わたしの師匠になってください! ―お師匠さまは落ちこぼれ魔道士?―

島崎 紗都子

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第2章 念願の魔道士になりました!

お師匠様に告白 2

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 突然思いを告げられ言葉を失う。
 まさかこの流れでの不意打ちだった。
 お兄さんのように慕って好きとかそんな気持ちでないことは、ツェツイの真摯な目を見れば瞭然だった。
 いや、薄々ツェツイの気持ちに気づいていないわけでもなかった。
 短いようで長い沈黙。
 その静寂を破ったのはツェツイだった。
「あたし、本気です。本気でお師匠様のことが好きです……あの時、町の路地裏でお師匠様が女の人とキスしていたのを見た時、すごくいやな気持ちになりました。胸が苦しくて痛くて泣きたくなって」
「ツェツイ、おまえの好きは……」
「違います。お師匠様に優しくされたから勘違いしているわけじゃないです。初めて会った時からお師匠様にひかれてました。だから、お師匠様の側を離れたくありません。それが、ディナガウスに行きたくない理由です!」
 さらに気持ちをたたみかけてくるツェツイにイェンは戸惑いを覚える。
 駆け引きのない、幼さ故の正直な思いがイェンの胸に突き刺さる。
 イェンは胸にしがみつくツェツイの肩に手をかけた。
「気持ちは嬉しいけど」
 情けないことに、それだけを言うのがやっとだった。
 ツェツイのことは可愛いと思う。
 大切にしたい、この先の成長を見守っていきたい、ツェツイの望みをすべてかなえてあげたい。
 そのためなら、自分にできることなら何でも、どんなことでもしたいと思っている。弟子なのだから。
 それだけだ。
 ツェツイに対してそれ以上の特別な感情を抱くことは考えられない。
 いや、あり得ない
 さりげなくツェツイを引き離そうとするが、いやいやをして、なおきつくしがみついてくる。
「あたしがまだ子どもだから? でも、あたしだって後数年もすれば!」
 ようやく心に冷静さを取り戻す。
 そう、年が違いすぎるのだ。
 十二歳という年の差は大きすぎる。
 どんなに好きだという感情をぶつけてきても無理なのだ。
「お願いです。もう少しだけ待ってください。あたし、すぐに大人になるから。お師匠様とつりあう、ふさわしい女性になるように努力しますから!」
「ツェツイ」
「お師匠様、好きです」
「おまえには、もっと相応しい男が現れるよ。俺なんかよりもずっといい男がな」
 またしても、ありきたりな言葉しか口にできなかった。
 ツェツイを納得させるには不十分だったであろう。
 胸にしがみつくツェツイの手が自然と解かれる。
「お師匠様……」
 イェンは静かに視線を斜めにそらした。
 ツェツイの思いを受け入れることはできないと。
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