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実戦指導5
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レオン達は無事にギルドに帰還して依頼達成の報告をした。
笑顔で彼等を迎えたシーナは手際よく依頼達成の事務手続きを済ませて報酬の入った袋を差し出し、ギルド内に響く程の声を上げた。
「レオンさん、カイルさん、ルシアさん、マッキさんのパーティーが初依頼を達成して無事に帰還しました!おめでとうございます!」
シーナの声に気がついたギルド職員や冒険者達から拍手が上がる。
初めての依頼を達成して帰還した冒険者をギルド全体で歓迎する、2年程前にシーナが発案した新米冒険者に対する祝いの儀式で、今では風の都市の冒険者ギルドの名物になっていた。
レオン達は恐縮しながら礼を述べる。
しかし、見渡してみれば労いをかけてくれる冒険者の中にレナは居るが、ゼロの姿はない。
ギルドに戻るまでは同行していた筈がいつの間にか姿を消していた。
レオンがシーナに聞くとシーナは困り顔で首を振った。
「ゼロさんは帰ってしまいました。多分レオンさん達がゼロさんと一緒にいることで変な目で見られないようにするためです」
「えっ?」
レオン達は顔を見合わせた。
「俺達はそんなこと気にしないですよ!」
レオンが声を上げ、カイル、ルシア、マッキも頷く。
「でも、ゼロさん自身がそう考えてしまっているんです。自分の選んだ道なのにネクロマンサーは人に認められてはいけない、自分が他人に関わるとその人まで変な目で見られてしまう、だなんて」
シーナの表情は怒りや歯がゆさが入り混じった複雑なものだった。
いつの間にかレオン達に近づいていたレナも呆れ顔で口を開く。
「バカなんですよ。自分の方から他人との間に一線を引いてしまうんです。自分がネクロマンサーであることに誇りを持ちながら他人に認められることを拒絶して自分から離れようとする。本当にバカなんです」
レナの表情は明らかに苛立ちが見えた。
「ゼロから言伝があります。ここから先は貴方達が自分達で選択し、道を切り開いて下さい。今後は私のような者と関わり合わないようにして下さい。だそうです」
そう言うと不満顔のレナは踵を返して歩きだしたが、直ぐに何かを思い出したかのように振り返った。
「彼は自分からは他人に必要以上は近づきませんし、接触も避けようとします。でも、こちら側から近づいたり、頼みごとをすると拒否できない性格ですよ。バカの上に不器用でお人好しなんです。だから何か困ったことがあったら声を掛けてみてください。きっと力になってくれますよ」
笑顔で言い残してギルドを出て行った。
こうして、後に英雄と呼ばれる新米冒険者達がその道のりの第一歩を踏み出したのである。
その頃、レオン達と別れたゼロは都市の中の通りを歩いていた。
自然と彼の周りから人が離れていく。
そんな中、ゼロは普段と違う異変を感じていた。
「尾けられていますか?」
尾行者がいる、ゼロは元来はこういったことに対して敏感な方ではない。
人の殺気や気配に敏感な熟練者ならば尾行者や刺客に気が付くであろうが、ゼロにそこまでの実力はない。
確かにゼロも黒等級である上位冒険者だが、それはあくまでもネクロマンサーとしての実力である。
確かに自ら剣を振るって戦うが、純粋に剣の腕では同クラスの剣士や騎士には敵わない程度だ。
ゼロの強さはアンデッドと連携することが本領であり、単独での戦闘によるものではない。
顧みるとアンデッドに頼らない状況でも戦闘実績を上げているが、その殆どがハッタリや小細工を織り交ぜての結果である。
また、ネクロマンサーであるゼロ独特の感性もその強さを裏打ちしている。
それは、常人とかけ離れた死生観だ。
死霊と共に生きるゼロは自らの死に対しての抵抗がない。
決して命を粗末にしているわけではなく、決死の状況下にあっても命を拾う努力は怠らないが、それに矛盾するように死を恐れるという感覚が欠如しており、死の危険に直面して他人であれば足を止めるような場合でも躊躇いなく足を踏み出せるのだ。
そんなゼロが尾行者に気付いたのはなぜか?
それは尾行が人が多い町中で行われていたからだった。
風の都市で悪い意味での有名人であるゼロの周りは彼を恐れて人が近づかない。
そんな中でずっと付いて来る者がいれば流石のゼロでも気が付く。
また、尾行者側も人に避けられながら歩くゼロに気付かれないように尾行することが面倒くさくなり、自らを秘匿することを諦めていた事実もあった。
そうでありながら決して近づこうとはしてこない。
ゼロが立ち止まれば一定の距離を保ちながら立ち止まり、ゼロの方から近づこうとすれば鮮やかな身のこなしで人混みに紛れて姿を眩ましてしまう。
フードを目深に被り、一定の距離を保つ尾行者の顔を窺うことは出来ないが、追跡者は男性であり、その佇まいには隙がないことは分かる。
しかし、ゼロに敵対行動を取る素振りも見せない。
尾行者側も面倒くさくなっていたが、ゼロの方も面倒くさくなり、気にするのを止めて歩き始めた。
「私に用があるならば人気が無くなれば何らかの行動に出るでしょう」
と呑気に考えて居宅のある森に立ち入ったが、その頃には尾行者は姿を消していた。
居宅まで付いて来るつもりはないようだ。
「どうせ私の家の場所は把握済みなのでしょう。その上で観察していただけですか。何にせよ厄介事の前触れでしょうね」
周りに聞く者も居ない筈なのにゼロは敢えてその言葉をはっきりと声に出して呟いた。
笑顔で彼等を迎えたシーナは手際よく依頼達成の事務手続きを済ませて報酬の入った袋を差し出し、ギルド内に響く程の声を上げた。
「レオンさん、カイルさん、ルシアさん、マッキさんのパーティーが初依頼を達成して無事に帰還しました!おめでとうございます!」
シーナの声に気がついたギルド職員や冒険者達から拍手が上がる。
初めての依頼を達成して帰還した冒険者をギルド全体で歓迎する、2年程前にシーナが発案した新米冒険者に対する祝いの儀式で、今では風の都市の冒険者ギルドの名物になっていた。
レオン達は恐縮しながら礼を述べる。
しかし、見渡してみれば労いをかけてくれる冒険者の中にレナは居るが、ゼロの姿はない。
ギルドに戻るまでは同行していた筈がいつの間にか姿を消していた。
レオンがシーナに聞くとシーナは困り顔で首を振った。
「ゼロさんは帰ってしまいました。多分レオンさん達がゼロさんと一緒にいることで変な目で見られないようにするためです」
「えっ?」
レオン達は顔を見合わせた。
「俺達はそんなこと気にしないですよ!」
レオンが声を上げ、カイル、ルシア、マッキも頷く。
「でも、ゼロさん自身がそう考えてしまっているんです。自分の選んだ道なのにネクロマンサーは人に認められてはいけない、自分が他人に関わるとその人まで変な目で見られてしまう、だなんて」
シーナの表情は怒りや歯がゆさが入り混じった複雑なものだった。
いつの間にかレオン達に近づいていたレナも呆れ顔で口を開く。
「バカなんですよ。自分の方から他人との間に一線を引いてしまうんです。自分がネクロマンサーであることに誇りを持ちながら他人に認められることを拒絶して自分から離れようとする。本当にバカなんです」
レナの表情は明らかに苛立ちが見えた。
「ゼロから言伝があります。ここから先は貴方達が自分達で選択し、道を切り開いて下さい。今後は私のような者と関わり合わないようにして下さい。だそうです」
そう言うと不満顔のレナは踵を返して歩きだしたが、直ぐに何かを思い出したかのように振り返った。
「彼は自分からは他人に必要以上は近づきませんし、接触も避けようとします。でも、こちら側から近づいたり、頼みごとをすると拒否できない性格ですよ。バカの上に不器用でお人好しなんです。だから何か困ったことがあったら声を掛けてみてください。きっと力になってくれますよ」
笑顔で言い残してギルドを出て行った。
こうして、後に英雄と呼ばれる新米冒険者達がその道のりの第一歩を踏み出したのである。
その頃、レオン達と別れたゼロは都市の中の通りを歩いていた。
自然と彼の周りから人が離れていく。
そんな中、ゼロは普段と違う異変を感じていた。
「尾けられていますか?」
尾行者がいる、ゼロは元来はこういったことに対して敏感な方ではない。
人の殺気や気配に敏感な熟練者ならば尾行者や刺客に気が付くであろうが、ゼロにそこまでの実力はない。
確かにゼロも黒等級である上位冒険者だが、それはあくまでもネクロマンサーとしての実力である。
確かに自ら剣を振るって戦うが、純粋に剣の腕では同クラスの剣士や騎士には敵わない程度だ。
ゼロの強さはアンデッドと連携することが本領であり、単独での戦闘によるものではない。
顧みるとアンデッドに頼らない状況でも戦闘実績を上げているが、その殆どがハッタリや小細工を織り交ぜての結果である。
また、ネクロマンサーであるゼロ独特の感性もその強さを裏打ちしている。
それは、常人とかけ離れた死生観だ。
死霊と共に生きるゼロは自らの死に対しての抵抗がない。
決して命を粗末にしているわけではなく、決死の状況下にあっても命を拾う努力は怠らないが、それに矛盾するように死を恐れるという感覚が欠如しており、死の危険に直面して他人であれば足を止めるような場合でも躊躇いなく足を踏み出せるのだ。
そんなゼロが尾行者に気付いたのはなぜか?
それは尾行が人が多い町中で行われていたからだった。
風の都市で悪い意味での有名人であるゼロの周りは彼を恐れて人が近づかない。
そんな中でずっと付いて来る者がいれば流石のゼロでも気が付く。
また、尾行者側も人に避けられながら歩くゼロに気付かれないように尾行することが面倒くさくなり、自らを秘匿することを諦めていた事実もあった。
そうでありながら決して近づこうとはしてこない。
ゼロが立ち止まれば一定の距離を保ちながら立ち止まり、ゼロの方から近づこうとすれば鮮やかな身のこなしで人混みに紛れて姿を眩ましてしまう。
フードを目深に被り、一定の距離を保つ尾行者の顔を窺うことは出来ないが、追跡者は男性であり、その佇まいには隙がないことは分かる。
しかし、ゼロに敵対行動を取る素振りも見せない。
尾行者側も面倒くさくなっていたが、ゼロの方も面倒くさくなり、気にするのを止めて歩き始めた。
「私に用があるならば人気が無くなれば何らかの行動に出るでしょう」
と呑気に考えて居宅のある森に立ち入ったが、その頃には尾行者は姿を消していた。
居宅まで付いて来るつもりはないようだ。
「どうせ私の家の場所は把握済みなのでしょう。その上で観察していただけですか。何にせよ厄介事の前触れでしょうね」
周りに聞く者も居ない筈なのにゼロは敢えてその言葉をはっきりと声に出して呟いた。
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