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第一部 呪哭の灯火

第一章 月灯りに照らされて 後編

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第4幕 不穏

4人は祭り会場の最終地点にある神殿広場へと歩を進める。

無名「ラキは先に向かわせたけど、途中でかけるを見つけないと。」

ザック「あのバカは食い逃げで捕まってたぞ。」

雫「かけるはいつも落ち着きがないね…。」

灯「かけるって人も変な人なの?」

無名「変人には変わりないけどね。かけるは竜人なんだよ。僕と一緒に育った兄弟のような存在だ。仲良くしてやってくれないかな。」

灯「もちろん!でも、竜人って鬼を食べた人の末裔なんでしょ…?私、食べられないかな…。」

雫「竜人が人であるときに鬼を食らったのは、はるか昔。その代償に龍のような角と翼が生えただけで、今は鬼や人を食べるようなことはしないよ。まあ翼はあっても飛べないけど、その代わりに人の2倍の力を持つと言われてるね。」


無名「灯、君は鬼神だと聞いたけど、絶滅危惧種の鬼とは少し違うみたいだね。でも出来ればそのことは秘密にしておくべきだ。僕達はどうとも思わないけど、ほとんどの人間は鬼や竜人を強く恨んでいるからね。」

灯「うん…そうだよね。」

ザック「おい、あれみろよ。」

出店から離れ、ザックが指さす方には簡易的な鉄格子で阻まれた牢屋があった。中には赤く鋭い目、角と翼を持つ青年がいた。

かける「よう!お前ら!こんなところで会うとは偶然だな!!頼みがあるんだが、助けてくれないか?」

明るく助けを乞う変人のようだ。

灯「お、おはこんばんにちわ…!灯と申します!!」

灯は天敵かと警戒し、強く緊張していた。

かける「見ない顔だな!よろしく!!俺はかける!」


無名「開けてやるから早く出てくれ。これから神殿広場へ向かう。」

雫「いつもこの人はこりないね…。」

灯「ねえ、かけるの好きな食べ物は何!?」

かける「食えるものは全部好きだが、強いて言うなら…串焼きかなぁ。」

灯「私も!」

意気投合しつつ、神殿広場に到着した。一行は広場中央にいるアサヒ村長とラキアルと合流する。

アサヒ「来たか。ラキアルから灯については聞いている。それと、外部警備の者からの報告では村の外では辺り一体がいつも以上に化け物どもで埋め尽くされているそうだ。本来、村の外からの客人は歓迎しているし、祭の開催前に怪しいものがいないか検問も怠ってはいない。だが今夜は日暮れ時に列車を止め、門は閉ざした。その上で、怪しいものがいるとの報告が上がっている。灯については夜煌祭による警備と調査、雫の同伴が前提だが、問題は無いと思っている。しかし、不穏な空気が漂っているために君たちをここへ呼んだ次第だ。」

無名「灯については不思議なことに神隠しから雫を連れ戻したと聞いた。数十年前から神隠しは存在するし、鬼神であるというのも信じられなくもない。ただ、怪しい者というと、検問をすり抜けたことになるよね。」

ラキ「壁でもよじ登ってきたんじゃない?」

かける「腹減った~。」
灯「った~。」

ザック「検問をすり抜けるとなると、一理あるな。過去には俺とラキはよじ登って入ってきた。道具があっても常人じゃあまず無理だから、それなりの手練だぞ。」

各々が考えを深める中、花火があがる。空に響き渡る轟音、煌めいて散りばめられた星屑のような火薬。灯は初めての光景に息を飲んだ。

アサヒ「おい待て、まだ花火が上がる時間ではないぞ。」

少しの沈黙が、夏の夜風に確かな冷たさを残した。

神殿の入口、大広間になっている壇上には怪しげな男が立っていた。髪の7割が白く、3割が黒く変色している。瞳は黄色く光、凍りつくような目だ。まるで歴戦の兵士のような隙の無さに、恐怖と静寂を与える異質な空気をまとっている。

上がり続ける花火を背に、夜煌祭は武器をかまえる。が、誰一人として男の間合いに踏み入ることが出来ずにいる。

「鬼神祭をお楽しみの皆様、今晩は。私はファースト。この決してあけることの無い夜の始まりに立ち会わせて頂くものです。」


ザック「何者だよアイツ。」

ラキ「あれは今の私たちじゃ勝てないな。」

アサヒ村長「誰も手を出すな!…ファースト、話を聞こう。君は何者で、何が目的なんだ?」

ファースト「我々は呪哭。(ジュコク)世界を呪い、死を与え哭く、世界の理です。私はその始まりにすぎない。目的は人類の滅亡。この世界にもう夜明けが来ることはありません。」

不穏の先には、恐怖が待っていた。

第5幕 脱兎のごとく

ファーストの冷酷な目を見てしまった灯は生まれて初めて死を意識した。

ファースト「皆さんは光栄にも世界で最初に呪哭と共に旅立てるのです。間もなく外より彼等がやってきます。どうか残された3日間、死を楽しむといい。」


打ち上がる花火に紛れて一際大きな音が大地を揺らした。まるで爆弾のようなものが起爆したように思える。無名がいち早くその音を察知した。

鬼灯村、居住区域の東西にそびえたつ壁が破られた音だった。

無名「今の音、もし壁が破壊されたなら外の怪物が押し寄せてくるよ…!爆弾だとしたら多分あの男の仲間だ!敵は複数いる!!」

アサヒ「警備の者は住民と客人の避難誘導!この場にいる全てのものを列車に乗せろ!猶予は20分だ!それまでに誰一人見捨てることなく駅まで走らせろ!!」

既にパニックになった住民をなだめつつ、アサヒ村長が周囲に呼びかけ、避難誘導を開始する。


ザック「かけると俺は敵の牽制をするべきか!?」

アサヒ「いや、君たちがこの場で一番戦える…。だからこそ優先して逃げ遅れた者たちを誘導してくれ!君らが列車にたどり着いたら出発する!」

無名「それに牽制する必要はないみたいだ。どうやらあの男は鬼灯山の山頂に向かってる!きっと仲間と落ち合うんだ。ならこの機を逃さず僕らは逃げることに専念すべきだ!」

かける、ラキアル、タツは会場で避難誘導をしている。辺りからはゾンビや死者のような呪哭と呼ばれる怪物が現れている。一同は呪哭を迎撃しながら、駅までの避難および逃亡を完了しなければならない。

混乱の中、雫に助けを求める少年がいた。ナツだ。

ナツ「助けてくれ!雫兄ぃ!大変なんだ!妹が…ハナが!」

怯えるナツの肩に両手をかけ、膝をつき目線を合わせる。

雫「落ち着くんだ!大丈夫だから、落ち着いて話してくれ!」

ナツ「…ハナが、ウチにいるんだ!花火を父ちゃんと母ちゃんに見せたいからって、2人の写真を取ってこようとして、1人で大丈夫だと言うから、ついて行かなかったんだ…俺のせいだ!」

雫「大丈夫!ハナは強い女の子だ。きっとまだ家にいる。今すぐに助けに行くから!」

しかし、一人で少年を守りながら救出に行くには危険すぎる…。雫は思考を巡らせる。後悔のないように、今できる最善の選択を…!

雫「タツ!かける!僕と一緒に来てくれ!ハナがまだ家にいるんだ!助けに行く!」

2人が応答しつつ敵を薙ぎ払う。

その場にいる生存者は皆無事に広場を抜けたようだ。

だが、灯はまだ恐怖にのまれ、動けないでいた。光る炎、呪哭と呼ばれる怪物…死者の哭く声、恐怖を加速させる悲鳴、うまく息が出来ない…。少しずつ声が聞こえてくる。

雫「り…!灯!」

灯はようやく正気に戻った。

灯「わ、私…」

雫「灯もついてきてくれ!大丈夫、怖くても僕がいる。皆がいるから!」

雫は灯の手を取って脱出を目指す。

無名「僕とザック、ラキは病院の患者の救出に行く!きっと動けない患者がいたら、バリケードを設置して数分間は耐えるはずだ!後で落ち合おう!」

一同は神殿前の広場を後にした。


神殿の奥には鬼灯山の頂上へ通じる山道がある。普段は封鎖されているが、ファーストはそこへ向かっていた。頂上には底の見えない、地底へと続く大きな大穴が存在する。鬼灯村の伝説にはかつて、呪われた魂がそこへ落とされ、地獄へ落ちると言われている。いわば地獄の門になりうる場所なのだった。

穴の前にファーストは立っていた。
ファースト「この場所は思い出すことのない記憶なのだろう…。しかし、私にとっては忌まわしい過去の終焉だ。お前たちもそうだろう?」

どこからか、ファーストと同じような風貌の2人の男女が現れる。

ファースト「首尾はどうだ、サード」

サード「東西の壁に穴を開けておいたぞ。ハハッ!」

サードと呼ばれる男は不気味に笑っている。長い髪を後ろでくくり、中性的な顔立ちとはうってかわって、無駄のない均整のとれた筋肉をしている。狂気に触れたような笑みを浮かべ、その口の両端に縫い目が存在する。

サード「セカンドは『何だか満足行かないわ!』って顔で滑稽だなぁ!」

もう1人の呪哭の女性は、肩まである髪をなびかせ、サードを睨む。その場にいる3人は、容姿から推測できる年齢は20代前半だろうか…。しかし、彼らからは若者にはない、ただならぬ気迫がある。

セカンド「…うざ。でも、確かにそうよ。先に厄介そうな連中は始末しておけばよかったのよ。逃がして泳がせるなんてつまらない。早く殺してあげたらよかったのに。」

ファースト「私たちが手を下すほどでもないだろう。それに、レイからは先に地獄を開門するように指示を受けている。」

セカンド「だとしても、障害になりそうな存在は排除しなければ後から痛い目にあうわよ。」

ファースト「こちらにはサードもいる。現世の呪哭が人類ごときに負けることはない。地獄の門が開門する3日後、我らが呪哭の王、レイがこの門を通る時、夜は完全に世界を包み込む。彼らの勝機は万に一つもないだろう。」

呪哭の3人は一呼吸おくと、穴へと手を伸ばす。
数秒後、奈落のような穴の底から赤い光が溢れる。

世界から夜明けが奪われる。地獄の門が開門し、人類の滅亡まであと3日。

第6幕 終わりの始まり

鬼灯山から放たれる光は祭会場まで逃げている灯の瞳にも映っていた。

目まぐるしく変化する目の前の光景に、誰もが恐怖を隠せなかった。特に、灯にとっては初めて触れる世界への興奮と、死への恐怖による感情が思考を停止させていたのだろう。しかし、灯の心には何よりも罪悪感が深く巣くっていた。

なぜなら今、この現状を引き起こしてしまったのはーー。

かける「気をつけろ灯!」

ゾンビの呪哭が灯に襲い掛かった瞬間、かけるが剣で攻撃をそらす。
即座にその頭をタツが撃ち抜く。

雫、ナツ、灯、タツ、かけるは敵を迎撃しながら住居区域へと向かっている。

タツ「さっき警備から予備の武器をもらってきた!雫と灯はこれで自分の身を守ってくれ!さすがにザックやラキがいないと全員を守り切れる余裕がない!」

タツはそう言うと2人に弓と剣を手渡した。

かける「使い方はわかるな!?教えてる暇はないぞ。」

灯「うん。大丈夫。今は大丈夫だから、ありがとう。2人とも。」

雫は灯の変化に気が付いていたが、自身の不安を伝播させないように振舞うので精一杯だった。

雫「…急ごう!ナツの家は居住区域の東南だ!」

呪哭をかいくぐり、祭会場から居住区域に繋がる林道へと5人は走り抜ける。
タツは懐かしい青年とすれ違ったような気がした。振り返らずに突き進むタツを、優しい蒼い瞳が見つめている。

「それでいい。振り向くな、タツ…。」

雫たちが先行して居住区域へと向かい、数分後には神殿広場での避難誘導は完了していた。
ザック、無名、ラキアルは迅速に敵を迎撃しながら逃げ遅れたものがいないかを確認する。夜煌祭の中で最も実力のあるザック、豊富な知識と判断力に優れた無名がいたからこその芸当だ。アサヒ村長は警備の者を何人か連れて住居区域の中央エリアへ、ザックたちは同エリア内の西南部の病院へと向かった。

鬼灯村、居住区域、病院内。1階では荷を積んでバリケードしていた痕跡がある。
3人は一つ一つの部屋を確実にチェックする。中に入り込んでいる呪哭を倒しつつ、二階廊下で合流する。

ザック「…血痕もない。見回りの警備が無事に避難させたようだな。」

無名「こっちにも誰もいないみたいだ!」

ラキアル「怪我人もいるかもだろうから、倉庫から医薬品をとってきておいたよ。」

本来、武器を扱える者は基本的には弓、または剣を使用しているがラキアルは木の棒を使っている。普段から使用し、殺傷能力の高いザックの使う斧や弓とは違い、ラキアルは武器としての用途に期待の出来ない棒を使い、呪哭を相手取っている。

ザック「ラキ、今は緊急を要する。さっきの男を見ただろ?剣を握らなければ守れるものも守れない。そろそろ覚悟を決めとけよ。」

ラキ「…わかってる。」

ラキアルの手は震えていた。武器を手に取ることは簡単なことでは無い。外敵から命を守るための道具は、時として相手の命を奪うこともある。戦わなければ生きていけない世界で、皆、それを理解しているからこそ生きている。だが、ラキアルは死を知りすぎているからこそ剣を握ることが出来なかった。

無名「住宅地に火の手が回ってきている。壁の爆破から引火に繋がったのかもしれない。急ごう!」

どこからか回る火が村を包んでいる。熱い炎は生暖かい風にのり、人々への恐怖をさらに煽っていく。雫たちはナツの家へ到着していた。家の前には呪哭がうろついている。タツとかけるを中心に呪哭を一掃する。

弓矢がゾンビの頭を貫く。灯の矢だ。

タツ「雫はここでナツを守れ!俺とかけるで脱出経路を確保する!灯が中でハナを見つけてくれ!」

かける「中に敵はいないと思うが急いでくれ!」

灯は玄関のドアを開けると目の前の階段へと駆け上がる。鍵はかかっていなかったが、侵入者の形跡は無い。人の気配は上だ。2階廊下の奥の部屋へと向かう。

ハナ「怖いよ…お父さん、お母さん…。」

静かに震え、泣いている少女を見つける。灯は少女に手を伸ばす。

灯「もう大丈夫!下でお兄さんが待ってる。さあ行こう!!」

ハナ「…うん!」

家を飛び出すと、かける達が呪哭と応戦している。ナツがハナへと駆け寄り抱きしめる。

ナツ「良かった!心配したんだぞ!ごめんな兄ちゃんが付いててやれなくて…。」

ハナ「大丈夫。お姉さんが助けてくれたから。」

タツ「2人とも怪我は無いね?行こう!ここから駅まで走るんだ!」

雫「ありがとう灯。ハナを見つけてくれて。」

灯「私の方こそ、ハナちゃんに勇気をもらった気がするよ。」

住民の逃げ遅れがいないかを確認しつつ、雫たちは鬼灯村の南端にある駅へと到着する。駅の入口では先に到着していたザックたちが呪哭の侵攻を防いでいる。

ザック「急げ!お前達で最後だ!」

一同が列車に乗ると直ぐに発車する。夜煌祭5名と灯、雫はアサヒ村長を探し、先頭車両へと向かう。ナツとハナは村の大人に預けて落ち着かせることに。

アサヒ「皆、よくやってくれた。灯にも危険な状況下での協力を感謝する。被害状況についてだが、鬼灯村に居た120名から行方不明者および確認できた死亡者は8名。本当に残念だが、脱出開始から発車までの猶予は30分が限界だった…。皆はよくやってくれていた。これは私の責任だ。」

沈黙が空気を重くする。

無名「…怪我人や避難した病人は?」

アサヒ「ああ、全員避難している。人数は怪我人が18、病人が4だ。足腰の悪い老人が3人いる。」

灯「山の光について何か知ってる…?逃げる時に見たの。」

アサヒ「詳しくはわからない。ただ、私が代々伝えられてきたのは、山頂には地獄へ繋がる大穴があるということだけだ。落下の危険があるため封鎖していたのだが、ファーストと名乗る男がそこで何かをしたのかもしれない。」

無名「ファーストは自らを呪哭だと言っていた。外の怪物をそう呼んでいたのは昔の事だったはずだ。それにファーストとその仲間には知性や目的があった。敵の規模は分からない。呪哭は太陽に弱いが、奴はもう夜は明けないと言った。もしファーストの言葉を信じるのなら、世界の終わりまであと3日。そしてここが始まりだ。」

雫「…終わりの始まりだ。」


鬼灯村は壊滅。世界を包む闇は人の心をも飲み込んでいく。どんな絶望にも光が差すのなら、諦めずにいられるだろうか。走る列車は月灯りに照らされてーー。


第1章 月灯りに照らされて [完]

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