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第7章 戦闘編
3 バカ四人組の作戦
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「いいこと、だと?」
それは何だ、とみなの目がいっせいにちびにそそがれる。
特にエーファの鋭利な眼差しは猛獣のようだ。
「あにきの魔術で姐さんを援護するですよ」
「何? おまえ、魔術が使えるのか!」
エーファの鋭い眼光が頭に向けられた。
「ん? んむ? まあ少々」
「前にあの陰湿魔道士に襲われた時に、あにきの身体から光が放たれて、おれっちたちを守ってくれたです」
それは、イェンが彼らに危機が及ぶであろうことを予想して、あらかじめ防御の術を仕込んでいたものだということに四人組は結局気づいていない。
「よし、やれ!」
本当におまえに魔術が使えるのかと疑問すら持たず、エーファは真剣な目で頭につめ寄る。
頭は腕を組み、うむと頷いた。
「やってみよう」
「あにきの活躍を見た魔道士様たちが、ぜひ〝灯〟に入ってくださいって勧誘にくるかもですねー」
「〝灯〟に入ったら、たくさんお給料もらえるっスね。今度肉おごってくださいっスよ」
「シャトーブリアン……食べてみたい……」
〝灯〟に入ったばかりの新参者のお給料で、そんな高級肉など食べられるわけがない。いや、そもそも灯は勧誘ではなく、試験を受けて入るのだが……まあ、今はそんなことはどうでもいい。
そして、頭は両足を軽く開いて腰を落とし、尻を突き出すと両手で握りこぶしを作った。
「何だ! その見苦しい格好は? もっとスマートにできないのか?」
頭のおかしな姿に、エーファは渋面を作って目を細める。
「これは魔術発動のための……そう、いわばルーティンだ」
「ルーティンって……兄き今まで魔術なんて使ったことないじゃないっスか」
「いくぜ!」
と威勢のいいかけ声を発し、頭はうーん、とうなり始めた。
顔面を真っ赤にして唸る頭を、子分たちは見守る。しかし、いくら待てども魔術の欠片も表れる気配はない。
「うーむむむ……む! んふぅっ~」
気張りすぎた頭の鼻から、息の抜けた鼻息がもれる。
「何をしている。まだか! 早くしろ!」
頭の側でエーファが急かす。さらに、お尻を突き出し気張る頭を見たでぶが、眉をひそめた。
「いや、待て。もう少しだ。もう少しで何かが……何かがでそうなんだ! んーむっ! むふ~!」
「もういいっス。踏ん張りすぎて何か違うものがでてきそうでいやっス」
「もう少し……っ!」
「もうよい! ここは、やはり、私が行くしかないようだな」
「ちょっと、待ってください。今ふっと思ったんですけど、よくよく考えてみれば、あにきに頼らずともここに立派な〝灯〟の魔道士様が二人いらっしゃるじゃないですか。それも美少年ですよ! 双子の美少年!」
そう言って、ちびは側にいたノイとアルトをみやる。
「俺たちか?」
そうそう、とちびは首を縦に振る。
「お二方の魔術で、姐さんを援護してくださいです」
「ことわるぜ」
「ええー! どうしてですか?」
「魔術の心得のない一般人を巻き込むことはできないからな」
「あの敵の魔道士強いぞ。俺たちだってかなうかどうかだな」
横でアホなやりとりをやっている四人組を尻目に、イヴンは剣の柄を握りしめるエーファの手にそっと手を重ね、首を左右に振った。
くっ、とエーファは喉を鳴らし、悔しげに顔を歪めた。
エーファとて、魔道士の戦いに、魔道の心得がない者が踏み込むことがどれだけ危険なことかを分かっているはずだ。
エーファは一度だけ目を閉じ、息を吐く。
手にかけた剣を離し、代わりにその手を強く握りしめる。
「だが、これではいつまでたっても、らちがあかないぞ」
駆られる激情を胸のうちにとどめるような、静かな声だった。
それは何だ、とみなの目がいっせいにちびにそそがれる。
特にエーファの鋭利な眼差しは猛獣のようだ。
「あにきの魔術で姐さんを援護するですよ」
「何? おまえ、魔術が使えるのか!」
エーファの鋭い眼光が頭に向けられた。
「ん? んむ? まあ少々」
「前にあの陰湿魔道士に襲われた時に、あにきの身体から光が放たれて、おれっちたちを守ってくれたです」
それは、イェンが彼らに危機が及ぶであろうことを予想して、あらかじめ防御の術を仕込んでいたものだということに四人組は結局気づいていない。
「よし、やれ!」
本当におまえに魔術が使えるのかと疑問すら持たず、エーファは真剣な目で頭につめ寄る。
頭は腕を組み、うむと頷いた。
「やってみよう」
「あにきの活躍を見た魔道士様たちが、ぜひ〝灯〟に入ってくださいって勧誘にくるかもですねー」
「〝灯〟に入ったら、たくさんお給料もらえるっスね。今度肉おごってくださいっスよ」
「シャトーブリアン……食べてみたい……」
〝灯〟に入ったばかりの新参者のお給料で、そんな高級肉など食べられるわけがない。いや、そもそも灯は勧誘ではなく、試験を受けて入るのだが……まあ、今はそんなことはどうでもいい。
そして、頭は両足を軽く開いて腰を落とし、尻を突き出すと両手で握りこぶしを作った。
「何だ! その見苦しい格好は? もっとスマートにできないのか?」
頭のおかしな姿に、エーファは渋面を作って目を細める。
「これは魔術発動のための……そう、いわばルーティンだ」
「ルーティンって……兄き今まで魔術なんて使ったことないじゃないっスか」
「いくぜ!」
と威勢のいいかけ声を発し、頭はうーん、とうなり始めた。
顔面を真っ赤にして唸る頭を、子分たちは見守る。しかし、いくら待てども魔術の欠片も表れる気配はない。
「うーむむむ……む! んふぅっ~」
気張りすぎた頭の鼻から、息の抜けた鼻息がもれる。
「何をしている。まだか! 早くしろ!」
頭の側でエーファが急かす。さらに、お尻を突き出し気張る頭を見たでぶが、眉をひそめた。
「いや、待て。もう少しだ。もう少しで何かが……何かがでそうなんだ! んーむっ! むふ~!」
「もういいっス。踏ん張りすぎて何か違うものがでてきそうでいやっス」
「もう少し……っ!」
「もうよい! ここは、やはり、私が行くしかないようだな」
「ちょっと、待ってください。今ふっと思ったんですけど、よくよく考えてみれば、あにきに頼らずともここに立派な〝灯〟の魔道士様が二人いらっしゃるじゃないですか。それも美少年ですよ! 双子の美少年!」
そう言って、ちびは側にいたノイとアルトをみやる。
「俺たちか?」
そうそう、とちびは首を縦に振る。
「お二方の魔術で、姐さんを援護してくださいです」
「ことわるぜ」
「ええー! どうしてですか?」
「魔術の心得のない一般人を巻き込むことはできないからな」
「あの敵の魔道士強いぞ。俺たちだってかなうかどうかだな」
横でアホなやりとりをやっている四人組を尻目に、イヴンは剣の柄を握りしめるエーファの手にそっと手を重ね、首を左右に振った。
くっ、とエーファは喉を鳴らし、悔しげに顔を歪めた。
エーファとて、魔道士の戦いに、魔道の心得がない者が踏み込むことがどれだけ危険なことかを分かっているはずだ。
エーファは一度だけ目を閉じ、息を吐く。
手にかけた剣を離し、代わりにその手を強く握りしめる。
「だが、これではいつまでたっても、らちがあかないぞ」
駆られる激情を胸のうちにとどめるような、静かな声だった。
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