさがり、虚ろな敵意を向けてくる。
地下墳墓の本来の主達のようだ。
「国を支配した皇帝一族が今や魔王に支配されているのですね」
ゼロは目の前にいる死霊達を冷たい目で見据えた。
ゼロに見られた死霊達が後ずさる。
ゼロは剣を抜くどころか、何の術も行使しておらず、魔力すらも高めていない。
それでも、ゼロに見据えられて感情など無くしている筈の彼等が恐怖におののき、やがて塵となって姿を消した。
「マスターの眼力に屈したようですね」
賞賛するオメガに振り向くことなく、ゼロはじっと通路の奥を見ていた。
「先に進みます。私の獲物は最深部にいる魔王ゴッセルのみです。虚ろな彼等に用はありません」
ゼロは再びアンデッドを従えて歩き始めた。
その後も地下墳墓に住む死霊達がゼロのことを遠巻きに窺ってはいるが、近づいてくるようなことはなく、ゼロ達は地下墳墓最深部に近づいた。
「主達!強力な魔力が急速に近づいています。後方からです!」
アルファが叫び、オメガ、スケルトンロードが後背に備え、アルファ、スペクター、ジャック・オー・ランタンがゼロを守るように周囲を囲む。
アルファの報告のとおり、強力な力を持つ何者かが急速に近づいてくる。
ゼロを追ってきていることは明らかだ。
「オメガッ!下がりなさい!」
ゼロが叫ぶや否や後背に備えて構えていたオメガと3体のスケルトンロードが吹き飛ばされる。
ゼロは剣の鍔に指を掛けて鯉口を切った。
「追ってきましたか」
ゼロは目の前に立つ魔人を見た。
「ゴッセル様には近づけさせない!ここで貴様を殺す!」
怒りに満ちた黒い翼を持つ魔人、ベルベットはゼロにサーベルを向けた。
周囲では吹き飛ばされたオメガやスケルトンロードが立ち上がり、ベルベットを取り囲む。
「師匠やプリシラさんが貴女に敗北することはありえません。逃れてきましたか?」
「あの者達はゴッセル様を救うなどと世迷い言を話していた・・・。でも、あの2人はゴッセル様のことを何も理解していない。ゴッセル様は眠りなんかを望んではいない。あのお方は破壊の中でのみでしか安らぎを得られない!」
「その破壊の先に何があります?破壊の限りを尽くし、なにも無くなったとき、何を得られるのですか?それこそ自らの破滅を招くのではありませんか?」
「黙れ!貴様にあのお方の心の渇きは理解できない。だからゴッセル様を救うなど、あの2人の世迷い言を真に受けるのだ」
ゼロは薄く笑いながら首を振った。
「貴女こそ何も分かっていませんね。私はあの2人の言うことを真に受けているわけでも、ゴッセルを救いたいとも考えていません。それこそ世界を救いたいとも思っていません」
「どういうこと?」
「私がゴッセルを殺すのは私の欲求によるものです。このままだと私はいつまでも軍事利用されてしまうんですよ」
「なにっ!」
「歴史の中で幾度となく繰り返されてきた死霊術師の軍事利用。そうなるまいと心掛けてきた私がまんまと利用されてしまった。それが煩わしくて仕方ないのですよ。だからこそ、私は魔王ゴッセルを殺しにきたのです。だから、魔王ゴッセルを殺すという私を貴女が止めるというならば、貴女のことも殺します」
「矮小な人間に私を倒すことができるかっ!」
「倒すのではありません。殺すと言っているのです。魔王を殺そうとしている私がその配下たる貴女に負けるわけにはいきません」
ゼロは静かに剣を抜きながら周囲で身構えているアンデッドを見た。
「皆は下がりなさい。彼女は私が殺します」
しかし、アンデッド達は下がろうとしない。
自我のある上位アンデッド故に命令に反してでもゼロを守ろうとしているのだ。
ゼロはため息をついた。
「まったく、我が儘ですね。でも、皆はゴッセルとの戦いの貴重な戦力です。あくまでも命令に逆らうならば・・・冥界の狭間へ還れ!」
抗い難い召喚術にスケルトンロード、ジャック・オー・ランタン、スペクターが姿を消したのだが
「・・・私の召喚術にすら逆らいますか。貴方達2人は」
ゼロの背後には変わらずにオメガとアルファが控えている。
「私は主様の行く先、どこまでもお側にいます」
「マイマスター。私達2人は他の仲間達全てのために貴方の行く末を見届けさせていただきます」
話しながら2体は後方に退いた。
ゼロとベルベットの勝負に手出しするつもりはなさそうだ。
「貴方達にはいささか力を与え過ぎましたか。仕方ありませんね」
ゼロはベルベットの前に立った。
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