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闘技大会開幕
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ゼロ達が王都に到着したその夜、ゼロのもとにエルフォード家執事ガストン・マイルズが訪れたため、夕食を共にすることになった。
「しかし、マイルズさんの名を見て驚きましたよ」
「いや、ゼロ殿が闘技大会に出場すると聞き及びましてな、是非とも本気で剣を交えてみたいと思いたったのです。そこでセシル様の人脈をお借りしまして私も出場することにしたのです」
「そうは言っても対戦する前にどちらかが敗退したら空振りもいいとこではありませんか?」
「実は私もそれを心配しておりました。そうしましたところ、なんと2回戦で相見えることができそうで、なんとも運がいいことです」
「それにしてもですよ。私はマイルズさんと剣を交えるなんて正直言って腰が引けてしまいますよ。それ以前に1回戦すら勝てるかどうか分かりませんし」
「なにを仰いますか。お互いに命の心配をせずに本気で戦えるなんてそうそうありませんぞ。私は今から楽しみで仕方ないのです」
ゼロは肩を竦めて笑った。
「いずれにしてもお互いに1回戦敗退しないように最善を尽くしますか」
「左様ですな。セシル様も観戦に訪れるとのことです。我々の戦いを是非ともご覧になっていただきたいものです」
2人の会話の様子を見ていたシーナとレナはマイルズという老紳士の実力を計りかねていた。
確かにその佇まいに一分の隙もないが、それが貴族に仕える執事としてのものなのか、剣士としてのそれなのかが分からない。
目の前にいる紳士がゼロですら腰が引ける相手だとは想像ができなかった。
しかし、ゼロはマイルズの実力を知っている。
その上で心の奥底でマイルズと剣を合わせることを期待する感情が湧き上がってきていたのであった。
闘技大会の初日が来た。
初日の第1戦からゼロの出番である。
出場者控え室で準備を整えるゼロ。
装備は愛用の剣と予備に鎖鎌、防具は普段通りだ。
魔導具により命は守られるとはいえ、通常攻撃のダメージは受けるため、守りを疎かにするわけにはいかない。
そして大会役員から渡された魔導具を身につける。
腕輪とネックレスの2種類あるが、どちらも同じ魔導具で好きな方を選べばいいらしいが、ネックレスはチャラチャラと動いて気になるので腕輪を選ぶ。
左腕には普段から着けている魔導具があるが、右腕は空いている。
レナも同じ魔導具を着けるが、激しい動きをしないサポートなのでネックレスを選択していた。
関係者として控え室にいるシーナが対戦相手の情報をゼロ達に伝える。
「初戦の相手は国境警備隊所属のアレス・ミラーさんです。大剣を操る巨漢の剣士で大会には数年前から出場していて実績も残している実力者ですね。サポートは同じく国境警備隊所属の魔術師だそうです」
説明を聞いたレナはゼロに作戦を訊ねた。
「私はどう動けばいい?積極的に攻撃していいのかしら?」
しかし、ゼロは首を振る。
「今回は援護に徹してください。相手の魔術師の攻撃を徹底的に妨害してください。ミラーさんは私とアンデッドで倒します」
ゼロの話しを聞いてシーナとレナは揃って笑みを浮かべた。
その様子にゼロが首を傾げる。
「何ですか?」
「だって、ゼロさんこの大会に乗り気じゃなかったのに、私が倒しますって、前回大会の入賞者相手に自信があるようですね?」
シーナの言葉にゼロは不敵な笑みを浮かべた。
その表情を見たシーナが
(ゼロさんは真面目な性格と裏腹にこういう表情が似合うなぁ)
等と少々失礼なことを思い浮かべる。
その時、大会役員が迎えに来てゼロは立ち上がった。
「マイルズさんとの約束がありますからね。勝つ気でいきますよ」
出口に向かうゼロに続いてレナも立ち上がった。
「もう初戦から出し惜しみしないでアンデッドを呼んじゃってくださいね!風の都市のネクロマンサーの存在感を示してください!」
控え室を出るゼロの背中にシーナが声を掛けた。
ゼロとレナは出場者用の通路を通って扉の前に立った。
扉の向こうは闘技大会の会場だ、そこでは試合前の前口上が流れている。
「西の門から入場するのは!平和な王国でも国境は最前線!最前線を守る国境警備隊こそ精鋭!その力を証明してみせる!去年の3位の雪辱を晴らし、狙うは最強の称号だ!国境警備隊所属のアレス・ミラー!」
口上に続いて入場した選手に会場が盛り上がる。
レナは隣に立つゼロを見上げる。
「盛り上がる口上ね。ゼロの情報もシーナさんを通じて提出してあるらしいわよ。どんな口上かしら?」
悪戯っぽく笑う。
そうこうしている間にゼロの口上が始まった。
「対する東の門から入場は、謎多き冒険者!その等級は銅でも銀でもない、黒等級の上位冒険者!彼が操るは禍々しき死霊術!己の道に誇りを持ち、手段を選ばずに依頼をこなし、ひたすらに歩んできた上位冒険者!その秘めたる実力を示せるか?風の都市の冒険者ギルド所属、ネクロマンサーのゼロ!」
会場がどよめく中でゼロの前の扉が開け放たれた。
ゼロが会場内に踏み込み、その後ろにレナが続く。
会場は超満員でゼロに向けられる視線は好奇に満ちている。
娯楽性の高い大会だ、ある意味でやられ役の悪役としては丁度いいのであろう。
だが、ゼロはその役に徹するつもりはない。
会場の中央には直径50メートル程の巨大な円形の闘技場が設けられている。
サポートのレナはその外周の4分の1程を囲むように設けられた幅2メートル程の台の上に立った。
レナはその限られた台の上のみを移動しながらゼロを援護するのだ。
闘技場を挟んで反対側にも同様の台があり、魔術師の若者が立っている。
そしてゼロが闘技場に上がった。
正面には大剣を持つ大柄な戦士が立っている。
対戦相手のアレス・ミラーだ。
ゼロとミラーが闘技場に立って向かい合うと更なる口上が始まった。
「さあ!いよいよ闘技大会の開幕です!開幕戦を飾るのは、昨年3位の実力者、国境警備隊中隊長のアレス・ミラーと、その能力は未知数、風の都市の黒等級冒険者、ネクロマンサーのゼロの対戦!お待たせしました、試合開始です!」
会場に試合開始を告げる鐘の音が鳴り響いた。
「しかし、マイルズさんの名を見て驚きましたよ」
「いや、ゼロ殿が闘技大会に出場すると聞き及びましてな、是非とも本気で剣を交えてみたいと思いたったのです。そこでセシル様の人脈をお借りしまして私も出場することにしたのです」
「そうは言っても対戦する前にどちらかが敗退したら空振りもいいとこではありませんか?」
「実は私もそれを心配しておりました。そうしましたところ、なんと2回戦で相見えることができそうで、なんとも運がいいことです」
「それにしてもですよ。私はマイルズさんと剣を交えるなんて正直言って腰が引けてしまいますよ。それ以前に1回戦すら勝てるかどうか分かりませんし」
「なにを仰いますか。お互いに命の心配をせずに本気で戦えるなんてそうそうありませんぞ。私は今から楽しみで仕方ないのです」
ゼロは肩を竦めて笑った。
「いずれにしてもお互いに1回戦敗退しないように最善を尽くしますか」
「左様ですな。セシル様も観戦に訪れるとのことです。我々の戦いを是非ともご覧になっていただきたいものです」
2人の会話の様子を見ていたシーナとレナはマイルズという老紳士の実力を計りかねていた。
確かにその佇まいに一分の隙もないが、それが貴族に仕える執事としてのものなのか、剣士としてのそれなのかが分からない。
目の前にいる紳士がゼロですら腰が引ける相手だとは想像ができなかった。
しかし、ゼロはマイルズの実力を知っている。
その上で心の奥底でマイルズと剣を合わせることを期待する感情が湧き上がってきていたのであった。
闘技大会の初日が来た。
初日の第1戦からゼロの出番である。
出場者控え室で準備を整えるゼロ。
装備は愛用の剣と予備に鎖鎌、防具は普段通りだ。
魔導具により命は守られるとはいえ、通常攻撃のダメージは受けるため、守りを疎かにするわけにはいかない。
そして大会役員から渡された魔導具を身につける。
腕輪とネックレスの2種類あるが、どちらも同じ魔導具で好きな方を選べばいいらしいが、ネックレスはチャラチャラと動いて気になるので腕輪を選ぶ。
左腕には普段から着けている魔導具があるが、右腕は空いている。
レナも同じ魔導具を着けるが、激しい動きをしないサポートなのでネックレスを選択していた。
関係者として控え室にいるシーナが対戦相手の情報をゼロ達に伝える。
「初戦の相手は国境警備隊所属のアレス・ミラーさんです。大剣を操る巨漢の剣士で大会には数年前から出場していて実績も残している実力者ですね。サポートは同じく国境警備隊所属の魔術師だそうです」
説明を聞いたレナはゼロに作戦を訊ねた。
「私はどう動けばいい?積極的に攻撃していいのかしら?」
しかし、ゼロは首を振る。
「今回は援護に徹してください。相手の魔術師の攻撃を徹底的に妨害してください。ミラーさんは私とアンデッドで倒します」
ゼロの話しを聞いてシーナとレナは揃って笑みを浮かべた。
その様子にゼロが首を傾げる。
「何ですか?」
「だって、ゼロさんこの大会に乗り気じゃなかったのに、私が倒しますって、前回大会の入賞者相手に自信があるようですね?」
シーナの言葉にゼロは不敵な笑みを浮かべた。
その表情を見たシーナが
(ゼロさんは真面目な性格と裏腹にこういう表情が似合うなぁ)
等と少々失礼なことを思い浮かべる。
その時、大会役員が迎えに来てゼロは立ち上がった。
「マイルズさんとの約束がありますからね。勝つ気でいきますよ」
出口に向かうゼロに続いてレナも立ち上がった。
「もう初戦から出し惜しみしないでアンデッドを呼んじゃってくださいね!風の都市のネクロマンサーの存在感を示してください!」
控え室を出るゼロの背中にシーナが声を掛けた。
ゼロとレナは出場者用の通路を通って扉の前に立った。
扉の向こうは闘技大会の会場だ、そこでは試合前の前口上が流れている。
「西の門から入場するのは!平和な王国でも国境は最前線!最前線を守る国境警備隊こそ精鋭!その力を証明してみせる!去年の3位の雪辱を晴らし、狙うは最強の称号だ!国境警備隊所属のアレス・ミラー!」
口上に続いて入場した選手に会場が盛り上がる。
レナは隣に立つゼロを見上げる。
「盛り上がる口上ね。ゼロの情報もシーナさんを通じて提出してあるらしいわよ。どんな口上かしら?」
悪戯っぽく笑う。
そうこうしている間にゼロの口上が始まった。
「対する東の門から入場は、謎多き冒険者!その等級は銅でも銀でもない、黒等級の上位冒険者!彼が操るは禍々しき死霊術!己の道に誇りを持ち、手段を選ばずに依頼をこなし、ひたすらに歩んできた上位冒険者!その秘めたる実力を示せるか?風の都市の冒険者ギルド所属、ネクロマンサーのゼロ!」
会場がどよめく中でゼロの前の扉が開け放たれた。
ゼロが会場内に踏み込み、その後ろにレナが続く。
会場は超満員でゼロに向けられる視線は好奇に満ちている。
娯楽性の高い大会だ、ある意味でやられ役の悪役としては丁度いいのであろう。
だが、ゼロはその役に徹するつもりはない。
会場の中央には直径50メートル程の巨大な円形の闘技場が設けられている。
サポートのレナはその外周の4分の1程を囲むように設けられた幅2メートル程の台の上に立った。
レナはその限られた台の上のみを移動しながらゼロを援護するのだ。
闘技場を挟んで反対側にも同様の台があり、魔術師の若者が立っている。
そしてゼロが闘技場に上がった。
正面には大剣を持つ大柄な戦士が立っている。
対戦相手のアレス・ミラーだ。
ゼロとミラーが闘技場に立って向かい合うと更なる口上が始まった。
「さあ!いよいよ闘技大会の開幕です!開幕戦を飾るのは、昨年3位の実力者、国境警備隊中隊長のアレス・ミラーと、その能力は未知数、風の都市の黒等級冒険者、ネクロマンサーのゼロの対戦!お待たせしました、試合開始です!」
会場に試合開始を告げる鐘の音が鳴り響いた。
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