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死者達の行軍
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魔王軍の背後を取ったゼロ達がここに至る行程は困難に次ぐ困難の連続だった。
北の砦攻防戦でも魔王軍の背後を取ったゼロはアンデッドを従えて突撃を仕掛けた。
スケルトンロード、スケルトンナイトが指揮するスケルトンウォリアーの部隊を中心とした主力をスペクター、ジャック・オー・ランタンとウィル・オー・ザ・ウィスプが援護する。
共に突撃するゼロをオメガとバンシーが守る。
魔王軍の背後から突撃するゼロ達に呼応して砦から国境警備隊と囚人部隊が打って出て魔王軍に対して挟撃戦を展開し、その結果、多大なる犠牲を払いながらも魔王軍を殲滅し、北の砦の防衛に成功した。
砦攻防戦で勝利したゼロは北の砦の守りをミラーやマイルズに任せて魔王軍主力が攻め寄せる山道出口の砦の援護に向かうと言い出した。
ゼロは1人で向かうつもりだったが、リンツ達囚人部隊が同行を強く希望し、ゼロが拒否するのも聞かずについて来てしまったのだ。
雪山で凍死する者や崖に落ちる者等を出しながらも道無き山を踏破し、山道にまで南下した。
そこでリンツ達が目の当たりにしたのは、ネクロマンサー1人に行動の自由を許すことは戦場を大隊から連隊、果ては師団規模の軍団が戦場を自由に行動するのと同じであるというゼロの言葉どおり、増援に向かう魔王軍に側面からの奇襲攻撃を仕掛け、大混乱に追い込まれた魔王軍の有り様だった。
完全なる奇襲に成功したものの、魔王軍の抵抗も激しく、乱戦に陥って更なる戦死者を出しながらも魔王軍増援部隊を全滅に至らしめて山道出口にアンデッド部隊を展開することに成功したのだ。
魔王軍の背後を取ったゼロは迫り来る魔王軍の数と勢いを見極めて表情を固くした。
「敵の勢いがありますね」
ゼロの前にはスケルトンの防御陣形が左右に展開している。
盾を上下2段に揃え、槍を構えて微動だにしない鉄壁の構えだ。
その防御陣形から少し後方に離れた状況を見極められる位置にゼロ達は待機している。
「さて、砦はどう出ますか?」
魔王軍との衝突まであと僅か、ゼロは砦の様子を窺っていた。
砦の防壁の上でその状況を見ていたレナの表情は凍りついた。
「駄目だわ、あのままでは・・・」
その言葉を聞いた周りの者がレナを見た。
「どういうことだ?」
オックスが言葉の真意を問う。
「あのままではゼロ達は魔王軍に突き崩されてしまいます!」
「何?」
「アンデッド達の一糸乱れぬ様子から強固な防御陣に見えますが、あれを構成しているのはスケルトンです。敵の動揺を誘うためか、下位アンデッドで数だけを揃えているんです」
レナは防壁の下に駆け降り、その後にイズ、リズとオックスが続く。
防壁内に待機していた聖騎士団のイザベラとアランに駆け寄るとその事情を説明した。
「なんて無茶をしなさるの、あのお馬鹿ネクロマンサーは!」
レナの説明を聞いたイザベラは呆れ顔だ。
アランは直ぐに指揮を取る第2軍団長を呼んだ。
「数で劣る我々が魔王軍に勝利するのは今しかない!騎士団と我々聖騎士団を突撃させてあのネクロマンサーと連携して敵を挟み撃ちにするのだ!」
打って出ることを進言するアランの意見に第2軍団長は徹底防戦を主張したが、聖騎士団だけでも突撃するとのアランとイザベラの決意に第1騎士団の騎士達も奮起し、騎士団による突撃が決定された。
その頃、タリクの軍団数千とゼロのアンデッド部隊が衝突した。
先頭を切って突進したオーク達がスケルトンが構える盾の防壁に衝突し、数百のオークが構えられた槍に串刺しにされた。
しかし、魔王軍に打撃を与えたのはこれだけで、魔王軍の突撃を受け止めきれずにスケルトンの陣形は一気に崩壊し、魔王軍に蹂躙された。
「やっぱり下位アンデッドのスケルトンでは歯が立ちませんね」
戦線の崩壊を見たゼロは立て直しは行わずにスケルトンの全てを返した。
「なんだ?敵が消えた?」
数千の軍勢が忽然と消え果て、意表を突かれたタリクやその配下の魔物達が一時的に動きを止めた。
しかし、直ぐにゼロ達の姿を認めると、その数の少なさを見るや再突撃を仕掛けてくる。
「はったりだ!残りの奴らを八つ裂きにしろ!」
元々冷静さに欠けるタリクは怒りの収まらないまま攻撃を続行すべく部隊を進める。
それを見たリンツ達はそれぞれの武器を構えた。
その一方でゼロは敵の前に再びスケルトン達を召喚した。
数百のスケルトンが再び盾を揃え、槍衾を構えて扇状に防御陣形を構築した。
「さっきよりも少数だ!何の脅威にもならねえ!一気に突き崩せ!」
タリクの号令に魔物達は武器を振りかざしてスケルトンの陣形に殺到した。
双方が衝突する直前、スケルトン達は盾の構えを解き、槍を翳して逆突撃に転じた。
衝突する両軍、今度はスケルトン達も押し負けていない。
魔物の先頭集団を貫き、その足を押し止めた。
更に盾を構え直して魔物達を押し戻しながら盾の隙間から槍や剣で次々と魔物達を打ち倒していく。
最初に衝突したスケルトンとは段違いの猛攻だが、それもその筈である。
2度目にゼロが召喚したのは数こそは少ないが数十体のスケルトンナイトが混ざったスケルトンウォリアーを中心とした強力なアンデッド達で、さらにそれをスケルトンロードが指揮しているのだ。
「実と見せて虚、虚と見せて実!策略の基本です」
ゼロは更にジャック・オー・ランタンを召喚して敵軍の最中に踊り込ませて火炎攻撃で翻弄した。
「クソッ!体勢を立て直せ!一時後退だ!」
逆に崩壊を始めた自分の軍団を立て直すべくタリクは後退を命じた。
その有り様を見たゴルグはタリクの軍団との連携を諦めた。
「タリクは何をしているか!最早二正面作戦は駄目だな。我が軍団は砦を落とす!全軍突げ・ッ!」
ゴルグがタリクの思わぬ劣勢に気を取られ、突撃を命じる前に砦の上から弓矢による攻撃が浴びせかけられた。
更に占拠している第1防壁にも魔法による攻撃が加えられる。
先手を打たれたゴルグの軍団はその対応に僅かな隙が生じた。
イザベラ達はその隙を逃すほど愚かではない。
第2防壁の扉を開け放ち、第1騎士団の残存兵力と聖騎士団が突撃を開始した。
鋒矢の陣形で突撃を開始した騎士団はゴルグの軍団の先行部隊の中心を貫いて第1防壁の扉を突破、砦の外に躍り出た。
ゼロのアンデッド達はタリクの軍団に対して反撃の隙を与えずに猛攻を続けていた。
その後方で指揮を執っていたゼロは砦から飛び出してきた騎士団の姿を見た。
「砦の守備隊が動いてくれました。我々も前進を続けましょう」
「よし!野郎共、前進だ!」
男達は再び戦歌を歌いながら前進を開始した。
ゼロとアンデッド達、囚人部隊はタリクに対する攻勢を強める。
死者達の行軍が始まった。
北の砦攻防戦でも魔王軍の背後を取ったゼロはアンデッドを従えて突撃を仕掛けた。
スケルトンロード、スケルトンナイトが指揮するスケルトンウォリアーの部隊を中心とした主力をスペクター、ジャック・オー・ランタンとウィル・オー・ザ・ウィスプが援護する。
共に突撃するゼロをオメガとバンシーが守る。
魔王軍の背後から突撃するゼロ達に呼応して砦から国境警備隊と囚人部隊が打って出て魔王軍に対して挟撃戦を展開し、その結果、多大なる犠牲を払いながらも魔王軍を殲滅し、北の砦の防衛に成功した。
砦攻防戦で勝利したゼロは北の砦の守りをミラーやマイルズに任せて魔王軍主力が攻め寄せる山道出口の砦の援護に向かうと言い出した。
ゼロは1人で向かうつもりだったが、リンツ達囚人部隊が同行を強く希望し、ゼロが拒否するのも聞かずについて来てしまったのだ。
雪山で凍死する者や崖に落ちる者等を出しながらも道無き山を踏破し、山道にまで南下した。
そこでリンツ達が目の当たりにしたのは、ネクロマンサー1人に行動の自由を許すことは戦場を大隊から連隊、果ては師団規模の軍団が戦場を自由に行動するのと同じであるというゼロの言葉どおり、増援に向かう魔王軍に側面からの奇襲攻撃を仕掛け、大混乱に追い込まれた魔王軍の有り様だった。
完全なる奇襲に成功したものの、魔王軍の抵抗も激しく、乱戦に陥って更なる戦死者を出しながらも魔王軍増援部隊を全滅に至らしめて山道出口にアンデッド部隊を展開することに成功したのだ。
魔王軍の背後を取ったゼロは迫り来る魔王軍の数と勢いを見極めて表情を固くした。
「敵の勢いがありますね」
ゼロの前にはスケルトンの防御陣形が左右に展開している。
盾を上下2段に揃え、槍を構えて微動だにしない鉄壁の構えだ。
その防御陣形から少し後方に離れた状況を見極められる位置にゼロ達は待機している。
「さて、砦はどう出ますか?」
魔王軍との衝突まであと僅か、ゼロは砦の様子を窺っていた。
砦の防壁の上でその状況を見ていたレナの表情は凍りついた。
「駄目だわ、あのままでは・・・」
その言葉を聞いた周りの者がレナを見た。
「どういうことだ?」
オックスが言葉の真意を問う。
「あのままではゼロ達は魔王軍に突き崩されてしまいます!」
「何?」
「アンデッド達の一糸乱れぬ様子から強固な防御陣に見えますが、あれを構成しているのはスケルトンです。敵の動揺を誘うためか、下位アンデッドで数だけを揃えているんです」
レナは防壁の下に駆け降り、その後にイズ、リズとオックスが続く。
防壁内に待機していた聖騎士団のイザベラとアランに駆け寄るとその事情を説明した。
「なんて無茶をしなさるの、あのお馬鹿ネクロマンサーは!」
レナの説明を聞いたイザベラは呆れ顔だ。
アランは直ぐに指揮を取る第2軍団長を呼んだ。
「数で劣る我々が魔王軍に勝利するのは今しかない!騎士団と我々聖騎士団を突撃させてあのネクロマンサーと連携して敵を挟み撃ちにするのだ!」
打って出ることを進言するアランの意見に第2軍団長は徹底防戦を主張したが、聖騎士団だけでも突撃するとのアランとイザベラの決意に第1騎士団の騎士達も奮起し、騎士団による突撃が決定された。
その頃、タリクの軍団数千とゼロのアンデッド部隊が衝突した。
先頭を切って突進したオーク達がスケルトンが構える盾の防壁に衝突し、数百のオークが構えられた槍に串刺しにされた。
しかし、魔王軍に打撃を与えたのはこれだけで、魔王軍の突撃を受け止めきれずにスケルトンの陣形は一気に崩壊し、魔王軍に蹂躙された。
「やっぱり下位アンデッドのスケルトンでは歯が立ちませんね」
戦線の崩壊を見たゼロは立て直しは行わずにスケルトンの全てを返した。
「なんだ?敵が消えた?」
数千の軍勢が忽然と消え果て、意表を突かれたタリクやその配下の魔物達が一時的に動きを止めた。
しかし、直ぐにゼロ達の姿を認めると、その数の少なさを見るや再突撃を仕掛けてくる。
「はったりだ!残りの奴らを八つ裂きにしろ!」
元々冷静さに欠けるタリクは怒りの収まらないまま攻撃を続行すべく部隊を進める。
それを見たリンツ達はそれぞれの武器を構えた。
その一方でゼロは敵の前に再びスケルトン達を召喚した。
数百のスケルトンが再び盾を揃え、槍衾を構えて扇状に防御陣形を構築した。
「さっきよりも少数だ!何の脅威にもならねえ!一気に突き崩せ!」
タリクの号令に魔物達は武器を振りかざしてスケルトンの陣形に殺到した。
双方が衝突する直前、スケルトン達は盾の構えを解き、槍を翳して逆突撃に転じた。
衝突する両軍、今度はスケルトン達も押し負けていない。
魔物の先頭集団を貫き、その足を押し止めた。
更に盾を構え直して魔物達を押し戻しながら盾の隙間から槍や剣で次々と魔物達を打ち倒していく。
最初に衝突したスケルトンとは段違いの猛攻だが、それもその筈である。
2度目にゼロが召喚したのは数こそは少ないが数十体のスケルトンナイトが混ざったスケルトンウォリアーを中心とした強力なアンデッド達で、さらにそれをスケルトンロードが指揮しているのだ。
「実と見せて虚、虚と見せて実!策略の基本です」
ゼロは更にジャック・オー・ランタンを召喚して敵軍の最中に踊り込ませて火炎攻撃で翻弄した。
「クソッ!体勢を立て直せ!一時後退だ!」
逆に崩壊を始めた自分の軍団を立て直すべくタリクは後退を命じた。
その有り様を見たゴルグはタリクの軍団との連携を諦めた。
「タリクは何をしているか!最早二正面作戦は駄目だな。我が軍団は砦を落とす!全軍突げ・ッ!」
ゴルグがタリクの思わぬ劣勢に気を取られ、突撃を命じる前に砦の上から弓矢による攻撃が浴びせかけられた。
更に占拠している第1防壁にも魔法による攻撃が加えられる。
先手を打たれたゴルグの軍団はその対応に僅かな隙が生じた。
イザベラ達はその隙を逃すほど愚かではない。
第2防壁の扉を開け放ち、第1騎士団の残存兵力と聖騎士団が突撃を開始した。
鋒矢の陣形で突撃を開始した騎士団はゴルグの軍団の先行部隊の中心を貫いて第1防壁の扉を突破、砦の外に躍り出た。
ゼロのアンデッド達はタリクの軍団に対して反撃の隙を与えずに猛攻を続けていた。
その後方で指揮を執っていたゼロは砦から飛び出してきた騎士団の姿を見た。
「砦の守備隊が動いてくれました。我々も前進を続けましょう」
「よし!野郎共、前進だ!」
男達は再び戦歌を歌いながら前進を開始した。
ゼロとアンデッド達、囚人部隊はタリクに対する攻勢を強める。
死者達の行軍が始まった。
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