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宣戦布告
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「敵の偵察兵を捕まえてきてください」
潜伏中の屋敷でゼロはイズとリズを呼び出して下命した。
「偵察兵ですか?」
「はい、殲滅したダークエルフのように私達を探している者がいる筈です。それを1人、生きたまま連れてきて欲しいのです。2日以内に」
イズとリズは顔を見合わせた。
「それは造作もないことですが・・・」
「捕虜にでもするのですか?」
2人の問いにゼロは首を振った。
「違います。ちょっと頼み事がありますので、あまり痛めつけずにお願いします。それから、連行する際には私達の居場所を知られないように配慮してください」
「「おまかせ下さい」」
双子のシルバーエルフは部屋を出ていった。
「偵察兵ってそんなに簡単に捕まえられるものなの?」
横で話しを聞いていたレナは首を傾げた。
「普通は捕まりませんね。簡単に捕まるようでは偵察なんか務まりませんよ。ただ、あの2人ならば大丈夫です。あの兄妹は森を出てただ単に冒険者としての経験を積んだだけではありません。シルバーエルフとしてあらゆる状況に対応できるように自己を高めてきたんですよ」
「ゼロの役に立てるようにね」
悪戯っぽく笑うレナの言葉にゼロは苦笑した。
「それだけでは困るんですよね・・・」
ゼロはクロウが差し入れで持ってきた焼き菓子を口に放り込んだ。
翌日にはイズとリズは目的の敵兵を捕縛してきた。
意識を失っているのか、袋に入れられてイズの肩に担がれている敵兵は微動だにしない。
「ダークエルフの女です。単独行動をしていましたのである程度は上位の偵察兵だと思います」
聞けば、潜伏中の村から数キロ離れた軍の駐屯地跡を調べているところをリズが吹き矢で眠らせて捕まえたので怪我一つしていないとのことだ。
それでも一流の諜報員は意識を失ったふりをして周囲の音だけを頼りに情報を集めることもあるので細心の注意を払う。
捕まえたダークエルフは屋敷の地下にあった窓も無い部屋に連れ込み、その場にはゼロとレナとイズとリズしかいない。
袋から出されたダークエルフが意識を取り戻す前に手足を拘束し、咄嗟の自殺防止に猿ぐつわを噛ませる。
準備が整ったところでリズが覚醒の香を嗅がせた。
「・・・っ!!」
目を覚ましたダークエルフは驚愕の表情を見せるが直ぐに周囲を見回して自分の置かれた状況を把握しようとする。
間違いなく偵察兵のようだ。
ゼロは冷徹な目でダークエルフを見下ろした。
「荒々しいことをしたうえ、驚かせて申し訳ありません。最初に言っておきますが、貴女が余計な抵抗をしなければこれ以上危害を加えません」
簡単な説明をしたうえでゼロはリズに目配せして猿ぐつわを外させた。
「貴女に協力して欲しいことがあります。そのために用件が済んだら解放することを約束しますよ」
「・・・クッ、殺せ!」
「ああ、どこかで聞いたような台詞は結構です。その前に1つだけ質問させてください」
「私は何も答えない!」
ダークエルフは真っ直ぐにゼロを見据えた。
「尋問するわけではありませんよ。簡単な質問です。この状況下で貴女の視覚と聴覚の情報がそちらの主に届いているのか教えてください」
「?」
「上位の魔族は離れた場所にいる配下の視覚や聴覚の情報を得ることができる筈です。貴女は主にその情報を送っているのか?そのことを聞いているのです」
「・・・」
ダークエルフは答えない。
ただ、ゼロを観察する目、しきりに動くエルフ特有の長い耳がゼロの質問の答えが是であることを物語っているが、確証が欲しい。
「答えてくれませんか?そうでないと不本意ながら貴女の身体に聞くことになりますが?」
「・・・」
「仕方ありません」
ゼロは立ち上がってリズを見た。
「彼女の衣服を剥いでください。上半身だけで構いません」
ゼロの言葉に驚いたのはダークエルフの女ではなくその場にいたレナとリズだった。
ゼロがそんなことを言い出すなんて夢にも思っていなかったのだ。
戸惑いながらもリズは従ってダークエルフのボディスーツを胸元まではだけさせ、その豊かな胸が露わになる。
ゼロは表情を変えずに女の胸元を見た。
ダークエルフの女は恥辱に駆られて初めてゼロから視線を外した。
何故かレナとリズの視線が痛い。
ゼロはその視線に耐えながら女の首に魔導具のネックレスがあることを確認した。
装備した者の情報を伝達する魔導具だ。
「やはり、ちゃんと情報を送っていますね」
ゼロはリズに合図してダークエルフの衣服を整えさせ、用意しておいた椅子に座らせるとその正面に立った。
「もう既に見て、聞いているでしょうが、貴女の主、つまり連邦国方面軍の司令官にメッセージを伝えてもらいます」
ゼロは目の前に座るダークエルフの女を、延いてはその先にいる魔王軍の司令官を見据えた。
「魔王軍司令官に告げる!私の名はゼロ。貴官の配下の部隊や兵站を襲い、貴官が捜していた遊撃隊を率いている者です。貴官は今、この戦争の状況下において数万の軍勢を有して連合軍を待ち構えていることでしょうが、そうはさせません。私は今から3日後に貴官が軍を展開している国境線よりも北を進み、帝国領に、そして魔王の座する居城まで攻め込み、魔王の首を討ち取ります。まあ、当然に気付いているでしょうが、私の行動は連合軍本隊の陽動です。しかし、陽動だからといって無視できないことは今までの私の戦果を知っていれば理解できる筈です。それでも私を軽視するならば、私は本気で魔王の首を取りに出ます。私を止めたいならば軍をもって止めて見せなさい。ただ、千や二千の軍勢で私を止められるとは思わないでいただきたい。私を倒すならば万の軍勢を差し向けてきなさい。これは連合軍遊撃隊としてではなく、私自身から魔王ゴッセルと全ての魔王軍に対する宣戦布告です!」
ゼロは魔王と魔王軍に対して声高らかに宣戦布告した。
潜伏中の屋敷でゼロはイズとリズを呼び出して下命した。
「偵察兵ですか?」
「はい、殲滅したダークエルフのように私達を探している者がいる筈です。それを1人、生きたまま連れてきて欲しいのです。2日以内に」
イズとリズは顔を見合わせた。
「それは造作もないことですが・・・」
「捕虜にでもするのですか?」
2人の問いにゼロは首を振った。
「違います。ちょっと頼み事がありますので、あまり痛めつけずにお願いします。それから、連行する際には私達の居場所を知られないように配慮してください」
「「おまかせ下さい」」
双子のシルバーエルフは部屋を出ていった。
「偵察兵ってそんなに簡単に捕まえられるものなの?」
横で話しを聞いていたレナは首を傾げた。
「普通は捕まりませんね。簡単に捕まるようでは偵察なんか務まりませんよ。ただ、あの2人ならば大丈夫です。あの兄妹は森を出てただ単に冒険者としての経験を積んだだけではありません。シルバーエルフとしてあらゆる状況に対応できるように自己を高めてきたんですよ」
「ゼロの役に立てるようにね」
悪戯っぽく笑うレナの言葉にゼロは苦笑した。
「それだけでは困るんですよね・・・」
ゼロはクロウが差し入れで持ってきた焼き菓子を口に放り込んだ。
翌日にはイズとリズは目的の敵兵を捕縛してきた。
意識を失っているのか、袋に入れられてイズの肩に担がれている敵兵は微動だにしない。
「ダークエルフの女です。単独行動をしていましたのである程度は上位の偵察兵だと思います」
聞けば、潜伏中の村から数キロ離れた軍の駐屯地跡を調べているところをリズが吹き矢で眠らせて捕まえたので怪我一つしていないとのことだ。
それでも一流の諜報員は意識を失ったふりをして周囲の音だけを頼りに情報を集めることもあるので細心の注意を払う。
捕まえたダークエルフは屋敷の地下にあった窓も無い部屋に連れ込み、その場にはゼロとレナとイズとリズしかいない。
袋から出されたダークエルフが意識を取り戻す前に手足を拘束し、咄嗟の自殺防止に猿ぐつわを噛ませる。
準備が整ったところでリズが覚醒の香を嗅がせた。
「・・・っ!!」
目を覚ましたダークエルフは驚愕の表情を見せるが直ぐに周囲を見回して自分の置かれた状況を把握しようとする。
間違いなく偵察兵のようだ。
ゼロは冷徹な目でダークエルフを見下ろした。
「荒々しいことをしたうえ、驚かせて申し訳ありません。最初に言っておきますが、貴女が余計な抵抗をしなければこれ以上危害を加えません」
簡単な説明をしたうえでゼロはリズに目配せして猿ぐつわを外させた。
「貴女に協力して欲しいことがあります。そのために用件が済んだら解放することを約束しますよ」
「・・・クッ、殺せ!」
「ああ、どこかで聞いたような台詞は結構です。その前に1つだけ質問させてください」
「私は何も答えない!」
ダークエルフは真っ直ぐにゼロを見据えた。
「尋問するわけではありませんよ。簡単な質問です。この状況下で貴女の視覚と聴覚の情報がそちらの主に届いているのか教えてください」
「?」
「上位の魔族は離れた場所にいる配下の視覚や聴覚の情報を得ることができる筈です。貴女は主にその情報を送っているのか?そのことを聞いているのです」
「・・・」
ダークエルフは答えない。
ただ、ゼロを観察する目、しきりに動くエルフ特有の長い耳がゼロの質問の答えが是であることを物語っているが、確証が欲しい。
「答えてくれませんか?そうでないと不本意ながら貴女の身体に聞くことになりますが?」
「・・・」
「仕方ありません」
ゼロは立ち上がってリズを見た。
「彼女の衣服を剥いでください。上半身だけで構いません」
ゼロの言葉に驚いたのはダークエルフの女ではなくその場にいたレナとリズだった。
ゼロがそんなことを言い出すなんて夢にも思っていなかったのだ。
戸惑いながらもリズは従ってダークエルフのボディスーツを胸元まではだけさせ、その豊かな胸が露わになる。
ゼロは表情を変えずに女の胸元を見た。
ダークエルフの女は恥辱に駆られて初めてゼロから視線を外した。
何故かレナとリズの視線が痛い。
ゼロはその視線に耐えながら女の首に魔導具のネックレスがあることを確認した。
装備した者の情報を伝達する魔導具だ。
「やはり、ちゃんと情報を送っていますね」
ゼロはリズに合図してダークエルフの衣服を整えさせ、用意しておいた椅子に座らせるとその正面に立った。
「もう既に見て、聞いているでしょうが、貴女の主、つまり連邦国方面軍の司令官にメッセージを伝えてもらいます」
ゼロは目の前に座るダークエルフの女を、延いてはその先にいる魔王軍の司令官を見据えた。
「魔王軍司令官に告げる!私の名はゼロ。貴官の配下の部隊や兵站を襲い、貴官が捜していた遊撃隊を率いている者です。貴官は今、この戦争の状況下において数万の軍勢を有して連合軍を待ち構えていることでしょうが、そうはさせません。私は今から3日後に貴官が軍を展開している国境線よりも北を進み、帝国領に、そして魔王の座する居城まで攻め込み、魔王の首を討ち取ります。まあ、当然に気付いているでしょうが、私の行動は連合軍本隊の陽動です。しかし、陽動だからといって無視できないことは今までの私の戦果を知っていれば理解できる筈です。それでも私を軽視するならば、私は本気で魔王の首を取りに出ます。私を止めたいならば軍をもって止めて見せなさい。ただ、千や二千の軍勢で私を止められるとは思わないでいただきたい。私を倒すならば万の軍勢を差し向けてきなさい。これは連合軍遊撃隊としてではなく、私自身から魔王ゴッセルと全ての魔王軍に対する宣戦布告です!」
ゼロは魔王と魔王軍に対して声高らかに宣戦布告した。
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