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第1章 学校一のイケメン 鴻巣翔流の正体は!
2 事故の多い交差点
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「おはよう!」
学校に向かう途中の公園。
その公園の入り口前で立つ女子に、菜月は手を振った。
「暎子!」
「おはよー、菜月」
手を振りかえしたのは、親友の深水暎子だ。
「ごめーん。おくれちゃった」
暎子は腕時計を見る。
「まだ余裕だからだいじょうぶ。菜月もえらいよね。パパさんのために、朝食やお弁当を作ってあげるんだもん。あたしなら無理。ぎりぎりまで寝ていたい」
まだ眠いのか、暎子は口に手を当てあくびをする。
「もう慣れたよ」
二人は並んで歩き出す。
ママが他界してから三年がたつ。
最初は掃除も洗濯も料理もうまく出来ず、失敗ばかりだったけれど、今ではだいぶ慣れてきた。
それどころか、お料理をするのが大好きになった。
「パパも手伝ってくれるし」
「いいなあ~」
「なにが?」
「菜月のパパ。めっちゃイケメンなんだもん。顔はいいしスタイル抜群。あたしも、菜月のパパみたいなカッコいいお父さんが欲しい。うちのパパなんてさ……」
そんなこと言いながらも、お休みには家族旅行に行くんだって、よく楽しそうに話しているのだから、本当は仲はいいのだ。
家族旅行か。
うらやましいな。
「ねえ菜月、見て。また、あそこに怪しい人が座ってる」
学校近くの交差点が見えてくると、暎子が耳打ちをしてきた。
暎子の言う通り、交差点の片隅で、一人の男が座り込んでいた。
汚れてくたびれた上着に、すりきれたズボン。
ボサボサの髪と伸びきったひげ。
数ヶ月前から、交差点の側で座り込むようになった不審者だ。
特に何かをしてくるわけではないのだが、いつもそこに座って、通行人をじいっと見ているから気味が悪い。
「なんか怖いよね。もしかして、あの人が例の通り魔犯だったりして。ああして座って、女の子を物色しているのかも」
交差点にたどり着き、二人は不審者の存在を気にしながら、信号待ちで立ち止まる。
交差点を渡り、50メートルほど歩くと、菜月たちが通う中学校にたどり着く。
何気なく菜月は斜めに視線を落とした。
ガードレールの片隅に、花束が添えられている。
まだ新しい花であった。
その花束に、暎子も気づく。
「一週間前に事故があったみたい。子どもが車にはねられたんだって」
この交差点は事故が多く〝魔の交差点〟と呼ばれている。
そのせいか、ここで幽霊をみたという人が続出し、ちょっとした心霊スポットになっていた。
学校ではやっている噂によると、深夜の雨の日、全身血にまみれた女が交差点の片隅に立つという。
そして、その女性を見て驚いたドライバーが、あやまってハンドルを切り、衝突事故を起こす。
それが、赤いレインコートを着た幽霊の噂だ。
菜月は地面に置かれた花束から、目をそらせなかった。
こうして花が添えられているのも、何度か目にした。
つい三ヶ月前も、やはりここで、女の子が車にはねられた。
隣のクラスの、藤白桜花という女子だ。
その子とは特別親しくなかったが、事故にあったと聞いた時はショックを受けた。
信号が赤だったにもかかわらず、桜花は横断歩道を駆け抜け、左折してきた車にはねられたのだ。
さらに、不思議だったのが、雨が降っていたわけでもないのに、桜花は全身ずぶ濡れだったという。
いじめられて自殺をはかったという話も聞いたが、真相はわからない。
「こうも事故が続くと怖いよね」
信号が変わり、暎子は横断歩道を渡る。
菜月は添えられた花束を見下ろしながら目を閉じ、手を合わせた。
かわいそう。
どうか安らかに、と心の中でお祈りをしたその時、鋭い悲鳴に目を開ける。
「菜月!」
暎子の叫び声が耳を打つ。
右手から、一台の乗用車が真っ直ぐ、こちらへ突っ込んでくるのが目に飛び込んだ。
逃げなければと思いながらも、足が一歩も動かない。
まるで、強い力で何者かに足首をつかまれたように。
ひかれる!
菜月はきつく目を閉じた。
「菜月ーっ!」
暎子の悲鳴が、遠くに聞こえるようであった。
次の瞬間、身体が横に吹き飛ぶ感覚。
強い衝撃が足首のあたりに走る。
いたっ。
私、車にひかれたの?
おそるおそる目を開けた菜月は、驚きに息を飲む。
両腕で自分をかばうように抱きかかえている男の子の顔が間近にあった。
きれいな顔立ちの男の子だ。
さらに、その子が知った人物であることに気づいた菜月は、目を見開く。
「翔流くん」
かすれた声がもれた。
同じクラスの鴻巣翔流だった。
菜月は、自分がさっきまで立っていた場所に、視線を向ける。
ガードレールにぶつかった車が、白い煙をあげていた。
バンパーがぐにゃりとへこみ、エンジンが剥き出しになっている。
運転席では、男の人が血を流し、ぐったりとしているのが見えた。
さあ、と血の気が引いていく。
もし、あの場から動けずにいたら、完全に巻き込まれていた。
菜月の視界に、ガードレールに添えられた花束が映る。
事故だ! 救急車を呼べ! という声と、泣き叫ぶ悲鳴が交じり、辺りは騒がしい。
菜月は震える手で、翔流の腕に手を添えた。
翔流くんが、助けてくれた。
翔流が自分を抱え、向かってくる車から逃れるよう横に飛んで地面に転がったのだ。
「翔流くん、ありが……」
「おまえ! こんなことをしてどういうつもりだ! 許さないぞ!」
助けてもらったお礼を言おうと口を開いたが、いきなり翔流が怒鳴りだし、菜月は言葉を失う。
なんでいきなり怒るの?
許さないってどういうこと?
確かに、ぼうっとしていたけど。
そこへ、周りにいた人たちが集まってきた。
「君たち、だいじょうぶか!」
「怪我はないかね!」
「だ、だいじょうぶです……」
翔流くんは? と聞こうと視線を上げると、立ち上がった翔流が手を差し出してきた。
「立てるか」
菜月はうなずいた。
さっきは何でいきなり怒ったの、という疑問が頭の中でかすめつつも、声にすることはできず、菜月は翔流の手を取り立ち上がる。
「菜月! 鴻巣くん!」
顔色を変え、暎子が駆け寄ってきた。
「私はへいき。暎子は、怪我はない?」
「あたしはなんとも。よかった。まさか、車が突っ込んでくるなんて。鴻巣くんも怪我は? ありがとう。菜月を助けてくれて、ありがとう!」
泣きながら暎子は翔流の両腕を握り、ぶんぶん振り回し、何度もお礼を言う。
それから菜月と翔流は、念のため医者に診てもらうため病院に連れていかれた。
学校に向かう途中の公園。
その公園の入り口前で立つ女子に、菜月は手を振った。
「暎子!」
「おはよー、菜月」
手を振りかえしたのは、親友の深水暎子だ。
「ごめーん。おくれちゃった」
暎子は腕時計を見る。
「まだ余裕だからだいじょうぶ。菜月もえらいよね。パパさんのために、朝食やお弁当を作ってあげるんだもん。あたしなら無理。ぎりぎりまで寝ていたい」
まだ眠いのか、暎子は口に手を当てあくびをする。
「もう慣れたよ」
二人は並んで歩き出す。
ママが他界してから三年がたつ。
最初は掃除も洗濯も料理もうまく出来ず、失敗ばかりだったけれど、今ではだいぶ慣れてきた。
それどころか、お料理をするのが大好きになった。
「パパも手伝ってくれるし」
「いいなあ~」
「なにが?」
「菜月のパパ。めっちゃイケメンなんだもん。顔はいいしスタイル抜群。あたしも、菜月のパパみたいなカッコいいお父さんが欲しい。うちのパパなんてさ……」
そんなこと言いながらも、お休みには家族旅行に行くんだって、よく楽しそうに話しているのだから、本当は仲はいいのだ。
家族旅行か。
うらやましいな。
「ねえ菜月、見て。また、あそこに怪しい人が座ってる」
学校近くの交差点が見えてくると、暎子が耳打ちをしてきた。
暎子の言う通り、交差点の片隅で、一人の男が座り込んでいた。
汚れてくたびれた上着に、すりきれたズボン。
ボサボサの髪と伸びきったひげ。
数ヶ月前から、交差点の側で座り込むようになった不審者だ。
特に何かをしてくるわけではないのだが、いつもそこに座って、通行人をじいっと見ているから気味が悪い。
「なんか怖いよね。もしかして、あの人が例の通り魔犯だったりして。ああして座って、女の子を物色しているのかも」
交差点にたどり着き、二人は不審者の存在を気にしながら、信号待ちで立ち止まる。
交差点を渡り、50メートルほど歩くと、菜月たちが通う中学校にたどり着く。
何気なく菜月は斜めに視線を落とした。
ガードレールの片隅に、花束が添えられている。
まだ新しい花であった。
その花束に、暎子も気づく。
「一週間前に事故があったみたい。子どもが車にはねられたんだって」
この交差点は事故が多く〝魔の交差点〟と呼ばれている。
そのせいか、ここで幽霊をみたという人が続出し、ちょっとした心霊スポットになっていた。
学校ではやっている噂によると、深夜の雨の日、全身血にまみれた女が交差点の片隅に立つという。
そして、その女性を見て驚いたドライバーが、あやまってハンドルを切り、衝突事故を起こす。
それが、赤いレインコートを着た幽霊の噂だ。
菜月は地面に置かれた花束から、目をそらせなかった。
こうして花が添えられているのも、何度か目にした。
つい三ヶ月前も、やはりここで、女の子が車にはねられた。
隣のクラスの、藤白桜花という女子だ。
その子とは特別親しくなかったが、事故にあったと聞いた時はショックを受けた。
信号が赤だったにもかかわらず、桜花は横断歩道を駆け抜け、左折してきた車にはねられたのだ。
さらに、不思議だったのが、雨が降っていたわけでもないのに、桜花は全身ずぶ濡れだったという。
いじめられて自殺をはかったという話も聞いたが、真相はわからない。
「こうも事故が続くと怖いよね」
信号が変わり、暎子は横断歩道を渡る。
菜月は添えられた花束を見下ろしながら目を閉じ、手を合わせた。
かわいそう。
どうか安らかに、と心の中でお祈りをしたその時、鋭い悲鳴に目を開ける。
「菜月!」
暎子の叫び声が耳を打つ。
右手から、一台の乗用車が真っ直ぐ、こちらへ突っ込んでくるのが目に飛び込んだ。
逃げなければと思いながらも、足が一歩も動かない。
まるで、強い力で何者かに足首をつかまれたように。
ひかれる!
菜月はきつく目を閉じた。
「菜月ーっ!」
暎子の悲鳴が、遠くに聞こえるようであった。
次の瞬間、身体が横に吹き飛ぶ感覚。
強い衝撃が足首のあたりに走る。
いたっ。
私、車にひかれたの?
おそるおそる目を開けた菜月は、驚きに息を飲む。
両腕で自分をかばうように抱きかかえている男の子の顔が間近にあった。
きれいな顔立ちの男の子だ。
さらに、その子が知った人物であることに気づいた菜月は、目を見開く。
「翔流くん」
かすれた声がもれた。
同じクラスの鴻巣翔流だった。
菜月は、自分がさっきまで立っていた場所に、視線を向ける。
ガードレールにぶつかった車が、白い煙をあげていた。
バンパーがぐにゃりとへこみ、エンジンが剥き出しになっている。
運転席では、男の人が血を流し、ぐったりとしているのが見えた。
さあ、と血の気が引いていく。
もし、あの場から動けずにいたら、完全に巻き込まれていた。
菜月の視界に、ガードレールに添えられた花束が映る。
事故だ! 救急車を呼べ! という声と、泣き叫ぶ悲鳴が交じり、辺りは騒がしい。
菜月は震える手で、翔流の腕に手を添えた。
翔流くんが、助けてくれた。
翔流が自分を抱え、向かってくる車から逃れるよう横に飛んで地面に転がったのだ。
「翔流くん、ありが……」
「おまえ! こんなことをしてどういうつもりだ! 許さないぞ!」
助けてもらったお礼を言おうと口を開いたが、いきなり翔流が怒鳴りだし、菜月は言葉を失う。
なんでいきなり怒るの?
許さないってどういうこと?
確かに、ぼうっとしていたけど。
そこへ、周りにいた人たちが集まってきた。
「君たち、だいじょうぶか!」
「怪我はないかね!」
「だ、だいじょうぶです……」
翔流くんは? と聞こうと視線を上げると、立ち上がった翔流が手を差し出してきた。
「立てるか」
菜月はうなずいた。
さっきは何でいきなり怒ったの、という疑問が頭の中でかすめつつも、声にすることはできず、菜月は翔流の手を取り立ち上がる。
「菜月! 鴻巣くん!」
顔色を変え、暎子が駆け寄ってきた。
「私はへいき。暎子は、怪我はない?」
「あたしはなんとも。よかった。まさか、車が突っ込んでくるなんて。鴻巣くんも怪我は? ありがとう。菜月を助けてくれて、ありがとう!」
泣きながら暎子は翔流の両腕を握り、ぶんぶん振り回し、何度もお礼を言う。
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