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総力戦5
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山道を抜けて帝国領に進入したゼロは即座に山道の出口に防御線を張った。
総戦力で劣るゼロ連隊では地形を利用して戦いを有利に運ぶしかない。
もしもこの防御線を破られて帝国領内に押し込まれると、そこにあるのは広大な平原や荒野であり、連隊は圧倒的な戦力差を有する魔王軍相手に野戦を強いられることになるのだ。
十倍以上の数の敵を相手に野戦で勝利する方法を今のゼロには思いつかない。
「帝国領に入っておきながらなんですが、ここが最終防衛線です。ここを破られたらもう打つ手はありません」
シールドを中心とした数百体の大盾装備のスケルトンナイトを召喚し、盾を二段に構えた防衛壁で山の出口を塞ぎ、更に数百体のスケルトンナイトの槍隊がその後方に控える。
加えてジャック・オー・ランタンとウィル・オー・ザ・ウィスプを左右に配置して側面攻撃を任せる。
ゼロはアンデッドから離れた位置に陣取って指揮を執り、8人の仲間とサーベル、スピアがゼロの護衛に付く。
上位アンデッドばかりその数約6百体、今のゼロの力で使役できるほぼ限界の数である。
「皆さん、戦いが始まったら私はアンデッドの指揮に意識の全てを費やします。その間は子供が投げた石ころすらも避けることができません。護衛をお願いします」
ゼロの言葉を聞いてオックスの指示の下、ゼロを中心とした円陣を組んだ。
やがて山道の奥から魔物達が行軍する足音が地響きとなって聞こえてきた。
「始めます」
ゼロは残された右目を細めて精神を集中した。
山の出口に向かってくる魔王軍の姿が見えた。
オーガ、トロールを中心とした部隊を先頭に攻撃態勢を取っている。
誰の目に見てもスケルトンナイトの防壁では受け止めることはできない。
「おい、ゼロよ。こりゃあさすがに勝ち目は無い。後退して遊撃戦にした方がいいぞ!」
オックスが警告するがゼロは返事どころか全く反応を示さない。
「ゼロ?」
傍らに立つレナがゼロを覗き込む。
ゼロは遠くを見るような虚ろな目で何かを小声で繰り返している。
長くゼロと共にいたレナですら見たことのないゼロが本気で死霊術を操っている姿だった。
「オックスさん、ゼロの耳には届いていません!今無理にゼロの術を止めることは危険なような気がします」
レナはここで無理矢理にゼロの術を止めさせようとするとゼロが向こう側に行って帰ってこないような不安を感じた。
「ゼロが正気を取り戻すまでここで戦うしかないってことだな」
ライズが獰猛な笑みを浮かべる。
「正気って、言葉を選びなさい!」
イリーナがライズを小突きながらも弓に矢を番えた。
他の皆もゼロを信用し、最後まで踏みとどまる覚悟だ。
オックスも同じ気持ちではあるが、彼にはゼロに頼まれた副連隊長としての役目があった。
リリスがオックスの肩に手を添える。
「大丈夫、いざとなったら貴方の責任を私も背負ってあげるわ。でも、レナだけはゼロから離れようとしないでしょうね。リズも同じだろうけど、あの子にはイズがいるから大丈夫」
「まあ、その時はあの娘っ子を無理矢理にでも連れて行かなきゃならん。まったく、厄介な役割を任されたもんだ」
オックスは戦鎚を構えながらため息をついた。
やがて魔王軍の先鋒がスケルトンナイトの防壁に衝突した。
案の定、オーガやトロールの勢いを止めることはできずに防衛線が崩壊する。
しかし、突破されると同時に左右に展開していたジャック・オー・ランタンとウィル・オー・ザ・ウィスプの火炎が魔物達を包んだ。
更に大盾の壁の後方に距離をおいて控えていたスケルトンナイトの槍隊が前進して炎に包まれた魔物を串刺しにしてゆく。
ゼロは右手を横に振り下ろした。
ゼロの動作と同時に崩された大盾装備のスケルトンナイトと炎の中で戦っているスケルトンナイトが一斉に姿を消した。
ゼロが再び右手を挙げる。
崩壊した前線の後方に再びスケルトンナイトの防衛線とその後方に槍を持つスケルトンナイトが姿を現す。
ジャック・オー・ランタン達も防衛線の左右後方に回り込む。
一枚目と同じ防衛線を構築した。
魔王軍が狭歪な山道を抜けるまでの数十メートルの間にアンデッドの防衛線は5度に渡り崩壊と反撃、後退を繰り返し、魔王軍の先鋒部隊のオーガやトロールの大半を打ち倒すことに成功した。
しかし、防衛線も最後の一枚、これを突破されると魔王軍は広大な平野になだれ込んでくる。
(どうするんだ、ゼロ?)
ゼロ達の立つ位置から山の出口までは距離があるが、敵が防衛線を突破すれば機動力のある部隊も前面に出て来る筈だ。
そうなると撤退することも困難だ。
オックスは前線の様子とゼロを交互に見ていた。
ゼロが人差し指で前方を指し示す。
防衛線の後方の平原にオメガとその眷族、アルファ、そして数十体のデュラハンが出現した。
デュラハンの全てが首無しの馬に騎乗しているか、首無しの馬が牽く戦車に乗っている。
やがて、最後の防衛線が崩壊し、ジャック・オー・ランタン達の火炎攻撃とスケルトンナイト槍隊の反撃も限界を迎えた。
ゼロは右手を横に振り下ろすと共に左手を正面に突き出した。
スケルトンナイトが姿を消し、魔王軍が平原になだれ込んで左右に陣形を広げようとしている。
・・ラララ・ラ・・ララ・
アルファの嘆きの歌が戦場に響き渡り、陣形を構築中の魔王軍の足並みが崩れた。
それを狙ってジャック・オー・ランタン達の火炎攻撃に援護されたオメガとその眷族、デュラハンが突撃し、アルファの歌によって生じた綻びに突入して傷口を広げる。
更にゼロが召喚したスケルトンナイトの槍隊と剣士隊が続いた。
混乱した魔王軍を蹂躙し、僅かな時間で千以上の損害を与えたアンデッドだが、彼等の優勢もここまでだった。
ベルベットとその配下の下位魔人達の本隊が山を抜けて魔王軍の後方に陣取り、オメガ達の猛攻に曝されている部隊は切り捨てて陣形を構築し、オメガ達を包囲して反撃の態勢を取った。
「ここまでです・・」
アンデッドの指揮を執っていたゼロの目に光が戻った。
総戦力で劣るゼロ連隊では地形を利用して戦いを有利に運ぶしかない。
もしもこの防御線を破られて帝国領内に押し込まれると、そこにあるのは広大な平原や荒野であり、連隊は圧倒的な戦力差を有する魔王軍相手に野戦を強いられることになるのだ。
十倍以上の数の敵を相手に野戦で勝利する方法を今のゼロには思いつかない。
「帝国領に入っておきながらなんですが、ここが最終防衛線です。ここを破られたらもう打つ手はありません」
シールドを中心とした数百体の大盾装備のスケルトンナイトを召喚し、盾を二段に構えた防衛壁で山の出口を塞ぎ、更に数百体のスケルトンナイトの槍隊がその後方に控える。
加えてジャック・オー・ランタンとウィル・オー・ザ・ウィスプを左右に配置して側面攻撃を任せる。
ゼロはアンデッドから離れた位置に陣取って指揮を執り、8人の仲間とサーベル、スピアがゼロの護衛に付く。
上位アンデッドばかりその数約6百体、今のゼロの力で使役できるほぼ限界の数である。
「皆さん、戦いが始まったら私はアンデッドの指揮に意識の全てを費やします。その間は子供が投げた石ころすらも避けることができません。護衛をお願いします」
ゼロの言葉を聞いてオックスの指示の下、ゼロを中心とした円陣を組んだ。
やがて山道の奥から魔物達が行軍する足音が地響きとなって聞こえてきた。
「始めます」
ゼロは残された右目を細めて精神を集中した。
山の出口に向かってくる魔王軍の姿が見えた。
オーガ、トロールを中心とした部隊を先頭に攻撃態勢を取っている。
誰の目に見てもスケルトンナイトの防壁では受け止めることはできない。
「おい、ゼロよ。こりゃあさすがに勝ち目は無い。後退して遊撃戦にした方がいいぞ!」
オックスが警告するがゼロは返事どころか全く反応を示さない。
「ゼロ?」
傍らに立つレナがゼロを覗き込む。
ゼロは遠くを見るような虚ろな目で何かを小声で繰り返している。
長くゼロと共にいたレナですら見たことのないゼロが本気で死霊術を操っている姿だった。
「オックスさん、ゼロの耳には届いていません!今無理にゼロの術を止めることは危険なような気がします」
レナはここで無理矢理にゼロの術を止めさせようとするとゼロが向こう側に行って帰ってこないような不安を感じた。
「ゼロが正気を取り戻すまでここで戦うしかないってことだな」
ライズが獰猛な笑みを浮かべる。
「正気って、言葉を選びなさい!」
イリーナがライズを小突きながらも弓に矢を番えた。
他の皆もゼロを信用し、最後まで踏みとどまる覚悟だ。
オックスも同じ気持ちではあるが、彼にはゼロに頼まれた副連隊長としての役目があった。
リリスがオックスの肩に手を添える。
「大丈夫、いざとなったら貴方の責任を私も背負ってあげるわ。でも、レナだけはゼロから離れようとしないでしょうね。リズも同じだろうけど、あの子にはイズがいるから大丈夫」
「まあ、その時はあの娘っ子を無理矢理にでも連れて行かなきゃならん。まったく、厄介な役割を任されたもんだ」
オックスは戦鎚を構えながらため息をついた。
やがて魔王軍の先鋒がスケルトンナイトの防壁に衝突した。
案の定、オーガやトロールの勢いを止めることはできずに防衛線が崩壊する。
しかし、突破されると同時に左右に展開していたジャック・オー・ランタンとウィル・オー・ザ・ウィスプの火炎が魔物達を包んだ。
更に大盾の壁の後方に距離をおいて控えていたスケルトンナイトの槍隊が前進して炎に包まれた魔物を串刺しにしてゆく。
ゼロは右手を横に振り下ろした。
ゼロの動作と同時に崩された大盾装備のスケルトンナイトと炎の中で戦っているスケルトンナイトが一斉に姿を消した。
ゼロが再び右手を挙げる。
崩壊した前線の後方に再びスケルトンナイトの防衛線とその後方に槍を持つスケルトンナイトが姿を現す。
ジャック・オー・ランタン達も防衛線の左右後方に回り込む。
一枚目と同じ防衛線を構築した。
魔王軍が狭歪な山道を抜けるまでの数十メートルの間にアンデッドの防衛線は5度に渡り崩壊と反撃、後退を繰り返し、魔王軍の先鋒部隊のオーガやトロールの大半を打ち倒すことに成功した。
しかし、防衛線も最後の一枚、これを突破されると魔王軍は広大な平野になだれ込んでくる。
(どうするんだ、ゼロ?)
ゼロ達の立つ位置から山の出口までは距離があるが、敵が防衛線を突破すれば機動力のある部隊も前面に出て来る筈だ。
そうなると撤退することも困難だ。
オックスは前線の様子とゼロを交互に見ていた。
ゼロが人差し指で前方を指し示す。
防衛線の後方の平原にオメガとその眷族、アルファ、そして数十体のデュラハンが出現した。
デュラハンの全てが首無しの馬に騎乗しているか、首無しの馬が牽く戦車に乗っている。
やがて、最後の防衛線が崩壊し、ジャック・オー・ランタン達の火炎攻撃とスケルトンナイト槍隊の反撃も限界を迎えた。
ゼロは右手を横に振り下ろすと共に左手を正面に突き出した。
スケルトンナイトが姿を消し、魔王軍が平原になだれ込んで左右に陣形を広げようとしている。
・・ラララ・ラ・・ララ・
アルファの嘆きの歌が戦場に響き渡り、陣形を構築中の魔王軍の足並みが崩れた。
それを狙ってジャック・オー・ランタン達の火炎攻撃に援護されたオメガとその眷族、デュラハンが突撃し、アルファの歌によって生じた綻びに突入して傷口を広げる。
更にゼロが召喚したスケルトンナイトの槍隊と剣士隊が続いた。
混乱した魔王軍を蹂躙し、僅かな時間で千以上の損害を与えたアンデッドだが、彼等の優勢もここまでだった。
ベルベットとその配下の下位魔人達の本隊が山を抜けて魔王軍の後方に陣取り、オメガ達の猛攻に曝されている部隊は切り捨てて陣形を構築し、オメガ達を包囲して反撃の態勢を取った。
「ここまでです・・」
アンデッドの指揮を執っていたゼロの目に光が戻った。
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