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第2章 翔流、悪霊に挑む
4 まるで何かに取り憑かれたように
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「小山さん?」
菜月も教壇から姿を現し、佳珠子の側へと近寄る。
うつむきながら肩を震わせていた佳珠子が、突然、顔をあげた。
「あはは! なーんだ、もうばれちゃったかーーーっ!」
佳珠子はお腹を押さえケタケタと笑う。
「小山さん、どうしてこんなことをするの?」
「どうして? あんたがそれを聞く?」
佳珠子は怨みのこもった目で、菜月を睨みつけてきた。
悪鬼さながらの佳珠子の表情に、おそれを抱いて菜月はごくりと唾を飲み込む。
「あたしは翔流くんが好き。なのに、あたしの気持ちを知っていながら翔流くんを横取りした!」
今にも飛びかかってきそうな勢いに、菜月はうろたえる。
隣のクラスの佳珠子とは、親しかったわけではない。
会話もしたことがない。
ただ、見る限りおとなしくて、あまり波風たてない性格だと思っていた。
そういえば、彼女は山城まどかとつるんでいた。
山城まどかは派手なグループで、周りからも注目されている存在だ。
こんなことを言うのも申し訳ないが、華やかで目立つまどかと、地味でおとなしい佳珠子の接点が結びつかない。
「小山さんは誤解している。だって、私は翔流くんと付き合ってない」
「付き合っていないだって! だったら、どうしていつも一緒にいるのよ!」
「それは、友達だから……」
「友達ぃ? 澄ました顔で嘘をつくなんて性格が悪い女! そうやって、あたしを見下して優越感にひたってるんでしょう!」
背筋がぞくりとした。
目を血走らせ、唾を飛ばして菜月を罵る佳珠子の顔は、鬼のような形相だ。
まるで、何かが取り憑いているような。
その証拠に、佳珠子の身体に絡みつくように、もやもやとした黒い影が見える。
「翔流くんはあたしのものなのに、絶対に許さない!」
それを聞いた翔流は、盛大なため息をつく。
「いつ俺があんたのものになった。それに、こんな真似をするのは陰湿すぎないか?」
佳珠子はふん、と鼻息を荒くした。
「この女が憎い。だから、精神的なダメージを与えようと思っただけよ!」
菜月は困ったように首を振る。
確かに最初は精神的なダメージはあった。
「翔流くん、本当に好きなの。いつも翔流くんのことばかり考えているのこんなに思っているんだから、あたしと付き合って」
甘えた声で佳珠子は翔流の腕にすがりつく。
翔流はその手を払いのけた。
「僕は君のことなんて何とも思っていない」
佳珠子は凄まじい目で翔流を睨みつける。
再び罵声を吐き散らすかと思いきや、佳珠子は顔に手をあて、泣きながら教室を飛び出した。
危険かもしれない。
イヤな予感がする。
「待って、小山さん!」
追いかけようとして翔流に腕をつかまれる。
菜月も教壇から姿を現し、佳珠子の側へと近寄る。
うつむきながら肩を震わせていた佳珠子が、突然、顔をあげた。
「あはは! なーんだ、もうばれちゃったかーーーっ!」
佳珠子はお腹を押さえケタケタと笑う。
「小山さん、どうしてこんなことをするの?」
「どうして? あんたがそれを聞く?」
佳珠子は怨みのこもった目で、菜月を睨みつけてきた。
悪鬼さながらの佳珠子の表情に、おそれを抱いて菜月はごくりと唾を飲み込む。
「あたしは翔流くんが好き。なのに、あたしの気持ちを知っていながら翔流くんを横取りした!」
今にも飛びかかってきそうな勢いに、菜月はうろたえる。
隣のクラスの佳珠子とは、親しかったわけではない。
会話もしたことがない。
ただ、見る限りおとなしくて、あまり波風たてない性格だと思っていた。
そういえば、彼女は山城まどかとつるんでいた。
山城まどかは派手なグループで、周りからも注目されている存在だ。
こんなことを言うのも申し訳ないが、華やかで目立つまどかと、地味でおとなしい佳珠子の接点が結びつかない。
「小山さんは誤解している。だって、私は翔流くんと付き合ってない」
「付き合っていないだって! だったら、どうしていつも一緒にいるのよ!」
「それは、友達だから……」
「友達ぃ? 澄ました顔で嘘をつくなんて性格が悪い女! そうやって、あたしを見下して優越感にひたってるんでしょう!」
背筋がぞくりとした。
目を血走らせ、唾を飛ばして菜月を罵る佳珠子の顔は、鬼のような形相だ。
まるで、何かが取り憑いているような。
その証拠に、佳珠子の身体に絡みつくように、もやもやとした黒い影が見える。
「翔流くんはあたしのものなのに、絶対に許さない!」
それを聞いた翔流は、盛大なため息をつく。
「いつ俺があんたのものになった。それに、こんな真似をするのは陰湿すぎないか?」
佳珠子はふん、と鼻息を荒くした。
「この女が憎い。だから、精神的なダメージを与えようと思っただけよ!」
菜月は困ったように首を振る。
確かに最初は精神的なダメージはあった。
「翔流くん、本当に好きなの。いつも翔流くんのことばかり考えているのこんなに思っているんだから、あたしと付き合って」
甘えた声で佳珠子は翔流の腕にすがりつく。
翔流はその手を払いのけた。
「僕は君のことなんて何とも思っていない」
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再び罵声を吐き散らすかと思いきや、佳珠子は顔に手をあて、泣きながら教室を飛び出した。
危険かもしれない。
イヤな予感がする。
「待って、小山さん!」
追いかけようとして翔流に腕をつかまれる。
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