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聖務院特務兵
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聖務院の一室、各教の大司祭が集まって密談を行っていた。
「死霊術師の審問は芳しくないらしいな」
「うむ、いくら詰問しても改める気配すらないらしい」
「しかもその死霊術師、いくら叩いても埃が出てこないようだ」
「そうすると適当な罪状による投獄も無理か」
「残された手は・・・」
「消すしかないか?」
「うむ、審問官からも伺いがあった。これ以上の拘束をしての審問に効果は期待できないと」
「しかし、抹殺となると、ことが明るみに出たときに国民の信仰に少なからず影響がでるのでは?」
「たかだか冒険者1人だ、そう大きな影響もあるまい、それよりもだ、陛下のお耳に入るようなことだけは避けねばならぬ。」
「その時には我等3人が責を負えばよいだけだ。影響が陛下や総本山の教皇閣下にまで及ぶことだけは防がねば」
彼等も陰謀を画策しているものの、それは私利私欲によるものではない。
聖職者として看過することができない死霊術や死霊術師について人々の信仰を守るために動いているだけであり、その責任の全てを背負う覚悟を持っているのだ。
ゼロが自らの職に誇りと信念を持っているように彼等も確固たる信念に基づいているために余計に始末が悪く、聖職者と死霊術師、絶対に相見えることがない両者であるが故にゼロの抹殺という選択肢が取られてしまった。
「しかし、死霊術師の審問について嗅ぎまわっている者、魔術師がいるようだ。どうやら魔導院にも接触しているらしい」
「それが魔導院からの牽制の原因か。そうなると抹殺するのも危険なのではないか?」
「魔導院への説明はどうとでもなる。彼等も政治的な混乱を望んではいまい。問題は確実に死霊術師を消すことだが、これも特務兵に任せれば問題はないだろう」
「今回は誰を投入したのだ?」
「グリジットとリングルンドの2人だ、あの2人ならばよもや失敗することもあるまい。件の魔術師共々始末してくれるだろう。既に2人は行動に移っている」
3人の大司祭は頷きあった。
その頃、街の酒場でも密談をしている人物がいた。
昼間の時間だが、店内にはそれなりに客がいて2人に気をとめる者もいない。
「例の魔術師が罠に喰いついた。滞在していた宿を引き払って姿を眩ませたよ。聖務監督官の監視を逃れたが、いずれネクロマンサーの移送を急襲してくるだろうよ」
「まあ、残念ですこと。あれほど忠告して差し上げたのに。まったく、勇ましい女って本当におバカさんですわね。」
「白々しい。最初からけしかけるために接触して牽制したのだろうに」
「あら、人聞きの悪いことを仰らないでくださいまし」
「ふん、まあどうでもいいさ。兎に角計画は実行だ、抜かりの無いように。混乱に乗じて俺はネクロマンサーを消す。あの女はお前に任せる」
「畏まりましたわ」
彼等は聖務院特務兵、聖務院の命を受けて非正規任務を請け負う少数最精鋭の兵士達だった。
その存在は公にはされておらず、聖務院内でも一部の上層部しか知らされていない極秘部隊だ。
故に聖騎士団や聖監察兵団と違ってそろいの制服を着ているわけでもなく、一般市民に紛れて作戦を実行している特殊部隊でもある。
その能力は単独での戦闘能力、諜報能力が高く、冒険者のランクに例えるならば、任命されたばかりの新兵ですら銀等級冒険者程度の能力をもっている。
そのような特殊兵が今回は2人も投入されていた。
「ネクロマンサーの移送は2日後だ」
「分かりました。私も備えるとしますわ」
2人はゼロの抹殺とレナの排除に向けて行動を本格化した。
レナはゼロの移送を襲って救出を強行すると決めた時、魔導院に赴いて自らの師匠達にその計画を告げた。
助力を求めるためではない、この計画を実行した結果、何事もなくゼロを救出できれば問題ない。
そのまま魔導院に逃げ込めばよいだけだ。
しかし、ほぼ間違いなく妨害者が介入してくるだろう、彼等との戦闘に陥れば聖務院の者を殺傷する可能性もある。
レナ自身もゼロを助けるために他者を傷つけることは本意ではない。
が、妨害者はゼロやレナを殺すつもりで介入してくる、そのような者との戦いには躊躇はしない覚悟もある。
しかし、そうなればゼロだけでなくレナまでもが聖務院を敵に回すことになる。
そうなったときに魔導院にまで責任追求が及ばないように自分を切り離して欲しい、つまり魔導院とレナは無関係、レナが行ったことに魔導院は関知しないと表明してもらうことを頼んだ。
レナの話を聞いた賢者と魔導師は彼女の計画に断固として反対した。
当然である、罠だと分かりきっているのに愛弟子を送り出すことなど出来るはずがない。
しかも、救出作戦には魔導院として積極的に介入できないとなれば尚更である。
今回の件は聖務院の暴挙であることに疑いはない。
しかしながら死霊術を看過できないという聖務院の姿勢も一理ある。
今回の件を魔導院として大事にして聖務院の責任を問うとなればそれは聖務院と魔導院の政治的衝突に発展する可能性がある。
その危険性を踏まえて省みてみれば、問題はたかだか冒険者1人の命である。
その冒険者1人のために政治的混乱を招くわけにはいかないのだ。
そのために魔導院としてはおおっぴらに行動には出られないのでレナの救出作戦に積極的な支援を行うことができないことを考えればレナの計画は無謀過ぎる。
しかし、レナの決意は固く賢者等の説得も聞き入れずに計画を実行する意志を変えようとはしない。
結論として賢者は救出の成否やその過程に関係なく速やかに魔導院に逃げ込むことを条件とした。
仮にレナ達が聖務院の兵士と衝突し、相手を殺傷したとしても、やはり政治的混乱を避けるために聖務院も大事にはせず、何らかの着地点を模索するはずだ。
その時にレナとネクロマンサーの身柄が魔導院の管理下にあれば彼女等を守ることができる。
しかし、レナの計画にある他国への逃亡では彼女等に追っ手がかかり、秘密裏に抹殺される危険性を孕んでいるのだ。
そのためにいかなる結果であろうとも魔導院へ戻ることをレナに約束させた。
これがレナの師として最大限の親心だった。
レナは2人に深々と頭を下げてゼロの救出に向かった。
聖務院と魔導院、聖務院特務兵にレナとゼロ、そして未だ表に出ずに秘密裏に行動している者、様々な者達の思惑が交錯する戦いが始まろうとしていた。
「死霊術師の審問は芳しくないらしいな」
「うむ、いくら詰問しても改める気配すらないらしい」
「しかもその死霊術師、いくら叩いても埃が出てこないようだ」
「そうすると適当な罪状による投獄も無理か」
「残された手は・・・」
「消すしかないか?」
「うむ、審問官からも伺いがあった。これ以上の拘束をしての審問に効果は期待できないと」
「しかし、抹殺となると、ことが明るみに出たときに国民の信仰に少なからず影響がでるのでは?」
「たかだか冒険者1人だ、そう大きな影響もあるまい、それよりもだ、陛下のお耳に入るようなことだけは避けねばならぬ。」
「その時には我等3人が責を負えばよいだけだ。影響が陛下や総本山の教皇閣下にまで及ぶことだけは防がねば」
彼等も陰謀を画策しているものの、それは私利私欲によるものではない。
聖職者として看過することができない死霊術や死霊術師について人々の信仰を守るために動いているだけであり、その責任の全てを背負う覚悟を持っているのだ。
ゼロが自らの職に誇りと信念を持っているように彼等も確固たる信念に基づいているために余計に始末が悪く、聖職者と死霊術師、絶対に相見えることがない両者であるが故にゼロの抹殺という選択肢が取られてしまった。
「しかし、死霊術師の審問について嗅ぎまわっている者、魔術師がいるようだ。どうやら魔導院にも接触しているらしい」
「それが魔導院からの牽制の原因か。そうなると抹殺するのも危険なのではないか?」
「魔導院への説明はどうとでもなる。彼等も政治的な混乱を望んではいまい。問題は確実に死霊術師を消すことだが、これも特務兵に任せれば問題はないだろう」
「今回は誰を投入したのだ?」
「グリジットとリングルンドの2人だ、あの2人ならばよもや失敗することもあるまい。件の魔術師共々始末してくれるだろう。既に2人は行動に移っている」
3人の大司祭は頷きあった。
その頃、街の酒場でも密談をしている人物がいた。
昼間の時間だが、店内にはそれなりに客がいて2人に気をとめる者もいない。
「例の魔術師が罠に喰いついた。滞在していた宿を引き払って姿を眩ませたよ。聖務監督官の監視を逃れたが、いずれネクロマンサーの移送を急襲してくるだろうよ」
「まあ、残念ですこと。あれほど忠告して差し上げたのに。まったく、勇ましい女って本当におバカさんですわね。」
「白々しい。最初からけしかけるために接触して牽制したのだろうに」
「あら、人聞きの悪いことを仰らないでくださいまし」
「ふん、まあどうでもいいさ。兎に角計画は実行だ、抜かりの無いように。混乱に乗じて俺はネクロマンサーを消す。あの女はお前に任せる」
「畏まりましたわ」
彼等は聖務院特務兵、聖務院の命を受けて非正規任務を請け負う少数最精鋭の兵士達だった。
その存在は公にはされておらず、聖務院内でも一部の上層部しか知らされていない極秘部隊だ。
故に聖騎士団や聖監察兵団と違ってそろいの制服を着ているわけでもなく、一般市民に紛れて作戦を実行している特殊部隊でもある。
その能力は単独での戦闘能力、諜報能力が高く、冒険者のランクに例えるならば、任命されたばかりの新兵ですら銀等級冒険者程度の能力をもっている。
そのような特殊兵が今回は2人も投入されていた。
「ネクロマンサーの移送は2日後だ」
「分かりました。私も備えるとしますわ」
2人はゼロの抹殺とレナの排除に向けて行動を本格化した。
レナはゼロの移送を襲って救出を強行すると決めた時、魔導院に赴いて自らの師匠達にその計画を告げた。
助力を求めるためではない、この計画を実行した結果、何事もなくゼロを救出できれば問題ない。
そのまま魔導院に逃げ込めばよいだけだ。
しかし、ほぼ間違いなく妨害者が介入してくるだろう、彼等との戦闘に陥れば聖務院の者を殺傷する可能性もある。
レナ自身もゼロを助けるために他者を傷つけることは本意ではない。
が、妨害者はゼロやレナを殺すつもりで介入してくる、そのような者との戦いには躊躇はしない覚悟もある。
しかし、そうなればゼロだけでなくレナまでもが聖務院を敵に回すことになる。
そうなったときに魔導院にまで責任追求が及ばないように自分を切り離して欲しい、つまり魔導院とレナは無関係、レナが行ったことに魔導院は関知しないと表明してもらうことを頼んだ。
レナの話を聞いた賢者と魔導師は彼女の計画に断固として反対した。
当然である、罠だと分かりきっているのに愛弟子を送り出すことなど出来るはずがない。
しかも、救出作戦には魔導院として積極的に介入できないとなれば尚更である。
今回の件は聖務院の暴挙であることに疑いはない。
しかしながら死霊術を看過できないという聖務院の姿勢も一理ある。
今回の件を魔導院として大事にして聖務院の責任を問うとなればそれは聖務院と魔導院の政治的衝突に発展する可能性がある。
その危険性を踏まえて省みてみれば、問題はたかだか冒険者1人の命である。
その冒険者1人のために政治的混乱を招くわけにはいかないのだ。
そのために魔導院としてはおおっぴらに行動には出られないのでレナの救出作戦に積極的な支援を行うことができないことを考えればレナの計画は無謀過ぎる。
しかし、レナの決意は固く賢者等の説得も聞き入れずに計画を実行する意志を変えようとはしない。
結論として賢者は救出の成否やその過程に関係なく速やかに魔導院に逃げ込むことを条件とした。
仮にレナ達が聖務院の兵士と衝突し、相手を殺傷したとしても、やはり政治的混乱を避けるために聖務院も大事にはせず、何らかの着地点を模索するはずだ。
その時にレナとネクロマンサーの身柄が魔導院の管理下にあれば彼女等を守ることができる。
しかし、レナの計画にある他国への逃亡では彼女等に追っ手がかかり、秘密裏に抹殺される危険性を孕んでいるのだ。
そのためにいかなる結果であろうとも魔導院へ戻ることをレナに約束させた。
これがレナの師として最大限の親心だった。
レナは2人に深々と頭を下げてゼロの救出に向かった。
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