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職業選択
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風の都市の冒険者ギルドは今日も賑わっていた。
風の都市は王国の西方にある地方都市である。
100年の繁栄を誇り、現在も賢王と慕われる国王が治める王国は他国との関係も良好で国としては大局的には平和と安定を保っていた。
しかし、国内に目を向ければ必ずしも平和とはいえない。
地方では何処からともなく現れる魔物や盗賊等の無頼漢に人々の生活は脅かされ、抗う術を持たぬ人々は怯える日々を送っている。
国としても出来る限りの対処はしていたが、限られた兵力では手が回らない。
そこで、各都市に国の機関として冒険者ギルドを置き、冒険者と呼ばれる者達に問題の解決を委託した。
ギルド職員は国の役人であるが、所属する冒険者達は自由業者達である。
冒険者はそれぞれジョブとする職業を持ち、その能力を駆使して契約した依頼を達成して報酬を得ていた。
ギルドに持ち込まれる依頼は後を絶たず、命懸け、実力主義の冒険者と言えど、ある程度の能力があれば仕事に困ることはなかった。
シーナ・リドルナはギルドに採用されて2年目のギルド職員である。
年齢は18歳、成人して直ぐに難関の試験に合格した才女でもある彼女は今日もギルドの受付にいた。
2年目ともなれば、ある程度仕事に慣れ、日々の多忙な業務も鍛え上げた営業スマイルで効率よく捌き、冒険者を見る目も養われつつあった。
時刻は午後の2刻を少し過ぎた頃、受付の仕事も一段落、食べ損ねた昼食もカウンターの下に忍ばせた乾パンで済ませた。
ギルド内を見渡せば依頼を終えて戻った冒険者が一息をつき、明日以降に受ける依頼を探し、情報を交換し、或いは酒場が店開きするまでの暇潰しをしている。
そんな普段と変わらない午後、ギルドに新しい冒険者志望の若者が現れるのも珍しいことではなかった。
シーナはギルドに入ってきた若者に気がついた。
まだ若い、自分と同じ年頃か、だとすれば成人したてか。
新人であることは間違いなさそうだ。
その風体を観察すれば、漆黒のローブに揃いの色の帽子、一見すると魔術師だが、ただの魔術師ではなさそうだ。
ローブの下には安っぽいながらも金属の胸当てに革鎧、腰には剣を帯びている。
「魔法剣士?」
伝説の勇者のように魔法と剣術を会得する魔法剣士という職業も確かにあるが、その両方を極めることは困難であり、中途半端な器用貧乏になりがち、伸び悩むことが少なくない。
あまりお勧めできないし、また希望する者も少ないレアな職業だ。
しかし、どの職業を選んで冒険者として登録するかは個人の自由。
「まっ、職業選択の自由は自己責任で保証されてますから、私が口出しすることではありませんよね」
と余計な詮索は止めにして、引き出しから新規冒険者登録用紙を取り出した時、彼女が座るカウンターの前にその若者は立った。
「冒険者として登録したいのですが」
丁寧な口調で若者がシーナに声を掛ける。
彼女は鍛えられた営業スマイルを浮かべながら
「はい、それではこの用紙に名前と年齢と冒険者として登録する職業を記載してください。備考欄には戦闘経験の有無を記載してください。また、他のギルドに所属した経験があるならば、その際の等級も記載してください」
「等級とはなんですか?」
質問する若者に
「等級も知らない、新米冒険者ね」
と心の中でつぶやきながらも、それならば親切丁寧に
「等級とは冒険者としての実績に伴って変動する等級であり個人の認識票の色によって区別されていることです」
と説明する。
シーナの説明を聞いた若者は丁寧に礼を述べてから用紙に必要事項を記入して彼女に手渡した。
シーナは用紙に目を通しながら内容を確認した。
「はい、確認させて頂きます。名前はゼロ・・・さんで、17歳。登録する職業は・・・っ!」
そこまで目を通したシーナの顔色が変わった。
かろうじて営業スマイルを保ったのは受付のプロの技。
そして、目の前に立つ若者ゼロを見る。
「死霊・・・この職業、本気ですか?」
「はい」
「ちょっとこの職業は、如何に職業の選択は自由とはいえ、お勧めはできません。その、何か他の職業で登録された方が・・・」
他の職員や冒険者に聞かれないように気を使った彼女だが、ゼロは
「変えるつもりはありません。この選択をするリスクも理解していますが、その上で私は死霊術師、ネクロマンサーとして登録します」
はっきりと答えるゼロの声にギルドが静まりかえった。
折角シーナが他者に聞かれないように気を使ったのに台無しだ。
風の都市は王国の西方にある地方都市である。
100年の繁栄を誇り、現在も賢王と慕われる国王が治める王国は他国との関係も良好で国としては大局的には平和と安定を保っていた。
しかし、国内に目を向ければ必ずしも平和とはいえない。
地方では何処からともなく現れる魔物や盗賊等の無頼漢に人々の生活は脅かされ、抗う術を持たぬ人々は怯える日々を送っている。
国としても出来る限りの対処はしていたが、限られた兵力では手が回らない。
そこで、各都市に国の機関として冒険者ギルドを置き、冒険者と呼ばれる者達に問題の解決を委託した。
ギルド職員は国の役人であるが、所属する冒険者達は自由業者達である。
冒険者はそれぞれジョブとする職業を持ち、その能力を駆使して契約した依頼を達成して報酬を得ていた。
ギルドに持ち込まれる依頼は後を絶たず、命懸け、実力主義の冒険者と言えど、ある程度の能力があれば仕事に困ることはなかった。
シーナ・リドルナはギルドに採用されて2年目のギルド職員である。
年齢は18歳、成人して直ぐに難関の試験に合格した才女でもある彼女は今日もギルドの受付にいた。
2年目ともなれば、ある程度仕事に慣れ、日々の多忙な業務も鍛え上げた営業スマイルで効率よく捌き、冒険者を見る目も養われつつあった。
時刻は午後の2刻を少し過ぎた頃、受付の仕事も一段落、食べ損ねた昼食もカウンターの下に忍ばせた乾パンで済ませた。
ギルド内を見渡せば依頼を終えて戻った冒険者が一息をつき、明日以降に受ける依頼を探し、情報を交換し、或いは酒場が店開きするまでの暇潰しをしている。
そんな普段と変わらない午後、ギルドに新しい冒険者志望の若者が現れるのも珍しいことではなかった。
シーナはギルドに入ってきた若者に気がついた。
まだ若い、自分と同じ年頃か、だとすれば成人したてか。
新人であることは間違いなさそうだ。
その風体を観察すれば、漆黒のローブに揃いの色の帽子、一見すると魔術師だが、ただの魔術師ではなさそうだ。
ローブの下には安っぽいながらも金属の胸当てに革鎧、腰には剣を帯びている。
「魔法剣士?」
伝説の勇者のように魔法と剣術を会得する魔法剣士という職業も確かにあるが、その両方を極めることは困難であり、中途半端な器用貧乏になりがち、伸び悩むことが少なくない。
あまりお勧めできないし、また希望する者も少ないレアな職業だ。
しかし、どの職業を選んで冒険者として登録するかは個人の自由。
「まっ、職業選択の自由は自己責任で保証されてますから、私が口出しすることではありませんよね」
と余計な詮索は止めにして、引き出しから新規冒険者登録用紙を取り出した時、彼女が座るカウンターの前にその若者は立った。
「冒険者として登録したいのですが」
丁寧な口調で若者がシーナに声を掛ける。
彼女は鍛えられた営業スマイルを浮かべながら
「はい、それではこの用紙に名前と年齢と冒険者として登録する職業を記載してください。備考欄には戦闘経験の有無を記載してください。また、他のギルドに所属した経験があるならば、その際の等級も記載してください」
「等級とはなんですか?」
質問する若者に
「等級も知らない、新米冒険者ね」
と心の中でつぶやきながらも、それならば親切丁寧に
「等級とは冒険者としての実績に伴って変動する等級であり個人の認識票の色によって区別されていることです」
と説明する。
シーナの説明を聞いた若者は丁寧に礼を述べてから用紙に必要事項を記入して彼女に手渡した。
シーナは用紙に目を通しながら内容を確認した。
「はい、確認させて頂きます。名前はゼロ・・・さんで、17歳。登録する職業は・・・っ!」
そこまで目を通したシーナの顔色が変わった。
かろうじて営業スマイルを保ったのは受付のプロの技。
そして、目の前に立つ若者ゼロを見る。
「死霊・・・この職業、本気ですか?」
「はい」
「ちょっとこの職業は、如何に職業の選択は自由とはいえ、お勧めはできません。その、何か他の職業で登録された方が・・・」
他の職員や冒険者に聞かれないように気を使った彼女だが、ゼロは
「変えるつもりはありません。この選択をするリスクも理解していますが、その上で私は死霊術師、ネクロマンサーとして登録します」
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