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没落貴族の葬送3
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ノリス・クロウシスの遺体は彼の寝室に安置されていた。
寝室に立ち入ったゼロは真っ先に室内に死霊の気配があるかどうか検索した。
もしもノリスの魂が肉体から離れてしまっていたならば、それは亡霊等のアンデッドとしてゼロの検知に引っかかるはずだ。
肉体に魂が残っているならば、未だアンデッド化していないので魂を清めることができる。
仮にノリスの魂が霊になって彷徨っていたらゼロは強硬手段に出て、ノリスの霊を捕らえてシーグル教の総本山に連れて行くことも考えたが、幸いにしてノリスの魂は未だに肉体に留まっているようだ。
次いで遺体を検分したが、致命傷は心臓にまで達している4つの刺し傷だ。
「これは、爪の痕ですか?長い爪で貫かれたようですね」
ゼロは傷痕を確認したが、ゼロと共に遺体を検分したレナの鑑定でノリスの傷には呪い等の痕跡が無いことが特定された。
「とりあえず最悪の事態は避けられたようですね。これならばノリスさんの亡骸をシーグル教の総本山で清めてもらえば安らかに旅立てるはずです」
ゼロは検分に立ち会ったルークやオックス達に自分の見立てを説明した。
続けて屋敷の隅々までを調べた後に最後の襲撃時に破壊されていた聖具を確認する。
それは杭の先にランタンを乗せたような形状の聖具で杭の部分を地面に刺して設置するものだったが、そのランタンの部分が破壊されていた。
「これは、何か固いもので物理的に破壊されてますね」
「どういうことだ?」
ゼロの説明にオックスが疑問を投げる。
「幾つか考えられます。1つは、何者かが直接叩き壊した。でもこれは相手にしてみれば困難ですね。この聖具があるために奴等は敷地内に入れないのですから」
「確かにな。他には?」
「これが物理的、つまり外部からの強い力により破壊されていることから考えて。何も直接叩き壊す必要はありません。外から大きな石でも投げつけ、それをぶつけて破壊すればいいのです」
「そんな単純なことか?」
「単純だからですよ。いくら悪魔達が結界内に入れないとしても、魔法等の攻撃ではなく、奴等が石等を投げたとして、投げられた石には何の魔力も悪意もありませんから結界で止められるものではありません。それに、守る側にしても敵が強大な悪魔だと思うからこそ、結界を突破しようとするにしても強い魔力等で攻めてくると先入観を持ってしまい、相手が原始的な、子供の悪戯のような手段を取るとは思いもよらないのでは?」
ゼロの言葉にオックスは唸り声を上げた。
「う~む、確かに。強い敵は強い力や魔法で襲ってくると思い込んでいたかもしれん。そこに油断があったのか・・・」
「はい、その油断に付け込まれた可能性もあります。他には、敵側に結界が通用せずに抜けられる魔物がいた可能性もあります。それが侵入して聖具を破壊したかもしれません」
「想像力を働かせれば可能性はいくらでもあるわけか。俺達の考えが浅かった」
悔しそうな表情を浮かべるオックス達だが、ゼロは首を振った。
「今悔しがっても何にもなりません。それに私の推察だって、破壊された聖具という結果を見てからの後出しの判断ですから。大切なのはこれからのことですよ」
ゼロはそこにいる全員を見渡した。
「残された時間は限られています。早速準備に取りかかりましょう」
ゼロの声に全員が頷いてノリス・クロウシスの遺体の搬送計画を実行することにし、その準備に取りかかった。
ノリスの遺体はクロウシス家が保有する馬車に載せて運ぶ必要があるが、馬車を牽く馬が2頭しかおらず、その馬も農作業用の馬だ。
作業用だけあってどちらも屈強な体格だが、年老いていてスピードと持久力は期待できない。
シーグル総本山まで牽かせるとなると人が歩く程度の一定の速度を保つ必要がありそうだ。
その速度で休息を取りながら進むのだとすると総本山にたどり着くまでには5日間を要する。
その間はノリスやルークが危険に曝されることになり、それを護衛するのがゼロ達だ。
「葬列にはシーグルの司祭は同行しないのですか?」
馬車を点検していたゼロがルークに尋ねた。
「残念ながらそれは叶いません。司祭様は当家に仕えている方ではなく、この地でのお務めがありますので同行していただくことは無理でしょう」
ルークに代わってマクレインが答える。
「そうなると私達だけでノリスさんとルークさん達を護衛する必要がありますね。やはり戦力的にも、時間的にも余裕がありません、準備出来次第、今夜にでも出発しましょう」
出発を急ぐゼロにオックス達が首を傾げる。
「出発は夜明けの方がよくないか?なにも奴等が力を増す夜に出発しなくてもいいんじゃねえか?」
しかし、ゼロは首を振った。
「1日で到着するならばそうしますが、シーグル総本山までは5日の行程です。どうあっても夜を越さなければなりません。ならば急いだ方がいいでしょう。それに、朝まで待って出発して村の近くを通過する際にいきなり襲われたら、目を覚まして活動している村人を巻き込む可能性があります。だから夜の間に人々の活動圏から離れてしまいましょう。なにより、夜は悪魔の時間ですが、私のアンデッド達の時間でもあります」
冷徹な表情で話すゼロの説明を聞いた全員が直ちに出発するための準備を急ぎ、日暮れ過ぎには出発の準備が整った。
ノリスの遺体が載せられた2頭牽きの馬車にルークと護衛のエナが乗り、マクレインが御者席で手綱を握る。
ゼロ達は徒歩で馬車の周囲を護衛する。
「今回はノリスさんの仇である悪魔を倒すことも重要ですが、それよりもこの葬列をシーグル総本山まで無事に届けることが優先されます。よって、皆さんは馬車の護衛に徹してください。ノリスさん、ルークさんを守ることは当然ですが、馬車や馬も守りきる必要があります」
「そうすると、悪魔共が襲ってきても俺達からは積極的には攻めないってことか?」
オックスは少しばかり不満顔だが、ゼロは首を振った。
「戦いに消極的になると余計に隙が生じる可能性があります。ですので、戦闘になったら遠慮する必要はありません。ただ、護衛任務を忘れないということです」
「そうか、それならば徹底的にやらせてもらうぜ!」
「そうね、私達を虚仮にした奴等に意趣返しはしてあげなければね」
ゼロの説明を聞いて聞いてオックスとリリスはやる気が漲ってきたようだ。
それを見届けたゼロは傍らに立つレナの耳に口を寄せた。
「レナさんは特にルークさんの守りに気を配ってください。詳しくはお話しできませんが、私の読みが正しければノリスさんよりもルークさんの方が危険です。場合によってはエナさんだけでは守りきれないかもしれません」
外の者に聞こえないように耳打ちしたゼロにレナは無言で頷いた。
ノリスの葬列が出発する時がきた。
先ずはゼロ1人が屋敷を守る結界から外に出て複数のスペクターを召喚し、周囲の偵察に出す。
暫しの後、周囲に危険が無いことを確認したゼロは皆に合図を送り、いよいよノリス達を載せた馬車がオックス達に守られて結界の外に出た。
ゼロは更にオメガとバンシーを召喚して馬車の護衛に当たらせる。
「では、出発です」
ゼロの声と共にノリスの魂の安らぎのための葬列がシーグル教総本山に向けて出発した。
寝室に立ち入ったゼロは真っ先に室内に死霊の気配があるかどうか検索した。
もしもノリスの魂が肉体から離れてしまっていたならば、それは亡霊等のアンデッドとしてゼロの検知に引っかかるはずだ。
肉体に魂が残っているならば、未だアンデッド化していないので魂を清めることができる。
仮にノリスの魂が霊になって彷徨っていたらゼロは強硬手段に出て、ノリスの霊を捕らえてシーグル教の総本山に連れて行くことも考えたが、幸いにしてノリスの魂は未だに肉体に留まっているようだ。
次いで遺体を検分したが、致命傷は心臓にまで達している4つの刺し傷だ。
「これは、爪の痕ですか?長い爪で貫かれたようですね」
ゼロは傷痕を確認したが、ゼロと共に遺体を検分したレナの鑑定でノリスの傷には呪い等の痕跡が無いことが特定された。
「とりあえず最悪の事態は避けられたようですね。これならばノリスさんの亡骸をシーグル教の総本山で清めてもらえば安らかに旅立てるはずです」
ゼロは検分に立ち会ったルークやオックス達に自分の見立てを説明した。
続けて屋敷の隅々までを調べた後に最後の襲撃時に破壊されていた聖具を確認する。
それは杭の先にランタンを乗せたような形状の聖具で杭の部分を地面に刺して設置するものだったが、そのランタンの部分が破壊されていた。
「これは、何か固いもので物理的に破壊されてますね」
「どういうことだ?」
ゼロの説明にオックスが疑問を投げる。
「幾つか考えられます。1つは、何者かが直接叩き壊した。でもこれは相手にしてみれば困難ですね。この聖具があるために奴等は敷地内に入れないのですから」
「確かにな。他には?」
「これが物理的、つまり外部からの強い力により破壊されていることから考えて。何も直接叩き壊す必要はありません。外から大きな石でも投げつけ、それをぶつけて破壊すればいいのです」
「そんな単純なことか?」
「単純だからですよ。いくら悪魔達が結界内に入れないとしても、魔法等の攻撃ではなく、奴等が石等を投げたとして、投げられた石には何の魔力も悪意もありませんから結界で止められるものではありません。それに、守る側にしても敵が強大な悪魔だと思うからこそ、結界を突破しようとするにしても強い魔力等で攻めてくると先入観を持ってしまい、相手が原始的な、子供の悪戯のような手段を取るとは思いもよらないのでは?」
ゼロの言葉にオックスは唸り声を上げた。
「う~む、確かに。強い敵は強い力や魔法で襲ってくると思い込んでいたかもしれん。そこに油断があったのか・・・」
「はい、その油断に付け込まれた可能性もあります。他には、敵側に結界が通用せずに抜けられる魔物がいた可能性もあります。それが侵入して聖具を破壊したかもしれません」
「想像力を働かせれば可能性はいくらでもあるわけか。俺達の考えが浅かった」
悔しそうな表情を浮かべるオックス達だが、ゼロは首を振った。
「今悔しがっても何にもなりません。それに私の推察だって、破壊された聖具という結果を見てからの後出しの判断ですから。大切なのはこれからのことですよ」
ゼロはそこにいる全員を見渡した。
「残された時間は限られています。早速準備に取りかかりましょう」
ゼロの声に全員が頷いてノリス・クロウシスの遺体の搬送計画を実行することにし、その準備に取りかかった。
ノリスの遺体はクロウシス家が保有する馬車に載せて運ぶ必要があるが、馬車を牽く馬が2頭しかおらず、その馬も農作業用の馬だ。
作業用だけあってどちらも屈強な体格だが、年老いていてスピードと持久力は期待できない。
シーグル総本山まで牽かせるとなると人が歩く程度の一定の速度を保つ必要がありそうだ。
その速度で休息を取りながら進むのだとすると総本山にたどり着くまでには5日間を要する。
その間はノリスやルークが危険に曝されることになり、それを護衛するのがゼロ達だ。
「葬列にはシーグルの司祭は同行しないのですか?」
馬車を点検していたゼロがルークに尋ねた。
「残念ながらそれは叶いません。司祭様は当家に仕えている方ではなく、この地でのお務めがありますので同行していただくことは無理でしょう」
ルークに代わってマクレインが答える。
「そうなると私達だけでノリスさんとルークさん達を護衛する必要がありますね。やはり戦力的にも、時間的にも余裕がありません、準備出来次第、今夜にでも出発しましょう」
出発を急ぐゼロにオックス達が首を傾げる。
「出発は夜明けの方がよくないか?なにも奴等が力を増す夜に出発しなくてもいいんじゃねえか?」
しかし、ゼロは首を振った。
「1日で到着するならばそうしますが、シーグル総本山までは5日の行程です。どうあっても夜を越さなければなりません。ならば急いだ方がいいでしょう。それに、朝まで待って出発して村の近くを通過する際にいきなり襲われたら、目を覚まして活動している村人を巻き込む可能性があります。だから夜の間に人々の活動圏から離れてしまいましょう。なにより、夜は悪魔の時間ですが、私のアンデッド達の時間でもあります」
冷徹な表情で話すゼロの説明を聞いた全員が直ちに出発するための準備を急ぎ、日暮れ過ぎには出発の準備が整った。
ノリスの遺体が載せられた2頭牽きの馬車にルークと護衛のエナが乗り、マクレインが御者席で手綱を握る。
ゼロ達は徒歩で馬車の周囲を護衛する。
「今回はノリスさんの仇である悪魔を倒すことも重要ですが、それよりもこの葬列をシーグル総本山まで無事に届けることが優先されます。よって、皆さんは馬車の護衛に徹してください。ノリスさん、ルークさんを守ることは当然ですが、馬車や馬も守りきる必要があります」
「そうすると、悪魔共が襲ってきても俺達からは積極的には攻めないってことか?」
オックスは少しばかり不満顔だが、ゼロは首を振った。
「戦いに消極的になると余計に隙が生じる可能性があります。ですので、戦闘になったら遠慮する必要はありません。ただ、護衛任務を忘れないということです」
「そうか、それならば徹底的にやらせてもらうぜ!」
「そうね、私達を虚仮にした奴等に意趣返しはしてあげなければね」
ゼロの説明を聞いて聞いてオックスとリリスはやる気が漲ってきたようだ。
それを見届けたゼロは傍らに立つレナの耳に口を寄せた。
「レナさんは特にルークさんの守りに気を配ってください。詳しくはお話しできませんが、私の読みが正しければノリスさんよりもルークさんの方が危険です。場合によってはエナさんだけでは守りきれないかもしれません」
外の者に聞こえないように耳打ちしたゼロにレナは無言で頷いた。
ノリスの葬列が出発する時がきた。
先ずはゼロ1人が屋敷を守る結界から外に出て複数のスペクターを召喚し、周囲の偵察に出す。
暫しの後、周囲に危険が無いことを確認したゼロは皆に合図を送り、いよいよノリス達を載せた馬車がオックス達に守られて結界の外に出た。
ゼロは更にオメガとバンシーを召喚して馬車の護衛に当たらせる。
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