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第一章:ダンジョンを作ろう!
第13話『ユーリとユエとお月様①』
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あの宴会からしばらく経った。
最近ではぽつぽつと冒険者が訪れるようになっている。
やはりギルドの宣伝力は凄い。
そして、アルテ様様といったところだ。
感謝しても仕切れない。
この村に最初に訪れた冒険者は漆黒。
つまり、俺の友人たちであった。
団長は「任務で偶然近く通った」と言っていた。
まぁ、嘘だ。目をみれば一目瞭然だった。
義理堅い、良いやつらである。
少し、照れくさくはあったが、嬉しかった。
夜風にあたり、村の中央にある木製ベンチに座る。
夜空の月を見上げ、ぼんやりそんなことを考える。
「ユーリさん、今日も遅くまでお疲れさまです」
「おお、ユエか。こんな遅くに、めずらしいな。夜風にでも辺りにきたのか?」
「はい。今日はなんとなく、そんな気分になりまして」
「まっ、そういう日もあるよな」
「はい……、そうですね」
風の音が聴こえるほどの静けさ。
街灯もない。
暗闇を照らすのは、月明かりだけだ。
「いろんな料理の開発に挑戦しているみたいだな」
「はい。冒険者の反応を見ながら、あれこれ試行錯誤しています。この村の名物になるようなレシピが作れれば良いと思っているのですが、苦戦しています」
「焦る必要はない。ゆっくり楽しみながらやればいい」
「…………そうですね」
「ユエの料理を食べるために、この村に来る冒険者もいるくらいなんだ。たいしたもんだよ、実際。もっと、自信を持っていいんだぜ」
「ありがとうございます。ユーリさん。お世辞でも、嬉しいです」
「お世辞じゃねーよ。俺は、ただ事実を言っているだけだ」
「……ボクは、ユーリさんのお役に、たてていたでしょうか」
「ああ、もちろんだ。ユエがいなければ、ここまでこれなかった」
ユエの黒くて長い髪が風で揺れる。
「……ルナさんが味見をしてくれるので、いつも助かっています」
「あいつ、随分とはりきっているみたいだな」
「ですね」
「ルナのヤツ、ジャマしてないか? あいつ、落ち着きないからなぁ」
「いえ。ルナさんが居ると、にぎやかで楽しいです。心がまぎれます」
ユエは夜空の月を眺め、微笑んでいた。
「そうか、……そうだな」
「ルナさんの感想、はじめは「うまーっ」だけでした」
「ははっ。あいつらしいな」
「ですね。でも、最近は「もうちょい、さとーほしいかなぁ?』とか言ってくれるようになったんですよ。これはボク、凄い進歩だと思います」
「へぇ。あいつも、少しずつ成長しているんだな」
「ええ。あの子は、がんばり屋の良い子です。少し元気が良いだけです」
「そうだな」
木製ベンチが軋《きし》む、かすかな音が聞こえる。
「料理を作っていると、砂糖や塩のさじ加減が分からなくなったりするんですよ」
「わかるぜ、そうなんだよなぁ。料理を作る時に、味見しながら少しずつ調味料を足したりしていると、いつの間にか凄い濃い味付けになっているんだよな」
「ユーリさんも料理するんですね。なんだかちょっと、意外です」
「そうか?」
「はい。意外です」
ユエは小さく笑っていた。
「ルナさん、ユーリさんの"試食大臣"、嬉しかったみたいですね」
「ははっ。そうか。なんだかんだ言っても、あいつもお子様だな」
「ですね」
「だな」
「ルナさんは、不器用です」
「……、かもな」
「あの子は言葉で素直に感情を伝えることが苦手です。だから、ルナさんはユーリさんの役に立つこと、行動で恩返しをしているのだと思います」
「そんなものかね」
「はい。そんなものです」
夜の静寂に包まれる。
虫の鳴き声がかすかに聴こえる程度だ。
静かで、なにもない。
だが、悪くない。
「ユーリさん、少しだけ……ボクの身の上話を聞いていただけますでしょうか。ユーリさんにお会いする、少し前のお話です」
少し間をおいてユエは、口を開くのであった。
最近ではぽつぽつと冒険者が訪れるようになっている。
やはりギルドの宣伝力は凄い。
そして、アルテ様様といったところだ。
感謝しても仕切れない。
この村に最初に訪れた冒険者は漆黒。
つまり、俺の友人たちであった。
団長は「任務で偶然近く通った」と言っていた。
まぁ、嘘だ。目をみれば一目瞭然だった。
義理堅い、良いやつらである。
少し、照れくさくはあったが、嬉しかった。
夜風にあたり、村の中央にある木製ベンチに座る。
夜空の月を見上げ、ぼんやりそんなことを考える。
「ユーリさん、今日も遅くまでお疲れさまです」
「おお、ユエか。こんな遅くに、めずらしいな。夜風にでも辺りにきたのか?」
「はい。今日はなんとなく、そんな気分になりまして」
「まっ、そういう日もあるよな」
「はい……、そうですね」
風の音が聴こえるほどの静けさ。
街灯もない。
暗闇を照らすのは、月明かりだけだ。
「いろんな料理の開発に挑戦しているみたいだな」
「はい。冒険者の反応を見ながら、あれこれ試行錯誤しています。この村の名物になるようなレシピが作れれば良いと思っているのですが、苦戦しています」
「焦る必要はない。ゆっくり楽しみながらやればいい」
「…………そうですね」
「ユエの料理を食べるために、この村に来る冒険者もいるくらいなんだ。たいしたもんだよ、実際。もっと、自信を持っていいんだぜ」
「ありがとうございます。ユーリさん。お世辞でも、嬉しいです」
「お世辞じゃねーよ。俺は、ただ事実を言っているだけだ」
「……ボクは、ユーリさんのお役に、たてていたでしょうか」
「ああ、もちろんだ。ユエがいなければ、ここまでこれなかった」
ユエの黒くて長い髪が風で揺れる。
「……ルナさんが味見をしてくれるので、いつも助かっています」
「あいつ、随分とはりきっているみたいだな」
「ですね」
「ルナのヤツ、ジャマしてないか? あいつ、落ち着きないからなぁ」
「いえ。ルナさんが居ると、にぎやかで楽しいです。心がまぎれます」
ユエは夜空の月を眺め、微笑んでいた。
「そうか、……そうだな」
「ルナさんの感想、はじめは「うまーっ」だけでした」
「ははっ。あいつらしいな」
「ですね。でも、最近は「もうちょい、さとーほしいかなぁ?』とか言ってくれるようになったんですよ。これはボク、凄い進歩だと思います」
「へぇ。あいつも、少しずつ成長しているんだな」
「ええ。あの子は、がんばり屋の良い子です。少し元気が良いだけです」
「そうだな」
木製ベンチが軋《きし》む、かすかな音が聞こえる。
「料理を作っていると、砂糖や塩のさじ加減が分からなくなったりするんですよ」
「わかるぜ、そうなんだよなぁ。料理を作る時に、味見しながら少しずつ調味料を足したりしていると、いつの間にか凄い濃い味付けになっているんだよな」
「ユーリさんも料理するんですね。なんだかちょっと、意外です」
「そうか?」
「はい。意外です」
ユエは小さく笑っていた。
「ルナさん、ユーリさんの"試食大臣"、嬉しかったみたいですね」
「ははっ。そうか。なんだかんだ言っても、あいつもお子様だな」
「ですね」
「だな」
「ルナさんは、不器用です」
「……、かもな」
「あの子は言葉で素直に感情を伝えることが苦手です。だから、ルナさんはユーリさんの役に立つこと、行動で恩返しをしているのだと思います」
「そんなものかね」
「はい。そんなものです」
夜の静寂に包まれる。
虫の鳴き声がかすかに聴こえる程度だ。
静かで、なにもない。
だが、悪くない。
「ユーリさん、少しだけ……ボクの身の上話を聞いていただけますでしょうか。ユーリさんにお会いする、少し前のお話です」
少し間をおいてユエは、口を開くのであった。
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