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第4章 菜月、幽体離脱を試みる
3 赤いレインコートの女の正体
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菜月の家に辿り着いた翔流は足を止めた。
家の前の路上で、数台のパトカーの赤色灯が光っているのを目にしたからだ。
背中に悪寒が走る。
菜月が見つかったのか、それとも……。
まさか!
翔流は嫌な考えを振り払うように首を振った。
「菜月……!」
再び駆け出し、パトカーの元へ走る。
群がる野次馬を押しのけ、前に飛び出た翔流は、菜月の家の門から複数の警官に取り押さえられながら、赤いレインコートを着た人物が出てくるのを見る。
顔はよく見えないが、ロングスカートに、頭にかぶったレインコートのフードからのぞく長い黒髪。
女か。
だが、なぜその女が菜月の家から出てきたのだ?
「こいつを署まで頼んだ」
指示を出しているのは菜月の父親であった。
「神埜さん!」
駆け寄る翔流の姿に気づいた征樹は、驚いた顔をする。
「翔流くん?」
「菜月は? 家に戻ってきたんですか?」
期待は征樹が首を横に振ることによって消えた。
「そうですか……あの赤いレインコートの女は?」
今まさに、パトカーに乗り込もうとする赤いレインコートの人物を翔流は指さす。
「あいつが、ここ最近騒がれている通り魔の容疑者だ」
「犯人が見つかったんですね。まさか、女の人だったとは」
しかし、征樹は沈痛な顔で再び否と、首を振る。
征樹の表情にいぶかしんだ翔流は、もう一度赤いレインコートの女を見る。
パトカーに乗る寸前、その女はこちらを振り返った。
振り返った拍子に、かぶっていたレインコートのフードが背に落ちる。
女ではなかった。
その人物と目があった翔流は、声も出せず唖然とする。
フードから現れた顔は男。
その人物は、綴木先生だった。
翔流と目があった綴木はにやりと、唇を歪めて笑った。
「神埜さん、こちらの方でも菜月さんの行方を捜してみます。何かあったら連絡を入れます」
「ああ、頼んだ」
綴木を乗せたパトカーはサイレンを鳴らし、遠ざかって行く。
「どうして綴木先生がここに?」
翔流は顔を青ざめさせる。
綴木先生が通り魔の容疑者で、菜月はここで襲われたのか。
だが、なぜ菜月が襲われた?
翔流は、帰り際、綴木と菜月が交わした会話の内容を思いだす。
『じゃあ、先生がお父さんに連絡を』
『今日は仕事が忙しくて遅くなると言っていたから無理だと思います』
家の前の路上で、数台のパトカーの赤色灯が光っているのを目にしたからだ。
背中に悪寒が走る。
菜月が見つかったのか、それとも……。
まさか!
翔流は嫌な考えを振り払うように首を振った。
「菜月……!」
再び駆け出し、パトカーの元へ走る。
群がる野次馬を押しのけ、前に飛び出た翔流は、菜月の家の門から複数の警官に取り押さえられながら、赤いレインコートを着た人物が出てくるのを見る。
顔はよく見えないが、ロングスカートに、頭にかぶったレインコートのフードからのぞく長い黒髪。
女か。
だが、なぜその女が菜月の家から出てきたのだ?
「こいつを署まで頼んだ」
指示を出しているのは菜月の父親であった。
「神埜さん!」
駆け寄る翔流の姿に気づいた征樹は、驚いた顔をする。
「翔流くん?」
「菜月は? 家に戻ってきたんですか?」
期待は征樹が首を横に振ることによって消えた。
「そうですか……あの赤いレインコートの女は?」
今まさに、パトカーに乗り込もうとする赤いレインコートの人物を翔流は指さす。
「あいつが、ここ最近騒がれている通り魔の容疑者だ」
「犯人が見つかったんですね。まさか、女の人だったとは」
しかし、征樹は沈痛な顔で再び否と、首を振る。
征樹の表情にいぶかしんだ翔流は、もう一度赤いレインコートの女を見る。
パトカーに乗る寸前、その女はこちらを振り返った。
振り返った拍子に、かぶっていたレインコートのフードが背に落ちる。
女ではなかった。
その人物と目があった翔流は、声も出せず唖然とする。
フードから現れた顔は男。
その人物は、綴木先生だった。
翔流と目があった綴木はにやりと、唇を歪めて笑った。
「神埜さん、こちらの方でも菜月さんの行方を捜してみます。何かあったら連絡を入れます」
「ああ、頼んだ」
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「どうして綴木先生がここに?」
翔流は顔を青ざめさせる。
綴木先生が通り魔の容疑者で、菜月はここで襲われたのか。
だが、なぜ菜月が襲われた?
翔流は、帰り際、綴木と菜月が交わした会話の内容を思いだす。
『じゃあ、先生がお父さんに連絡を』
『今日は仕事が忙しくて遅くなると言っていたから無理だと思います』
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