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強行監察2
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グレイ達は夜明け前には教会のある街に到着し、教会から距離を取って立ち入りのタイミングを計っていた。
教会に立ち入るのはグレイとエミリアと第2分隊。
監察が滞りなく進められればそれでよいが、最悪の事態の戦闘に陥った場合には後続として第1分隊か第3分隊のどちらかが突入する。
残りの分隊は周囲の警戒に当たる。
各分隊が配置に着いたのを確認したグレイはエミリアと第2分隊を従えて正面から教会内に入った。
「聖務院聖監察兵団です!立ち入り監察に参りました。ゴルドン神官はおられるか!」
教会内に入るやグレイは宣言する。
教会内に人の姿は無く、祈りを捧げる祭壇も荒れ放題だ。
シーグルの女神像まで埃を被っており、グレイの考える最悪の事態へと着実に近づいている。
グレイが教会の奥に向かって歩き出すと祭壇の横にある扉が開き年老いた神官が現れた。
「何事ですか?このような辺境の教会に武装して踏み込んでくるとは穏やかではありませんね」
表面上は穏やかに話す老神官のゴルドン。
強い香の香りを漂わせるゴルドンの目を見たとき、グレイは確信した。
「ゴルドン神官、貴方に対して幾つかの疑惑があり、監察に来た次第です」
「私達に何の疑惑が?心当たりはごさいませんが・・・」
虚ろな笑みを浮かべるゴルドン。
「お布施の横領、職務怠慢等の疑惑でしたが、最早そんなことはどうでもよくなりました」
グレイはゴルドンに槍の切っ先を向けた。
「抵抗することなくゴルドン神官の身体から離れろ!」
グレイは一喝した。
背後ではエミリアが弓に矢を番え、アレックス以下第2分隊がハルバートを構えて散開している。
「何を訳の分からないことを申されますか。そのような物騒な物を下ろしてください。私には何もやましいことはございません」
薄ら笑いを浮かべながら後ずさるゴルドン。
グレイは切っ先の狙いをゴルドンの喉元から離さない。
「くだらない三文芝居は終わりだ!身体は乗っ取っても開ききって濁った瞳孔やその身体から漂う死臭を隠すことはできんぞ!もう一度だけ言う、ゴルドン神官の身体から離れろ!」
「・・・・・」
グレイは槍を構えて踏み出す。
「・・・大人しく帰れば見逃してやったものを」
ゴルドンの声色が変わり、濁った瞳が赤く染まる。
その全身を禍々しい気配が包み込み、小さな身体が膨張を始めた。
「気をつけろ!正体を現すぞ!」
グレイの声に反応したエミリアがゴルドンに向けて矢を放つ。
放たれた矢はゴルドンの眉間に突き刺さるも、その矢すらも膨張するゴルドンの身体に飲み込まれていった。
人間の姿を失い、巨大な肉塊となり果てたのも束の間、更にその姿を変えて徐々に正体を現してゆく。
「おいおい、これってまさか!」
その姿を見たアレックスがたまらずに口を漏らす。
「やはり、悪魔に取り憑かれていたか」
グレイの想定した最悪の事態、それはゴルドンの身体を魔族に乗っ取られていること。
それが現実のものと化した。
姿を現した悪魔、ゴブリン等の亜人から変質した物なのか、真っ赤な目と頭部の一対の角以外は醜いながらも人のような風体だが、内に秘める魔力が桁違いに強い。
それでもまだ変質して間もないのか、下級の悪魔のようだ。
「退魔陣を張れ!」
アレックスが号令し、第2分隊が四方に散ってそれぞれの神に祈りを捧げる。
シーグル、イフエール、トルシアの3神の力を借りた結界で、悪魔を倒す程でははないが、下級悪魔ならば結界内に閉じ込める程度の力はある。
そして、小隊で一番の祈りの力を持つエミリアが退魔の祈りを捧げる。
「天より高く広い知識神イフエールよ、邪悪なる魔の物を浄化し、捕らわれたゴルドンの魂を救いたまえ」
「・・ガッ、グウゥゥ・・」
エミリアの祈りに悪魔は全身を焼かれて苦悶の表情を浮かべるが、それ以上の効果は得られない。
神を信じていないグレイには当然ながら祈りの力は無い。
グレイに出来るのは己が力を信じて真っ向から戦いを挑むこと。
グレイは駆け出して悪魔の喉元目掛けて槍を突き出す。
悪魔は突き出された槍を躱し、長い爪で斬り掛かってくるが、その爪を槍の柄で弾き、翻した槍を2度、3度と突き出す。
数度の激突の後にグレイの切っ先が悪魔の左肩を貫いた。
「グゥギッ、ギャッ!オノレ・・ッ!」
たまらずに悲鳴を上げる悪魔、幸いにして通常の攻撃が通じるようだ。
「隊長!援護します!」
エミリアの放った矢が悪魔の腹に刺さる。
次の瞬間、逆上した悪魔の腕がグレイを捉えた。
「隊長っ!あぶなっ!」
エミリアの警告も間に合わず、直撃を受けたグレイは教会の窓ガラスを突き破り、教会の外にまで吹き飛ばされた。
「キャッ!たっ、隊長!大丈夫ですかっ?」
教会から飛び出して目の前に落ちたグレイにシルファが慌てて駆け寄る。
グレイは直ぐに跳ね起きて周囲を見回して状況判断をする。
「中に居るのは下級悪魔だ!第1分隊突入!奴を教会の外へ引きずり出す!第3分隊は悪魔が引きずり出されたら弓矢による集中攻撃を加えろ!」
グレイの命令にウォルフは直ぐに反応し、分隊を指揮して教会内に突入し、グレイも自分が叩き出された窓から教会内に飛び込んでいった。
教会に立ち入るのはグレイとエミリアと第2分隊。
監察が滞りなく進められればそれでよいが、最悪の事態の戦闘に陥った場合には後続として第1分隊か第3分隊のどちらかが突入する。
残りの分隊は周囲の警戒に当たる。
各分隊が配置に着いたのを確認したグレイはエミリアと第2分隊を従えて正面から教会内に入った。
「聖務院聖監察兵団です!立ち入り監察に参りました。ゴルドン神官はおられるか!」
教会内に入るやグレイは宣言する。
教会内に人の姿は無く、祈りを捧げる祭壇も荒れ放題だ。
シーグルの女神像まで埃を被っており、グレイの考える最悪の事態へと着実に近づいている。
グレイが教会の奥に向かって歩き出すと祭壇の横にある扉が開き年老いた神官が現れた。
「何事ですか?このような辺境の教会に武装して踏み込んでくるとは穏やかではありませんね」
表面上は穏やかに話す老神官のゴルドン。
強い香の香りを漂わせるゴルドンの目を見たとき、グレイは確信した。
「ゴルドン神官、貴方に対して幾つかの疑惑があり、監察に来た次第です」
「私達に何の疑惑が?心当たりはごさいませんが・・・」
虚ろな笑みを浮かべるゴルドン。
「お布施の横領、職務怠慢等の疑惑でしたが、最早そんなことはどうでもよくなりました」
グレイはゴルドンに槍の切っ先を向けた。
「抵抗することなくゴルドン神官の身体から離れろ!」
グレイは一喝した。
背後ではエミリアが弓に矢を番え、アレックス以下第2分隊がハルバートを構えて散開している。
「何を訳の分からないことを申されますか。そのような物騒な物を下ろしてください。私には何もやましいことはございません」
薄ら笑いを浮かべながら後ずさるゴルドン。
グレイは切っ先の狙いをゴルドンの喉元から離さない。
「くだらない三文芝居は終わりだ!身体は乗っ取っても開ききって濁った瞳孔やその身体から漂う死臭を隠すことはできんぞ!もう一度だけ言う、ゴルドン神官の身体から離れろ!」
「・・・・・」
グレイは槍を構えて踏み出す。
「・・・大人しく帰れば見逃してやったものを」
ゴルドンの声色が変わり、濁った瞳が赤く染まる。
その全身を禍々しい気配が包み込み、小さな身体が膨張を始めた。
「気をつけろ!正体を現すぞ!」
グレイの声に反応したエミリアがゴルドンに向けて矢を放つ。
放たれた矢はゴルドンの眉間に突き刺さるも、その矢すらも膨張するゴルドンの身体に飲み込まれていった。
人間の姿を失い、巨大な肉塊となり果てたのも束の間、更にその姿を変えて徐々に正体を現してゆく。
「おいおい、これってまさか!」
その姿を見たアレックスがたまらずに口を漏らす。
「やはり、悪魔に取り憑かれていたか」
グレイの想定した最悪の事態、それはゴルドンの身体を魔族に乗っ取られていること。
それが現実のものと化した。
姿を現した悪魔、ゴブリン等の亜人から変質した物なのか、真っ赤な目と頭部の一対の角以外は醜いながらも人のような風体だが、内に秘める魔力が桁違いに強い。
それでもまだ変質して間もないのか、下級の悪魔のようだ。
「退魔陣を張れ!」
アレックスが号令し、第2分隊が四方に散ってそれぞれの神に祈りを捧げる。
シーグル、イフエール、トルシアの3神の力を借りた結界で、悪魔を倒す程でははないが、下級悪魔ならば結界内に閉じ込める程度の力はある。
そして、小隊で一番の祈りの力を持つエミリアが退魔の祈りを捧げる。
「天より高く広い知識神イフエールよ、邪悪なる魔の物を浄化し、捕らわれたゴルドンの魂を救いたまえ」
「・・ガッ、グウゥゥ・・」
エミリアの祈りに悪魔は全身を焼かれて苦悶の表情を浮かべるが、それ以上の効果は得られない。
神を信じていないグレイには当然ながら祈りの力は無い。
グレイに出来るのは己が力を信じて真っ向から戦いを挑むこと。
グレイは駆け出して悪魔の喉元目掛けて槍を突き出す。
悪魔は突き出された槍を躱し、長い爪で斬り掛かってくるが、その爪を槍の柄で弾き、翻した槍を2度、3度と突き出す。
数度の激突の後にグレイの切っ先が悪魔の左肩を貫いた。
「グゥギッ、ギャッ!オノレ・・ッ!」
たまらずに悲鳴を上げる悪魔、幸いにして通常の攻撃が通じるようだ。
「隊長!援護します!」
エミリアの放った矢が悪魔の腹に刺さる。
次の瞬間、逆上した悪魔の腕がグレイを捉えた。
「隊長っ!あぶなっ!」
エミリアの警告も間に合わず、直撃を受けたグレイは教会の窓ガラスを突き破り、教会の外にまで吹き飛ばされた。
「キャッ!たっ、隊長!大丈夫ですかっ?」
教会から飛び出して目の前に落ちたグレイにシルファが慌てて駆け寄る。
グレイは直ぐに跳ね起きて周囲を見回して状況判断をする。
「中に居るのは下級悪魔だ!第1分隊突入!奴を教会の外へ引きずり出す!第3分隊は悪魔が引きずり出されたら弓矢による集中攻撃を加えろ!」
グレイの命令にウォルフは直ぐに反応し、分隊を指揮して教会内に突入し、グレイも自分が叩き出された窓から教会内に飛び込んでいった。
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