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序章
プロローグ
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1943冬年太平洋。
月に照らされた夜の大洋は、闇の中にありながら美しく輝いていた。今が戦時下にあることも、忘れてしまいそうになる。そんな海を、アメリカ海軍の駆逐艦『ブラウソン』は進んでいた。
「ウィルソン、こんなところに居たのか。心配したぞ」
「ああ、すまない、少し考え事をな…」
『ブラウソン』の甲板に出ていた乗組員のひとり、ウィルソン・マートに親友のドス・アレンが話しかけた。彼とは訓練所以来の付き合いで、偶然同じ艦に配属されたのだ。
「どうしたってんだ、お前が考え事なんて珍しいじゃないか。理由はなんだ?」
「その…昼間のことなんだ」
この日の昼間、駆逐艦『ブラウソン』は戦闘を行っていた。その結果、日本軍の潜水艦を見事撃沈していたのだ。
「なんだよ、ビビってるのか?もしかしたら俺たちの方がやられてたかもって」
「まあ、そんな所だな…」
「心配するなって!この艦はもう潜水艦だけで3隻も沈めてるんだぜ。負けるわけがないさ」
「でも、さっき上官から聞いたんだ、BLACKSPEARの話を」
「ブラックスペア?ああ、確かチャーリーもそんな話をしてたな。絶対に沈められない潜水艦を日本が完成させて、太平洋で暴れ回っているって」
「そうさ、もしヤツに見つかれば終わりだって。奴からは絶対に逃げられないって」
すっかり小心してしまったウィルソンを、ドスは呆れた様子で励ました。
「そんな話ただの噂だぜ。第一日本がそんな潜水艦を作れるはずはないし、仮に存在してもこの『ブラウソン』が沈めてやるさ」
「そ、そうだよな。噂だしな。あははは…」
ウィルソンは心配ないと何度も自分に言い聞かせた。そうさ、そんな噂話、これまでも沢山話されていたし、そのどれも嘘だったじゃないか。『ブラックスペア』なんていう潜水艦がいるわけ…。
「えっ…」
その時、ウィルソンの耳に何かが聞こえてきた。少女の歌声のような、いや少女の歌声そのものだ。何語なのか、そもそも言葉なのかわからない声。それがウィルソンには確かに聞こえていたのだ」
「おいドス!何か女の声が聞こえないか!?」
「ん、女の声?何言ってるんだウィルソン。ここは太平洋のど真ん中だぜ、ハワイはもっと北だろう」
「違う!確かに聞こえるんだ、女の声が…」
その時、甲板の前方の方から見張員の叫び声が聞こえてきた。
「右20度!魚雷!!」
その瞬間、艦体はとてつもない激震に襲われた。
「うぁぁぁぁ!」
ウィルソンは突如の揺れに、海へ放り出された。その直後。
「ゴオォォォォォ!!!」
けたたましい爆発音と共に、駆逐艦「ブラウンソン」は真っ二つになりながら、瞬時に海中に没した。
本当にあっという間だった。
「そん…な…」
あまりの突然の出来事に、彼はそれ以上何も言えなかった。しかし彼には自分たちの艦を攻撃した相手がすぐにわかった。自分は『ブラックスペア』からの攻撃を受けたのだ、と。
月に照らされた夜の大洋は、闇の中にありながら美しく輝いていた。今が戦時下にあることも、忘れてしまいそうになる。そんな海を、アメリカ海軍の駆逐艦『ブラウソン』は進んでいた。
「ウィルソン、こんなところに居たのか。心配したぞ」
「ああ、すまない、少し考え事をな…」
『ブラウソン』の甲板に出ていた乗組員のひとり、ウィルソン・マートに親友のドス・アレンが話しかけた。彼とは訓練所以来の付き合いで、偶然同じ艦に配属されたのだ。
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この日の昼間、駆逐艦『ブラウソン』は戦闘を行っていた。その結果、日本軍の潜水艦を見事撃沈していたのだ。
「なんだよ、ビビってるのか?もしかしたら俺たちの方がやられてたかもって」
「まあ、そんな所だな…」
「心配するなって!この艦はもう潜水艦だけで3隻も沈めてるんだぜ。負けるわけがないさ」
「でも、さっき上官から聞いたんだ、BLACKSPEARの話を」
「ブラックスペア?ああ、確かチャーリーもそんな話をしてたな。絶対に沈められない潜水艦を日本が完成させて、太平洋で暴れ回っているって」
「そうさ、もしヤツに見つかれば終わりだって。奴からは絶対に逃げられないって」
すっかり小心してしまったウィルソンを、ドスは呆れた様子で励ました。
「そんな話ただの噂だぜ。第一日本がそんな潜水艦を作れるはずはないし、仮に存在してもこの『ブラウソン』が沈めてやるさ」
「そ、そうだよな。噂だしな。あははは…」
ウィルソンは心配ないと何度も自分に言い聞かせた。そうさ、そんな噂話、これまでも沢山話されていたし、そのどれも嘘だったじゃないか。『ブラックスペア』なんていう潜水艦がいるわけ…。
「えっ…」
その時、ウィルソンの耳に何かが聞こえてきた。少女の歌声のような、いや少女の歌声そのものだ。何語なのか、そもそも言葉なのかわからない声。それがウィルソンには確かに聞こえていたのだ」
「おいドス!何か女の声が聞こえないか!?」
「ん、女の声?何言ってるんだウィルソン。ここは太平洋のど真ん中だぜ、ハワイはもっと北だろう」
「違う!確かに聞こえるんだ、女の声が…」
その時、甲板の前方の方から見張員の叫び声が聞こえてきた。
「右20度!魚雷!!」
その瞬間、艦体はとてつもない激震に襲われた。
「うぁぁぁぁ!」
ウィルソンは突如の揺れに、海へ放り出された。その直後。
「ゴオォォォォォ!!!」
けたたましい爆発音と共に、駆逐艦「ブラウンソン」は真っ二つになりながら、瞬時に海中に没した。
本当にあっという間だった。
「そん…な…」
あまりの突然の出来事に、彼はそれ以上何も言えなかった。しかし彼には自分たちの艦を攻撃した相手がすぐにわかった。自分は『ブラックスペア』からの攻撃を受けたのだ、と。
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