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双子のエルフ
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「申し訳ありません」
2人のエルフはゼロの前に膝をついて無礼を謝罪した。
「依頼を出しはしましたが、本当に受けてもらえるかどうか、不安だったのです」
2人の様子を見てゼロも釣られて膝をついてしまう。
「とりあえず頭を上げてください。詳しい話を聞かないといけませんし」
促されて2人は立ち上がって名を名乗った。
2人は双子の兄妹で兄がイズ・フェリス、妹がリズ・フェリス、ギルドに依頼を出した依頼主だった。
「私はゼロ、ギルドから依頼を受けて来ました死霊術師です」
イズとリズは顔を見合わせる。
「風の都市のネクロマンサーって、噂に聞きましたが、黒等級のネクロマンサーですか?」
リズが信じられなそうな表情でゼロを見る。
「その通りです。胡散臭い者ですみません」
リズは慌てて否定する。
「いえっ、そんな意味じゃないんです。依頼を受けてくれるだけでも予想外なのに、まさか上位の冒険者が来てくれるなんて思っていませんでしたから」
ゼロは苦笑する。
「依頼受諾が意外とは、可笑しなことを言いますね」
「確かにそのとおりなのですが、何分にも私達一族に向けられる目が決して良いものではないので、駄目で元々のつもりだったのです」
答えるイズも自虐的に笑った。
「とりあえず私達の集落に案内します。詳しいことはそちらで」
イズは詳しい依頼の内容を説明すると言ってゼロを集落に案内した。
集落に到着してみると、集落には30人程のエルフがいた。
集落としては数が少ない上、老人の姿が目立つ。
エルフの年齢は人間とかけ離れているので一概には判断できないが、イズ達の年代の若いエルフは10人も居ない。
ゼロは長老の家に招かれたが、そこでこの集落の実情を聞いた。
若者達は殆どが集落を出てしまっているとのことで、残されたのは集落に残ることを選択したイズ等の若者8名の他に3人の子供とその母親達、他は老人だけであった。
それでも静かな森でひっそりと暮らしていたのだが、数ヶ月前に事情が変わった。
更に森の奥に暮らしていたハイエルフの一族から森を明け渡すように要求されたとのことだった。
「同じエルフ同士で明け渡せとは穏やかではありませんね。これだけ広い森なのですから共存すればよいのではありませんか?」
ゼロの疑問に長老のエルフは首を振る。
「彼等は我々をダークエルフとか土エルフと蔑んでいるのだ。我々を同族とは思っておらんよ。現に何百年も同じ森に住みながら全く交流も無かったからの」
それを聞いたゼロは呆れ顔だ。
「私の勝手な印象ですが、エルフとはもっと高潔な考えを持っているのだと思ってました」
「まったくもって情けないものだよ」
長老の言葉に同席している他のエルフ達も頷く。
「しかし、急に奥から出てくるとは、何かがあったのですかね?」
ゼロは疑問を感じた。
数百年も住み続けた地を捨てて他の部族の居住地を奪うなんて、森の奥で何事かが発生しているとしか考えられない。
長老に変わってイズが口を開く。
「詳しいことは分かりませんが、ハイエルフが住む森が死んでしまったようです」
「森が死んだ?」
イズの説明をゼロは理解できない。
リズが説明する。
「私達エルフは精霊と共に生きています。ハイエルフは風や水の精霊と仲がよく、私達は火や大地の精霊と相性がいいのです。森が死ぬとは、その森に住む精霊が居なくなり、木々が枯れ、大地や水が汚されたのだと思います。そこで住むことができなくなった彼等はその地を離れてここに来たのだと思います」
「それで貴方達に出ていけとは、随分と無茶な要求ですね。そうしますと、私への依頼とはハイエルフの要求を突き放す手伝いですか?」
しかし、その場に居るエルフ達が慌てて否定する。
「私達は争いを望んでいません。いくらダークエルフと呼ばれようと、私達はこの地で静かに過ごしたいのです」
「そうしますと、私は何をすれば?」
ゼロの問いにリズが答える。
「ゼロ様には森の奥で何が起きたのかを調べて欲しいのです。本来ならば私達が調べなければいけないのですが、精霊が居なくなった地では私達はその力を十分に発揮できないのです」
精霊使いであるエルフが精霊の居ない地で活動するのは大きな危険が伴うらしい。
そこで冒険者に依頼して調査して貰おうとなったわけである。
「ああ、そういうことですか」
リズに続いてイズが説明する。
「森の奥で何が起きたのかが分かれば解決の糸口が見つかるかもしれません。そのための調査をお願いしたいのです。それと、もう1つお願いがあります」
「なんですか?」
「明日、ハイエルフ達が明け渡しの要求のためにこの集落を訪れます。その話し合いの席に同席して欲しいのです。ギルドの冒険者が同席している前では彼等も無茶なことは言わないでしょうから」
ゼロは頷いた。
「分かりました。同席させて貰います。彼等から何か情報を得られるかもしれませんしね」
ゼロの言葉にその場にいたエルフ達が深々と頭を垂れた。
「ゼロ様が依頼を受けてくれた以上は私達は全力を持って従わさせていただきます。私達はダークエルフと蔑まれておりますが、誇りだけは失っておりません」
「調査の際には私と兄が案内を務めさせていただきます。ダークエルフとご一緒ではお嫌かもしれませんが、同行をお許しください」
イズとリズの言葉にゼロは渋い顔を浮かべる。
「それ止めませんか」
「え?」
「ダークエルフって正式な呼び名なんですか?何だか印象が良くないですよね?」
「正式な呼び名ではないのですが、私達褐色の肌に銀髪のエルフはもう何百年も周りからダークエルフと呼ばれております。特にハイエルフ達は自分達と我々を区別するためにそのように呼んでいるのです」
リズの話しを眉間に皺を寄せて聞いていたゼロは何かが閃いたように口を開いた。
「望んでそう名乗っているわけではないんですね?周りが勝手に呼んでいるならば私も勝手に別の名前で呼んでいいですか?」
「え?」
「私は個人的にダークエルフって呼ぶのにどうしても抵抗があるんですよね。だから、私は貴方達をシルバーエルフと勝手に呼ばせて貰っていいですか?」
「シルバーエルフ?」
「はい、美しい銀髪からのイメージです。嫌ならば他の呼び方を考えますが?」
その場にいたエルフ達がざわつき、互いに頷きあっている。
挙げ句に全員が頭を垂れるどころか平伏して声を揃えた。
「我等一族はゼロ様に賜りましたシルバーエルフの名を誇りを持って名乗らせていただきます」
その迫力にゼロは圧倒された。
「いや、あの、賜るとかそんなに大袈裟なものではありません。私が勝手にそう呼ぶだけですから」
しかし長老はしっかりとゼロを見た。
「いや、私達は誇りを失っていないと言っておきながらダークエルフと呼ばれ、蔑まれることを甘受してしまっておりました。ダークエルフと呼ばれること、虐げられることを当たり前、仕方のないことだと私達が受け入れてしまっていたのです。今、ゼロ様にシルバーエルフの名を賜り、改めて自分達が誇りあるエルフの一族であると思い出せました。今後私達はシルバーエルフと名乗り、真の誇りを持っていくことを決意しました」
ダークエルフ改めシルバーエルフ達は一族の確固たる意思を持って翌日の交渉に当たることを決意した。
言いなりになる、虐げられていた今までとは違う、同じエルフとして共存と問題解決の道を探らなければいけないのである。
その夜、ゼロはささやかながらシルバーエルフ達の歓待を受け、翌日の交渉の席に挑むこととなった。
2人のエルフはゼロの前に膝をついて無礼を謝罪した。
「依頼を出しはしましたが、本当に受けてもらえるかどうか、不安だったのです」
2人の様子を見てゼロも釣られて膝をついてしまう。
「とりあえず頭を上げてください。詳しい話を聞かないといけませんし」
促されて2人は立ち上がって名を名乗った。
2人は双子の兄妹で兄がイズ・フェリス、妹がリズ・フェリス、ギルドに依頼を出した依頼主だった。
「私はゼロ、ギルドから依頼を受けて来ました死霊術師です」
イズとリズは顔を見合わせる。
「風の都市のネクロマンサーって、噂に聞きましたが、黒等級のネクロマンサーですか?」
リズが信じられなそうな表情でゼロを見る。
「その通りです。胡散臭い者ですみません」
リズは慌てて否定する。
「いえっ、そんな意味じゃないんです。依頼を受けてくれるだけでも予想外なのに、まさか上位の冒険者が来てくれるなんて思っていませんでしたから」
ゼロは苦笑する。
「依頼受諾が意外とは、可笑しなことを言いますね」
「確かにそのとおりなのですが、何分にも私達一族に向けられる目が決して良いものではないので、駄目で元々のつもりだったのです」
答えるイズも自虐的に笑った。
「とりあえず私達の集落に案内します。詳しいことはそちらで」
イズは詳しい依頼の内容を説明すると言ってゼロを集落に案内した。
集落に到着してみると、集落には30人程のエルフがいた。
集落としては数が少ない上、老人の姿が目立つ。
エルフの年齢は人間とかけ離れているので一概には判断できないが、イズ達の年代の若いエルフは10人も居ない。
ゼロは長老の家に招かれたが、そこでこの集落の実情を聞いた。
若者達は殆どが集落を出てしまっているとのことで、残されたのは集落に残ることを選択したイズ等の若者8名の他に3人の子供とその母親達、他は老人だけであった。
それでも静かな森でひっそりと暮らしていたのだが、数ヶ月前に事情が変わった。
更に森の奥に暮らしていたハイエルフの一族から森を明け渡すように要求されたとのことだった。
「同じエルフ同士で明け渡せとは穏やかではありませんね。これだけ広い森なのですから共存すればよいのではありませんか?」
ゼロの疑問に長老のエルフは首を振る。
「彼等は我々をダークエルフとか土エルフと蔑んでいるのだ。我々を同族とは思っておらんよ。現に何百年も同じ森に住みながら全く交流も無かったからの」
それを聞いたゼロは呆れ顔だ。
「私の勝手な印象ですが、エルフとはもっと高潔な考えを持っているのだと思ってました」
「まったくもって情けないものだよ」
長老の言葉に同席している他のエルフ達も頷く。
「しかし、急に奥から出てくるとは、何かがあったのですかね?」
ゼロは疑問を感じた。
数百年も住み続けた地を捨てて他の部族の居住地を奪うなんて、森の奥で何事かが発生しているとしか考えられない。
長老に変わってイズが口を開く。
「詳しいことは分かりませんが、ハイエルフが住む森が死んでしまったようです」
「森が死んだ?」
イズの説明をゼロは理解できない。
リズが説明する。
「私達エルフは精霊と共に生きています。ハイエルフは風や水の精霊と仲がよく、私達は火や大地の精霊と相性がいいのです。森が死ぬとは、その森に住む精霊が居なくなり、木々が枯れ、大地や水が汚されたのだと思います。そこで住むことができなくなった彼等はその地を離れてここに来たのだと思います」
「それで貴方達に出ていけとは、随分と無茶な要求ですね。そうしますと、私への依頼とはハイエルフの要求を突き放す手伝いですか?」
しかし、その場に居るエルフ達が慌てて否定する。
「私達は争いを望んでいません。いくらダークエルフと呼ばれようと、私達はこの地で静かに過ごしたいのです」
「そうしますと、私は何をすれば?」
ゼロの問いにリズが答える。
「ゼロ様には森の奥で何が起きたのかを調べて欲しいのです。本来ならば私達が調べなければいけないのですが、精霊が居なくなった地では私達はその力を十分に発揮できないのです」
精霊使いであるエルフが精霊の居ない地で活動するのは大きな危険が伴うらしい。
そこで冒険者に依頼して調査して貰おうとなったわけである。
「ああ、そういうことですか」
リズに続いてイズが説明する。
「森の奥で何が起きたのかが分かれば解決の糸口が見つかるかもしれません。そのための調査をお願いしたいのです。それと、もう1つお願いがあります」
「なんですか?」
「明日、ハイエルフ達が明け渡しの要求のためにこの集落を訪れます。その話し合いの席に同席して欲しいのです。ギルドの冒険者が同席している前では彼等も無茶なことは言わないでしょうから」
ゼロは頷いた。
「分かりました。同席させて貰います。彼等から何か情報を得られるかもしれませんしね」
ゼロの言葉にその場にいたエルフ達が深々と頭を垂れた。
「ゼロ様が依頼を受けてくれた以上は私達は全力を持って従わさせていただきます。私達はダークエルフと蔑まれておりますが、誇りだけは失っておりません」
「調査の際には私と兄が案内を務めさせていただきます。ダークエルフとご一緒ではお嫌かもしれませんが、同行をお許しください」
イズとリズの言葉にゼロは渋い顔を浮かべる。
「それ止めませんか」
「え?」
「ダークエルフって正式な呼び名なんですか?何だか印象が良くないですよね?」
「正式な呼び名ではないのですが、私達褐色の肌に銀髪のエルフはもう何百年も周りからダークエルフと呼ばれております。特にハイエルフ達は自分達と我々を区別するためにそのように呼んでいるのです」
リズの話しを眉間に皺を寄せて聞いていたゼロは何かが閃いたように口を開いた。
「望んでそう名乗っているわけではないんですね?周りが勝手に呼んでいるならば私も勝手に別の名前で呼んでいいですか?」
「え?」
「私は個人的にダークエルフって呼ぶのにどうしても抵抗があるんですよね。だから、私は貴方達をシルバーエルフと勝手に呼ばせて貰っていいですか?」
「シルバーエルフ?」
「はい、美しい銀髪からのイメージです。嫌ならば他の呼び方を考えますが?」
その場にいたエルフ達がざわつき、互いに頷きあっている。
挙げ句に全員が頭を垂れるどころか平伏して声を揃えた。
「我等一族はゼロ様に賜りましたシルバーエルフの名を誇りを持って名乗らせていただきます」
その迫力にゼロは圧倒された。
「いや、あの、賜るとかそんなに大袈裟なものではありません。私が勝手にそう呼ぶだけですから」
しかし長老はしっかりとゼロを見た。
「いや、私達は誇りを失っていないと言っておきながらダークエルフと呼ばれ、蔑まれることを甘受してしまっておりました。ダークエルフと呼ばれること、虐げられることを当たり前、仕方のないことだと私達が受け入れてしまっていたのです。今、ゼロ様にシルバーエルフの名を賜り、改めて自分達が誇りあるエルフの一族であると思い出せました。今後私達はシルバーエルフと名乗り、真の誇りを持っていくことを決意しました」
ダークエルフ改めシルバーエルフ達は一族の確固たる意思を持って翌日の交渉に当たることを決意した。
言いなりになる、虐げられていた今までとは違う、同じエルフとして共存と問題解決の道を探らなければいけないのである。
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