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古城に在りし者1
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南に向かったゼロ達は南方にある貴族領の都市に到着した。
その都市の冒険者ギルドではライズとイリーナがゼロ達のことを待っていた。
「よう!待ちくたびれたぜ。いつまでも来ないから先に行っちまおうかと思ってたぜ」
ゼロも肩を竦めた。
「王都のギルドの冒険者って、やはりライズさん達でしたか」
「おっ?期待してくれていたのか?」
「期待というか、死霊術師との共同依頼を受けてくれる冒険者なんてそうはいませんからね」
「ハハッ、相変わらずだな。それどころか男前も上がったじゃないか」
ゼロをからかうライズにイリーナも呆れ顔だ。
「ライズ、やめなさい!ごめんなさいゼロ。話は聞いたけど、大丈夫なの?調子は回復したの?」
「ありがとうございます、イリーナさん。お気遣いなく願います。視界が悪くなった分万全だとは言えませんが、問題ありません」
「そらみろ、イリーナ。この位のことじゃゼロはびくともしないんだ」
ライズは勝ち誇ったように笑った。
軽口の挨拶とイズとリズの紹介を済ませたゼロ達は状況を整理した。
都市から更に南方に3日程進んだ山奥に打ち捨てられ、管理する者もいない古城がある。
古城は元々人が立ち入ることがない山奥にあるのだが、古城やその周辺に強力な魔物が住み着いたらしく、それに伴って山に生息していた魔物が追い立てられて都市の周辺にまで現れるようになったのが数ヶ月前。
この地域を治める貴族がギルドに調査を依頼して数組の冒険者パーティーが調査に向かうも誰も帰ることが無かった。
更に聖務院から派遣されたイザベラとアランまでもが戻らなかったのだ。
状況を聞いたゼロは眉をひそめた。
「どうにも、あちこちで同じようなことが起きているようですね。世界中で良からぬことが進んでいるのではないでしょうか」
「確かに、最近は魔物の様子がおかしかったな」
「聖務院でも問題視されていた」
ライズ達もヘルムントも異変に気付いていたようだ。
「早速その古城に向かいましょう。ただ、その前に」
「誰がこのパーティーを率いるかだな?」
「然り!これだけの実力者の集まりだ、頭目をはっきりさせる必要があろう。実力もさることながら冷静な判断力が求められる。我としてはゼロ殿に頼みたい」
「俺もそう思っていた。ゼロ、頼むぜ。ちなみに俺には冷静な判断力は期待できないぜ」
「えっ?私ですか?」
ヘルムントとライズに言われ、助けを求めるように他のメンバーを見渡すが、レナは
「ゼロでいいわ」
イリーナも
「私も」
そしてイズ達までも
「「私達兄妹はゼロ様に従うのみです」」
と同意し、全員がゼロに反論の余地を与えなかった。
結果、ゼロ以外の思惑通りゼロがこのパーティーを率いることで落ち着いた。
山奥の古城に向かうこのパーティーは、前衛は頭目で剣士も兼ねるネクロマンサーのゼロ、剣士のライズ、精霊使いで剣士のイズ。
中衛は司祭で前衛戦闘も可能なヘルムント。
後衛に魔導師のレナと精霊使いでレンジャーのイリーナとリズ。
そして必要に応じて前衛から後衛に渡ってゼロのアンデッドが配置される。
全員が相当な実力者であり、この7人の力を結集すればイザベラとアランの実力に勝るとも劣らないはずだ。
「では、参りましょう」
ゼロの指示の下、7人は古城に向かって険しい山に分け入った。
古城に向かって山に入った一行だが、ゼロの計画は合理的に徹していた。
スペクターやジャック・オー・ランタンを偵察に出して魔物の位置を事前に把握し、時には迂回して危険を避けながら進む。
日が落ちて夜営するとなれば通常は夜通しの見張りが必須なのだが、その見張りと夜営地の警戒をアンデッドに任せて自分達は体力の回復と温存に専念する。
目的が魔物の殲滅や討伐でなく調査と行方不明の冒険者達の救出なだけに、無駄な戦闘は徹底して避けた。
そのおかげで一行は疲労を溜めることなく2日目を迎えた。
しかし、2日目になってから状況が変わった。
魔物の位置を察知して迂回しようとしても、まるで誘導されているかのように迂回した先に魔物が回り込み、戦闘になることが増えてきた。
あまり多数のアンデッドを召喚すると周辺の魔物を呼び込む結果を招く可能性があるため、殆どは自分達の実力で撃退することになり、グリフォンやコカトリス等の強力な魔物との戦闘を繰り返すが、そこはそれぞれが高い能力を持つパーティーである、危なげなく魔物達を撃退していた。
「不自然です。作為的な何かを感じます」
幾度目かの戦闘の後にゼロが呟いた。
「どういうこと?」
レナの問いに周辺の様子を伺いながら頷く。
「試しに迂回すると見せかけて城から離れてみたら魔物の襲撃が止みましたが、城の方向に進路を変えた途端に襲撃が増えました。我々が城に近づくのを嫌う何者かが存在しているのでしょうね」
「我々の行動は筒抜けというわけであるか。一度撤退した方がよいのだろうか?」
ヘルムントが提案するがゼロは首を振った。
「ここで撤退しても何の解決にもなりません。むしろ、我々を城に近づけたくないということは、そのように企む何かが在るということでしょう。城に行けばその答えがあると思いますよ。ここからは迂回せずに最短距離を進みましょう。その方が手っ取り早いです」
ゼロの決断に全員が頷き、魔物の襲撃を撃退しながら古城への最短距離を進んだ。
その都市の冒険者ギルドではライズとイリーナがゼロ達のことを待っていた。
「よう!待ちくたびれたぜ。いつまでも来ないから先に行っちまおうかと思ってたぜ」
ゼロも肩を竦めた。
「王都のギルドの冒険者って、やはりライズさん達でしたか」
「おっ?期待してくれていたのか?」
「期待というか、死霊術師との共同依頼を受けてくれる冒険者なんてそうはいませんからね」
「ハハッ、相変わらずだな。それどころか男前も上がったじゃないか」
ゼロをからかうライズにイリーナも呆れ顔だ。
「ライズ、やめなさい!ごめんなさいゼロ。話は聞いたけど、大丈夫なの?調子は回復したの?」
「ありがとうございます、イリーナさん。お気遣いなく願います。視界が悪くなった分万全だとは言えませんが、問題ありません」
「そらみろ、イリーナ。この位のことじゃゼロはびくともしないんだ」
ライズは勝ち誇ったように笑った。
軽口の挨拶とイズとリズの紹介を済ませたゼロ達は状況を整理した。
都市から更に南方に3日程進んだ山奥に打ち捨てられ、管理する者もいない古城がある。
古城は元々人が立ち入ることがない山奥にあるのだが、古城やその周辺に強力な魔物が住み着いたらしく、それに伴って山に生息していた魔物が追い立てられて都市の周辺にまで現れるようになったのが数ヶ月前。
この地域を治める貴族がギルドに調査を依頼して数組の冒険者パーティーが調査に向かうも誰も帰ることが無かった。
更に聖務院から派遣されたイザベラとアランまでもが戻らなかったのだ。
状況を聞いたゼロは眉をひそめた。
「どうにも、あちこちで同じようなことが起きているようですね。世界中で良からぬことが進んでいるのではないでしょうか」
「確かに、最近は魔物の様子がおかしかったな」
「聖務院でも問題視されていた」
ライズ達もヘルムントも異変に気付いていたようだ。
「早速その古城に向かいましょう。ただ、その前に」
「誰がこのパーティーを率いるかだな?」
「然り!これだけの実力者の集まりだ、頭目をはっきりさせる必要があろう。実力もさることながら冷静な判断力が求められる。我としてはゼロ殿に頼みたい」
「俺もそう思っていた。ゼロ、頼むぜ。ちなみに俺には冷静な判断力は期待できないぜ」
「えっ?私ですか?」
ヘルムントとライズに言われ、助けを求めるように他のメンバーを見渡すが、レナは
「ゼロでいいわ」
イリーナも
「私も」
そしてイズ達までも
「「私達兄妹はゼロ様に従うのみです」」
と同意し、全員がゼロに反論の余地を与えなかった。
結果、ゼロ以外の思惑通りゼロがこのパーティーを率いることで落ち着いた。
山奥の古城に向かうこのパーティーは、前衛は頭目で剣士も兼ねるネクロマンサーのゼロ、剣士のライズ、精霊使いで剣士のイズ。
中衛は司祭で前衛戦闘も可能なヘルムント。
後衛に魔導師のレナと精霊使いでレンジャーのイリーナとリズ。
そして必要に応じて前衛から後衛に渡ってゼロのアンデッドが配置される。
全員が相当な実力者であり、この7人の力を結集すればイザベラとアランの実力に勝るとも劣らないはずだ。
「では、参りましょう」
ゼロの指示の下、7人は古城に向かって険しい山に分け入った。
古城に向かって山に入った一行だが、ゼロの計画は合理的に徹していた。
スペクターやジャック・オー・ランタンを偵察に出して魔物の位置を事前に把握し、時には迂回して危険を避けながら進む。
日が落ちて夜営するとなれば通常は夜通しの見張りが必須なのだが、その見張りと夜営地の警戒をアンデッドに任せて自分達は体力の回復と温存に専念する。
目的が魔物の殲滅や討伐でなく調査と行方不明の冒険者達の救出なだけに、無駄な戦闘は徹底して避けた。
そのおかげで一行は疲労を溜めることなく2日目を迎えた。
しかし、2日目になってから状況が変わった。
魔物の位置を察知して迂回しようとしても、まるで誘導されているかのように迂回した先に魔物が回り込み、戦闘になることが増えてきた。
あまり多数のアンデッドを召喚すると周辺の魔物を呼び込む結果を招く可能性があるため、殆どは自分達の実力で撃退することになり、グリフォンやコカトリス等の強力な魔物との戦闘を繰り返すが、そこはそれぞれが高い能力を持つパーティーである、危なげなく魔物達を撃退していた。
「不自然です。作為的な何かを感じます」
幾度目かの戦闘の後にゼロが呟いた。
「どういうこと?」
レナの問いに周辺の様子を伺いながら頷く。
「試しに迂回すると見せかけて城から離れてみたら魔物の襲撃が止みましたが、城の方向に進路を変えた途端に襲撃が増えました。我々が城に近づくのを嫌う何者かが存在しているのでしょうね」
「我々の行動は筒抜けというわけであるか。一度撤退した方がよいのだろうか?」
ヘルムントが提案するがゼロは首を振った。
「ここで撤退しても何の解決にもなりません。むしろ、我々を城に近づけたくないということは、そのように企む何かが在るということでしょう。城に行けばその答えがあると思いますよ。ここからは迂回せずに最短距離を進みましょう。その方が手っ取り早いです」
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