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第5章 すべては君を手に入れるための嘘
8 君は必ず僕の元に戻ってくる
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銃声が響き渡り、硝煙の臭いが部屋にたちこめる。
銃を撃った反動で、ファンローゼは足をよろめかせ、背後の机に腰を打ちつける。
「あ……」
ファンローゼはそろりと目を開いた。
目の前に平然とした顔でクレイが立っていた。
ファンローゼの撃った弾は、クレイの耳の脇を通り背後の壁を貫いた。
「避けなかったの……」
クレイはくつりと笑う。
「銃口の向きを見れば、あたるかどうか、分かるから」
「う……」
ファンローゼは息を吐き出し、腰が抜けたようにその場に座り込んだ。
人に向けて銃を撃った罪悪感と恐ろしさに手が震えた。と、同時にクレイが一気に距離をつめた。
瞬く間に銃を奪われ、両手を後ろに回され押さえ込まれる。そのまま腕を引かれ、先ほどまで座っていたベッドの上に押し倒された。
「離して!」
押さえつけてくるその手から逃れようと必死で抵抗するが、本気で自分を押さえ込む男の力にはかなうわけがなかった。
「やめて! 私をどうするつもり」
「何もしないよ。僕は嫌がる君を無理矢理どうこうするつもりはまったくない。君は僕にとっての大切な宝もの。それに、その気になればいつだって君を手に入れることはできた。あのパーティーの時のように」
「痛い……離して」
それでもクレイの手は緩むことはない。
「ねえ、僕とアニタの情事を君は見ていたんだろう?」
ファンローゼは顔を赤くした。
顔を背けるファンローゼのあごを、クレイは掴んで正面を向かせる。
「どんな気持ちだった? 聞かせて」
クレイが耳元に唇を近づけ囁く。
「僕に抱かれたいと一瞬でも思わなかった」
「思うわけ……っ」
クレイの指先が首筋をなぞり、ファンローゼは引きつった悲鳴をもらし首をすくめた。さらに、クレイの片足がファンローゼの膝を割っていく。
「何もしないと言ったわ!」
「そうだね。だけど、君が我慢できなくなって僕を欲しいと言ったなら別だよ」
クレイの唇がファンローゼの首筋を這う。
ぞわりと全身が震えた。
「絶対に言わない。言うわけがない!」
「だったら、試してみよう。どうにもならなくなって、僕が欲しいと言わせてあげる」
「やめて! やめ……助けて……コン……」
口を開いた瞬間、唇を愛する人の名前ごとふさがれる。
「ん……っ」
きつく引き結んだ唇をいともかんたんに割られ、クレイの柔らかい舌が侵入する。ゆっくりと弄ぶように舌が絡む。
全身の力が抜けていく。
抗いたくても押さえつけられ、身動ぐことすらできない。
ようやく唇が離れ、ファンローゼは空気を求め、息を吸い吐き出した。
クレイは親指で自分の唇を拭う。その唇は薄く血でにじんでいた。ファンローゼが重ねてきたクレイの唇を嚙みきったのだ。
ファンローゼの平手がクレイの頬に飛んだ。
クレイは苦笑いを浮かべただけであった。
クレイの手がゆるりと持ち上がり、ファンローゼはびくりと肩をすくめる。
頬をはたかれると思ったが、しかし、その手はファンローゼの胸元へと落ち、シャツのボタンをひとつひとつ外し始めた。
クレイの唇が喉元を這う。ボタンが外される度に身体中に悪寒が走った。ファンローゼはいやいやをするように首を激しく振る。
「薔薇の花びらのようにきれいで滑らかな肌だね。ずっと、触れたいと思っていた」
クレイの唇がファンローゼの首筋に寄せられ、チュッと口づけをされる。
ファンローゼは眉根を寄せた。
「本気で君を愛しているんだ。出会った時からずっと君のことが欲しいと思っていた。だから、僕を受け入れて。愛しているよファンローゼ。甘く芳しい香りを放つ、美しい僕の薔薇」
クレイの囁く吐息が耳朶に触れる。
「コンツェット……助けて」
「あんな男のことなど僕が忘れさせてあげる。君の唇から紡がれる言葉は僕の名前でないといけない」
「そんなこと、一生ない」
「今はそうでも、この先は分からない」
「いや、やめて!」
「そんなに僕のことが嫌い? 僕に抱かれるのはいや?」
ファンローゼはふいっとクレイから視線をそらし横を向いた。
「分かったよ。君があまりにも可愛くて魅力的だからつい、意地悪をしてみたくなったんだ。やっぱり、無理矢理奪っても、君の心が手に入らないのでは意味がないからね」
ファンローゼの身体から引いたクレイはベッドからおりる。すかさず、ファンローゼは身を起こしてクレイを押しのけ距離をとる。
「ここにいれば君は安全だし、何があっても僕が守ってあげる」
「こんなところに、一秒たりともいたくない」
「出て行くの? 外は危険だよ。ましてや、こんな治安の悪い町で、君のように可愛らしい女の子一人では、何をされるか分からない。それに、君は軍に狙われているってことを分かっている?」
「あなたといるよりもましだわ!」
「僕もずいぶんと嫌われたものだ」
「私、絶対にあなたのことを許さない」
クレイは静かに笑った。
「ねえ、レトランジェの薔薇を覚えている? 一度君にすすめたことがあっただろう? 雪のように真っ白で、清楚でそれでいて優美な薔薇の花。そう、まるで君のようだと思ったよ」
「それが何?」
「組織の名前〝時の祈り〟も薔薇の品種名なんだよ。真っ白な薔薇でね。少しでも君のことを感じていたい。そして、いつか摘み取りたいと思って僕が名付けた」
ファンローゼは厳しい目でクレイを睨みつける。
「まあいいさ。困ったことがあったらいつでも君の助けになるよ。いや、君は最後に僕のところに必ず戻ってくる。君はどこにも逃げられはしないのだから」
扉に向かって駆け出すファンローゼを、クレイは引き止めることはしなかった。それどころか、むしろ、クレイの唇には楽しげな笑いが刻まれていた。
「間違っても組織に戻ってはいけないよ」
扉の前でファンローゼはクレイを振り返る。
「時の祈りはお終いだと言っただろう? もう終わりなんだ。それと、僕のことは遠慮なく敵にばらしていい。その方が君のためでもある」
声を発することもなく、ファンローゼはそのまま飛び出すように外へと逃げ出した。
「君には最後の仕事をしてもらわないとね。頑張っておいで、僕のファンローゼ」
楽しげに呟くクレイの声は、当然のごとくファンローゼの耳に入ることはなかった。
銃を撃った反動で、ファンローゼは足をよろめかせ、背後の机に腰を打ちつける。
「あ……」
ファンローゼはそろりと目を開いた。
目の前に平然とした顔でクレイが立っていた。
ファンローゼの撃った弾は、クレイの耳の脇を通り背後の壁を貫いた。
「避けなかったの……」
クレイはくつりと笑う。
「銃口の向きを見れば、あたるかどうか、分かるから」
「う……」
ファンローゼは息を吐き出し、腰が抜けたようにその場に座り込んだ。
人に向けて銃を撃った罪悪感と恐ろしさに手が震えた。と、同時にクレイが一気に距離をつめた。
瞬く間に銃を奪われ、両手を後ろに回され押さえ込まれる。そのまま腕を引かれ、先ほどまで座っていたベッドの上に押し倒された。
「離して!」
押さえつけてくるその手から逃れようと必死で抵抗するが、本気で自分を押さえ込む男の力にはかなうわけがなかった。
「やめて! 私をどうするつもり」
「何もしないよ。僕は嫌がる君を無理矢理どうこうするつもりはまったくない。君は僕にとっての大切な宝もの。それに、その気になればいつだって君を手に入れることはできた。あのパーティーの時のように」
「痛い……離して」
それでもクレイの手は緩むことはない。
「ねえ、僕とアニタの情事を君は見ていたんだろう?」
ファンローゼは顔を赤くした。
顔を背けるファンローゼのあごを、クレイは掴んで正面を向かせる。
「どんな気持ちだった? 聞かせて」
クレイが耳元に唇を近づけ囁く。
「僕に抱かれたいと一瞬でも思わなかった」
「思うわけ……っ」
クレイの指先が首筋をなぞり、ファンローゼは引きつった悲鳴をもらし首をすくめた。さらに、クレイの片足がファンローゼの膝を割っていく。
「何もしないと言ったわ!」
「そうだね。だけど、君が我慢できなくなって僕を欲しいと言ったなら別だよ」
クレイの唇がファンローゼの首筋を這う。
ぞわりと全身が震えた。
「絶対に言わない。言うわけがない!」
「だったら、試してみよう。どうにもならなくなって、僕が欲しいと言わせてあげる」
「やめて! やめ……助けて……コン……」
口を開いた瞬間、唇を愛する人の名前ごとふさがれる。
「ん……っ」
きつく引き結んだ唇をいともかんたんに割られ、クレイの柔らかい舌が侵入する。ゆっくりと弄ぶように舌が絡む。
全身の力が抜けていく。
抗いたくても押さえつけられ、身動ぐことすらできない。
ようやく唇が離れ、ファンローゼは空気を求め、息を吸い吐き出した。
クレイは親指で自分の唇を拭う。その唇は薄く血でにじんでいた。ファンローゼが重ねてきたクレイの唇を嚙みきったのだ。
ファンローゼの平手がクレイの頬に飛んだ。
クレイは苦笑いを浮かべただけであった。
クレイの手がゆるりと持ち上がり、ファンローゼはびくりと肩をすくめる。
頬をはたかれると思ったが、しかし、その手はファンローゼの胸元へと落ち、シャツのボタンをひとつひとつ外し始めた。
クレイの唇が喉元を這う。ボタンが外される度に身体中に悪寒が走った。ファンローゼはいやいやをするように首を激しく振る。
「薔薇の花びらのようにきれいで滑らかな肌だね。ずっと、触れたいと思っていた」
クレイの唇がファンローゼの首筋に寄せられ、チュッと口づけをされる。
ファンローゼは眉根を寄せた。
「本気で君を愛しているんだ。出会った時からずっと君のことが欲しいと思っていた。だから、僕を受け入れて。愛しているよファンローゼ。甘く芳しい香りを放つ、美しい僕の薔薇」
クレイの囁く吐息が耳朶に触れる。
「コンツェット……助けて」
「あんな男のことなど僕が忘れさせてあげる。君の唇から紡がれる言葉は僕の名前でないといけない」
「そんなこと、一生ない」
「今はそうでも、この先は分からない」
「いや、やめて!」
「そんなに僕のことが嫌い? 僕に抱かれるのはいや?」
ファンローゼはふいっとクレイから視線をそらし横を向いた。
「分かったよ。君があまりにも可愛くて魅力的だからつい、意地悪をしてみたくなったんだ。やっぱり、無理矢理奪っても、君の心が手に入らないのでは意味がないからね」
ファンローゼの身体から引いたクレイはベッドからおりる。すかさず、ファンローゼは身を起こしてクレイを押しのけ距離をとる。
「ここにいれば君は安全だし、何があっても僕が守ってあげる」
「こんなところに、一秒たりともいたくない」
「出て行くの? 外は危険だよ。ましてや、こんな治安の悪い町で、君のように可愛らしい女の子一人では、何をされるか分からない。それに、君は軍に狙われているってことを分かっている?」
「あなたといるよりもましだわ!」
「僕もずいぶんと嫌われたものだ」
「私、絶対にあなたのことを許さない」
クレイは静かに笑った。
「ねえ、レトランジェの薔薇を覚えている? 一度君にすすめたことがあっただろう? 雪のように真っ白で、清楚でそれでいて優美な薔薇の花。そう、まるで君のようだと思ったよ」
「それが何?」
「組織の名前〝時の祈り〟も薔薇の品種名なんだよ。真っ白な薔薇でね。少しでも君のことを感じていたい。そして、いつか摘み取りたいと思って僕が名付けた」
ファンローゼは厳しい目でクレイを睨みつける。
「まあいいさ。困ったことがあったらいつでも君の助けになるよ。いや、君は最後に僕のところに必ず戻ってくる。君はどこにも逃げられはしないのだから」
扉に向かって駆け出すファンローゼを、クレイは引き止めることはしなかった。それどころか、むしろ、クレイの唇には楽しげな笑いが刻まれていた。
「間違っても組織に戻ってはいけないよ」
扉の前でファンローゼはクレイを振り返る。
「時の祈りはお終いだと言っただろう? もう終わりなんだ。それと、僕のことは遠慮なく敵にばらしていい。その方が君のためでもある」
声を発することもなく、ファンローゼはそのまま飛び出すように外へと逃げ出した。
「君には最後の仕事をしてもらわないとね。頑張っておいで、僕のファンローゼ」
楽しげに呟くクレイの声は、当然のごとくファンローゼの耳に入ることはなかった。
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