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新たなる力
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その後、ゼロの撤退戦は4回に渡って繰り返された。
その間にドラゴン・ゾンビの進路を町に至るルートから逸らそうと試みたが、ドラゴン・ゾンビは一直線に町を目指しており、ゼロの企みは徒労に終わっている。
結局、ドラゴン・ゾンビから見てゼロは目の前に居れば邪魔な存在だが、排除しなければならない脅威対象だとは認識されていないのだ。
それでも小規模な攻撃と大規模攻撃を織り交ぜながら戦闘と撤退を繰り返し、稼いだ距離を失いながら時間を稼いでいた。
そして、太陽が天頂に差しかかる前には町を見下ろす丘の上まで後退していた。
丘の下に町が見えるが距離があるため町の中の様子までは分からない。
実はこの時既に住民の退去は完了していたのだが、ゼロはそのことを知る由もなかった。
ゼロはアンデッドを召喚した。
大盾装備のスケルトンを横一線に並べ、その背後に弓装備のスケルトンと魔法攻撃隊を配置する。
「見慣れない者がいますね」
その中に不思議な風体の者が5体混ざっている。
カボチャの頭に黒いマント、大きな鎌を持ってケタケタと不気味な笑い声を上げながら漂っていた。
「ジャック・オー・ランタンです」
背後に控えるバンシーが答えるが、ゼロもそんなことは分かっている。
ジャック・オー・ランタン、その見かけからはアンデッドには見えないが、人の魂が燃える火の玉に姿を変えた歴としたアンデッドである。
ウィル・オー・ザ・ウィスプと同じ種類のアンデッドであるが、その姿は大きく違う。
精神体に近いウィル・オー・ザ・ウィスプと違い、カボチャの頭にマント、大きな鎌という依代を持つことで物理的な攻撃も可能なアンデッドだ。
「もしかして、ウィル・オー・ザ・ウィスプから進化したのですか?」
確かに5体のジャック・オー・ランタンからは見覚えのある気を感じる。
古くから使役していて上位種になっても変異しなかったウィル・オー・ザ・ウィスプ達だ。
「おそらく、この戦いの中で己の力不足を感じ、主様のお役に立ちたい一心で変異したものかと存じます」
背後でバンシーが説明をする。
その声を聞きながらゼロは身体の変調を感じていた。
バンシーの声の聞こえ方が普段と違く、耳鳴りの中で遠くにいるように聞こえてくる。
手足にも軽い痺れを感じ始めた。
「主様?」
ゼロの反応が鈍いことに気が付いたバンシーがゼロの顔を覗き込む。
感情の起伏が無に等しいバンシーの表情が僅かに強張る。
「主様、奴めの邪気に当てられているようです。これ以上は危険ではありませんか?」
バンシーに指摘されるまでもなく、ゼロは自分の身体の異変を自覚している。
おそらくは邪気か毒気、又はその両方が身体に影響を及ぼしているのだろう。
ゼロだからこそ無事なだけで、常人ならばとっくに死んでいるか、ゾンビになっている筈だ。
「主様、撤退を進言します」
バンシーが意見具申するが、ゼロは首を振る。
「まだ足りません」
ゼロはアンデッドの陣形を整えるが、立っているだけでも体力を消耗していく。
そんな耳鳴りの中でゼロを呼ぶ声がする。
(マスター、今こそ私に機会をお与え下さい。きっとお役に立ってみせます)
今までになくはっきりと聞こえた。
確かにゼロを呼ぶ彼ならば間違いなく戦力になる。
しかし、自分に彼を御し得るのか、迷いがあったが、その間にもドラゴン・ゾンビが接近してくる気配がする。
この防御線を突破されたら後がない。
ゼロは決断を迫られ、そして決断した。
「死を超越し夜を支配する闇の眷族よ、生と死の狭間の門を開け」
ゼロの召喚に呼応して1体のアンデッドが現れてゼロの前に跪く。
金色の髪に赤い瞳、細身の若い男。
背中にはその身には似つかわしくない巨大なバスターソードを背負っている。
「私をお呼びくださりまして光栄の極み。ヴァンパイアのオメガと申します。マスターに忠誠をお誓い致しますので配下の末席にお加えいただきたい」
オメガと名乗ったヴァンパイア、昼日中に平然と召喚に応じている上、内に秘める魔力も桁違いであり、明らかに上位のヴァンパイアだ。
「やはり上位のヴァンパイアですか」
「いえ、私などまだまだ弱輩です。今後ともにマスターの・・」
「謙遜や挨拶は結構です。今はドラゴン・ゾンビを止めることが先決です。貴方の力を借りても困難極まりない戦いです。それでも良いならば戦線に参加してください」
ゼロの言葉にオメガと名乗ったヴァンパイアは感慨深げに頭を下げた。
「流石は私がお仕えしたいと願い焦がれたマスターです。召喚されて直ぐに強大な敵との戦いに起用していただけるとは、望むところです」
オメガは立ち上がってバスターソードを抜いた。
「ドラゴン・ゾンビとは、確かに私の力を持ってしても倒すことは不可能でしょう。しかし、そんなことは問題ではありません。この一戦で私が消滅しようとも何ら悔いはありません。必ずやお役に立ってみせます」
ゼロに一礼して戦いに挑もうとしたオメガにゼロが声をかける。
「最善を尽くしても命を落とすこともあるでしょう。しかし、無駄死にすることは許しません」
「不死者たる私に無駄死にするなとは!何という熱きお言葉!」
ゼロの言葉を聞いたオメガは舞台役者のように大袈裟に額に手を当てると感涙にむせびながら戦列に加わっていった。
その姿をゼロとバンシーは白けた表情で見送る。
「なんだか、面倒くさそうな人ですね」
「・・・はい」
兎にも角にも新しい力を得たゼロの最終防御線を賭けた戦いが始まろうとしていた。
その間にドラゴン・ゾンビの進路を町に至るルートから逸らそうと試みたが、ドラゴン・ゾンビは一直線に町を目指しており、ゼロの企みは徒労に終わっている。
結局、ドラゴン・ゾンビから見てゼロは目の前に居れば邪魔な存在だが、排除しなければならない脅威対象だとは認識されていないのだ。
それでも小規模な攻撃と大規模攻撃を織り交ぜながら戦闘と撤退を繰り返し、稼いだ距離を失いながら時間を稼いでいた。
そして、太陽が天頂に差しかかる前には町を見下ろす丘の上まで後退していた。
丘の下に町が見えるが距離があるため町の中の様子までは分からない。
実はこの時既に住民の退去は完了していたのだが、ゼロはそのことを知る由もなかった。
ゼロはアンデッドを召喚した。
大盾装備のスケルトンを横一線に並べ、その背後に弓装備のスケルトンと魔法攻撃隊を配置する。
「見慣れない者がいますね」
その中に不思議な風体の者が5体混ざっている。
カボチャの頭に黒いマント、大きな鎌を持ってケタケタと不気味な笑い声を上げながら漂っていた。
「ジャック・オー・ランタンです」
背後に控えるバンシーが答えるが、ゼロもそんなことは分かっている。
ジャック・オー・ランタン、その見かけからはアンデッドには見えないが、人の魂が燃える火の玉に姿を変えた歴としたアンデッドである。
ウィル・オー・ザ・ウィスプと同じ種類のアンデッドであるが、その姿は大きく違う。
精神体に近いウィル・オー・ザ・ウィスプと違い、カボチャの頭にマント、大きな鎌という依代を持つことで物理的な攻撃も可能なアンデッドだ。
「もしかして、ウィル・オー・ザ・ウィスプから進化したのですか?」
確かに5体のジャック・オー・ランタンからは見覚えのある気を感じる。
古くから使役していて上位種になっても変異しなかったウィル・オー・ザ・ウィスプ達だ。
「おそらく、この戦いの中で己の力不足を感じ、主様のお役に立ちたい一心で変異したものかと存じます」
背後でバンシーが説明をする。
その声を聞きながらゼロは身体の変調を感じていた。
バンシーの声の聞こえ方が普段と違く、耳鳴りの中で遠くにいるように聞こえてくる。
手足にも軽い痺れを感じ始めた。
「主様?」
ゼロの反応が鈍いことに気が付いたバンシーがゼロの顔を覗き込む。
感情の起伏が無に等しいバンシーの表情が僅かに強張る。
「主様、奴めの邪気に当てられているようです。これ以上は危険ではありませんか?」
バンシーに指摘されるまでもなく、ゼロは自分の身体の異変を自覚している。
おそらくは邪気か毒気、又はその両方が身体に影響を及ぼしているのだろう。
ゼロだからこそ無事なだけで、常人ならばとっくに死んでいるか、ゾンビになっている筈だ。
「主様、撤退を進言します」
バンシーが意見具申するが、ゼロは首を振る。
「まだ足りません」
ゼロはアンデッドの陣形を整えるが、立っているだけでも体力を消耗していく。
そんな耳鳴りの中でゼロを呼ぶ声がする。
(マスター、今こそ私に機会をお与え下さい。きっとお役に立ってみせます)
今までになくはっきりと聞こえた。
確かにゼロを呼ぶ彼ならば間違いなく戦力になる。
しかし、自分に彼を御し得るのか、迷いがあったが、その間にもドラゴン・ゾンビが接近してくる気配がする。
この防御線を突破されたら後がない。
ゼロは決断を迫られ、そして決断した。
「死を超越し夜を支配する闇の眷族よ、生と死の狭間の門を開け」
ゼロの召喚に呼応して1体のアンデッドが現れてゼロの前に跪く。
金色の髪に赤い瞳、細身の若い男。
背中にはその身には似つかわしくない巨大なバスターソードを背負っている。
「私をお呼びくださりまして光栄の極み。ヴァンパイアのオメガと申します。マスターに忠誠をお誓い致しますので配下の末席にお加えいただきたい」
オメガと名乗ったヴァンパイア、昼日中に平然と召喚に応じている上、内に秘める魔力も桁違いであり、明らかに上位のヴァンパイアだ。
「やはり上位のヴァンパイアですか」
「いえ、私などまだまだ弱輩です。今後ともにマスターの・・」
「謙遜や挨拶は結構です。今はドラゴン・ゾンビを止めることが先決です。貴方の力を借りても困難極まりない戦いです。それでも良いならば戦線に参加してください」
ゼロの言葉にオメガと名乗ったヴァンパイアは感慨深げに頭を下げた。
「流石は私がお仕えしたいと願い焦がれたマスターです。召喚されて直ぐに強大な敵との戦いに起用していただけるとは、望むところです」
オメガは立ち上がってバスターソードを抜いた。
「ドラゴン・ゾンビとは、確かに私の力を持ってしても倒すことは不可能でしょう。しかし、そんなことは問題ではありません。この一戦で私が消滅しようとも何ら悔いはありません。必ずやお役に立ってみせます」
ゼロに一礼して戦いに挑もうとしたオメガにゼロが声をかける。
「最善を尽くしても命を落とすこともあるでしょう。しかし、無駄死にすることは許しません」
「不死者たる私に無駄死にするなとは!何という熱きお言葉!」
ゼロの言葉を聞いたオメガは舞台役者のように大袈裟に額に手を当てると感涙にむせびながら戦列に加わっていった。
その姿をゼロとバンシーは白けた表情で見送る。
「なんだか、面倒くさそうな人ですね」
「・・・はい」
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