霊能者、はじめます!

島崎 紗都子

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第3章 生きている人間も、怖い?

2 人を呪わば穴二つ

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「聞いた? またこの辺で通り魔事件が起きたって」
 学校に登校すると、クラス中その話題でもちきりであった。
「三年の先輩が塾帰りに、赤いレインコートを着た不審者に襲われたって」
 話によると、突然現れた通り魔犯に、その三年生は着衣をカッターナイフで裂かれたという。

 塾帰りの生徒。
 赤いレインコートを来た人物。
 カッターナイフで着られた服。
 前回と同じ手口だ。

「また赤いレインコート? そもそも、それって魔の交差点に現れる幽霊じゃなかったの?」
 クラスの子たちの話を聞きながら、菜月は首を傾げる。
 赤いレインコートを着た幽霊は実際に存在した。
 だが、それは翔流くんが封じ込めたから、二度と現れるはずがない。

 菜月は考え込む。
 赤いレインコートを着たその人は、都市伝説を真似て犯行に及んでいるのか。
 だとしたら悪質だ。

「そうそう、話は変わるけど、さっき職員室に用があって行ったんだけど、小山が突然体調を崩して入院したんだって」
「小山が入院? まあ、あんな騒ぎを起こしたばかりだしね」
「ふーん、それにしたって、入院とはただごとではないね」
 屋上でのことはすでに学校中に知れ渡っている。
 だが、元々、地味で目立たない小山のことを、とりたててそれ以上、話題にすることはなかった。

 菜月は翔流の言葉を思い出す。
 複雑な感情が込み上げくる。
 人を呪わば穴二つ。
 誰かを呪えば、必ず自分に跳ね返る。
 それも倍になって。

 授業の準備を始めようとする菜月の耳に、クラスの男子たちのざわつく声が聞こえた。
 隣のクラスの山城まどかが、扉の前に立っていたからだ。
 まどかの登場に、男子たちがおお、と嬉しそうな声を上げている。

「おい見ろよ! まどかさんだ」
「なんの用だろ」
「いつ見ても可愛いなあ~」

 まどかは誰かを探すように視線を巡らせていた。
 菜月と目が合うと、つかつかと真っ直ぐこちらに向かって歩いて来る。
 彼女の後ろには金魚のフンのごとく、取り巻きたちも続く。

「神埜さん、ちょっと来てくれる?」
「私? どうして?」
「いいから、来いって言ったの。聞こえなかった?」
 後方にいる取り巻きの一人が、凄みを利かせた声で繰り返す。
 菜月の机の周りを、まどかと、まどかの取り巻きがぐるりと囲む。

「いきなりやって来て横柄な態度ね。なんで菜月があんたたちに付き合わなきゃいけないのよ」
 威勢よくまどかたちに食ってかかったのは、親友の暎子だ。
「あんたは出しゃばってこないでよ。あたしは神埜に用があるの」
「話があるならここで話せばいいでしょ!」
 鼻息を荒くする暎子を、菜月は手で止める。

「暎子落ち着いて。私はだいじょうぶだから」
「もうすぐ授業が始まるよ」
「それまでには戻るから」
 菜月は立ち上がった。

 まどかはふっと笑って、教室の出口に向かって歩いて行く。
 その後を菜月も続いた。
 菜月の後ろを取り巻きが、逃がさないというように取り囲んでついてくる。
 まどかに呼び出された場所は、女子トイレだった。

 これはまた、ベタな。
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