167 / 196
ゼロの悪巧み
しおりを挟む
水鏡を通してゼロの宣戦布告を受けたベルベットは妖艶な笑みを浮かべた。
この情報は魔王ゴッセルにも届いている筈だ。
「宣戦布告・・・本当に面白い人。でも、魔王様にまで刃向かうなんて、身の程知らずも甚だしい。結構、挑発に乗ってあげる。私自ら迎え撃ってあげましょう」
ベルベットは自軍を等分し、連合軍の対処を副将に任せて自らは2万の軍勢を率いてゼロの迎撃に向かった。
その頃、ゼロ達は夜の闇に紛れて潜伏中の村を離れて再びその姿を眩ませた。
捕らえたダークエルフはメッセンジャーの役割を果たしてもらうために解放した。
当然ながらイズとリズの手によってゼロ達の足取りが辿れないように巧妙に秘匿操作をされたうえである。
「決戦まで2日、時間がありません。速やかに移動して戦場の優位な位置を確保しなくてはいけません」
決戦場と決めた国境線に向かう森の中で地図を広げて全員に説明する。
連合国と帝国の国境は王国と連合国の国境の山脈ほどではないが、山々の連なりに隔てられている。
そして、ゼロ達が向かうのは道などは整備されていないが、辛うじて山を抜けて帝国に向かうことができる地点。
魔王軍を突破できたら、又は魔王軍がゼロ達を無視したならばそこを通過して帝国領に進軍するつもりだ。
「場合によっては数万の大軍を相手にするとなると俺達が最前線に立つ機会は無いな。戦いはゼロのアンデッドを中心にして、俺達はアンデッドを指揮するゼロの護衛に徹するべきだ」
ライズの言葉に全員が頷く。
確かに大軍同士の衝突ではライズ達の個人的な強さは意味を呈さないのだ。
オックスは山の入口の荒野を指示した。
「敵が万単位の軍勢で来るのならば、この荒野に布陣するだろう。だとしたら、俺達は真正面に陣を張るのは危険だ」
レナもオックスに同意する。
「ゼロが万の兵を連れてこい、なんてハッタリかましたからたまったもんじゃないわ。こっちの総兵力の10倍以上じゃない。戦略やアンデッドの用兵はゼロに任せるとして、私達は戦場を見渡せる後方の丘を確保したいところね」
レナの意見に皆が同意するが、ゼロだけは不敵な笑みを浮かべながらも首を縦に振らない。
「どうしたんだ?」
そのゼロの様子を見てオックスが問いかける。
「いえ、ちょっと安心しました。皆さんの意見を聞いて私の考えが間違えていなかったことが分かりました。そのうえで、私の策を説明します」
ゼロの説明を聞いた全員が呆れ顔、白け顔、蔑んだ目でゼロを見た。
「ゼロ、いくらなんでもこれは無いんじゃない?バカに磨きが掛かってきたわよ?」
目を細めてゼロを睨むレナ。
「こりゃあ、魔人だかなんだか知らんが、魔王軍の将軍に叱られるぞ」
オックスも頭を抱える。
「ガキのイタズラみたいで面白いじゃねえか」
ライズは楽観的だ。
「ゼロが魔族に見えてきたわ」
「いえ、生粋の詐欺師よ」
呆れ顔のリリスとイリーナ。
「これは・・・こんな大それたこと、ダークエルフでも思いつかないぞ」
「戦いが終わったら私が矯正してあげないと・・・」
イズとリズが物騒なことを言う。
コルツは指を鼻先に当てて天を仰いでいる。
竜人のこの仕草は何を意味するのだろう?
「そんなに酷いですか?効率的かつ効果的な作戦だと思うのですが」
皆に軽蔑されてもゼロは意に介していない。
「そりゃそうだ。しかも、敵だってこんな馬鹿げた策は思いもよらんだろうな」
「確かに、敵の頭が良ければ良い程嵌まってくるかもしれないわね。そして策に嵌まれば僅かながらも勝機が見いだせるかもしれないわ」
呆れながらもオックスとレナはゼロの策を真剣に検討し、そしてゼロの策に乗ってみることにした。
どちらにしても隊長はゼロで、主力であるアンデッドを指揮するのもゼロなのだ。
「失敗は許されないし、失敗すれば即全滅に繋がるが、やってみる価値は大いにある。策に嵌まった時の敵将の顔が見てみたいもんだな。みんな、時間がない直ぐに行動を開始するぞ!」
オックスの言葉に全員が覚悟を決め、目的地に向けて移動を開始した。
「俺、ゼロと仲良くしていて良かった。敵に回したら絶対に太刀打ちできないわ・・・」
「バカなこと言ってないの!」
ライズの呟きを聞いたイリーナはライズの頭を小突いたが、内心はライズと同意見だった。
(あの日、ゼロに声を掛けなかったら、一緒に冒険に出なかったら私達はどうなっていたのかしら?ゼロとの縁が始まったあの日が私達の分岐点だったのね)
イリーナは自分の横を歩くライズの横顔とゼロの背中を交互に見比べた。
2日後、太陽が天頂に差し掛かるころ、軍の移動と展開を済ませたベルベットはゼロ達が現れるのを待ち受けていた。
総兵力2万、オークやトロル、リザードマンによる歩兵、ケンタウロスやダークエルフ、竜人による騎兵、その他に弓兵隊や魔導部隊による重厚な布陣がオックスの予測したとおり広い荒野に展開している。
「さあ、何時でもいらっしゃい。叩き潰してあげるわ」
ベルベットはゼロ達が到着するのを本陣でお茶を飲みながら待つ。
敵がどれ程の兵力で攻めて来ようとも真正面から受け止めて殲滅できる構えだった。
やがて西方から軍勢が接近して来る旨の報告を受ける。
「臆することなく来たわね。誉めてあげる」
敵軍接近の報告を受けてベルベットは立ち上がった。
近づいている敵軍は3千程。
スケルトン、スペクター、ウィル・オー・ザ・ウィスプの混合部隊だ。
「アンデッド・・・なる程。ゼロという男、ネクロマンサーだったわけね。ホント、面白いわ」
ベルベットは氷のような微笑みを浮かべた。
この情報は魔王ゴッセルにも届いている筈だ。
「宣戦布告・・・本当に面白い人。でも、魔王様にまで刃向かうなんて、身の程知らずも甚だしい。結構、挑発に乗ってあげる。私自ら迎え撃ってあげましょう」
ベルベットは自軍を等分し、連合軍の対処を副将に任せて自らは2万の軍勢を率いてゼロの迎撃に向かった。
その頃、ゼロ達は夜の闇に紛れて潜伏中の村を離れて再びその姿を眩ませた。
捕らえたダークエルフはメッセンジャーの役割を果たしてもらうために解放した。
当然ながらイズとリズの手によってゼロ達の足取りが辿れないように巧妙に秘匿操作をされたうえである。
「決戦まで2日、時間がありません。速やかに移動して戦場の優位な位置を確保しなくてはいけません」
決戦場と決めた国境線に向かう森の中で地図を広げて全員に説明する。
連合国と帝国の国境は王国と連合国の国境の山脈ほどではないが、山々の連なりに隔てられている。
そして、ゼロ達が向かうのは道などは整備されていないが、辛うじて山を抜けて帝国に向かうことができる地点。
魔王軍を突破できたら、又は魔王軍がゼロ達を無視したならばそこを通過して帝国領に進軍するつもりだ。
「場合によっては数万の大軍を相手にするとなると俺達が最前線に立つ機会は無いな。戦いはゼロのアンデッドを中心にして、俺達はアンデッドを指揮するゼロの護衛に徹するべきだ」
ライズの言葉に全員が頷く。
確かに大軍同士の衝突ではライズ達の個人的な強さは意味を呈さないのだ。
オックスは山の入口の荒野を指示した。
「敵が万単位の軍勢で来るのならば、この荒野に布陣するだろう。だとしたら、俺達は真正面に陣を張るのは危険だ」
レナもオックスに同意する。
「ゼロが万の兵を連れてこい、なんてハッタリかましたからたまったもんじゃないわ。こっちの総兵力の10倍以上じゃない。戦略やアンデッドの用兵はゼロに任せるとして、私達は戦場を見渡せる後方の丘を確保したいところね」
レナの意見に皆が同意するが、ゼロだけは不敵な笑みを浮かべながらも首を縦に振らない。
「どうしたんだ?」
そのゼロの様子を見てオックスが問いかける。
「いえ、ちょっと安心しました。皆さんの意見を聞いて私の考えが間違えていなかったことが分かりました。そのうえで、私の策を説明します」
ゼロの説明を聞いた全員が呆れ顔、白け顔、蔑んだ目でゼロを見た。
「ゼロ、いくらなんでもこれは無いんじゃない?バカに磨きが掛かってきたわよ?」
目を細めてゼロを睨むレナ。
「こりゃあ、魔人だかなんだか知らんが、魔王軍の将軍に叱られるぞ」
オックスも頭を抱える。
「ガキのイタズラみたいで面白いじゃねえか」
ライズは楽観的だ。
「ゼロが魔族に見えてきたわ」
「いえ、生粋の詐欺師よ」
呆れ顔のリリスとイリーナ。
「これは・・・こんな大それたこと、ダークエルフでも思いつかないぞ」
「戦いが終わったら私が矯正してあげないと・・・」
イズとリズが物騒なことを言う。
コルツは指を鼻先に当てて天を仰いでいる。
竜人のこの仕草は何を意味するのだろう?
「そんなに酷いですか?効率的かつ効果的な作戦だと思うのですが」
皆に軽蔑されてもゼロは意に介していない。
「そりゃそうだ。しかも、敵だってこんな馬鹿げた策は思いもよらんだろうな」
「確かに、敵の頭が良ければ良い程嵌まってくるかもしれないわね。そして策に嵌まれば僅かながらも勝機が見いだせるかもしれないわ」
呆れながらもオックスとレナはゼロの策を真剣に検討し、そしてゼロの策に乗ってみることにした。
どちらにしても隊長はゼロで、主力であるアンデッドを指揮するのもゼロなのだ。
「失敗は許されないし、失敗すれば即全滅に繋がるが、やってみる価値は大いにある。策に嵌まった時の敵将の顔が見てみたいもんだな。みんな、時間がない直ぐに行動を開始するぞ!」
オックスの言葉に全員が覚悟を決め、目的地に向けて移動を開始した。
「俺、ゼロと仲良くしていて良かった。敵に回したら絶対に太刀打ちできないわ・・・」
「バカなこと言ってないの!」
ライズの呟きを聞いたイリーナはライズの頭を小突いたが、内心はライズと同意見だった。
(あの日、ゼロに声を掛けなかったら、一緒に冒険に出なかったら私達はどうなっていたのかしら?ゼロとの縁が始まったあの日が私達の分岐点だったのね)
イリーナは自分の横を歩くライズの横顔とゼロの背中を交互に見比べた。
2日後、太陽が天頂に差し掛かるころ、軍の移動と展開を済ませたベルベットはゼロ達が現れるのを待ち受けていた。
総兵力2万、オークやトロル、リザードマンによる歩兵、ケンタウロスやダークエルフ、竜人による騎兵、その他に弓兵隊や魔導部隊による重厚な布陣がオックスの予測したとおり広い荒野に展開している。
「さあ、何時でもいらっしゃい。叩き潰してあげるわ」
ベルベットはゼロ達が到着するのを本陣でお茶を飲みながら待つ。
敵がどれ程の兵力で攻めて来ようとも真正面から受け止めて殲滅できる構えだった。
やがて西方から軍勢が接近して来る旨の報告を受ける。
「臆することなく来たわね。誉めてあげる」
敵軍接近の報告を受けてベルベットは立ち上がった。
近づいている敵軍は3千程。
スケルトン、スペクター、ウィル・オー・ザ・ウィスプの混合部隊だ。
「アンデッド・・・なる程。ゼロという男、ネクロマンサーだったわけね。ホント、面白いわ」
ベルベットは氷のような微笑みを浮かべた。
0
お気に入りに追加
286
あなたにおすすめの小説

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる