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生と死の狭間
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ライズ達は地下墓地を駆け抜けて外へと飛び出した。
地下墓地からは邪悪な波動の波が溢れ出てくる。
「これはヤベェんじゃないか?イリーナ!もう一度行くぞ」
「そうね、私とライズでゼロの援護に・・えっ?」
ライズとイリーナが再び地下墓地に潜ろうとした時だった。
・・・ゴゴゴゴッ
激しい音をたてて通路が崩れ落ちた。
「うそ・・・ゼロさんっ!」
アイリアの悲痛な叫びを聞きながらライズとイリーナは立ち尽くすしかなかった。
崩れ落ちた瓦礫を前にしてライズ達はどうすることも出来なかった。
ゼロは目を覚ました。
長い夢を見ていたのか、虚ろな目で周囲を見る。
そこには1人の魔術師、いや、ネクロマンサーが彼を見ていた。
ローブを纏った彼は憐れみの目でゼロを見ていた。
「貴方はここにいた死霊術師ですね?」
ゼロの問いに頷くネクロマンサー。
そこにいるのは痩せこけた老人だったが先程までのようなアンデッドではなかった。
「そうですか。そうなると、ここは・・」
「同胞よ。汝は何故に死者と共に生きる?」
「何故?」
「死霊術は忌み嫌われる禁忌とされながら、時に権力者に利用され、その存在を闇に葬られてきた」
「確かに、不死の兵隊を戦争利用するために死霊術師が権力者に仕える、歴史上繰り返されたことですね」
「我もまた、権力者に利用され、裏切られ、自らも死霊になった。同胞よ、汝もその道を望むのか?」
「いえ、私が望むのは死霊術師として死者と共に道を究めることでしょうか。その中で誰かに利用されようとも、その選択は自分でします。つまりは、自分の人生を自分で選択していくことが望みです」
「その行き着く先が今の汝のように死霊に身を窶すことになろうともか?」
「今の私?」
と、そこでゼロは自らの両手を見た。
それは白骨化した両手、アンデッドのものであった。
しかし、ゼロは自分でも不思議な程冷静だった。
「そうですか、何時かは行き着く先だ、と思っていましたが・・・」
白骨のアンデッドと化したゼロは表情の作れないながら、自嘲するように微笑んだ。
「汝は生にしがみつこうとはしないのか?」
「別に自分の命を軽んじるつもりはありません。現実を受け止める覚悟を持とうと思っているだけです。まあ、アンデッドになってしまったならば、私の精神がまともでいられる間は生者に仇なすことなくせいぜい静かに生きて?いきますよ」
ゼロの言葉を聞いた老人は初めて薄い笑みを浮かべた。
「我も汝のような覚悟を持っていればこうはならなかったのか。死霊となった今、汝のような死霊使いに仕えるのも一興だが、それも叶わぬようだ。我は今、百年の時を超えて冥界の門を潜れそうだ」
老人は光に包まれて姿を消した。
「若者よ、汝は己が道を貫くがいい」
最後の老人の言葉を聞いたゼロの意識は深い闇に包まれた。
ライズ達は崩れた地下墓地を前に立ち尽くしていた。
「くそっ、これじゃあどうすることも出来ないじゃねえか」
瓦礫の隙間から進入しようとするが、それも阻まれ、ゼロを救出する手立てが見いだせずにいた。
意識を取り戻したセイラは膝をついて必死の祈りをあげている。
「街の人かギルドに救出を手伝って貰うことはできませんか?」
アイリアの言葉にライズとイリーナは首を振る。
「無理だ、冒険者が依頼の最中に姿を眩ませるなんてことはよくあることだ。その度に捜索に人員を出すなんて非効率なことはできないし、冒険者は良くも悪くも金でしか動かない」
「それに、ギルドの冒険者の大半はゼロのことを良くは思っていないの。かく言う私達だって今回の件があるまではゼロと関わることはなかったわ」
「そんな、ゼロさんはそんな風に思われるような人ではありません」
「ゼロに助けられたアイリア達ならそう思うだろうがな、周りのネクロマンサーを見る目なんてそんなもんだ。ゼロ自身もそれは自覚していることだ」
結局は今ここにいるライズ達だけの力で対応しなければならないのだ。
「こうなったら手作業で瓦礫を退かすしかない。俺達の依頼に巻き込んだんだ、絶対に助け出すぞ」
4人が頷きあい、瓦礫に立ち向かおうとした時
「あれをっ!」
セイラが指差す先に1体のレイスが佇んでいた。
レイスの佇む場所は地下墓地の通路の上、広間の手前付近に位置していた。
ライズ達が駆け寄ると、レイスのいた場所の地面に亀裂が入り、地下墓地の通路への隙間が開いていた。
「ここからなら中に入れそうだ」
ライズが隙間を覗き込むと
カラ・・カラ・・
ズッ・・ズリッ・ズリ
暗闇に包まれた通路の奥から規則的に響く乾いた音と、何かを引き摺るような音が聞こえてくる。
「何だ?何か近づいてくるぞ」
ライズが通路に飛び込んで剣を抜き、イリーナはライズの頭上の隙間から弓を構える。
ライズ達が目を凝らして通路の奥を警戒すると、そこに現れたのは意識の無いゼロを引き摺るスケルトンウォリアーだった。
「ゼロのアンデッドか?ゼロ、生きているのか」
ライズはスケルトンウォリアーに引き摺られるゼロに駆け寄った。
直ぐにイリーナも駆けつけてゼロの様子を窺う。
「どうだ?」
「微かだけど、呼吸はある。でも危ないわ」
「上に上げてセイラの祈りで少しでも回復させよう」
ライズはスケルトンウォリアーを振り返った。
「ゼロの命令じゃなくて悪いが、手が足りない。ゼロを引き上げるのを手伝ってくれ。意識のないゼロをここまで連れてきたんだ、その位は分かるだろう?」
ライズの言葉にスケルトンウォリアーは反応してゼロの傍らに跪いた。
「よし、イリーナは先に上がってアイリア達と引き上げてくれ、俺とスケルトンでゼロを押し上げる」
ライズ達は協力してゼロを地上に引き上げた。
ライズが地上に這い上がり、地下に残るスケルトンを振り返り、手をさしのべた。
「上がってくるか?」
見上げていたスケルトンはライズに手を掛けることなく姿を消した。
地上に横たえられたゼロはアイリア達の呼び掛けにも全く反応しなかった。
セイラが癒やしの祈りを唱える。
「シーグルの女神よ、癒やしの指先をこの者にかざしたまえ」
セイラの手に癒やしの光が灯り、その手をゼロにかざす。
しかし、その光はゼロに弾かれるように霧散した。
「うそっ、癒やしの祈りが効かない?」
「どういうことだ?」
「ゼロさんの身体の周囲を死者の気が包んでいます。いえ、ゼロさん自身が死者の気を纏っているようです。その気が聖なる力を弾いてしまっているんです」
「ネクロマンサーの弊害か」
ネクロマンサーであるゼロは死霊を使役するが故に死霊の気を身体の周囲に纏っているため、神官の使う聖なる力を弾いてしまうのだった。
故にゼロは高価なものを含めて様々な薬を常備し、怪我に備えていた。
大神官や聖者と呼ばれる高位の聖職者が使う力ならば多少は効果があるのだが、その効力は半減してしまうのである。
「こうなったら薬で命を繋ぐしかありません」
セイラが薬の瓶を取り出して封を切る。
「気をつけろ、意識が無いから下手をすると窒息するぞ。少しずつ口を湿らせる程度にするんだ」
セイラはライズの指示に従ってゼロの口元に僅かに薬を流す。
「あとは一刻も早く治療院に運ぶしかないが、近くの街ではダメだ、風の都市に戻るには馬車が必要だが、今から馬車を呼びに行くとなると・・・」
ライズとイリーナの視線がゼロの傍らに立つレイスに送られた。
その少し後の風の都市の冒険者ギルドではシーナが処理を終えた依頼の書類を書庫に仕舞おうと書庫の扉を開けた時、目の前にいたレイスと鉢合わせになった。
「キャーッ!なんでアナタはいつもいつも人を驚かすんですか!」
書類をバラまいて腰を抜かしたシーナはレイスに向かって抗議をした。
しかし、レイスに渡された手紙を読んだシーナは顔を青ざめさせた。
「ゼロさんが瀕死の怪我?」
抜けた腰を引きずりながら事務室に向かったシーナは直ちに早馬車を手配して地下墓地に向かわせた。
結局ゼロはセイラ達の治療とシーナが手配した早馬車で風の都市に戻り、治療院に運び込まれ、命を繋ぐことが出来た。
しかし、命が危ぶまれる重傷だったため、2ヶ月の入院を余儀なくされた。
入院期間中もゼロは剣や術の訓練で何度も治療院を抜け出し、医師や看護師、ギルド職員のシーナに叱られる日々を送ることとなった。
地下墓地からは邪悪な波動の波が溢れ出てくる。
「これはヤベェんじゃないか?イリーナ!もう一度行くぞ」
「そうね、私とライズでゼロの援護に・・えっ?」
ライズとイリーナが再び地下墓地に潜ろうとした時だった。
・・・ゴゴゴゴッ
激しい音をたてて通路が崩れ落ちた。
「うそ・・・ゼロさんっ!」
アイリアの悲痛な叫びを聞きながらライズとイリーナは立ち尽くすしかなかった。
崩れ落ちた瓦礫を前にしてライズ達はどうすることも出来なかった。
ゼロは目を覚ました。
長い夢を見ていたのか、虚ろな目で周囲を見る。
そこには1人の魔術師、いや、ネクロマンサーが彼を見ていた。
ローブを纏った彼は憐れみの目でゼロを見ていた。
「貴方はここにいた死霊術師ですね?」
ゼロの問いに頷くネクロマンサー。
そこにいるのは痩せこけた老人だったが先程までのようなアンデッドではなかった。
「そうですか。そうなると、ここは・・」
「同胞よ。汝は何故に死者と共に生きる?」
「何故?」
「死霊術は忌み嫌われる禁忌とされながら、時に権力者に利用され、その存在を闇に葬られてきた」
「確かに、不死の兵隊を戦争利用するために死霊術師が権力者に仕える、歴史上繰り返されたことですね」
「我もまた、権力者に利用され、裏切られ、自らも死霊になった。同胞よ、汝もその道を望むのか?」
「いえ、私が望むのは死霊術師として死者と共に道を究めることでしょうか。その中で誰かに利用されようとも、その選択は自分でします。つまりは、自分の人生を自分で選択していくことが望みです」
「その行き着く先が今の汝のように死霊に身を窶すことになろうともか?」
「今の私?」
と、そこでゼロは自らの両手を見た。
それは白骨化した両手、アンデッドのものであった。
しかし、ゼロは自分でも不思議な程冷静だった。
「そうですか、何時かは行き着く先だ、と思っていましたが・・・」
白骨のアンデッドと化したゼロは表情の作れないながら、自嘲するように微笑んだ。
「汝は生にしがみつこうとはしないのか?」
「別に自分の命を軽んじるつもりはありません。現実を受け止める覚悟を持とうと思っているだけです。まあ、アンデッドになってしまったならば、私の精神がまともでいられる間は生者に仇なすことなくせいぜい静かに生きて?いきますよ」
ゼロの言葉を聞いた老人は初めて薄い笑みを浮かべた。
「我も汝のような覚悟を持っていればこうはならなかったのか。死霊となった今、汝のような死霊使いに仕えるのも一興だが、それも叶わぬようだ。我は今、百年の時を超えて冥界の門を潜れそうだ」
老人は光に包まれて姿を消した。
「若者よ、汝は己が道を貫くがいい」
最後の老人の言葉を聞いたゼロの意識は深い闇に包まれた。
ライズ達は崩れた地下墓地を前に立ち尽くしていた。
「くそっ、これじゃあどうすることも出来ないじゃねえか」
瓦礫の隙間から進入しようとするが、それも阻まれ、ゼロを救出する手立てが見いだせずにいた。
意識を取り戻したセイラは膝をついて必死の祈りをあげている。
「街の人かギルドに救出を手伝って貰うことはできませんか?」
アイリアの言葉にライズとイリーナは首を振る。
「無理だ、冒険者が依頼の最中に姿を眩ませるなんてことはよくあることだ。その度に捜索に人員を出すなんて非効率なことはできないし、冒険者は良くも悪くも金でしか動かない」
「それに、ギルドの冒険者の大半はゼロのことを良くは思っていないの。かく言う私達だって今回の件があるまではゼロと関わることはなかったわ」
「そんな、ゼロさんはそんな風に思われるような人ではありません」
「ゼロに助けられたアイリア達ならそう思うだろうがな、周りのネクロマンサーを見る目なんてそんなもんだ。ゼロ自身もそれは自覚していることだ」
結局は今ここにいるライズ達だけの力で対応しなければならないのだ。
「こうなったら手作業で瓦礫を退かすしかない。俺達の依頼に巻き込んだんだ、絶対に助け出すぞ」
4人が頷きあい、瓦礫に立ち向かおうとした時
「あれをっ!」
セイラが指差す先に1体のレイスが佇んでいた。
レイスの佇む場所は地下墓地の通路の上、広間の手前付近に位置していた。
ライズ達が駆け寄ると、レイスのいた場所の地面に亀裂が入り、地下墓地の通路への隙間が開いていた。
「ここからなら中に入れそうだ」
ライズが隙間を覗き込むと
カラ・・カラ・・
ズッ・・ズリッ・ズリ
暗闇に包まれた通路の奥から規則的に響く乾いた音と、何かを引き摺るような音が聞こえてくる。
「何だ?何か近づいてくるぞ」
ライズが通路に飛び込んで剣を抜き、イリーナはライズの頭上の隙間から弓を構える。
ライズ達が目を凝らして通路の奥を警戒すると、そこに現れたのは意識の無いゼロを引き摺るスケルトンウォリアーだった。
「ゼロのアンデッドか?ゼロ、生きているのか」
ライズはスケルトンウォリアーに引き摺られるゼロに駆け寄った。
直ぐにイリーナも駆けつけてゼロの様子を窺う。
「どうだ?」
「微かだけど、呼吸はある。でも危ないわ」
「上に上げてセイラの祈りで少しでも回復させよう」
ライズはスケルトンウォリアーを振り返った。
「ゼロの命令じゃなくて悪いが、手が足りない。ゼロを引き上げるのを手伝ってくれ。意識のないゼロをここまで連れてきたんだ、その位は分かるだろう?」
ライズの言葉にスケルトンウォリアーは反応してゼロの傍らに跪いた。
「よし、イリーナは先に上がってアイリア達と引き上げてくれ、俺とスケルトンでゼロを押し上げる」
ライズ達は協力してゼロを地上に引き上げた。
ライズが地上に這い上がり、地下に残るスケルトンを振り返り、手をさしのべた。
「上がってくるか?」
見上げていたスケルトンはライズに手を掛けることなく姿を消した。
地上に横たえられたゼロはアイリア達の呼び掛けにも全く反応しなかった。
セイラが癒やしの祈りを唱える。
「シーグルの女神よ、癒やしの指先をこの者にかざしたまえ」
セイラの手に癒やしの光が灯り、その手をゼロにかざす。
しかし、その光はゼロに弾かれるように霧散した。
「うそっ、癒やしの祈りが効かない?」
「どういうことだ?」
「ゼロさんの身体の周囲を死者の気が包んでいます。いえ、ゼロさん自身が死者の気を纏っているようです。その気が聖なる力を弾いてしまっているんです」
「ネクロマンサーの弊害か」
ネクロマンサーであるゼロは死霊を使役するが故に死霊の気を身体の周囲に纏っているため、神官の使う聖なる力を弾いてしまうのだった。
故にゼロは高価なものを含めて様々な薬を常備し、怪我に備えていた。
大神官や聖者と呼ばれる高位の聖職者が使う力ならば多少は効果があるのだが、その効力は半減してしまうのである。
「こうなったら薬で命を繋ぐしかありません」
セイラが薬の瓶を取り出して封を切る。
「気をつけろ、意識が無いから下手をすると窒息するぞ。少しずつ口を湿らせる程度にするんだ」
セイラはライズの指示に従ってゼロの口元に僅かに薬を流す。
「あとは一刻も早く治療院に運ぶしかないが、近くの街ではダメだ、風の都市に戻るには馬車が必要だが、今から馬車を呼びに行くとなると・・・」
ライズとイリーナの視線がゼロの傍らに立つレイスに送られた。
その少し後の風の都市の冒険者ギルドではシーナが処理を終えた依頼の書類を書庫に仕舞おうと書庫の扉を開けた時、目の前にいたレイスと鉢合わせになった。
「キャーッ!なんでアナタはいつもいつも人を驚かすんですか!」
書類をバラまいて腰を抜かしたシーナはレイスに向かって抗議をした。
しかし、レイスに渡された手紙を読んだシーナは顔を青ざめさせた。
「ゼロさんが瀕死の怪我?」
抜けた腰を引きずりながら事務室に向かったシーナは直ちに早馬車を手配して地下墓地に向かわせた。
結局ゼロはセイラ達の治療とシーナが手配した早馬車で風の都市に戻り、治療院に運び込まれ、命を繋ぐことが出来た。
しかし、命が危ぶまれる重傷だったため、2ヶ月の入院を余儀なくされた。
入院期間中もゼロは剣や術の訓練で何度も治療院を抜け出し、医師や看護師、ギルド職員のシーナに叱られる日々を送ることとなった。
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