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第2章 翔流、悪霊に挑む
2 こうなったのも、翔流くんのせいだからね!
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翔流に呼び出された翌日から、菜月はあからさまな嫌がらせを受けるようになった。
「おはよう!」
いつものように、親友の暎子と教室に入り挨拶をする。
けれど、クラスの女子たちの目が、まるで菜月の様子を探るような視線であった。
中には、わざと目をそらす者も。
机に向かい、鞄を置こうとして、菜月はその場に固まった。
なぜなら、机の上にはマジックで悪意ある落書きが書かれていたからだ。
落書きに気づいた暎子は、ざっとクラス中を見渡し声を上げた。
「これを書いた人、誰!」
暎子の剣幕に、みんな視線をそらす。
さらに、机の中を見て愕然とする。
たくさんのゴミが入れられていた。
「こんな悪質なことをする人は誰って聞いてるの! 出てきなさい!」
暎子は乱暴に鞄を机に置くと、腰に手をあてた。
この場にいる、クラスメイトひとりひとりの顔を確かめる。
「いいわ。名乗り出ないなら、あたしが犯人を突き止める。あんたたち手をだして。これだけの落書きだもの、手にマジックの汚れがついているはずよ」
辺りがざわついた。
「暎子、いいよ。私、気にしてないから」
イタズラをされた本人以上に怒りまくる暎子を、菜月はなだめる。
騒ぎを大きくして、暎子にとばっちりがいくのは望ましくない。
そこへ、翔流が教室に入ってきた。
菜月の机に視線を落とし、そしてクラスの反応で状況を察した翔流は、掃除入れからぞうきんを取り出した。
みんなが翔流に注目する中、彼は机の落書きを消し始める。
「おまえら、くだらないことするな」
怒りを滲ませたような声が、翔流の口からもれる。
翔流の言葉に、女子たちの顔に動揺が走った。
しかし、それ以降も、菜月に対する嫌がらせは続いた。
机の落書きは消しても消しても、毎日のように続く。
「何度消しても、書かれるんだもんなあ」
いっそうのこと、消さずにそのままにしておこうかと思い始めてきた。
クラスの子たちは、これまで通り普通に接してくれるが、その中の誰かが、あんな嫌がらせをしている、
そうやって疑ってしまう自分もイヤだ。
菜月は翔流を睨みつける。
ていうか、なんで翔流くんと一緒に帰らなければならないのよ!
「こうなったのも、翔流くんのせいだからね」
「僕?」
「学校一の人気者が、私みたいなのに話しかけるから恨まれたのよ」
「それで僕のせい?」
翔流は心外だというように肩をすくめる。
菜月はため息をつく。
翔流は自分が女の子たちから、好かれて人気があるのか、わかっていないのだ。
天然なの?
本当はこうして一緒に歩いているだけで、恨まれそうで怖いのに。
ねえ、えり好みしないで、誰かと付き合っちゃいなよ。
そうしたら、私の嫌がらせも、おさまると思うんだよね。
「なあ、誰が机に落書きをしているのか、確かめないか」
「いいよ。放っておくことにした」
犯人を突き止めるなんて、そんなことはしたくない。
そもそも、突き止めてどうしようというのか。
相手を刺激する行動をとるよりも、相手が飽きるのを待つつもりだ。
とにかく、相手にしなければいいのだ。
それが一番の解決方法だと思うようになってきた。
落書きも、わざわざ消すから新たに書かれる。
明日からはそのままにしておこう。
「だけどこれ以上、相手の好き勝手をさせるのも腹が立つだろう?」
「うーん」
菜月は首を傾げた。
気にしないと決めた途端、どうでもよくなった気がする。
本当に親しい友達がいればそれでいい。
「投げやりだな」
「放っておけばそのうち嫌がらせもおさまるよ。ううん、翔流くんが私にかかわらなければ、すべて解決」
「ふうん、それでいいのか?」
菜月は言葉をつまらせた。
目の前に翔流の真剣な顔がある。
胸がトクンと鳴った。
「本当にそれでいいのか?」
「それは、その……せっかく翔流くんと友達になれたし、翔流くんの意外な一面も知れて……」
翔流はにこりと笑った。
うわ! イケメンの笑顔。
「そう、僕が霊能者だってことを知っているのは菜月だけ」
私だけ。
その言葉に再び菜月の胸がトクンとする。
いやいや、と菜月は心の中で首を振った。
「だ、だって……確かめるっていっても、どうやって確かめるのよ」
「朝一番に教室に行って張り込む」
「張り込む? それはまた地味で地道なやり方だね」
「おはよう!」
いつものように、親友の暎子と教室に入り挨拶をする。
けれど、クラスの女子たちの目が、まるで菜月の様子を探るような視線であった。
中には、わざと目をそらす者も。
机に向かい、鞄を置こうとして、菜月はその場に固まった。
なぜなら、机の上にはマジックで悪意ある落書きが書かれていたからだ。
落書きに気づいた暎子は、ざっとクラス中を見渡し声を上げた。
「これを書いた人、誰!」
暎子の剣幕に、みんな視線をそらす。
さらに、机の中を見て愕然とする。
たくさんのゴミが入れられていた。
「こんな悪質なことをする人は誰って聞いてるの! 出てきなさい!」
暎子は乱暴に鞄を机に置くと、腰に手をあてた。
この場にいる、クラスメイトひとりひとりの顔を確かめる。
「いいわ。名乗り出ないなら、あたしが犯人を突き止める。あんたたち手をだして。これだけの落書きだもの、手にマジックの汚れがついているはずよ」
辺りがざわついた。
「暎子、いいよ。私、気にしてないから」
イタズラをされた本人以上に怒りまくる暎子を、菜月はなだめる。
騒ぎを大きくして、暎子にとばっちりがいくのは望ましくない。
そこへ、翔流が教室に入ってきた。
菜月の机に視線を落とし、そしてクラスの反応で状況を察した翔流は、掃除入れからぞうきんを取り出した。
みんなが翔流に注目する中、彼は机の落書きを消し始める。
「おまえら、くだらないことするな」
怒りを滲ませたような声が、翔流の口からもれる。
翔流の言葉に、女子たちの顔に動揺が走った。
しかし、それ以降も、菜月に対する嫌がらせは続いた。
机の落書きは消しても消しても、毎日のように続く。
「何度消しても、書かれるんだもんなあ」
いっそうのこと、消さずにそのままにしておこうかと思い始めてきた。
クラスの子たちは、これまで通り普通に接してくれるが、その中の誰かが、あんな嫌がらせをしている、
そうやって疑ってしまう自分もイヤだ。
菜月は翔流を睨みつける。
ていうか、なんで翔流くんと一緒に帰らなければならないのよ!
「こうなったのも、翔流くんのせいだからね」
「僕?」
「学校一の人気者が、私みたいなのに話しかけるから恨まれたのよ」
「それで僕のせい?」
翔流は心外だというように肩をすくめる。
菜月はため息をつく。
翔流は自分が女の子たちから、好かれて人気があるのか、わかっていないのだ。
天然なの?
本当はこうして一緒に歩いているだけで、恨まれそうで怖いのに。
ねえ、えり好みしないで、誰かと付き合っちゃいなよ。
そうしたら、私の嫌がらせも、おさまると思うんだよね。
「なあ、誰が机に落書きをしているのか、確かめないか」
「いいよ。放っておくことにした」
犯人を突き止めるなんて、そんなことはしたくない。
そもそも、突き止めてどうしようというのか。
相手を刺激する行動をとるよりも、相手が飽きるのを待つつもりだ。
とにかく、相手にしなければいいのだ。
それが一番の解決方法だと思うようになってきた。
落書きも、わざわざ消すから新たに書かれる。
明日からはそのままにしておこう。
「だけどこれ以上、相手の好き勝手をさせるのも腹が立つだろう?」
「うーん」
菜月は首を傾げた。
気にしないと決めた途端、どうでもよくなった気がする。
本当に親しい友達がいればそれでいい。
「投げやりだな」
「放っておけばそのうち嫌がらせもおさまるよ。ううん、翔流くんが私にかかわらなければ、すべて解決」
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うわ! イケメンの笑顔。
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いやいや、と菜月は心の中で首を振った。
「だ、だって……確かめるっていっても、どうやって確かめるのよ」
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