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第4章 菜月、幽体離脱を試みる

1 消えた菜月

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 お風呂からあがった翔流は、バスタオルで髪を拭きながら自室へと戻る。
 ふと、スマホを見ると着信があったことに気づく。
 知らない番号だった。

 かけ直してみるか、放っておくか。
 手に取ったスマホをしばし眺めていると、再びその番号から電話がかかってきた。
 時刻は九時を回っている。
 こんな時間に電話をかけてくるとは、よほどのことか。

 翔流は電話に出る。
「はい……」
「翔流くんか! 俺、いや……菜月の父、征樹です」
「菜月のお父さん?」
「遅い時間にすまない」
 何かあったのだろうか。

 征樹の声に焦りのようなものが感じられた。
「どうしたんですか?」
 心臓の鼓動がはやい。
 嫌な予感に胸をざわつかせる。

「それが、菜月がまだ帰ってきていないんだ。翔流くん、菜月がどこに行ったか知らないだろうか」
「いやだって、菜月さんを家の前まで送りました。確か、六時過ぎくらいだったと思います。帰っていないんですか?」

 ちゃんと家まで見送った。なのに、まだ帰っていないなどあり得ない。
「ああ、家に入った気配も感じられないんだ。それで翔流くんならなにか知っているかと思って電話をしたんだが。翔流くん、他に菜月が行きそうな場所は知っているだろうか」
「友人の深水さんは?」
「さっき電話をかけてみたが」

 暎子も菜月がどこに行ったかは知らないらしい。
「こんな時間に申し訳ない。もし、菜月から連絡があったら、すぐに僕に知らせて欲しい」
「わかりました」
 と答えて電話を切る。
 手にしたスマホを見つめ、翔流は天井を仰ぐ。
 菜月、どこに行ったんだ。
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