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総力戦4
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「初戦は完敗。でも、それだけ。貴方の実力はよく分かった。ほんの少しだけ手間取りそうだけど、何の問題もないわ」
初戦におけるベルベットの軍の損害は千を超えた。
手持ちの戦力の5パーセント、決して多くはないが無視できる損害ではないうえ、敵には何の損害を与えていない。
どう見ても完敗である。
更に敵を帝国方面に追い込んでしまったうえ、大軍であるが故、狭い山道ではその行動が大きく制限されてしまう。
試しにネクロマンサーを抹殺すべく送り込んだダークエルフ達も返り討ちにあったようだ。
「狭い山道ではこちらが不利。でも、仮に山を抜けられたとしても・・・貴方達にその先の道は無いわよ」
ベルベットは損害を受けた部隊を後退させて身軽なコボルトと人狼の部隊を先行させて本隊の移動を始めた。
山道を後退し続けるゼロ達は狭歪な地形を利用して奇襲と後退を繰り返し、魔王軍に僅かな損害を与え続けていた。
「少し、厳しくなってきましたね」
2日目の朝を迎え、僅かな休息を取った野営地でゼロが呟いた。
撤退戦の最中なので休息も十分でなく皆の疲労も蓄積しつつあるが、それは問題ではない。
「何が厳しいんだ?俺達は損害も無く、敵の戦力を削っている。しかも、帝国領に向かって進んでいるんだぜ?俺達は勝っているってことじゃないか?」
楽観的なライズが軽口を叩くが、それを黙って聞いているオックス達も同じ意見だ。
「敵の攻撃が思いのほか軽く、敵の数をすり減らすことができていません。そのうえで帝国領方面に追い込まれています」
ゼロは周囲を見渡した。
警戒に放っているスペクターからの報告が次々と届いてくる。
襲いかかってくる様子はないが、身軽な魔物達の部隊が周囲から近づいているうえに、魔王軍本隊がじわじわと接近しているらしい。
「4キロほど後方に待ち伏せをしやすい地形があるようです。そこまで後退しましょう」
9人は野営地を引き払って移動を開始した。
その頃、南方で連合軍と魔王軍が激闘を展開していた戦場では、連合軍が魔王軍を突破して帝国領への橋頭堡を確保し、後方に待機していた予備戦力と勇者達を帝国領に送り込むことに成功していた。
この後は攻撃部隊と予備部隊を入れ替え、イザベラ達連合騎士団が先頭に立ち帝国領内に展開している魔王軍を突破する役目を担い、攻撃から予備に回った連合軍が後方から援護しつつ勇者達を魔王城に送り込むのだ。
帝国領内に展開しているのは魔王ゴッセルの側近、魔人ハーレイ麾下の十万の戦力だが、広大な帝国領内に分散しているため、連合軍に差し向けられる戦力も限られていた。
しかし、イザベラ達連合軍はそのような事情を知る由もなく、数十万の敵を撃ち破る決意と覚悟をもって進撃している。
結果として敵を過大に見積もっていながらも士気旺盛のイザベラ達に勝機は十分にあるのだった。
連合軍と魔王軍の戦いは最終局面に入りつつあった。
帝国領に向かって後退を続けていたゼロ達だが、目的地の手前においてゼロは足を止めた。
「先回りされています」
先行させていたスペクターからの情報で敵を待ち伏せしようとしていた地点において逆にゼロ達を待ち受けている敵がいる。
「数は多くはないのですが、ダークエルフとゴブリンを中心とした部隊。先回りすることを優先しましたね。彼等は本隊が来るまで私達を足止めしておくことが任務でしょう。それならば・・・」
ゼロは決断した。
「もう少し時間稼ぎをしたかったのですが予定変更です!正面の敵を力ずくで突破して一気に帝国領まで突入します」
ゼロの言葉に全員が突撃に備えた。
「よし、俺達の出番だな。副連隊長とはいえ見ているだけでは鬱憤が溜まっちまう」
「ああ、俺も存在感を示さなくちゃな!」
オックスが戦鎚を構え、ライズが剣を抜く。
「私も遅れを取るわけにはいきません」
「小官の槍で道を切り開いてご覧にいれます」
イズが双剣を抜き、コルツが槍を構えた。
レナ、イリーナ、リリス、リズも準備万端のようだ。
それを見たゼロは自らも剣を抜き、更にオメガ、アルファ、サーベル、スピアの他にジャック・オー・ランタン10体を召喚した。
敵中突破を試みるためスピード重視の編成だ。
基本的にスケルトンは集団戦闘には長けている一方で機動力に欠けるが、スケルトンロードであるサーベルとスピアは熟練の上位冒険者並の動きを見せるために貴重な戦力として前衛に配置する。
「ここからは物音を立てずに敵に接近して奇襲を掛けます」
ゼロ達は息を潜め、足音を忍ばせて待ち伏せしている敵のギリギリまで接近した。
「敵を殲滅する必要はありません。立ち止まらずに一気に突破します」
ゼロの合図と共にオメガ、ジャック・オー・ランタンが先行し、サーベル、スピア、コルツを先頭にオックス、ライズ、イズが続いて駆け出した。
その後にゼロ達が続き、最後尾をアルファが守る。
ゼロ達を足止めすべく待ち伏せをしていたのはダークエルフとゴブリンが合わせて50体、ゼロ達が後退戦を繰り返している間に迂回して先回りしたのだろう。
彼等は山道を進んでくる敵をいかなる犠牲を払ってでも本隊が追いつくまで足止めしておくのが任務であり、その目的を達成できるならば真正面から戦う必要はないのだ。
そこで、道が広がり、周囲に遮蔽物が多い地形に潜んで待ち伏せして時間を稼ぐ筈だったのだが、彼等の目論見はいとも簡単に打ち崩された。
突如として来襲したアンデッドの攻撃に燻りだされたところにゼロ達の突撃を受けたのである。
「父と母の血を受けし竜人の名誉のために!我が角と牙が砕けようとも命ある限り戦う!」
先頭で槍を振るうコルツは連合軍に降った仲間の分まで戦うとの気概を持ち雄々しく突き進む。
コルツとスケルトンロードが穿った隙間をオックス、ライズ、イズがこじ開け、討ち漏らしをレナ達の魔法や弓矢で始末し、ゼロの剣が切り捨てる。
予想以上の強烈な攻撃を受けた魔王軍待ち伏せ部隊は一気に瓦解し、半数以上の犠牲を出したうえ、ゼロ達の足止めをすることも叶わず、いとも簡単に突破された。
ゼロ達が駆け抜けた後、ゴブリンは混乱から立ち直れずにいるが、ダークエルフ達は直ぐに追撃をしようとゼロ達の背中に向けて矢を射かけた。
だが、最後尾を駆けるアルファが振り向くと氷の壁を生み出し、飛来する矢を弾くと共に追撃の足を防ぐ。
「包囲を抜けました!厳しくなりますがこのまま山を降りてしまいましょう」
ゼロは新たな策を巡らせるも、彼に残された策は限られ、厳しいものだった。
初戦におけるベルベットの軍の損害は千を超えた。
手持ちの戦力の5パーセント、決して多くはないが無視できる損害ではないうえ、敵には何の損害を与えていない。
どう見ても完敗である。
更に敵を帝国方面に追い込んでしまったうえ、大軍であるが故、狭い山道ではその行動が大きく制限されてしまう。
試しにネクロマンサーを抹殺すべく送り込んだダークエルフ達も返り討ちにあったようだ。
「狭い山道ではこちらが不利。でも、仮に山を抜けられたとしても・・・貴方達にその先の道は無いわよ」
ベルベットは損害を受けた部隊を後退させて身軽なコボルトと人狼の部隊を先行させて本隊の移動を始めた。
山道を後退し続けるゼロ達は狭歪な地形を利用して奇襲と後退を繰り返し、魔王軍に僅かな損害を与え続けていた。
「少し、厳しくなってきましたね」
2日目の朝を迎え、僅かな休息を取った野営地でゼロが呟いた。
撤退戦の最中なので休息も十分でなく皆の疲労も蓄積しつつあるが、それは問題ではない。
「何が厳しいんだ?俺達は損害も無く、敵の戦力を削っている。しかも、帝国領に向かって進んでいるんだぜ?俺達は勝っているってことじゃないか?」
楽観的なライズが軽口を叩くが、それを黙って聞いているオックス達も同じ意見だ。
「敵の攻撃が思いのほか軽く、敵の数をすり減らすことができていません。そのうえで帝国領方面に追い込まれています」
ゼロは周囲を見渡した。
警戒に放っているスペクターからの報告が次々と届いてくる。
襲いかかってくる様子はないが、身軽な魔物達の部隊が周囲から近づいているうえに、魔王軍本隊がじわじわと接近しているらしい。
「4キロほど後方に待ち伏せをしやすい地形があるようです。そこまで後退しましょう」
9人は野営地を引き払って移動を開始した。
その頃、南方で連合軍と魔王軍が激闘を展開していた戦場では、連合軍が魔王軍を突破して帝国領への橋頭堡を確保し、後方に待機していた予備戦力と勇者達を帝国領に送り込むことに成功していた。
この後は攻撃部隊と予備部隊を入れ替え、イザベラ達連合騎士団が先頭に立ち帝国領内に展開している魔王軍を突破する役目を担い、攻撃から予備に回った連合軍が後方から援護しつつ勇者達を魔王城に送り込むのだ。
帝国領内に展開しているのは魔王ゴッセルの側近、魔人ハーレイ麾下の十万の戦力だが、広大な帝国領内に分散しているため、連合軍に差し向けられる戦力も限られていた。
しかし、イザベラ達連合軍はそのような事情を知る由もなく、数十万の敵を撃ち破る決意と覚悟をもって進撃している。
結果として敵を過大に見積もっていながらも士気旺盛のイザベラ達に勝機は十分にあるのだった。
連合軍と魔王軍の戦いは最終局面に入りつつあった。
帝国領に向かって後退を続けていたゼロ達だが、目的地の手前においてゼロは足を止めた。
「先回りされています」
先行させていたスペクターからの情報で敵を待ち伏せしようとしていた地点において逆にゼロ達を待ち受けている敵がいる。
「数は多くはないのですが、ダークエルフとゴブリンを中心とした部隊。先回りすることを優先しましたね。彼等は本隊が来るまで私達を足止めしておくことが任務でしょう。それならば・・・」
ゼロは決断した。
「もう少し時間稼ぎをしたかったのですが予定変更です!正面の敵を力ずくで突破して一気に帝国領まで突入します」
ゼロの言葉に全員が突撃に備えた。
「よし、俺達の出番だな。副連隊長とはいえ見ているだけでは鬱憤が溜まっちまう」
「ああ、俺も存在感を示さなくちゃな!」
オックスが戦鎚を構え、ライズが剣を抜く。
「私も遅れを取るわけにはいきません」
「小官の槍で道を切り開いてご覧にいれます」
イズが双剣を抜き、コルツが槍を構えた。
レナ、イリーナ、リリス、リズも準備万端のようだ。
それを見たゼロは自らも剣を抜き、更にオメガ、アルファ、サーベル、スピアの他にジャック・オー・ランタン10体を召喚した。
敵中突破を試みるためスピード重視の編成だ。
基本的にスケルトンは集団戦闘には長けている一方で機動力に欠けるが、スケルトンロードであるサーベルとスピアは熟練の上位冒険者並の動きを見せるために貴重な戦力として前衛に配置する。
「ここからは物音を立てずに敵に接近して奇襲を掛けます」
ゼロ達は息を潜め、足音を忍ばせて待ち伏せしている敵のギリギリまで接近した。
「敵を殲滅する必要はありません。立ち止まらずに一気に突破します」
ゼロの合図と共にオメガ、ジャック・オー・ランタンが先行し、サーベル、スピア、コルツを先頭にオックス、ライズ、イズが続いて駆け出した。
その後にゼロ達が続き、最後尾をアルファが守る。
ゼロ達を足止めすべく待ち伏せをしていたのはダークエルフとゴブリンが合わせて50体、ゼロ達が後退戦を繰り返している間に迂回して先回りしたのだろう。
彼等は山道を進んでくる敵をいかなる犠牲を払ってでも本隊が追いつくまで足止めしておくのが任務であり、その目的を達成できるならば真正面から戦う必要はないのだ。
そこで、道が広がり、周囲に遮蔽物が多い地形に潜んで待ち伏せして時間を稼ぐ筈だったのだが、彼等の目論見はいとも簡単に打ち崩された。
突如として来襲したアンデッドの攻撃に燻りだされたところにゼロ達の突撃を受けたのである。
「父と母の血を受けし竜人の名誉のために!我が角と牙が砕けようとも命ある限り戦う!」
先頭で槍を振るうコルツは連合軍に降った仲間の分まで戦うとの気概を持ち雄々しく突き進む。
コルツとスケルトンロードが穿った隙間をオックス、ライズ、イズがこじ開け、討ち漏らしをレナ達の魔法や弓矢で始末し、ゼロの剣が切り捨てる。
予想以上の強烈な攻撃を受けた魔王軍待ち伏せ部隊は一気に瓦解し、半数以上の犠牲を出したうえ、ゼロ達の足止めをすることも叶わず、いとも簡単に突破された。
ゼロ達が駆け抜けた後、ゴブリンは混乱から立ち直れずにいるが、ダークエルフ達は直ぐに追撃をしようとゼロ達の背中に向けて矢を射かけた。
だが、最後尾を駆けるアルファが振り向くと氷の壁を生み出し、飛来する矢を弾くと共に追撃の足を防ぐ。
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