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エルフの森へ
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いつもどおり早い時間にギルドに顔を出したゼロは掲示板に貼られた依頼の一つに目を止めた。
他の依頼書が被さるように、貼られた依頼書はまるで意図的に目立たないように貼られているようだった。
「エルフからの依頼?」
ゼロは依頼書を手にとって見た。
依頼内容は都市の南東に位置する森に住むエルフからの依頼で細かい内容は記載されていない。
「変な依頼ですね」
エルフからの依頼であれば他の冒険者が受けるだろうと思って依頼書を掲示板に戻し、何時もの地下水道の依頼を受けることにする。
翌日、再び掲示板を見ると未だにエルフからの依頼が残っているが、あまり気にしない。
しかし、更に数日が経過しても残されている依頼書を見て再び手に取ってみて、カウンターに向かい、カウンターにいた職員に差し出す。
「この依頼なんですが、ずっと残っていますけど、何か特異な案件なんですか?」
依頼書を確認した若い女性職員は声を潜めた。
「実は、エルフの森で何らかの異変があり、それを発端に部族間のトラブルになっているみたいなんです。そして、依頼を出してきたのがダークエルフ族の方で、トラブルの相手方はハイエルフの一族らしいんです。」
つまりはハイエルフを敵に回したくない冒険者が誰も受けなかったのである。
「依頼を出されたからにはギルドとして斡旋しますけど、正直誰も受けないと思います。所属している冒険者さんの中にはダークエルフの方も数人いますが、その方達も受けてくれませんから。」
女性職員は諦めの表情だった。
ギルドに出された依頼は一定期間だれも受諾しないと報酬金ごと依頼者に返還される。
それを避けるためにギルドが適任者に打診することも多く、残り物の依頼を積極的に受けるゼロも打診されることが多い。
しかし、この依頼に関してはハイエルフを敵に回して冒険者としての今後の活動に支障が出る可能性があるため、ゼロに打診することすら避けられていたのである。
「依頼不受諾は避けたいところですが、こればかりは仕方がないですよね」
「受けます」
「ダークエルフの方には悪いで・・え?」
「この依頼、私が受けます」
女性職員は意外そうな表情を浮かべる。
「本気ですか?」
「はい、誰も受けないならば私が受けます」
「助かります。それでは・・・っ!」
「ちょっと待ってください!」
その時、他のカウンターでの応対を終えたシーナが女性職員を押しのけて割り込んできた。
「ゼロさん、ちょっと待ってください。もう一度考えてみてください。この依頼、エルフの森で異変が起きている。部族間のトラブルになっている。だけの情報で後は森に来てから説明するって内容なんです。ちょっと胡散臭い依頼なんですよ。だから無理して受けなくてもいいですから」
珍しくシーナですら依頼受諾を止めようとする。
実は、この依頼を誰も受けなかった時にギルド内でゼロに打診するという意見があった。
ゼロならば断らないだろうとの期待からのものだったが、それにシーナが頑なに反対した。
「いつもゼロさんにばかり頼るのは良くないです!ゼロさんなら断らないでしょうけど、ギルドとしてそれを当たり前と考えて甘えてはいけないと思います!」
との意見をギルド長や一部の職員も支持したのだった。
シーナの心の中ではこれ以上ゼロの評判が下がるのを避けたいとの思惑もあった。
そのような経緯でゼロに打診することは止められた。
依頼書を貼り出す際にもシーナが他の依頼書に紛れ込ませるように、目立たないように貼ったのだが、まるでそれが運命であるかのようにゼロの目に留まってしまったのであった。
ゼロは首を傾げながら
「正規に出された依頼ですよね?依頼者も困っているのでしょう。私が受けますよ」
「いや、でも・・・その」
ゼロが依頼書を差し出すが、シーナも歯切れが悪い。
それも仕方のないことである、ゼロがネクロマンサーとして人々から避けられるように、ダークエルフもあまり評判が良くない。
かつては一部のダークエルフが闇の軍勢に与していたのも事実であり、また、ダークエルフにはシーフや傭兵、アサシンを生業している者も多い。
それはダークエルフに限ったことではなく、人間も同じであるのだが、イメージが先走って悪い印象を持たれてしまうのである。
更にダークエルフとハイエルフのいざこざでダークエルフに力を貸したとなると周囲からは悪印象を持たれることは必至である。
しかし、例によってそんなことをゼロは気にしない。
「他に受ける人も居ないのでしょう?ならば私が受けます」
ゼロの意見は変わらない、こうなるとシーナも引き下がるしかなく、最初に応対した女性職員に場を明け渡す。
その後、依頼受諾の手続きを済ませたゼロは早速エルフの森に向かって出発した。
旅立つゼロの姿をシーナは営業スマイルを維持できず、苦虫を噛んだような表情で見送ったのだった。
エルフの森の入口へは風の都市から徒歩で3日程かかる道のりで、ゼロは出発してから2日後の夜には森の入口付近に到着した。
流石のゼロも深夜に深い森に入ることはせずにその場で休息を取りながら夜明けを待ち、日が登ってから森に立ち入った。
普段人が立ち入ることを認めていないエルフの管理下に置かれた深い森に道などが有るはずもなく、ゼロは木々の間から見える太陽の位置を確認しながら森を進んだ。
「森に来れば分かると軽く考えていましたが、甘かったですかね。依頼主のエルフとどうしたら会えるのでしょう?」
森に入っても出迎えなどなく、どこに向かえば良いかも分からない。
仕方なくスペクターでも偵察に出そうかと思って足を止めた時、ゼロの足下に一本の矢が突き刺さった。
ゼロは特に驚きもしない。
「?木の上からですか」
ゼロが見上げると頭上の木の枝に立つ1人のエルフが弓矢でゼロを狙っている。
更にもう1人、別の枝の上から様子を窺うエルフ。
2人とも褐色の肌に銀髪。
弓を構えている方は女性、もう1人は男性のエルフだった。
「我等が森に許可なく立ち入るとは何者だ!この森は貴様達人間の来る場所ではない。早々に立ち去れば危害は加えないが、抵抗するならば容赦はしない!」
男のエルフが警告を発し、女のエルフは弓を引き絞る。
「許可は貰っていませんが、ギルドに出された依頼を受けて来ました」
ゼロの返事に2人のエルフは戸惑いの表情を見せる。
「依頼を受けた?まさか!本当に?」
女のエルフが思わず声を漏らす。
それを聞いたゼロは心外な表情を浮かべる。
「まさかとか、本当にとか、一体なんですか?貴方達が依頼を出したのではないのですか?」
ゼロの言葉を聞いた2人のエルフは木の上から飛び降りてきてゼロの前に膝をついた。
他の依頼書が被さるように、貼られた依頼書はまるで意図的に目立たないように貼られているようだった。
「エルフからの依頼?」
ゼロは依頼書を手にとって見た。
依頼内容は都市の南東に位置する森に住むエルフからの依頼で細かい内容は記載されていない。
「変な依頼ですね」
エルフからの依頼であれば他の冒険者が受けるだろうと思って依頼書を掲示板に戻し、何時もの地下水道の依頼を受けることにする。
翌日、再び掲示板を見ると未だにエルフからの依頼が残っているが、あまり気にしない。
しかし、更に数日が経過しても残されている依頼書を見て再び手に取ってみて、カウンターに向かい、カウンターにいた職員に差し出す。
「この依頼なんですが、ずっと残っていますけど、何か特異な案件なんですか?」
依頼書を確認した若い女性職員は声を潜めた。
「実は、エルフの森で何らかの異変があり、それを発端に部族間のトラブルになっているみたいなんです。そして、依頼を出してきたのがダークエルフ族の方で、トラブルの相手方はハイエルフの一族らしいんです。」
つまりはハイエルフを敵に回したくない冒険者が誰も受けなかったのである。
「依頼を出されたからにはギルドとして斡旋しますけど、正直誰も受けないと思います。所属している冒険者さんの中にはダークエルフの方も数人いますが、その方達も受けてくれませんから。」
女性職員は諦めの表情だった。
ギルドに出された依頼は一定期間だれも受諾しないと報酬金ごと依頼者に返還される。
それを避けるためにギルドが適任者に打診することも多く、残り物の依頼を積極的に受けるゼロも打診されることが多い。
しかし、この依頼に関してはハイエルフを敵に回して冒険者としての今後の活動に支障が出る可能性があるため、ゼロに打診することすら避けられていたのである。
「依頼不受諾は避けたいところですが、こればかりは仕方がないですよね」
「受けます」
「ダークエルフの方には悪いで・・え?」
「この依頼、私が受けます」
女性職員は意外そうな表情を浮かべる。
「本気ですか?」
「はい、誰も受けないならば私が受けます」
「助かります。それでは・・・っ!」
「ちょっと待ってください!」
その時、他のカウンターでの応対を終えたシーナが女性職員を押しのけて割り込んできた。
「ゼロさん、ちょっと待ってください。もう一度考えてみてください。この依頼、エルフの森で異変が起きている。部族間のトラブルになっている。だけの情報で後は森に来てから説明するって内容なんです。ちょっと胡散臭い依頼なんですよ。だから無理して受けなくてもいいですから」
珍しくシーナですら依頼受諾を止めようとする。
実は、この依頼を誰も受けなかった時にギルド内でゼロに打診するという意見があった。
ゼロならば断らないだろうとの期待からのものだったが、それにシーナが頑なに反対した。
「いつもゼロさんにばかり頼るのは良くないです!ゼロさんなら断らないでしょうけど、ギルドとしてそれを当たり前と考えて甘えてはいけないと思います!」
との意見をギルド長や一部の職員も支持したのだった。
シーナの心の中ではこれ以上ゼロの評判が下がるのを避けたいとの思惑もあった。
そのような経緯でゼロに打診することは止められた。
依頼書を貼り出す際にもシーナが他の依頼書に紛れ込ませるように、目立たないように貼ったのだが、まるでそれが運命であるかのようにゼロの目に留まってしまったのであった。
ゼロは首を傾げながら
「正規に出された依頼ですよね?依頼者も困っているのでしょう。私が受けますよ」
「いや、でも・・・その」
ゼロが依頼書を差し出すが、シーナも歯切れが悪い。
それも仕方のないことである、ゼロがネクロマンサーとして人々から避けられるように、ダークエルフもあまり評判が良くない。
かつては一部のダークエルフが闇の軍勢に与していたのも事実であり、また、ダークエルフにはシーフや傭兵、アサシンを生業している者も多い。
それはダークエルフに限ったことではなく、人間も同じであるのだが、イメージが先走って悪い印象を持たれてしまうのである。
更にダークエルフとハイエルフのいざこざでダークエルフに力を貸したとなると周囲からは悪印象を持たれることは必至である。
しかし、例によってそんなことをゼロは気にしない。
「他に受ける人も居ないのでしょう?ならば私が受けます」
ゼロの意見は変わらない、こうなるとシーナも引き下がるしかなく、最初に応対した女性職員に場を明け渡す。
その後、依頼受諾の手続きを済ませたゼロは早速エルフの森に向かって出発した。
旅立つゼロの姿をシーナは営業スマイルを維持できず、苦虫を噛んだような表情で見送ったのだった。
エルフの森の入口へは風の都市から徒歩で3日程かかる道のりで、ゼロは出発してから2日後の夜には森の入口付近に到着した。
流石のゼロも深夜に深い森に入ることはせずにその場で休息を取りながら夜明けを待ち、日が登ってから森に立ち入った。
普段人が立ち入ることを認めていないエルフの管理下に置かれた深い森に道などが有るはずもなく、ゼロは木々の間から見える太陽の位置を確認しながら森を進んだ。
「森に来れば分かると軽く考えていましたが、甘かったですかね。依頼主のエルフとどうしたら会えるのでしょう?」
森に入っても出迎えなどなく、どこに向かえば良いかも分からない。
仕方なくスペクターでも偵察に出そうかと思って足を止めた時、ゼロの足下に一本の矢が突き刺さった。
ゼロは特に驚きもしない。
「?木の上からですか」
ゼロが見上げると頭上の木の枝に立つ1人のエルフが弓矢でゼロを狙っている。
更にもう1人、別の枝の上から様子を窺うエルフ。
2人とも褐色の肌に銀髪。
弓を構えている方は女性、もう1人は男性のエルフだった。
「我等が森に許可なく立ち入るとは何者だ!この森は貴様達人間の来る場所ではない。早々に立ち去れば危害は加えないが、抵抗するならば容赦はしない!」
男のエルフが警告を発し、女のエルフは弓を引き絞る。
「許可は貰っていませんが、ギルドに出された依頼を受けて来ました」
ゼロの返事に2人のエルフは戸惑いの表情を見せる。
「依頼を受けた?まさか!本当に?」
女のエルフが思わず声を漏らす。
それを聞いたゼロは心外な表情を浮かべる。
「まさかとか、本当にとか、一体なんですか?貴方達が依頼を出したのではないのですか?」
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