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捕らわれた人々を救え5
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馬車の車列は南に向かって進んでいた。
しかし、護衛のオックス達や馬車に乗りきれない者達が徒歩で帯同するため、必然的にその歩みは遅い上に列は長くなってしまう。
その列の更に後方にゼロとイズ、リズの兄妹とオメガ、アルファが続く。
また、周囲にはスペクターを巡回させて警戒に当たらせている。
今のところは直接の護衛にはアンデッドを投入していないが、いざとなれば即座に召喚して対応できる備えだ。
「今のところ周辺に魔王軍の姿はありません。野良の魔物がうろついていますが、周辺警戒のスペクターで問題なく対処できます」
アルファの報告にゼロは無言で頷くが、その表情は険しい。
「ゼロ様、何か懸念があるのですか?」
ゼロの表情にイズが気付いた。
「問題は山積みですよ。守るべき人々の多さ、敵の支配地域の真っ只中の強行軍、アンデッド抜きでは圧倒的に少ない戦力・・・」
そこにリズが口を挟む。
「でも、ゼロ様のアンデッドがいれば問題ありませんよね?」
しかし、ゼロは渋い顔だ。
「そうは言っても、ここは曲がりなりにも魔王軍の支配地域ですからね。もしも・・・いや、止めましょう。私の悪いことを考えると何故かその方向に事態が流れてしまいますから」
「「余計な心配は止めましょう!」」
イズとリズは顔を見合わせて声を揃えた。
移送初日は大きな戦闘も起きずにやり過ごすことができた。
夜になり夜営をすることになったが、例によって周辺警戒はアンデッドに任せる。
更にオメガを南に飛ばして山道出口に王国軍がいるか否かを確認に向かわせた。
仮に王国軍がいたならばゼロが託した手紙により人身売買の被害者を移送中であることを通知する予定である。
アンデッドの運んだ手紙だが、王国軍と別に遊撃隊として行動するに当たりゼロは他の部隊との通信連絡に使用するために軍務省役人から王国軍の公用通信用紙を入手していたので問題はないはずだ。
皆が寝静まった夜営地から離れた場所でゼロとオックス、レナは明日以降の進路について考えていた。
「明日も真っ直ぐに南に向かうのではないのか?」
「いえ、少し西寄りに進路を取ろうと思います。このまま南進すると連邦国軍駐屯地の跡地の近くを通過するはめになります。駐屯地といっても練兵場を兼ねた小規模なものですが、現状が分からない以上はあまり近づきたくありませんからね。少し迂回しましょう」
「あまり負担をかけたくないけど仕方ないわね」
「うむ。ゼロがそう言うならばその方がいいだろう」
オックスとレナも同意し、2人は夜営地に戻って行った。
明朝の出発までにはオックスを通じてライズ達に伝えることになるだろう。
2人が去った後でゼロは満天の星空を見上げた。
「明日は晴れそうですね・・・」
ゼロの目は普段の星空を見上げている時のそれとは違っていた。
結局、敵の襲撃を受けることなく朝を迎えることができ、車列は夜営地を出発して西向きに進路を取りながら南に向かった。
伝令に出たオメガは夜明け前にはゼロの下に戻ってきていた。
オメガの報告によれば王国軍と連邦国軍の残存兵は山道を抜けて連邦国側の砦を奪還しているとのことで、その部隊の指揮官の1人のイザベラに通信文を渡したとのことだ。
「かの聖騎士は移送中の人々を保護するために部隊の一部をこちらに向かわせるとのことでした」
「それは助かりますね」
オメガの報告を聞いたゼロは王国軍との合流点を予測した。
「早ければ明朝、遅くとも明日の夕刻ですか。それまで何事もなく済めばいいのですが・・・」
ゼロは周辺警戒のスペクターを増強すると共にオメガには車列よりも先行して警戒に当たるように指示をした。
「アルファはスペクターからの情報を集約してください」
「畏まりました」
昨日に比べると過剰なまでの警戒体制を敷いたが、それが功を奏したのか敵や野良の魔物との接触を避けながら進むことができた。
様子が変わったのは太陽が天頂を越えたころである。
「主様、敵の哨戒網に引っかかったようです。30程がこちらに向かっています。主様が懸念したとおりです」
「分かりました」
アルファの報告を聞いたゼロは走り始め、先を進む車列に追いついた。
「敵が接近しています。馬車は密集して待機!」
ゼロは列を作っていた馬車を集めて密集させた。
直ぐに大量のスケルトンウォリアーを召喚したが、その全てが大盾装備の個体で同じく大盾を装備したスケルトンロードのシールドに指揮をさせる。
スケルトンウォリアー達は大盾を幾重にも重ねて馬車の守りを固める。
更に徒歩の人々を守るために大盾をドーム状に重ねてその中に人々を避難させた。
「ゼロ、守りだけ固めて一体どうしたんだ?」
剣を抜いて周囲を見回しているライズが首を傾げる。
他の皆も同様だ、ゼロが召喚したスケルトンウォリアーは全て大盾装備、辛うじてスケルトンロードのシールドと数体のスケルトンナイトが大盾の他に片手剣を装備しているが、陣形の組み方を見ても攻撃を仕掛けようとしているようには見えない。
「スケルトンでは戦いになりません!敵は空から来ます」
ゼロが指差したのは南東方向の空、そこにはまだ距離が遠いものの多数の影がこちらに向かっているのが分かる。
隊員の4人のエルフの中でも一番に遠目の利くリリスがいち早く敵の正体を把握して驚愕の表情を見せた。
「ドラグーン・・・竜騎兵」
近づいて来る敵は飛竜であるワイバーンを操る魔王軍の竜騎兵が30体だった。
「対空防御!レナさん、リリスさん、イリーナさん、リズさんは対空戦闘に備えてください。・・・やはり私の悪い予感は当たってしまいますね」
ゼロは指示を出しながらも1人呟いた。
しかし、護衛のオックス達や馬車に乗りきれない者達が徒歩で帯同するため、必然的にその歩みは遅い上に列は長くなってしまう。
その列の更に後方にゼロとイズ、リズの兄妹とオメガ、アルファが続く。
また、周囲にはスペクターを巡回させて警戒に当たらせている。
今のところは直接の護衛にはアンデッドを投入していないが、いざとなれば即座に召喚して対応できる備えだ。
「今のところ周辺に魔王軍の姿はありません。野良の魔物がうろついていますが、周辺警戒のスペクターで問題なく対処できます」
アルファの報告にゼロは無言で頷くが、その表情は険しい。
「ゼロ様、何か懸念があるのですか?」
ゼロの表情にイズが気付いた。
「問題は山積みですよ。守るべき人々の多さ、敵の支配地域の真っ只中の強行軍、アンデッド抜きでは圧倒的に少ない戦力・・・」
そこにリズが口を挟む。
「でも、ゼロ様のアンデッドがいれば問題ありませんよね?」
しかし、ゼロは渋い顔だ。
「そうは言っても、ここは曲がりなりにも魔王軍の支配地域ですからね。もしも・・・いや、止めましょう。私の悪いことを考えると何故かその方向に事態が流れてしまいますから」
「「余計な心配は止めましょう!」」
イズとリズは顔を見合わせて声を揃えた。
移送初日は大きな戦闘も起きずにやり過ごすことができた。
夜になり夜営をすることになったが、例によって周辺警戒はアンデッドに任せる。
更にオメガを南に飛ばして山道出口に王国軍がいるか否かを確認に向かわせた。
仮に王国軍がいたならばゼロが託した手紙により人身売買の被害者を移送中であることを通知する予定である。
アンデッドの運んだ手紙だが、王国軍と別に遊撃隊として行動するに当たりゼロは他の部隊との通信連絡に使用するために軍務省役人から王国軍の公用通信用紙を入手していたので問題はないはずだ。
皆が寝静まった夜営地から離れた場所でゼロとオックス、レナは明日以降の進路について考えていた。
「明日も真っ直ぐに南に向かうのではないのか?」
「いえ、少し西寄りに進路を取ろうと思います。このまま南進すると連邦国軍駐屯地の跡地の近くを通過するはめになります。駐屯地といっても練兵場を兼ねた小規模なものですが、現状が分からない以上はあまり近づきたくありませんからね。少し迂回しましょう」
「あまり負担をかけたくないけど仕方ないわね」
「うむ。ゼロがそう言うならばその方がいいだろう」
オックスとレナも同意し、2人は夜営地に戻って行った。
明朝の出発までにはオックスを通じてライズ達に伝えることになるだろう。
2人が去った後でゼロは満天の星空を見上げた。
「明日は晴れそうですね・・・」
ゼロの目は普段の星空を見上げている時のそれとは違っていた。
結局、敵の襲撃を受けることなく朝を迎えることができ、車列は夜営地を出発して西向きに進路を取りながら南に向かった。
伝令に出たオメガは夜明け前にはゼロの下に戻ってきていた。
オメガの報告によれば王国軍と連邦国軍の残存兵は山道を抜けて連邦国側の砦を奪還しているとのことで、その部隊の指揮官の1人のイザベラに通信文を渡したとのことだ。
「かの聖騎士は移送中の人々を保護するために部隊の一部をこちらに向かわせるとのことでした」
「それは助かりますね」
オメガの報告を聞いたゼロは王国軍との合流点を予測した。
「早ければ明朝、遅くとも明日の夕刻ですか。それまで何事もなく済めばいいのですが・・・」
ゼロは周辺警戒のスペクターを増強すると共にオメガには車列よりも先行して警戒に当たるように指示をした。
「アルファはスペクターからの情報を集約してください」
「畏まりました」
昨日に比べると過剰なまでの警戒体制を敷いたが、それが功を奏したのか敵や野良の魔物との接触を避けながら進むことができた。
様子が変わったのは太陽が天頂を越えたころである。
「主様、敵の哨戒網に引っかかったようです。30程がこちらに向かっています。主様が懸念したとおりです」
「分かりました」
アルファの報告を聞いたゼロは走り始め、先を進む車列に追いついた。
「敵が接近しています。馬車は密集して待機!」
ゼロは列を作っていた馬車を集めて密集させた。
直ぐに大量のスケルトンウォリアーを召喚したが、その全てが大盾装備の個体で同じく大盾を装備したスケルトンロードのシールドに指揮をさせる。
スケルトンウォリアー達は大盾を幾重にも重ねて馬車の守りを固める。
更に徒歩の人々を守るために大盾をドーム状に重ねてその中に人々を避難させた。
「ゼロ、守りだけ固めて一体どうしたんだ?」
剣を抜いて周囲を見回しているライズが首を傾げる。
他の皆も同様だ、ゼロが召喚したスケルトンウォリアーは全て大盾装備、辛うじてスケルトンロードのシールドと数体のスケルトンナイトが大盾の他に片手剣を装備しているが、陣形の組み方を見ても攻撃を仕掛けようとしているようには見えない。
「スケルトンでは戦いになりません!敵は空から来ます」
ゼロが指差したのは南東方向の空、そこにはまだ距離が遠いものの多数の影がこちらに向かっているのが分かる。
隊員の4人のエルフの中でも一番に遠目の利くリリスがいち早く敵の正体を把握して驚愕の表情を見せた。
「ドラグーン・・・竜騎兵」
近づいて来る敵は飛竜であるワイバーンを操る魔王軍の竜騎兵が30体だった。
「対空防御!レナさん、リリスさん、イリーナさん、リズさんは対空戦闘に備えてください。・・・やはり私の悪い予感は当たってしまいますね」
ゼロは指示を出しながらも1人呟いた。
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