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第3章 罪火、戸惑いに揺れる心

カイの正体

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 そして今気づいたとでもいうように、サラはテーブルの脇に置かれている両手のひらにのっかるほどの大きさの水晶と無造作に置かれたカードに視線を移す。

「水晶……タロット……」

 サラは首を傾げ、訝しむように目の前に座るカイをもう一度見る。

「占い師?」

 エレナさんは街でお針子をやっていると言っていた。
 だとしたら、これらを使用する人物は目の前のカイという男しか存在しない。

「俺が占い師に見えないって顔だな」
「違う、そうじゃないわ」

 カイはにやりと笑った。

「占いに興味があるか? もっとも、占いが嫌いな女なんていないだろうがな。どうせ俺も手持ち無沙汰だ。何なら暇つぶしに占ってやってもいいぞ。たとえば、おまえの恋の行方でも」

 しかし、サラはふるふると勢いよく首を振った。

「私、占いにはとても興味あるけど、自分のこと占って欲しいとは思わないの」

 へえ、とカイは興味深そうに眉をあげた。

「だって、悪い結果が出たら落ち込んでしまうし、それに占いなんかで私の未来を左右されたく……」

 そこまで言って、サラは慌てて口元を手で押さえた。
 占い師を前にして、占いなんかとは失礼な言い方であったと思ったからだ。

「気にするな」
「それに、カイさんに……」
「カイでいい」
「えっと、じゃあ……カイに占いの代金を支払う大金なんて、私、持ってないもの」

 カイはついた頬杖に軽くあごを沈め、上目遣いでサラを見る。

「カイはただの占い師じゃない。だってそれ」

 サラはそれといって、カイのシャツからのぞくペンダントを指さした。
 艶やかな光を放つ白銀のペンダント。
 そのペンダントの表面には精密に彫り込まれた絵柄、そして、宝石が嵌められていた。

「私、そのペンダントを知ってるの。表面には十二個の宝石が嵌められていて、それは十二の星座を表しているのよね」

 サラは確認するようにカイに問う。
 しかし、カイは答えない。
 サラの服を繕うエレナの手も止まったのが視界のすみに入った。

「祖母様が時々お屋敷に招く占い師が、それと同じものを身につけていた。祖母様は大事なことを決める時は必ず占い師を呼んで占ってもらうの。その占い師を家に呼ぶ日取りだって占い師に占ってもらうんだから。それに、お父様の結婚相手でさえ、占いで決めようとしていた。それから……」

 ううん、とその先の言葉を飲み込み、サラは恐る恐るカイの目をのぞき込む。

「カイは王侯貴族専門に占いをする、国が認めた占師」

 サラが不可思議な顔で、水晶やタロットを見つめていた理由はそれだった。

「水晶とかタロット占いじゃない。カイは世界でも数少ない、星を読み解く占星術師、占師様。とてもすごい人だわ!」

 サラは両手を広げ、興奮した声を上げた。
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