職業選択の自由~ネクロマンサーを選択した男~

新米少尉

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ゼロ連隊出動

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 ゼロ達はそのまま会議室で今後の方針について話し合うことになった。
 その話し合いの前に例によってゼロに対するレナのお説教タイムがあったが、時間に余裕がないということで半刻程で切り上げられ、残りは後でということになった。
 決して終わったわけではない。

 その後、連隊運用上の役職を決めることになったのだが、正式な隊員が連隊長以下8人しかいない連隊であり、役職といっても暫定的であった。
 先ず、主戦力となるのはアンデッドであり、小隊長、中隊長、大隊長の部隊指揮官はそれぞれ上位アンデッドが務めるので必要ない。
 そこで暫定的にゼロの都合と必要に応じて連隊を預かる副連隊長とゼロに付き従い助言をする副官の2つの職を決めることになった。
 先ずは連隊副官だが、それが当然の如く、あっさりとレナに決まった。
 特にレナが

「私が止めないとゼロはどこまでも無茶をするから、その時には私が魔法で力ずくで止める」

と言い張り、ゼロを止められるのはレナしかいないし、連隊長に助言をするという冷静な思考を求められる点からも魔導師のレナが適任であった。
 因みに、副官の人事に関しては連隊長が意見や希望を述べる機会は一切与えられなかった。
 次に副連隊長を決めることになったのだが、こちらは誰も引き受けようとしなかったため、難航した。

 イズ、リズ兄妹は

「「私達はこの中では格下なので引き受けるわけにはいきません」」

と言って固辞した。
 ライズは

「冷静な判断力が無い俺に指揮官が務まるワケがねえよ。一兵卒として戦わせてもらうぜ」

とハナから引き受けるつもりはない。
 オックスは

「俺も大ざっぱな性格だからな」

と難色を示す。
 イリーナとリリスは

「「後衛職の私達は指揮官に向いていないわ」」

と口を揃える。
 ここにきて初めて連隊長に意見を求められた。
 ゼロは全員を見渡し、オックスを見た。

「オックスさんは確か森の都市の冒険者の顔役のような立場でしたよね?副連隊長はオックスさんに頼みます」
「俺か?指揮官なんて柄じゃない!」
「いえ、そんな大層なもんじゃありません。私が部隊運用に集中している時にここにいる皆さんの取りまとめをしてもらえればいいんです。あと、私に何かあった時にも私を置いて皆さんを連れて脱出してもらえればいいんです」

 ゼロの脇腹をレナが小突く。

「まあ、最後のはともかくその程度なら」

 オックスは腕組みして考える。

「引き受けなさい、オックス。ゼロにばかり負担を掛けられないでしょ?」

 リリスがオックスの肩を叩く。

「オックスさんが引き受けてくれると助かるわ。ライズにはとても無理だし」

 イリーナが半ば諦めの目でライズを見る。

「まあ、そう言うなよ。俺は戦闘の方で役に立つからよ」

 ライズは脳天気に笑った。
 オックスは頷いた。

「よし、引き受けよう!大したことはできないがな」

 こうしてゼロ連隊の編成が決まった。
 連隊長ゼロ、副連隊長オックス、連隊副官レナ、連隊付ライズ、イリーナ、リリス、イズ、リズだ。
 連隊付は戦闘にも加わるが、連隊長の護衛やバックアップが主な任務だ。
 実戦部隊はゼロのアンデッドで、戦場や戦況に応じて編成を変える。
 集団戦闘、乱戦、遠距離攻撃、魔法戦闘が可能で攻撃戦、防御戦、遊撃戦、奇襲戦に柔軟に対応できる。
 そして何よりもたった8人、正確にはゼロ1人が移動するだけで一個連隊が移動して自由に行動し、それでいて8人分の糧秣しか必要としないのだ。
 味方にいれば非常に役に立つ存在であり、敵にいれば厄介で恐ろしい存在である。

「で、どうするんだ?直ぐにでも山道を抜けるか?魔王軍の残党がいるかもしれんが、問題はないだろう?」

 オックスが今後の行動を確認する。
 ゼロは首を振った。

「山道は通りません。私達はいずれ魔王軍に目を付けられるでしょうが、今はまだ目立ちたくありません。一度北に戻り北の砦から雪山を抜けて東の連邦に向かいましょう」
「北の雪山か・・・少しばかりキツいな」

 ゼロの提案にライズが難色を示す。

「確かに困難です。私も魔王軍の背後を取るために義勇軍の人達と雪山に入りましたが、凍死者をはじめ、幾人かの犠牲を出してしまいました。まあ、あの時は作戦を強行して準備が足りませんでしたからね。今回はしっかりと準備して、物資はアンデッドに運ばせましょう。それに経験豊富な皆さんならば大丈夫でしょう?」

 ゼロは全員を見回す。
 オックスが肩を竦めた。

「確かに、俺達ならば無理ではないな」

 リリスも頷き、イリーナもライズを見て笑う。

「ほら、文句言ってるとゼロについて来なくていい、って言われるわよ」
「いや、俺は別に文句なんて言ってねえよ。ちっとばかしキツいって・・・そうだ!慎重論だよ、慎重論!」
「貴方に慎重な思考なんてないでしょ?新しい言葉を覚えたからって無理して使わなくていいのよ」
「イリーナ、そりゃひでえよ」

 肩を落とすライズの姿に全員が笑った。

 その夜、準備を整えたゼロ達は物資を背負った10体のスケルトンと共に北に向かって旅立ち、数日後には北の砦を通過して雪山に分け入っていった。
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