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渡る世間は謎ばかり

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 はぁ……やってしまった。電話しながら気を失うなんて……情けない……。

 「おや、気がついた様ですね。良かった」

 「も、森山さん……ここは?」

 「私の家です、ちょっとお待ちになっていてくださいね」

 「はい」

 じいさんが運んでくれたのか……にしても、広い部屋だな、私のアパートと同じ位あるぞ。やっぱり理事長ってのは金持ちなんだろうな。

 こんな部屋ドラマとかでしか見たことない……。

 おいおい、これ、子供の部屋かよ……。勉強机も豪華だな……眼鏡眼鏡っと……。かけないと、乱視で何も見えないんだ。

 あったあった。枕の横にちゃんと置いておいてくれるとは嬉しい心使いだ。

 中学1年生の……数学か……他のも中学1年だな……って事は娘か息子がいるのか……。

 あぁ。娘か、椅子に赤いランドセルが掛かってる……。懐かしいなあれ。今は、ピンクとか色々と見かけるし。その内緑や、金銀、パール、ダイヤモンドとか出るんじゃないか?

 「お待たせしました」

 「い、いえ」

 「食欲はありますか?」

 「あ、はい……あります……」
 すげぇ、腹減ってます!まったく、良い匂いさせちゃって、憎いおじさまだぜ。

 「フフフ……それは良かったではこちらをどうぞ、卵粥です」

 「あ、ありがとうございます……」
 あぁ、じいさん、本当にありがとう!私泣いちゃいそう!

 「少し、熱いのでゆっく食べてくださいね、僕は、下にいますので、何かあったら電話なり、声をかけるなりして下さい」

 「はい、ありがとうございます」
 わかったから、早く食べさせてくれ。腹がさっきから鳴ってんだって、最近キャベツばっかで、米とか3日前に牛丼食ったきりだからな。

 おし、行ったな。いただきます!あっつ!

 はぁ……本当に泣きそう……生きてるわぁ、私生きてる!じわじわと体に米パワーが広がる。ハッフハフだ!

 そにしても、妙に旨い。奥さんが作ったのかね?じいさんが作ったなら、相当見直すぞ。まぁ、見下げる所なんてひとつもないけど……。

 「失礼します」

 「は、はい」
 あぶな、吐き出しそうになったわ。入る前にノックするのは良いけど、返事の後に入って来いよ!

 「お飲み物をお持ちしました。冷たいお茶でよろしかったでしょうか?」

 「は、はい……ありがとうございます」
 ビールがよかです。なんて言えないよね。ってかシックなメイド服……かっこよ。

 じいさんと同じくらいの歳かな?喋り方からして家政婦さんぽいけど。

 「お口に合いましたか?」

 「はい、とても美味しいです」
 めちゃくちゃ染みた!

 「そうですか。それは良かった」

 無料のお茶のサービスとか、本当に住む世界が違うな。さっさと食っておいとましよう。

 はぁ、しかしただのお茶まで美味しく感じるな。熱いお粥を食べた後に飲むお茶。激アツ!だろ……。ってか、家政婦さん……いつまでいるのかな?なんかすげぇ見てくるし……。

 「あ、あの、どうかされましたか?」
 見過ぎだって、しかも何か涙ぐんでないか?痩せすぎで飢えた孤児にでも見えるのか?まぁ、否定はしないけど。

 「い、いえ。すいません。懐かしい顔に見えたもので……。ご用があればまた。お呼びください、お嬢様」

 「は、はい。ありがとうございます……」
 懐かしい顔って、田舎の小猿か何かかな?
小さくて目がでかいけども。

 流石に自虐が過ぎるか……。お嬢様になったつもりは無いけど。まぁまぁ……悪くない。

 お腹いっぱいになったら、眠くなったな……しかし、娘さんが帰って来るかもだし、早く帰らねば!煙草も吸いたいし…………。

 まぁ、ちょっとだけ、昼寝しようかな。30分だけ……病み上がりなんだ、ちょっとでも休まないと……まぁ……貧血……なんだ……けど……。

 ヤバ!?今何時だ!スマホスマホ……。暗くて見えねぇ~!ぐっすりと寝ちゃったんだけど!……あった!スマホ!

 どひゃ~!20時過ぎとるやないけ!いや、どひゃ~って何だよ?

 じゃなくて、そんなことより早く帰らねば!

 でも、下には家族が勢揃いしてんだろうな……。行きにくい……。萌Tシャツ1枚にジャージ……もっと良い服着て気絶すりゃ良かった。

 とりあえず、部屋の外を見てみたけど……静かだな……。

 てか……ひっろ、天井高っ!何処の貴族の家だよ。2階の部屋の前が空間て!ビビるわ!

 下には、ソファー……リビングかな?人の気配が無いな。いくらお爺さんと言っても20時には寝ないと思うけど……。

 私がいた部屋が真ん中で、左右の突き当たりを見ると。右と左に対になって部屋が2つずつ。……驚きだ。

 「ひゃぁあぁ!!」

 「ひぃ!?」
 うぉ~ぃ!!マジで辞めろって!誰だよ!?心霊動画は作り物だから良いが、オバケ屋敷とドッキリ系は無理なんだわ!

 「はぁ……。お嬢様でしたか、目がお覚めになられたのですね……下でお茶でも如何ですか?お茶菓子もありますよ」

 「ありがとうございます……いただきます」
 家政婦さんか……ビビった~まぁ、でもお菓子があるなら、ゆるして差し上げよう。お菓子はクッキーがよき。

 はぁ……テーブルに、ソファーに、巨大なテレビ……。これ何インチンだ?あれ?チンチだっけ?テレビの大きさの……。まいいや。

 奥には広いキッチンに、食卓テーブルに、何か良い椅子……。

 すげぇ……。だるんだるんのジャージに素足でいるのが申し訳ねぇ~。

 しかし、家政婦さん……動きが綺麗だな。

 「さぁさぁ。こちらへどうぞ」

 「ありがとうございます」
 椅子まで引いてくれるんかい。うわ、お菓子がいっぱいあるんだけど!

 「お好きに、召し上がってくださいね。あぁ、それとも、お食事にしますか?」

 「いいんでしょうか?」
 あんのか~い。

 「えぇ、準備してありますから」

 「それじゃ……いただきます……」
 据え膳は食わぬが恥である。有り難く戴こう!

 はぁ……紅茶ウマ!ペットボトルのとは比べものにならんて。クッキーもヤバ!100円のじゃあない!

 「フフフ……お菓子を食べ過ぎると、ご飯が食べられませんよ?」

 「あ、はい、すいません……」
 うっかり八兵衛……。無言で黙々とボリボリ食べちゃった。

 お鍋の中からぼわっと。凄く美味しそうな香りがする。あぁ、何かこういう感じ久しぶりだな……。

 「はい、どうぞ」

 「ありがとう。お母さん」

 「あら。嬉しい」

 「あ、あの、すいません……つい、うっかり……」
 八兵衛が過ぎるだろ!小学生かい!感傷に浸りすぎだ。

 はぁ……美味しい。何だっけこれ、ジャガイモとかウィンナー?の入ったトマトスープのやつ……。ハヤシライス?

 「どうですか、ミネストローネのお味は?」

 「凄く……美味しいです」
 ミネストローネだ。そうそう、それ。

 「良かった。私の得意料理なんですよ」

 嬉しそうにしちゃって……。

 まぁ、お世辞じゃ無いから、その反応は私も嬉しいけどね。ジュルジュル飲み干したいけど行儀悪いよな~。ってか、じいさん何処いったんだ?

 「あの……私、佐倉公子と言います」
 名前を聞いてねかったわ。先に挨拶して聞いとこ。

 「あら、そういえば、自己紹介がまだでしたね……私は、辻たつえと申します。昔からこの家の家政婦をやらせていただいております。これから、よろしくお願いしますね」

 「こちらこそ、よろしくお願いします」
 これから?まぁ、学校で働けば会うこともあるか。辻たつえさんね。覚えたと思う。苦手なんだよね人の名前覚えるの。

 「食後のデザートは如何ですか?」

 「お腹がいっぱーー」

 「ーーティラミス……がありますが」

 「……。い、いただきます」
 おいおい、なんだ?その勝ち誇った微笑みは?まぁ、良いけどさ……。

 わーいケーキだぁ!ウンマ!うまうま~!コンビニのじゃねぇなこれ!ケーキとお紅茶ってこんなにあうもんなの?びっくり仰天なんだけど!

 「フフフ……。美味しそうに食べていただけて嬉しいです」

 いやいやこんなの、不味そうに食べる方がムズイって……それよりも、じいさんだ。

 「あの辻さん、森山さんは何処へ?」
 パチンコでも行ってるのかね?それとも夜のお店かね?

 「あら、たつえとお呼びくださいな、お嬢様」

 「た、たつえさん……森山さんは……」
 何で、そんなに期待した目で見るのでしょう?

 いや、色々と美味しかったし呼ぶけれどもね。弟としか会話しない私には、初対面での名前呼びは難しいんですよ?

 「フフフ……。旦那様はちょっとお買い物に行かれていますよ」

 「他のご家族の方は?」
 一緒に行っているのかな?娘さんも奥さんもいないし。

 まさか、あの部屋は孫のか?まぁ、60辺りなら中学1年生の孫がいてもおかしくないのか?ん~わからん。数字も苦手なんだよ。パチンコの確率計算以外はな。

 「ご家族は……おりません。すんでいるのは、たつえと旦那様のみです」

 「え?だってあの部屋には……」
 子供の物がいっぱいあったけど……。

 「ただいまぁ」

 「お帰りなさいませ、旦那様」

 「おや、さくらさん。起きられる様になったんだね、良かった。これ、お土産……」

 「あの、すいません。ありがとうございます」
 タイミング良いな。まぁ、本人に聞くのが良いか……。

 「ほら、これ、お土産……たつえさん、僕にもお茶くれるか?」

 「かしこまりました」

 たつえさん、私にニコリとされてもな……。結構大きい袋だな……。洋服に寝間着か?なんで?

 「あの、これは?」
 就職祝いかなんかかな?

 「ごめんね。家に伺ったときに、鍵かかってたから、大家さんを呼んで開けてもらたんだその時、色々とね聞いちゃってね……」

 「そ、そうですか……」
 鍵?普段出るときはかけてない……。あぁ、そうか、家の中で倒れたから鍵がかかってたのか。

 大家め、余計な事を……。まぁ、でもあのままだったら死んでたな。

 「そこで、提案なんだけどね。今日からここで暮らさないかい?仕事も採用だから、さくらさんようの通勤用の自転車も買ってきた」

 「あ、ありがとうございます。でも……あのご家族が……」
 いや、何か用意周到すぎで怖いって……物件も住人もワケあり過ぎるだろ……。いい人なのは認めるけど。

 寝間着に自転車まで……。B級映画やドラマなら、このまま閉じ込められて、死ぬヤツだぞ……まぁ、私の場合、閉じ込められるか、閉じこもるかの違いだけども。スマホもそのままだし。

 「なんだ、たつえさん話して無いのかい?」

 「旦那様が丁度お帰りになったので、直接聞いて貰えばいいかと思いましいまいして」

 「なるほど。あぁ、コーヒーを入れてくれたんだね。ありがとう。たつえさん。手間が掛かるのにすまんね」

 「いいえ、それよりも……」

 「あぁ、そうだね……」

 まったりとコーヒーをすするんじゃない、間を取り過ぎだ。気になるだろうが……。

 「僕の家族はね、25年前に死んじゃったんだ……。車の事故でね、あの部屋の物は娘の物でね、何か捨てられなくて……大の大人が女々しいだろ?」

 「いや、そ、そんなことは……」
重い!さっき戴いたティラミスよりも内容量が濃厚なんだが。

 「あぁ、でも、娘の死を受け入れられないとかじゃなくて……何というか……寂しいのかな?」

 「……………………………………………。」
なんもいえねぇ。

 「まぁ、ウチはそんな感じだから、家族の事は気にしなくていいよ、ね、たつえさん」

 「えぇ、お嬢様なら、たつえも大歓迎ですわ」

 「そ、そうですか?」
 歓迎されてもなぁ……。かわいそうとは思うけどなぁ……。私には私の暮らしがなぁ……ないなぁ……ないんだよなぁ……。

 ……まぁ、落ち着いて考えよう。ここで流されたらダメだ。闇落ちするパターンだ。
 
 私は何度も繰り返せない……。

 えっと……家に帰ったら、ご飯がない。ガスない。電気も止まるし、家賃も無い。お風呂も水シャワーだ……。夏はいっぱい黒いお友達が出てくる。台所でカサカサとちゃばねている。

 さて……次はじいさんの話を考察しよう。

 ここに住めば、美味しい飯付き、暖かい風呂付き、優しい家政婦さん付きの色んなおやつ付き、そして大画面のテレビに綺麗なお布団付きの豪邸暮らし……おまけに、仕事も自転車もついてくる。

 「悩んでいる様だね、何か心配事でもあるのかな?その……僕はもう、何というか……妻が死んでしまってから、EDというヤツでね、君を襲うなんて心配もないよ」

 「そ、そんなことは!……思ってません……」
ごめん、ちょっとは考えた。けど、こんなガリ女抱きたいとも思わんよな。私も嫌だ。

 「旦那様!あまりにも、お嬢様に失礼ですよ!」

 「す、すいません。さくらさん。僕は何というか、妻が死んでからは全然駄目でして……その、実を言いますと、そっくりなんです。さくらさんと死んだ娘が……。あそこのパチンコのお店も妻が好きで通ってたんで、行ってたんです。そしたら、さくらさんがいて……」

 なるほど、謎が解けた。嫁じゃなくて、私は娘の変わりか……。

 「その、死んだのは、娘が死んだのは重々承知しているんですが、さくらさんを見るたび思い出してしまいまして、何かしてあげたいなと、思いまして……すいません……全部僕の自己満足の為なんです……」

 自己満足ね……まぁ、良いんじゃない?

 「その……。迷惑にならないのであれば、よろしくお願いします」
 タダ飯に宿付き、仕事も付いてくる、私も助かるし、じいさんも嬉しい。誰も困らん。18万勝ちの借りもあるし。

 娘の変わり。やってやろうじゃないの!

 「本当かい!ありがとう。さくらさん!」
 じいさん、なにも泣くこたぁないじゃない。たつえさんも……。まったく……。

 何年間、ここで思い出と過ごして来たんだろうか……二人だけで……。
 私の貧乏もたまには役に立つもんだ。私と、じいさんと、たつえさんで丁度三人。
 
 貧乏万歳三唱!

 「すまないね。歳を取るとどうも涙もろくなってね……お仕事は明日から出来るけど、どうするかな?」

 「あ……お願いします」
本当はニートしたいが、そこまで厚かましくもできんだろう。良い子を演じたろう。

 「そうか、じゃ、明日は一緒に行こう。色々と説明するからね……そうだな……ここを朝9時に出よう!」

 「はい、わかりました……そ、それと……お風呂と……トイレの場所を……」
朝からオションコしてないので、限界が近いし、髪がパサパサで顔がベトベトだ……。このまま仕事には向かえん。髪型と顔は仕方ないとして。

 「あぁ、気付かないでごめん、たつえさん案内してあげてくれるかい?僕はちょっと買い物に行ってくるよ、さくらさん何か欲しいものはあるかい?」

 「あ、いえ……特には……」
ビールと煙草だ。だがしかし……何か言い辛い……。どうやら私にもまだ、人の心が残っているようだ。

 「そうかい?あ、これ……。部屋の中では遠慮して欲しいけ、ベランダでなら構わないから。じゃ、行って来ます」

 「いってらっしゃいませ」
 
 「い、いってらっしゃい」
いや、気が利きすぎだろ。煙草にライターって……超ありがてぇわ。

 「うん!行って来ます!」

 2回言わなくて良いから、はよいけ。何かてれんだろがい……。



 くぅぅぅ!キンキンに冷えてやがるぜぇ!
風呂上がりの一杯がたまんない!じいさんめ!ビール買ってきてやがった!
そして、喫煙所で見てたのか私が吸う煙草もだ……。

 そしてアイスに、ベランダ用の灰皿……。

 偽善でも自己満足でもなんでも……。じいさん、アンタいい人過ぎんよ……。誰かの為に何かをする……。私にはわからんが、受けた恩は返さないとな……。

 ……あ~……ヤニくらで吐きそ~……。
    
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