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呪われた鉱山2
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レナ達は直ちに町まで戻り、町の代表に鉱山で起きていることを報告、更に風の都市に使いを出してゼロの助力を求めた。
その上でゼロの到着まで鉱山に繋がる街道や北方の警戒を固めることにした。
一緒に連れてきたリックスだが、一度は衛士に引き渡したものの、鉱山で起きていることを目の当たりにした経験者であり、危険察知能力がずば抜けて高いということでレナ達に協力して共に警戒に当たっていた。
ゼロが到着するまで現状を維持しなければならないのだ。
それから3日後、風の都市の冒険者ギルドではレナからの知らせを受けたシーナにゼロが呼び出されて事情を説明されていた。
「毒性を持ったゾンビの大量発生ですか?しかもそれらのゾンビの不可解な行動、私も聞いたことはありませんね」
レナからの援護要請の手紙を読んだゼロは首を傾げる。
「そうですか。で、レナさん達がゼロさんの応援を求めているんですが、如何ですか?」
シーナがゼロの顔を覗き込む。
「そうですね。確かにアンデッド絡みの事案ですし、ただならぬ事態になっているようです。分かりました、直ぐに私も現地に向かいます」
ゼロの返答を聞いてシーナは表情が明るくなった。
レナ達からの報告を受けてギルド内でも何らかの深刻な事態が進行中だとの判断がなされていた。
ただ、シーナはゼロが現地に向かうならば大丈夫!との根拠のない安心感を抱いていたのだ。
「私の知識と力で何が出来るか分かりませんが、最善を尽くしてきます」
そう言うとゼロは装備と荷物をまとめ上げて出発の準備を整え、直ちに出発することにした。
「いってらっしゃ・・・ちょっと待って、ゼロさん!」
出発するゼロを笑顔で見送ろうとしたシーナだが、突然言いようのない不安に襲われた。
(ゼロを行かせてはいけない)
突然の感情に思わずゼロを呼び止めてしまう。
ギルドを出ようとしていたゼロが立ち止まって振り向いた。
「どうしました?シーナさん」
ゼロも突然呼び止められて不思議そうな顔をしている。
「いえ、あの・・気をつけて・・・気をつけて行ってきてください」
突然の不安に駆られて思わず呼び止めはしたものの、引き止める理由は何もない。
曖昧な返事をしたが、どうしても笑顔が作れない。
「あの、本当に、無事に帰ってきてください・・・」
すがりついてでもゼロを止めたいという衝動に襲われるも、何の理由も無い。
それ以上言葉を発することが出来なかった。
「分かりました。行ってきます」
言い残してギルドを後にしたゼロを見送ったシーナだが、最後までゼロに笑顔を見せることが出来なかった。
風の都市を出発したゼロは休む間を惜しんで先を急ぎ、翌日の夜には北の町に到着してレナ達と合流することができた。
町に到着したゼロはレナ達やリックスから詳しい状況の説明を聞いたが、それを聞いたゼロの表情が曇る。
「どうしたの?」
ゼロの表情の変化に気づいたレナが声をかける。
「いえ、説明を聞いて、最悪の事態を想定しました」
「どういうこと?」
「現状を見てみないと分かりませんし、今は何とも言えません。ただ、もしもの時はこの町を放棄して王国軍の出動を要請しなければ。いや、現時点で避難準備と軍の出動要請だけはしておいた方がいいと思います」
ゼロは同席していた町の代表者に伝えた。
「一体どうしたの?」
ゼロの顔が青ざめている。
レナは本当にただ事でないのだと確信した。
「とにかく直ぐに現場を確認してきます。その結果次第では直ちに避難を始めてください」
鬼気迫るゼロの表情に町の代表者も承諾して町中に避難準備の触れを出した。
更にゼロの指示どおりに付近に駐屯する王国軍への援助要請を出した。
後にこの決断が多くの人々の命を救うことになるのだが、この時には誰も知る由もなかった。
ゼロは直ぐに鉱山に向かうことにした。
同行するのはレナ、レオン、アイリアでカイル、セイラ、ルシア、マッキは町に残ることになった。
また、リックスが同行を求めたがそれは認めず、身柄は町の衛士に預けることにした。
町を出たゼロ達は最小限の休息で鉱山までの道のりを踏破し、翌日中には鉱山を見下ろせる丘に到着した。
丘から現場を見たゼロは緊張の表情で、その額には冷や汗が流れている。
「ゼロ?どうしたの、貴方らしくないわ」
レナが声をかけても振り向きもしない。
ただひたすらに鉱山の入口を凝視している。
「レナさん、数日前に貴女達が見た時と変化はありますか?」
ゼロに聞かれてレナが鉱山を見下ろす。
「ゾンビの数が減っている。前には数十体いたけれど、今は数える程しかいないわ」
「確かに、ゾンビが殆どいない」
レナとレオンが口を揃える。
ゼロはスペクターを召喚した。
「鉱山内部を見てきてください。ただ、中にいる奴には絶対に気付かれずに、何があっても刺激しないように」
命令を受けたスペクターが鉱山内部に潜り込み、ゼロは黙ってスペクターが戻るのを待った。
待つ身にしてみれば数時間に感じられたが、実際にはほんの数分の後、スペクターが戻ってきた。
スペクターの報告を受けたゼロの表情が凍りつく。
直ぐにスペクターを戻し、振り返ったゼロはレナ達に告げた。
「ここは危険です。直ぐに離脱しましょう。アイリアさん、先に町に戻って住民の避難を開始するように伝えてください」
ゼロの言葉に皆が顔を見合わせる。
「一体どうしたの?鉱山の中に何がいるの?」
レナの問いにゼロが答えた。
「鉱山の中にドラゴン・ゾンビがいます」
その上でゼロの到着まで鉱山に繋がる街道や北方の警戒を固めることにした。
一緒に連れてきたリックスだが、一度は衛士に引き渡したものの、鉱山で起きていることを目の当たりにした経験者であり、危険察知能力がずば抜けて高いということでレナ達に協力して共に警戒に当たっていた。
ゼロが到着するまで現状を維持しなければならないのだ。
それから3日後、風の都市の冒険者ギルドではレナからの知らせを受けたシーナにゼロが呼び出されて事情を説明されていた。
「毒性を持ったゾンビの大量発生ですか?しかもそれらのゾンビの不可解な行動、私も聞いたことはありませんね」
レナからの援護要請の手紙を読んだゼロは首を傾げる。
「そうですか。で、レナさん達がゼロさんの応援を求めているんですが、如何ですか?」
シーナがゼロの顔を覗き込む。
「そうですね。確かにアンデッド絡みの事案ですし、ただならぬ事態になっているようです。分かりました、直ぐに私も現地に向かいます」
ゼロの返答を聞いてシーナは表情が明るくなった。
レナ達からの報告を受けてギルド内でも何らかの深刻な事態が進行中だとの判断がなされていた。
ただ、シーナはゼロが現地に向かうならば大丈夫!との根拠のない安心感を抱いていたのだ。
「私の知識と力で何が出来るか分かりませんが、最善を尽くしてきます」
そう言うとゼロは装備と荷物をまとめ上げて出発の準備を整え、直ちに出発することにした。
「いってらっしゃ・・・ちょっと待って、ゼロさん!」
出発するゼロを笑顔で見送ろうとしたシーナだが、突然言いようのない不安に襲われた。
(ゼロを行かせてはいけない)
突然の感情に思わずゼロを呼び止めてしまう。
ギルドを出ようとしていたゼロが立ち止まって振り向いた。
「どうしました?シーナさん」
ゼロも突然呼び止められて不思議そうな顔をしている。
「いえ、あの・・気をつけて・・・気をつけて行ってきてください」
突然の不安に駆られて思わず呼び止めはしたものの、引き止める理由は何もない。
曖昧な返事をしたが、どうしても笑顔が作れない。
「あの、本当に、無事に帰ってきてください・・・」
すがりついてでもゼロを止めたいという衝動に襲われるも、何の理由も無い。
それ以上言葉を発することが出来なかった。
「分かりました。行ってきます」
言い残してギルドを後にしたゼロを見送ったシーナだが、最後までゼロに笑顔を見せることが出来なかった。
風の都市を出発したゼロは休む間を惜しんで先を急ぎ、翌日の夜には北の町に到着してレナ達と合流することができた。
町に到着したゼロはレナ達やリックスから詳しい状況の説明を聞いたが、それを聞いたゼロの表情が曇る。
「どうしたの?」
ゼロの表情の変化に気づいたレナが声をかける。
「いえ、説明を聞いて、最悪の事態を想定しました」
「どういうこと?」
「現状を見てみないと分かりませんし、今は何とも言えません。ただ、もしもの時はこの町を放棄して王国軍の出動を要請しなければ。いや、現時点で避難準備と軍の出動要請だけはしておいた方がいいと思います」
ゼロは同席していた町の代表者に伝えた。
「一体どうしたの?」
ゼロの顔が青ざめている。
レナは本当にただ事でないのだと確信した。
「とにかく直ぐに現場を確認してきます。その結果次第では直ちに避難を始めてください」
鬼気迫るゼロの表情に町の代表者も承諾して町中に避難準備の触れを出した。
更にゼロの指示どおりに付近に駐屯する王国軍への援助要請を出した。
後にこの決断が多くの人々の命を救うことになるのだが、この時には誰も知る由もなかった。
ゼロは直ぐに鉱山に向かうことにした。
同行するのはレナ、レオン、アイリアでカイル、セイラ、ルシア、マッキは町に残ることになった。
また、リックスが同行を求めたがそれは認めず、身柄は町の衛士に預けることにした。
町を出たゼロ達は最小限の休息で鉱山までの道のりを踏破し、翌日中には鉱山を見下ろせる丘に到着した。
丘から現場を見たゼロは緊張の表情で、その額には冷や汗が流れている。
「ゼロ?どうしたの、貴方らしくないわ」
レナが声をかけても振り向きもしない。
ただひたすらに鉱山の入口を凝視している。
「レナさん、数日前に貴女達が見た時と変化はありますか?」
ゼロに聞かれてレナが鉱山を見下ろす。
「ゾンビの数が減っている。前には数十体いたけれど、今は数える程しかいないわ」
「確かに、ゾンビが殆どいない」
レナとレオンが口を揃える。
ゼロはスペクターを召喚した。
「鉱山内部を見てきてください。ただ、中にいる奴には絶対に気付かれずに、何があっても刺激しないように」
命令を受けたスペクターが鉱山内部に潜り込み、ゼロは黙ってスペクターが戻るのを待った。
待つ身にしてみれば数時間に感じられたが、実際にはほんの数分の後、スペクターが戻ってきた。
スペクターの報告を受けたゼロの表情が凍りつく。
直ぐにスペクターを戻し、振り返ったゼロはレナ達に告げた。
「ここは危険です。直ぐに離脱しましょう。アイリアさん、先に町に戻って住民の避難を開始するように伝えてください」
ゼロの言葉に皆が顔を見合わせる。
「一体どうしたの?鉱山の中に何がいるの?」
レナの問いにゼロが答えた。
「鉱山の中にドラゴン・ゾンビがいます」
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