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第4章 え? あたしが夜伽! それだけは勘弁してください
10 陛下の寝室へ
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その夜、御前付きの太監の案内によって、蓮花は赦鶯の住む慈桂宮に連れて行かれた。太監が無言で部屋の中に入るよう促す。
蓮花は緊張した面持ちで、陛下の居室に一歩足を踏み入れた。
瞬間、うわっと驚きの声をあげた。
「ひどい……これは本当にひどい。ひどすぎる!」
「何がひどいのだ?」
奥の間から現れた赦鶯陛下は、ひどいを連呼する蓮花を不快そうに見つめ眉根を寄せた。
「あーごきげん……」
慌てて礼をする蓮花に、赦鶯は軽く手を振る。
「楽にしろ、いまさらお前にかしこまられてもおかしな気分だ」
「いちおう形だけでもって思って」
立ちあがった蓮花は肩をすくめた。
こうやって皇帝陛下にため口をたたける妃は、おそらく蓮花くらいであろう。
長年の友である一颯とて、陛下にこんな軽々しい口はきかない。
もっとも、プライベートではどうだか知らないが。
相変わらずの蓮花の物怖じしない、悪く言えばふてぶてしい態度に、赦鶯はやれやれとため息をつく。
他の妃はみな、皇帝陛下に恐れを抱くか、気に入られ寵愛を得ようと媚びを売るかのどちらかなのに、蓮花はどちらでもない。
今まで周りにいなかったタイプだ。だからこそ、新鮮で彼女と話をしてみたいと赦鶯は思った。
「私の寵愛を得るということがどういうことか、理解してここへ来たと思っていいのか?」
赦鶯は蓮花に近寄った。手を伸ばし、蓮花の頬に触れようとする。しかし、蓮花は咄嗟に待ったをかけた。
「皇后さまが言ったでしょう。あたしは役に立つって」
一瞬、赦鶯は不可解な表情をする。
「伽のために来たのではないか?」
「伽? 勘違いしないで。そんなつもり、全然ないから」
蓮花はにっ、と笑った。
そう、数日前のことだ。
「皇后さま、あたし、決めました!」
突然の蓮花の決意に、皇后はきょとんとした顔をする。
穏やかな午後の一時、産まれてくる赤子の靴下に刺繍を縫う手をいったんとめた。
「あたし、皇后さまのお役に立ちたいです」
何を言い出すかと思えばそんなこと? と皇后はいつもの慈悲深い笑みを浮かべた。
「今だって、蓮花には助けられてもらっているわ」
「違います。あたし、陛下の気を引いて、景貴妃の元に通わせないようにしてみます」
皇后はやりかけの刺繍を卓に置いた。
「蓮花、言ってる意味が分かる? 私はあなたにそんなことを望んでいないのよ」
蓮花はいいえ、と首を振り、不敵な笑みを浮かべた。
「もちろん伽はしません。陛下の寵愛を得るつもりなんて全然ないです。だけど、皇后さまが無事に出産するまでの間、陛下の気を引いてみせます。あたしなりのやり方で!」
任せて! と蓮花は自分の胸を叩いた。
そんな会話を皇后としたのだ。
蓮花は緊張した面持ちで、陛下の居室に一歩足を踏み入れた。
瞬間、うわっと驚きの声をあげた。
「ひどい……これは本当にひどい。ひどすぎる!」
「何がひどいのだ?」
奥の間から現れた赦鶯陛下は、ひどいを連呼する蓮花を不快そうに見つめ眉根を寄せた。
「あーごきげん……」
慌てて礼をする蓮花に、赦鶯は軽く手を振る。
「楽にしろ、いまさらお前にかしこまられてもおかしな気分だ」
「いちおう形だけでもって思って」
立ちあがった蓮花は肩をすくめた。
こうやって皇帝陛下にため口をたたける妃は、おそらく蓮花くらいであろう。
長年の友である一颯とて、陛下にこんな軽々しい口はきかない。
もっとも、プライベートではどうだか知らないが。
相変わらずの蓮花の物怖じしない、悪く言えばふてぶてしい態度に、赦鶯はやれやれとため息をつく。
他の妃はみな、皇帝陛下に恐れを抱くか、気に入られ寵愛を得ようと媚びを売るかのどちらかなのに、蓮花はどちらでもない。
今まで周りにいなかったタイプだ。だからこそ、新鮮で彼女と話をしてみたいと赦鶯は思った。
「私の寵愛を得るということがどういうことか、理解してここへ来たと思っていいのか?」
赦鶯は蓮花に近寄った。手を伸ばし、蓮花の頬に触れようとする。しかし、蓮花は咄嗟に待ったをかけた。
「皇后さまが言ったでしょう。あたしは役に立つって」
一瞬、赦鶯は不可解な表情をする。
「伽のために来たのではないか?」
「伽? 勘違いしないで。そんなつもり、全然ないから」
蓮花はにっ、と笑った。
そう、数日前のことだ。
「皇后さま、あたし、決めました!」
突然の蓮花の決意に、皇后はきょとんとした顔をする。
穏やかな午後の一時、産まれてくる赤子の靴下に刺繍を縫う手をいったんとめた。
「あたし、皇后さまのお役に立ちたいです」
何を言い出すかと思えばそんなこと? と皇后はいつもの慈悲深い笑みを浮かべた。
「今だって、蓮花には助けられてもらっているわ」
「違います。あたし、陛下の気を引いて、景貴妃の元に通わせないようにしてみます」
皇后はやりかけの刺繍を卓に置いた。
「蓮花、言ってる意味が分かる? 私はあなたにそんなことを望んでいないのよ」
蓮花はいいえ、と首を振り、不敵な笑みを浮かべた。
「もちろん伽はしません。陛下の寵愛を得るつもりなんて全然ないです。だけど、皇后さまが無事に出産するまでの間、陛下の気を引いてみせます。あたしなりのやり方で!」
任せて! と蓮花は自分の胸を叩いた。
そんな会話を皇后としたのだ。
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