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第2章 念願の魔道士になりました!
お師匠様に告白 1
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「お師匠様もディナガウスの〝灯〟に?」
イェンの口から思わず笑いがもれた。
「はは、そりゃどう頑張っても無理だな。俺みたいな役にもたたない初級魔道士がディナガウスの〝灯〟に受けいれてもらえるわけがないだろ。追い返されるっていうか、そもそも、ディナガウスの〝灯〟への移転許可がおりねえから」
「じゃあ……」
「〝灯〟を抜ける」
何でもないことのようにあっさりと言うイェンに、ツェツイは悲痛な表情を浮かべる。
「そんなふうに言われたら……」
「気にすんな。おまえは呆れるかもしれねえが、俺は好きで魔道士になったわけでもねえし、おまえみたいに将来の目的があるわけでもない。それでおまえが決意してくれるならどうってことねえよ」
「それでもお師匠様は……とてつもない力を持った魔道士じゃないですか。どうしてそんなことを言うのかわからないです。お師匠様の力ならディナガウスの〝灯〟にだって入れます!」
イェンは軽く息をつき、真剣な顔でツェツイの目をのぞきこむ。
思わずツェツイは表情を引き締めた。
「俺は……昔、魔道士として絶対にやっちゃいけないことをやった。何をやったかは言えない。だから、頼むからそれ以上のことは聞かないでくれ。だが、そのせいで俺は魔術の一部を封じられた」
「魔術を封じられ……」
魔道士が魔術を封じられることがどういうことか、今のツェツイになら理解できるだろう。
「〝灯〟によってな。今思えば、俺のやったことはよかったのか、悪かったのか。いや……人の道に外れたことをやったんだ。悪いことだったんだろうな。それでも、俺は罪の意識はあっても、後悔はしていない」
身じろぎもせず、黙ってイェンの話を聞いていたツェツイの顔は今にも泣きそうであった。
「ツェツイ、〝灯〟のもっとも重い処罰は何だと思うか?」
「〝灯〟からの追放ではないのですか?」
「死罪だよ」
思いもよらないことを聞かされ、ツェツイは言葉をつまらせ大きく目を見開いた。
「あたりまえだ。掟を破った危険な魔道士を、みすみす世間に野放しにしておくわけにはいかない。俺は処刑されるところだったが、まあ、いろいろあって運良く免れられた。だが〝灯〟からみれば、俺は今でも掟を破った罪人にはかわりない。そんな人間を余所の〝灯〟へと行かせることができると思うか」
「お師匠様……」
「そんな顔をするな。昔の話だ。今はこうして何不自由なく生活してるからな」
「お師匠様にまさかそんな過去があったなんて……」
「悪かったな。こんな話を聞かせてしまって。師匠がこれでがっかりしただろ」
「いいえ!」
「ツェツイ、このことは〝灯〟の上層部のそれも一部の者しか知らない。もちろん、アリーセもノイもアルトもだ。いや、アリーセは気づいているかもだな。わからねえが……だから」
内緒にしてくれるか? と目で問うイェンに、ツェツイはしっかりとうなずく。
「だから、そんなつらそうな顔するな。そもそも、この俺がそう簡単に処刑されると思うか? あの時は、どうやって逃げだしてやろうかとあれこれ考えてたな。ついでに、逃げるからには周りが驚くような方法がいいだろうって。まあ、俺、要領はいいし、ついでに運もいい。だいいち、この俺をどうこうしようなんて、たとえ上層部でも〝灯〟の長といえども甘い甘い」
あはは、と重たい話をした直後とは思えない明るい笑いをこぼすイェンに、ツェツイが再び抱きついてきた。
「あたし、口が裂けても今のことは絶対に誰にも言いません。お師匠様がそれ以上聞くなというなら、何があったのかも聞いたりしません。もう二度とこのことに触れたりしません。忘れろというなら、今聞いたことはすべて忘れます。いいえ、もう忘れました。お師匠様が過去に何をしたとしても、たとえ、どんな悪事をはたらいたとしても」
「悪事か……まあ……悪事っちゃ悪事か」
「きっと、お師匠様にはちゃんとした理由があってのことだとあたしは思っています」
「理由というより、衝動だな」
「それでも、あたし……お師匠様のことが……」
ツェツイが顔を上げた。
「ほんとは、ディナガウスにひとりで行くのが寂しいとか、不安とかそんなんじゃなくて、ただ、あたしはお師匠様のことが……」
ツェツイの真剣な目がまっすぐにイェンを射貫く。
「好きなんです」
イェンの口から思わず笑いがもれた。
「はは、そりゃどう頑張っても無理だな。俺みたいな役にもたたない初級魔道士がディナガウスの〝灯〟に受けいれてもらえるわけがないだろ。追い返されるっていうか、そもそも、ディナガウスの〝灯〟への移転許可がおりねえから」
「じゃあ……」
「〝灯〟を抜ける」
何でもないことのようにあっさりと言うイェンに、ツェツイは悲痛な表情を浮かべる。
「そんなふうに言われたら……」
「気にすんな。おまえは呆れるかもしれねえが、俺は好きで魔道士になったわけでもねえし、おまえみたいに将来の目的があるわけでもない。それでおまえが決意してくれるならどうってことねえよ」
「それでもお師匠様は……とてつもない力を持った魔道士じゃないですか。どうしてそんなことを言うのかわからないです。お師匠様の力ならディナガウスの〝灯〟にだって入れます!」
イェンは軽く息をつき、真剣な顔でツェツイの目をのぞきこむ。
思わずツェツイは表情を引き締めた。
「俺は……昔、魔道士として絶対にやっちゃいけないことをやった。何をやったかは言えない。だから、頼むからそれ以上のことは聞かないでくれ。だが、そのせいで俺は魔術の一部を封じられた」
「魔術を封じられ……」
魔道士が魔術を封じられることがどういうことか、今のツェツイになら理解できるだろう。
「〝灯〟によってな。今思えば、俺のやったことはよかったのか、悪かったのか。いや……人の道に外れたことをやったんだ。悪いことだったんだろうな。それでも、俺は罪の意識はあっても、後悔はしていない」
身じろぎもせず、黙ってイェンの話を聞いていたツェツイの顔は今にも泣きそうであった。
「ツェツイ、〝灯〟のもっとも重い処罰は何だと思うか?」
「〝灯〟からの追放ではないのですか?」
「死罪だよ」
思いもよらないことを聞かされ、ツェツイは言葉をつまらせ大きく目を見開いた。
「あたりまえだ。掟を破った危険な魔道士を、みすみす世間に野放しにしておくわけにはいかない。俺は処刑されるところだったが、まあ、いろいろあって運良く免れられた。だが〝灯〟からみれば、俺は今でも掟を破った罪人にはかわりない。そんな人間を余所の〝灯〟へと行かせることができると思うか」
「お師匠様……」
「そんな顔をするな。昔の話だ。今はこうして何不自由なく生活してるからな」
「お師匠様にまさかそんな過去があったなんて……」
「悪かったな。こんな話を聞かせてしまって。師匠がこれでがっかりしただろ」
「いいえ!」
「ツェツイ、このことは〝灯〟の上層部のそれも一部の者しか知らない。もちろん、アリーセもノイもアルトもだ。いや、アリーセは気づいているかもだな。わからねえが……だから」
内緒にしてくれるか? と目で問うイェンに、ツェツイはしっかりとうなずく。
「だから、そんなつらそうな顔するな。そもそも、この俺がそう簡単に処刑されると思うか? あの時は、どうやって逃げだしてやろうかとあれこれ考えてたな。ついでに、逃げるからには周りが驚くような方法がいいだろうって。まあ、俺、要領はいいし、ついでに運もいい。だいいち、この俺をどうこうしようなんて、たとえ上層部でも〝灯〟の長といえども甘い甘い」
あはは、と重たい話をした直後とは思えない明るい笑いをこぼすイェンに、ツェツイが再び抱きついてきた。
「あたし、口が裂けても今のことは絶対に誰にも言いません。お師匠様がそれ以上聞くなというなら、何があったのかも聞いたりしません。もう二度とこのことに触れたりしません。忘れろというなら、今聞いたことはすべて忘れます。いいえ、もう忘れました。お師匠様が過去に何をしたとしても、たとえ、どんな悪事をはたらいたとしても」
「悪事か……まあ……悪事っちゃ悪事か」
「きっと、お師匠様にはちゃんとした理由があってのことだとあたしは思っています」
「理由というより、衝動だな」
「それでも、あたし……お師匠様のことが……」
ツェツイが顔を上げた。
「ほんとは、ディナガウスにひとりで行くのが寂しいとか、不安とかそんなんじゃなくて、ただ、あたしはお師匠様のことが……」
ツェツイの真剣な目がまっすぐにイェンを射貫く。
「好きなんです」
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