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死の森の主1
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ゼロ達3人は集落を出発して森の奥に進んだ。
これ以上のハイエルフとのトラブルを回避するためにハイエルフの集落を大きく回避しながらの行程だったため、目的地への到着に3日を要することとなった。
因みに、イズとリズはゼロに合わせて地を歩いているが、身軽な2人は木の枝から枝へと跳び渡りながら進んだ方が早いらしい。
その3日目の昼前には徐々に森の様子が変わってきたことに気が付く。
それまでは大樹や草花が生い茂り、魔物を含めて動植物が伸び伸びと暮らす豊かな森であったのが、徐々に枯れた植物が目立つようになり、生物の気配も少なくなってきていた。
空気ですら澱んできているようだ。
「雰囲気が変わりましたね」
ゼロの呟きにイズが頷いた。
「はい、もう少し進むと草木は完全に枯れ果て、精霊の居ない死の森になります。そこまで行くと私達は精霊魔法を使えなくなります」
エルフの殆どが精霊魔法を操る精霊使いであるが、それ故に魔法の行使には精霊の力を借りることになるのだ。
ハイエルフは風の精霊シルフ、水の精霊ウンディーネと相性が良く、ダークエルフ改めシルバーエルフは火の精霊サラマンダーや地の精霊ノームと相性が良い。
ただ、それは相性だけのことで、ハイエルフもサラマンダーやノームを使えるし、逆もまた然りである。
生物学的にいえば、本来エルフとはハイエルフやダークエルフ等と区別されることはなく、その全ての総称であるはずだった。
人間の肌や髪色に違いがあるのと同じである。
ただ長い歴史の中で様々なすれ違いを繰り返し、いつしか色白の肌でプラチナブロンドの髪のエルフをハイエルフ、褐色の肌に銀髪のエルフをダークエルフと呼ぶようになり、相互の亀裂は深いものとなってきたのであった。
因みに、人間とエルフの間に生まれた子供はハーフエルフと呼ばれている。
そんなシルバーエルフのイズとリズは年齢が240歳とのことで、長命のエルフとしては若者であり、人間に換算すればゼロと同年代になるそうだ。
イズ・フェリスが兄でリズ・フェリスが妹、2人とも切れ上がった目が特徴的で全てのエルフがそうであるように顔立ちが非常に整っている。
イズは革鎧を着込み、左右の腰にサーベルを帯びている。
聞けば地の精霊魔法が得意で、武器は両手にサーベルを持っての近接戦闘が得意とのこと。
妹のリズは革製の胸当てを着て、武器は弓矢を持っている。
兄とは対照的に火の精霊魔法や弓矢での遠距離攻撃に長けているそうだ。
そんな双子のエルフだが、集落の若者が次々と旅立つ中、一度は冒険者になろうと考えたが、集落の若者が居なくなると、それは森の守りの担い手が居なくなることを意味し、森の守人になる道を選んだとのことだった。
それ故に大切な森が死ぬことが耐え難いのに、本来ならば共に対処に当たらなければならない筈のハイエルフとのトラブルが発生してしまった。
問題解決のためにあらゆる手を考えた結果、冒険者を雇うことを決めたのだが、自分達一族に対して向けられる目を考えると依頼を受けてくれる冒険者が現れるかどうか、半信半疑であり、半ば諦めていたところに運命に導かれたゼロがこの森に来たのであった。
「ゼロ様、ここから先は死の森です。何が起きているのか私達にも分かりません。くれぐれもお気をつけください」
リズも不安げな表情だ。
死の森に入る直前になりゼロはバンシーとスペクター2体、計3体のアンデッドを召喚した。
イズもリズも驚きの表情を浮かべるが、そこに畏怖は無い、純粋に感嘆しているそれだった。
「これから死の森といわれる場に立ち入ります。何があるのか、何がいるのか、何が起きているのか予測がつきません。今回は調査が主たる目的です、それぞれは偵察に徹しなさい。特に毒気の類は見逃さずに報告してください」
ゼロの指示を受けたアンデッドはそれぞれ別方向に散って行った。
「さて、私達も進みましょう」
「「はい!」」
3人は歩を進めた。
やがていよいよ死の森に到達したのか、木々は完全に枯れ果て、動物の気配も無くなった。
それどころか、魔物がいる気配すら無い。
風も無く、空気は停滞して澱んでいる。
まるで枯れた森のまま時間が止まっているようだった。
「ひどい・・・」
リズが呟いた。
ゼロも周囲を観察する。
「空気や土に毒気があるわけでもなさそうですね」
イズも何かを感じているようで険しい表情だ。
「本当に精霊がいません。風や地の精霊はおろか、もっと小さい花や木の精霊すらも。いったい何が起きているんだ」
精霊がいないとなると精霊使いのエルフは精霊魔法を行使できなくなる。
ゼロが試しに火炎魔法を放ってみると、問題なく使えたが、普段よりも威力が落ちているように感じる。
さらにウィル・オー・ザ・ウィスプを召喚して火炎魔法を放ってみたが、結果は同じだった。
「これは、空気が澱んでいるせいで燃焼力が弱まっているんでしょうか?いずれにしても威力が3割ほど落ちているようですね」
ゼロは分析した。
その分析にリズが質問する。
「それは、どういうことなんですか?」
「ああ、私や魔術師が使う魔法は自分の魔力を火や水等に変質させて行使するんですが、放った際に大気中の酸素や水分なんかも取り込んで威力を増すんです。ただ、この森ではその大気中の成分を殆ど取り込むことができないようですね」
こうなると何等かの敵に遭遇しても精霊魔法を使えないイズとリズは物理戦闘のみ、ゼロやそのアンデッドは物理戦闘と威力の落ちた魔法だけに頼ることになる。
「いささか厳しいですね。兎に角慎重に進みましょう」
3人は更に奥に進んだが、目の前に広がる光景に変化はなく、正に死の森と呼ぶのに相応しい森であった。
異変が訪れたのは半日程調査を進め、3人が休憩を取っている時だった。
偵察に出していたスペクターの1体が舞い戻ってきて、もう1体のスペクターとバンシーが戦闘状態に入ったと報告してきたのだ。
「イズさん、リズさん!行きますよ。決して油断しないでください!」
「「はいっ!」」
スペクターに先導された3人は死の森の更に奥へと急いだ。
これ以上のハイエルフとのトラブルを回避するためにハイエルフの集落を大きく回避しながらの行程だったため、目的地への到着に3日を要することとなった。
因みに、イズとリズはゼロに合わせて地を歩いているが、身軽な2人は木の枝から枝へと跳び渡りながら進んだ方が早いらしい。
その3日目の昼前には徐々に森の様子が変わってきたことに気が付く。
それまでは大樹や草花が生い茂り、魔物を含めて動植物が伸び伸びと暮らす豊かな森であったのが、徐々に枯れた植物が目立つようになり、生物の気配も少なくなってきていた。
空気ですら澱んできているようだ。
「雰囲気が変わりましたね」
ゼロの呟きにイズが頷いた。
「はい、もう少し進むと草木は完全に枯れ果て、精霊の居ない死の森になります。そこまで行くと私達は精霊魔法を使えなくなります」
エルフの殆どが精霊魔法を操る精霊使いであるが、それ故に魔法の行使には精霊の力を借りることになるのだ。
ハイエルフは風の精霊シルフ、水の精霊ウンディーネと相性が良く、ダークエルフ改めシルバーエルフは火の精霊サラマンダーや地の精霊ノームと相性が良い。
ただ、それは相性だけのことで、ハイエルフもサラマンダーやノームを使えるし、逆もまた然りである。
生物学的にいえば、本来エルフとはハイエルフやダークエルフ等と区別されることはなく、その全ての総称であるはずだった。
人間の肌や髪色に違いがあるのと同じである。
ただ長い歴史の中で様々なすれ違いを繰り返し、いつしか色白の肌でプラチナブロンドの髪のエルフをハイエルフ、褐色の肌に銀髪のエルフをダークエルフと呼ぶようになり、相互の亀裂は深いものとなってきたのであった。
因みに、人間とエルフの間に生まれた子供はハーフエルフと呼ばれている。
そんなシルバーエルフのイズとリズは年齢が240歳とのことで、長命のエルフとしては若者であり、人間に換算すればゼロと同年代になるそうだ。
イズ・フェリスが兄でリズ・フェリスが妹、2人とも切れ上がった目が特徴的で全てのエルフがそうであるように顔立ちが非常に整っている。
イズは革鎧を着込み、左右の腰にサーベルを帯びている。
聞けば地の精霊魔法が得意で、武器は両手にサーベルを持っての近接戦闘が得意とのこと。
妹のリズは革製の胸当てを着て、武器は弓矢を持っている。
兄とは対照的に火の精霊魔法や弓矢での遠距離攻撃に長けているそうだ。
そんな双子のエルフだが、集落の若者が次々と旅立つ中、一度は冒険者になろうと考えたが、集落の若者が居なくなると、それは森の守りの担い手が居なくなることを意味し、森の守人になる道を選んだとのことだった。
それ故に大切な森が死ぬことが耐え難いのに、本来ならば共に対処に当たらなければならない筈のハイエルフとのトラブルが発生してしまった。
問題解決のためにあらゆる手を考えた結果、冒険者を雇うことを決めたのだが、自分達一族に対して向けられる目を考えると依頼を受けてくれる冒険者が現れるかどうか、半信半疑であり、半ば諦めていたところに運命に導かれたゼロがこの森に来たのであった。
「ゼロ様、ここから先は死の森です。何が起きているのか私達にも分かりません。くれぐれもお気をつけください」
リズも不安げな表情だ。
死の森に入る直前になりゼロはバンシーとスペクター2体、計3体のアンデッドを召喚した。
イズもリズも驚きの表情を浮かべるが、そこに畏怖は無い、純粋に感嘆しているそれだった。
「これから死の森といわれる場に立ち入ります。何があるのか、何がいるのか、何が起きているのか予測がつきません。今回は調査が主たる目的です、それぞれは偵察に徹しなさい。特に毒気の類は見逃さずに報告してください」
ゼロの指示を受けたアンデッドはそれぞれ別方向に散って行った。
「さて、私達も進みましょう」
「「はい!」」
3人は歩を進めた。
やがていよいよ死の森に到達したのか、木々は完全に枯れ果て、動物の気配も無くなった。
それどころか、魔物がいる気配すら無い。
風も無く、空気は停滞して澱んでいる。
まるで枯れた森のまま時間が止まっているようだった。
「ひどい・・・」
リズが呟いた。
ゼロも周囲を観察する。
「空気や土に毒気があるわけでもなさそうですね」
イズも何かを感じているようで険しい表情だ。
「本当に精霊がいません。風や地の精霊はおろか、もっと小さい花や木の精霊すらも。いったい何が起きているんだ」
精霊がいないとなると精霊使いのエルフは精霊魔法を行使できなくなる。
ゼロが試しに火炎魔法を放ってみると、問題なく使えたが、普段よりも威力が落ちているように感じる。
さらにウィル・オー・ザ・ウィスプを召喚して火炎魔法を放ってみたが、結果は同じだった。
「これは、空気が澱んでいるせいで燃焼力が弱まっているんでしょうか?いずれにしても威力が3割ほど落ちているようですね」
ゼロは分析した。
その分析にリズが質問する。
「それは、どういうことなんですか?」
「ああ、私や魔術師が使う魔法は自分の魔力を火や水等に変質させて行使するんですが、放った際に大気中の酸素や水分なんかも取り込んで威力を増すんです。ただ、この森ではその大気中の成分を殆ど取り込むことができないようですね」
こうなると何等かの敵に遭遇しても精霊魔法を使えないイズとリズは物理戦闘のみ、ゼロやそのアンデッドは物理戦闘と威力の落ちた魔法だけに頼ることになる。
「いささか厳しいですね。兎に角慎重に進みましょう」
3人は更に奥に進んだが、目の前に広がる光景に変化はなく、正に死の森と呼ぶのに相応しい森であった。
異変が訪れたのは半日程調査を進め、3人が休憩を取っている時だった。
偵察に出していたスペクターの1体が舞い戻ってきて、もう1体のスペクターとバンシーが戦闘状態に入ったと報告してきたのだ。
「イズさん、リズさん!行きますよ。決して油断しないでください!」
「「はいっ!」」
スペクターに先導された3人は死の森の更に奥へと急いだ。
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