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古城に在りし者3
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「直ぐに出発しましょう」
まだ夜も明けていないが、このまま夜営することは得策ではない。
ゼロ達は直ちに南に向かって出発した。
突発的な夜戦の後だがメンバーの疲労は最小限に留められている。
初日の夜、2日目の夜半過ぎまでと、それぞれが体を休めることができたためだ。
「しかし、アンデッドがいるのも便利なもんだな。正直なところ前面に押し出して戦わせるくらいしか考えてなかったぜ」
「まあ、大抵の人はその認識でしょうね。でも、アンデッドってのは様々な運用法があるんですよ。戦闘、偵察、警戒、工作から土木作業まで。それらを効率よく運用するのがネクロマンサーの腕の見せ所ですね」
ゼロの答えにライズ、イリーナが感心し、ヘルムントは興味深げに聞いている。
その間にも一行はアンデッドを警戒に出しながら南に向かって進み続けた。
その間に幾度か魔物の接近があるも、警戒に出していたオメガ等の活躍によりゼロ達が直接戦闘をすることなく進むことができた。
「順調だな・・・」
ライズが呟く。
「はい、順調です。不気味な程に」
ゼロも頷くがその表情は緊張に満ちていた。
他のメンバーも同様である。
いかにオメガ達が強力なアンデッドであろうとも、こうも順調に進めば何かを疑うのも当然である。
そして、その疑念は現実のものとなる。
先行して警戒していたオメガとジャック・オー・ランタンが戻ってきた。
「マスター、些か厄介な魔物が接近しています」
オメガが前方を警戒しながら告げる。
ジャック・オー・ランタンもケタケタと笑いながらもゼロ達の前に布陣した。
「サイクロプス。かつては神々の眷族とされた巨人がこちらに接近してきます」
オメガはバスターソードを構えた。
ゼロは周囲の地形を確認する。
山頂へと続く峠道、道幅は広いが片側は山壁で反対側は崖になっており多人数で戦うには不向きな場所だ。
ゼロは更にバンシー、スペクターを召喚した。
ゼロの前にオメガ、バンシーの他スペクターとジャック・オー・ランタンが5体ずつ並んで迎え撃つ準備を整える。
彼等は飛ぶことが可能であるため立体的な戦闘が可能だ。
平面戦闘しかできないスケルトンナイトは限られた戦闘範囲では逆にゼロやライズ達の戦闘の妨げになるため今回は使わない。
更にゼロはイズを呼んだ。
「・・・・・という作戦ですが、実行可能ですか?」
ゼロの作戦を聞いてイズが力強く頷く。
「お任せください!多少の時間稼ぎをしてもらう必要がありますが、やってみせます」
イズの返答を聞いたゼロは他のメンバーに向き直る。
「聞いてのとおりです。我々はイズさんの準備が完了するまで時間稼ぎをするだけです。サイクロプスを倒す必要はありませんから無理をしないでください」
ゼロの指示に全員が戦闘の準備を整えた。
「時間稼ぎだったら容易いもんだ」
「然り!流石はゼロ殿、合理的で無駄のない作戦だ。イザベラをあそこまで追い詰めただけのことはある」
ライズやヘルムントが余裕の笑みを浮かべた。
・・グゥ・・グフッ・・
・・・・・ッ・・ンッ・・ズンッ
峠道の先から不気味な息づかいと重苦しい足音が近づいてくる。
アンデッド達は周囲の空間に散って配置につき、ゼロとライズ、ヘルムントは前面に出た。
イリーナとリズは近くの樹木に登り、弓を構える。
イズとレナは背後に控えて精神を集中した。
やがてゼロ達の前にサイクロプスがその巨体を現した。
10メートルを超えようかという身の丈、その丸太のような腕には巨大なハンマーを持つ。
頭部には1本の角を持ち、これまた巨大な1つの目でゼロ達を見下ろしている。
グゥオォォォッ!
突然、サイクロプスが激しい咆哮を上げて威嚇してきた。
まるで『立ち去れ!』と叫んでいるようだ。
「始めましょう!」
ゼロの合図で全員が行動を開始した。
イリーナとリズは風や火の精霊魔法を乗せた矢でサイクロプスの目を狙い、アンデッド達はサイクロプスの周囲を飛び交いながら魔法攻撃を繰り返す。
レナは精神を集中するイズを守りながら強力な雷撃魔法をサイクロプスに叩き込む。
そしてゼロ達はサイクロプスの攻撃の目を自分達に向けさせ、その脚や振り下ろされた腕等に攻撃を繰り返して撹乱する。
「っと!くそったれ!攻撃が大して効かね~な!」
剣による攻撃を繰り返しているライズがうんざりしたように叫ぶ。
確かに剣や弓矢の物理攻撃もアンデッドやレナ達の魔法攻撃もサイクロプスを怯ませる程度はできても致命傷を与えるには至らない。
かつては神々の鍛冶師として名を馳せた神の眷族の末裔である、その能力は圧倒的だ。
今のゼロ達の戦力で真正面から戦って倒すにはまだ決め手に欠ける。
「あせる必要はありません。時間を稼ぐだけでいいのです。無理をしてはいけません」
「おっと、そうだったな。ならば大した手間じゃねえや!」
熱くなりかけていたライズはゼロの声で冷静さを取り戻す。
ゼロはサイクロプスの目を狙って光熱魔法を放つが、弱点である目の回りに魔法防御が加えられているのか、サイクロプスの目の前の空間に発現した魔法陣に魔法や弓矢が弾き返された。
「やはり、こいつも何者かの支配下にいるようですね。神々の末裔とはいえただの馬鹿力の巨人にこんなに高度な魔法は使えませんからね」
弱点に対する攻撃を阻まれながらもゼロ達はサイクロプスに反撃の暇を与えること無く、精神を集中して精霊と語り合っているイズにサイクロプスの注意が向かないように攻撃を繰り返す。
(・・・ゼロらしくない。強敵とはいえ、ゼロならば討伐する手はいくらでもあるはず。わざと?何か考えがあるの?)
その中でレナだけが違和感を感じていた。
やがて
「ゼロ様!いつでもどうぞ!」
イズが声を上げた。
「予定どおりです皆さん!・・・今っ!」
ゼロの合図でアンデッド達が一斉にサイクロプスの目を目掛けて攻撃魔法を叩き込む。
攻撃は魔法陣に阻まれるが、サイクロプスの目を眩ませることはできた。
その隙を狙って全員がサイクロプスの足下を駆け抜け、股下を潜り抜けてサイクロプスから距離を取る。
それを見計らったイズが力を解放する。
「大地の精霊ノーム!その力をもって大地を作り替えよ!」
地の精霊を友とするイズの精霊だ。
・・・ゴゴゴゴゴッ
イズの声と共に大地が震え、サイクロプスの足下が地滑りを起こしながら崩れ落ち、足場を失ったサイクロプスが遥か崖下に転がり落ちていく。
「続けてノーム!瓦礫の雨を降らせよ!」
イズの声に更に山壁が崩れ、サイクロプスを追うように大量の瓦礫が落ちていく。
崖下に叩きつけられて倒れたサイクロプスに瓦礫が降り注ぎ、その巨体が瓦礫に埋まった。
「やったか?」
ライズが崩れた崖下を覗き込む。
「倒したかどうかはどうでもいいことです。直ぐに先に進みましょう」
「そうは言ってもサイクロプスなんざ中々にお目にかかれないぜ?討伐証明ができれば良い実績になるぜ?」
名残惜しそうなライズだが、ゼロは振り返ることなく歩き始め、レナやイズ、リズはそれが当然の如くゼロに続く。
「見事!あれ程の強力な魔物の襲撃を損害なしで切り抜けるとは。我の目に間違いはなかった」
ヘルムントも頷いて歩き始めた。
「ほらライズ、行くわよ。私達の目的は別にあるでしょ?」
「そうだったな。リーダーのゼロに付いていかなければいけないな」
イリーナに促されたライズも気持ちを入れ替えてゼロを追って歩き始めた。
目的の古城まではもう間もなくであり、こんな所で時間を無駄にするわけにはいかないのである。
まだ夜も明けていないが、このまま夜営することは得策ではない。
ゼロ達は直ちに南に向かって出発した。
突発的な夜戦の後だがメンバーの疲労は最小限に留められている。
初日の夜、2日目の夜半過ぎまでと、それぞれが体を休めることができたためだ。
「しかし、アンデッドがいるのも便利なもんだな。正直なところ前面に押し出して戦わせるくらいしか考えてなかったぜ」
「まあ、大抵の人はその認識でしょうね。でも、アンデッドってのは様々な運用法があるんですよ。戦闘、偵察、警戒、工作から土木作業まで。それらを効率よく運用するのがネクロマンサーの腕の見せ所ですね」
ゼロの答えにライズ、イリーナが感心し、ヘルムントは興味深げに聞いている。
その間にも一行はアンデッドを警戒に出しながら南に向かって進み続けた。
その間に幾度か魔物の接近があるも、警戒に出していたオメガ等の活躍によりゼロ達が直接戦闘をすることなく進むことができた。
「順調だな・・・」
ライズが呟く。
「はい、順調です。不気味な程に」
ゼロも頷くがその表情は緊張に満ちていた。
他のメンバーも同様である。
いかにオメガ達が強力なアンデッドであろうとも、こうも順調に進めば何かを疑うのも当然である。
そして、その疑念は現実のものとなる。
先行して警戒していたオメガとジャック・オー・ランタンが戻ってきた。
「マスター、些か厄介な魔物が接近しています」
オメガが前方を警戒しながら告げる。
ジャック・オー・ランタンもケタケタと笑いながらもゼロ達の前に布陣した。
「サイクロプス。かつては神々の眷族とされた巨人がこちらに接近してきます」
オメガはバスターソードを構えた。
ゼロは周囲の地形を確認する。
山頂へと続く峠道、道幅は広いが片側は山壁で反対側は崖になっており多人数で戦うには不向きな場所だ。
ゼロは更にバンシー、スペクターを召喚した。
ゼロの前にオメガ、バンシーの他スペクターとジャック・オー・ランタンが5体ずつ並んで迎え撃つ準備を整える。
彼等は飛ぶことが可能であるため立体的な戦闘が可能だ。
平面戦闘しかできないスケルトンナイトは限られた戦闘範囲では逆にゼロやライズ達の戦闘の妨げになるため今回は使わない。
更にゼロはイズを呼んだ。
「・・・・・という作戦ですが、実行可能ですか?」
ゼロの作戦を聞いてイズが力強く頷く。
「お任せください!多少の時間稼ぎをしてもらう必要がありますが、やってみせます」
イズの返答を聞いたゼロは他のメンバーに向き直る。
「聞いてのとおりです。我々はイズさんの準備が完了するまで時間稼ぎをするだけです。サイクロプスを倒す必要はありませんから無理をしないでください」
ゼロの指示に全員が戦闘の準備を整えた。
「時間稼ぎだったら容易いもんだ」
「然り!流石はゼロ殿、合理的で無駄のない作戦だ。イザベラをあそこまで追い詰めただけのことはある」
ライズやヘルムントが余裕の笑みを浮かべた。
・・グゥ・・グフッ・・
・・・・・ッ・・ンッ・・ズンッ
峠道の先から不気味な息づかいと重苦しい足音が近づいてくる。
アンデッド達は周囲の空間に散って配置につき、ゼロとライズ、ヘルムントは前面に出た。
イリーナとリズは近くの樹木に登り、弓を構える。
イズとレナは背後に控えて精神を集中した。
やがてゼロ達の前にサイクロプスがその巨体を現した。
10メートルを超えようかという身の丈、その丸太のような腕には巨大なハンマーを持つ。
頭部には1本の角を持ち、これまた巨大な1つの目でゼロ達を見下ろしている。
グゥオォォォッ!
突然、サイクロプスが激しい咆哮を上げて威嚇してきた。
まるで『立ち去れ!』と叫んでいるようだ。
「始めましょう!」
ゼロの合図で全員が行動を開始した。
イリーナとリズは風や火の精霊魔法を乗せた矢でサイクロプスの目を狙い、アンデッド達はサイクロプスの周囲を飛び交いながら魔法攻撃を繰り返す。
レナは精神を集中するイズを守りながら強力な雷撃魔法をサイクロプスに叩き込む。
そしてゼロ達はサイクロプスの攻撃の目を自分達に向けさせ、その脚や振り下ろされた腕等に攻撃を繰り返して撹乱する。
「っと!くそったれ!攻撃が大して効かね~な!」
剣による攻撃を繰り返しているライズがうんざりしたように叫ぶ。
確かに剣や弓矢の物理攻撃もアンデッドやレナ達の魔法攻撃もサイクロプスを怯ませる程度はできても致命傷を与えるには至らない。
かつては神々の鍛冶師として名を馳せた神の眷族の末裔である、その能力は圧倒的だ。
今のゼロ達の戦力で真正面から戦って倒すにはまだ決め手に欠ける。
「あせる必要はありません。時間を稼ぐだけでいいのです。無理をしてはいけません」
「おっと、そうだったな。ならば大した手間じゃねえや!」
熱くなりかけていたライズはゼロの声で冷静さを取り戻す。
ゼロはサイクロプスの目を狙って光熱魔法を放つが、弱点である目の回りに魔法防御が加えられているのか、サイクロプスの目の前の空間に発現した魔法陣に魔法や弓矢が弾き返された。
「やはり、こいつも何者かの支配下にいるようですね。神々の末裔とはいえただの馬鹿力の巨人にこんなに高度な魔法は使えませんからね」
弱点に対する攻撃を阻まれながらもゼロ達はサイクロプスに反撃の暇を与えること無く、精神を集中して精霊と語り合っているイズにサイクロプスの注意が向かないように攻撃を繰り返す。
(・・・ゼロらしくない。強敵とはいえ、ゼロならば討伐する手はいくらでもあるはず。わざと?何か考えがあるの?)
その中でレナだけが違和感を感じていた。
やがて
「ゼロ様!いつでもどうぞ!」
イズが声を上げた。
「予定どおりです皆さん!・・・今っ!」
ゼロの合図でアンデッド達が一斉にサイクロプスの目を目掛けて攻撃魔法を叩き込む。
攻撃は魔法陣に阻まれるが、サイクロプスの目を眩ませることはできた。
その隙を狙って全員がサイクロプスの足下を駆け抜け、股下を潜り抜けてサイクロプスから距離を取る。
それを見計らったイズが力を解放する。
「大地の精霊ノーム!その力をもって大地を作り替えよ!」
地の精霊を友とするイズの精霊だ。
・・・ゴゴゴゴゴッ
イズの声と共に大地が震え、サイクロプスの足下が地滑りを起こしながら崩れ落ち、足場を失ったサイクロプスが遥か崖下に転がり落ちていく。
「続けてノーム!瓦礫の雨を降らせよ!」
イズの声に更に山壁が崩れ、サイクロプスを追うように大量の瓦礫が落ちていく。
崖下に叩きつけられて倒れたサイクロプスに瓦礫が降り注ぎ、その巨体が瓦礫に埋まった。
「やったか?」
ライズが崩れた崖下を覗き込む。
「倒したかどうかはどうでもいいことです。直ぐに先に進みましょう」
「そうは言ってもサイクロプスなんざ中々にお目にかかれないぜ?討伐証明ができれば良い実績になるぜ?」
名残惜しそうなライズだが、ゼロは振り返ることなく歩き始め、レナやイズ、リズはそれが当然の如くゼロに続く。
「見事!あれ程の強力な魔物の襲撃を損害なしで切り抜けるとは。我の目に間違いはなかった」
ヘルムントも頷いて歩き始めた。
「ほらライズ、行くわよ。私達の目的は別にあるでしょ?」
「そうだったな。リーダーのゼロに付いていかなければいけないな」
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