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渡る世間は謎ばかり
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はぁ……やってしまった。電話しながら気を失うなんて……情けない……。
「おや、気がついた様ですね。良かった」
「も、森山さん……ここは?」
「私の家です、ちょっとお待ちになっていてくださいね」
「はい」
じいさんが運んでくれたのか……にしても、広い部屋だな、私のアパートと同じ位あるぞ。やっぱり理事長ってのは金持ちなんだろうな。
こんな部屋ドラマとかでしか見たことない……。
おいおい、これ、子供の部屋かよ……。勉強机も豪華だな……眼鏡眼鏡っと……。かけないと、乱視で何も見えないんだ。
あったあった。枕の横にちゃんと置いておいてくれるとは嬉しい心使いだ。
中学1年生の……数学か……他のも中学1年だな……って事は娘か息子がいるのか……。
あぁ。娘か、椅子に赤いランドセルが掛かってる……。懐かしいなあれ。今は、ピンクとか色々と見かけるし。その内緑や、金銀、パール、ダイヤモンドとか出るんじゃないか?
「お待たせしました」
「い、いえ」
「食欲はありますか?」
「あ、はい……あります……」
すげぇ、腹減ってます!まったく、良い匂いさせちゃって、憎いおじさまだぜ。
「フフフ……それは良かったではこちらをどうぞ、卵粥です」
「あ、ありがとうございます……」
あぁ、じいさん、本当にありがとう!私泣いちゃいそう!
「少し、熱いのでゆっく食べてくださいね、僕は、下にいますので、何かあったら電話なり、声をかけるなりして下さい」
「はい、ありがとうございます」
わかったから、早く食べさせてくれ。腹がさっきから鳴ってんだって、最近キャベツばっかで、米とか3日前に牛丼食ったきりだからな。
おし、行ったな。いただきます!あっつ!
はぁ……本当に泣きそう……生きてるわぁ、私生きてる!じわじわと体に米パワーが広がる。ハッフハフだ!
そにしても、妙に旨い。奥さんが作ったのかね?じいさんが作ったなら、相当見直すぞ。まぁ、見下げる所なんてひとつもないけど……。
「失礼します」
「は、はい」
あぶな、吐き出しそうになったわ。入る前にノックするのは良いけど、返事の後に入って来いよ!
「お飲み物をお持ちしました。冷たいお茶でよろしかったでしょうか?」
「は、はい……ありがとうございます」
ビールがよかです。なんて言えないよね。ってかシックなメイド服……かっこよ。
じいさんと同じくらいの歳かな?喋り方からして家政婦さんぽいけど。
「お口に合いましたか?」
「はい、とても美味しいです」
めちゃくちゃ染みた!
「そうですか。それは良かった」
無料のお茶のサービスとか、本当に住む世界が違うな。さっさと食っておいとましよう。
はぁ、しかしただのお茶まで美味しく感じるな。熱いお粥を食べた後に飲むお茶。激アツ!だろ……。ってか、家政婦さん……いつまでいるのかな?なんかすげぇ見てくるし……。
「あ、あの、どうかされましたか?」
見過ぎだって、しかも何か涙ぐんでないか?痩せすぎで飢えた孤児にでも見えるのか?まぁ、否定はしないけど。
「い、いえ。すいません。懐かしい顔に見えたもので……。ご用があればまた。お呼びください、お嬢様」
「は、はい。ありがとうございます……」
懐かしい顔って、田舎の小猿か何かかな?
小さくて目がでかいけども。
流石に自虐が過ぎるか……。お嬢様になったつもりは無いけど。まぁまぁ……悪くない。
お腹いっぱいになったら、眠くなったな……しかし、娘さんが帰って来るかもだし、早く帰らねば!煙草も吸いたいし…………。
まぁ、ちょっとだけ、昼寝しようかな。30分だけ……病み上がりなんだ、ちょっとでも休まないと……まぁ……貧血……なんだ……けど……。
ヤバ!?今何時だ!スマホスマホ……。暗くて見えねぇ~!ぐっすりと寝ちゃったんだけど!……あった!スマホ!
どひゃ~!20時過ぎとるやないけ!いや、どひゃ~って何だよ?
じゃなくて、そんなことより早く帰らねば!
でも、下には家族が勢揃いしてんだろうな……。行きにくい……。萌Tシャツ1枚にジャージ……もっと良い服着て気絶すりゃ良かった。
とりあえず、部屋の外を見てみたけど……静かだな……。
てか……ひっろ、天井高っ!何処の貴族の家だよ。2階の部屋の前が空間て!ビビるわ!
下には、ソファー……リビングかな?人の気配が無いな。いくらお爺さんと言っても20時には寝ないと思うけど……。
私がいた部屋が真ん中で、左右の突き当たりを見ると。右と左に対になって部屋が2つずつ。……驚きだ。
「ひゃぁあぁ!!」
「ひぃ!?」
うぉ~ぃ!!マジで辞めろって!誰だよ!?心霊動画は作り物だから良いが、オバケ屋敷とドッキリ系は無理なんだわ!
「はぁ……。お嬢様でしたか、目がお覚めになられたのですね……下でお茶でも如何ですか?お茶菓子もありますよ」
「ありがとうございます……いただきます」
家政婦さんか……ビビった~まぁ、でもお菓子があるなら、ゆるして差し上げよう。お菓子はクッキーがよき。
はぁ……テーブルに、ソファーに、巨大なテレビ……。これ何インチンだ?あれ?チンチだっけ?テレビの大きさの……。まいいや。
奥には広いキッチンに、食卓テーブルに、何か良い椅子……。
すげぇ……。だるんだるんのジャージに素足でいるのが申し訳ねぇ~。
しかし、家政婦さん……動きが綺麗だな。
「さぁさぁ。こちらへどうぞ」
「ありがとうございます」
椅子まで引いてくれるんかい。うわ、お菓子がいっぱいあるんだけど!
「お好きに、召し上がってくださいね。あぁ、それとも、お食事にしますか?」
「いいんでしょうか?」
あんのか~い。
「えぇ、準備してありますから」
「それじゃ……いただきます……」
据え膳は食わぬが恥である。有り難く戴こう!
はぁ……紅茶ウマ!ペットボトルのとは比べものにならんて。クッキーもヤバ!100円のじゃあない!
「フフフ……お菓子を食べ過ぎると、ご飯が食べられませんよ?」
「あ、はい、すいません……」
うっかり八兵衛……。無言で黙々とボリボリ食べちゃった。
お鍋の中からぼわっと。凄く美味しそうな香りがする。あぁ、何かこういう感じ久しぶりだな……。
「はい、どうぞ」
「ありがとう。お母さん」
「あら。嬉しい」
「あ、あの、すいません……つい、うっかり……」
八兵衛が過ぎるだろ!小学生かい!感傷に浸りすぎだ。
はぁ……美味しい。何だっけこれ、ジャガイモとかウィンナー?の入ったトマトスープのやつ……。ハヤシライス?
「どうですか、ミネストローネのお味は?」
「凄く……美味しいです」
ミネストローネだ。そうそう、それ。
「良かった。私の得意料理なんですよ」
嬉しそうにしちゃって……。
まぁ、お世辞じゃ無いから、その反応は私も嬉しいけどね。ジュルジュル飲み干したいけど行儀悪いよな~。ってか、じいさん何処いったんだ?
「あの……私、佐倉公子と言います」
名前を聞いてねかったわ。先に挨拶して聞いとこ。
「あら、そういえば、自己紹介がまだでしたね……私は、辻たつえと申します。昔からこの家の家政婦をやらせていただいております。これから、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
これから?まぁ、学校で働けば会うこともあるか。辻たつえさんね。覚えたと思う。苦手なんだよね人の名前覚えるの。
「食後のデザートは如何ですか?」
「お腹がいっぱーー」
「ーーティラミス……がありますが」
「……。い、いただきます」
おいおい、なんだ?その勝ち誇った微笑みは?まぁ、良いけどさ……。
わーいケーキだぁ!ウンマ!うまうま~!コンビニのじゃねぇなこれ!ケーキとお紅茶ってこんなにあうもんなの?びっくり仰天なんだけど!
「フフフ……。美味しそうに食べていただけて嬉しいです」
いやいやこんなの、不味そうに食べる方がムズイって……それよりも、じいさんだ。
「あの辻さん、森山さんは何処へ?」
パチンコでも行ってるのかね?それとも夜のお店かね?
「あら、たつえとお呼びくださいな、お嬢様」
「た、たつえさん……森山さんは……」
何で、そんなに期待した目で見るのでしょう?
いや、色々と美味しかったし呼ぶけれどもね。弟としか会話しない私には、初対面での名前呼びは難しいんですよ?
「フフフ……。旦那様はちょっとお買い物に行かれていますよ」
「他のご家族の方は?」
一緒に行っているのかな?娘さんも奥さんもいないし。
まさか、あの部屋は孫のか?まぁ、60辺りなら中学1年生の孫がいてもおかしくないのか?ん~わからん。数字も苦手なんだよ。パチンコの確率計算以外はな。
「ご家族は……おりません。すんでいるのは、たつえと旦那様のみです」
「え?だってあの部屋には……」
子供の物がいっぱいあったけど……。
「ただいまぁ」
「お帰りなさいませ、旦那様」
「おや、さくらさん。起きられる様になったんだね、良かった。これ、お土産……」
「あの、すいません。ありがとうございます」
タイミング良いな。まぁ、本人に聞くのが良いか……。
「ほら、これ、お土産……たつえさん、僕にもお茶くれるか?」
「かしこまりました」
たつえさん、私にニコリとされてもな……。結構大きい袋だな……。洋服に寝間着か?なんで?
「あの、これは?」
就職祝いかなんかかな?
「ごめんね。家に伺ったときに、鍵かかってたから、大家さんを呼んで開けてもらたんだその時、色々とね聞いちゃってね……」
「そ、そうですか……」
鍵?普段出るときはかけてない……。あぁ、そうか、家の中で倒れたから鍵がかかってたのか。
大家め、余計な事を……。まぁ、でもあのままだったら死んでたな。
「そこで、提案なんだけどね。今日からここで暮らさないかい?仕事も採用だから、さくらさんようの通勤用の自転車も買ってきた」
「あ、ありがとうございます。でも……あのご家族が……」
いや、何か用意周到すぎで怖いって……物件も住人もワケあり過ぎるだろ……。いい人なのは認めるけど。
寝間着に自転車まで……。B級映画やドラマなら、このまま閉じ込められて、死ぬヤツだぞ……まぁ、私の場合、閉じ込められるか、閉じこもるかの違いだけども。スマホもそのままだし。
「なんだ、たつえさん話して無いのかい?」
「旦那様が丁度お帰りになったので、直接聞いて貰えばいいかと思いましいまいして」
「なるほど。あぁ、コーヒーを入れてくれたんだね。ありがとう。たつえさん。手間が掛かるのにすまんね」
「いいえ、それよりも……」
「あぁ、そうだね……」
まったりとコーヒーをすするんじゃない、間を取り過ぎだ。気になるだろうが……。
「僕の家族はね、25年前に死んじゃったんだ……。車の事故でね、あの部屋の物は娘の物でね、何か捨てられなくて……大の大人が女々しいだろ?」
「いや、そ、そんなことは……」
重い!さっき戴いたティラミスよりも内容量が濃厚なんだが。
「あぁ、でも、娘の死を受け入れられないとかじゃなくて……何というか……寂しいのかな?」
「……………………………………………。」
なんもいえねぇ。
「まぁ、ウチはそんな感じだから、家族の事は気にしなくていいよ、ね、たつえさん」
「えぇ、お嬢様なら、たつえも大歓迎ですわ」
「そ、そうですか?」
歓迎されてもなぁ……。かわいそうとは思うけどなぁ……。私には私の暮らしがなぁ……ないなぁ……ないんだよなぁ……。
……まぁ、落ち着いて考えよう。ここで流されたらダメだ。闇落ちするパターンだ。
私は何度も繰り返せない……。
えっと……家に帰ったら、ご飯がない。ガスない。電気も止まるし、家賃も無い。お風呂も水シャワーだ……。夏はいっぱい黒いお友達が出てくる。台所でカサカサとちゃばねている。
さて……次はじいさんの話を考察しよう。
ここに住めば、美味しい飯付き、暖かい風呂付き、優しい家政婦さん付きの色んなおやつ付き、そして大画面のテレビに綺麗なお布団付きの豪邸暮らし……おまけに、仕事も自転車もついてくる。
「悩んでいる様だね、何か心配事でもあるのかな?その……僕はもう、何というか……妻が死んでしまってから、EDというヤツでね、君を襲うなんて心配もないよ」
「そ、そんなことは!……思ってません……」
ごめん、ちょっとは考えた。けど、こんなガリ女抱きたいとも思わんよな。私も嫌だ。
「旦那様!あまりにも、お嬢様に失礼ですよ!」
「す、すいません。さくらさん。僕は何というか、妻が死んでからは全然駄目でして……その、実を言いますと、そっくりなんです。さくらさんと死んだ娘が……。あそこのパチンコのお店も妻が好きで通ってたんで、行ってたんです。そしたら、さくらさんがいて……」
なるほど、謎が解けた。嫁じゃなくて、私は娘の変わりか……。
「その、死んだのは、娘が死んだのは重々承知しているんですが、さくらさんを見るたび思い出してしまいまして、何かしてあげたいなと、思いまして……すいません……全部僕の自己満足の為なんです……」
自己満足ね……まぁ、良いんじゃない?
「その……。迷惑にならないのであれば、よろしくお願いします」
タダ飯に宿付き、仕事も付いてくる、私も助かるし、じいさんも嬉しい。誰も困らん。18万勝ちの借りもあるし。
娘の変わり。やってやろうじゃないの!
「本当かい!ありがとう。さくらさん!」
じいさん、なにも泣くこたぁないじゃない。たつえさんも……。まったく……。
何年間、ここで思い出と過ごして来たんだろうか……二人だけで……。
私の貧乏もたまには役に立つもんだ。私と、じいさんと、たつえさんで丁度三人。
貧乏万歳三唱!
「すまないね。歳を取るとどうも涙もろくなってね……お仕事は明日から出来るけど、どうするかな?」
「あ……お願いします」
本当はニートしたいが、そこまで厚かましくもできんだろう。良い子を演じたろう。
「そうか、じゃ、明日は一緒に行こう。色々と説明するからね……そうだな……ここを朝9時に出よう!」
「はい、わかりました……そ、それと……お風呂と……トイレの場所を……」
朝からオションコしてないので、限界が近いし、髪がパサパサで顔がベトベトだ……。このまま仕事には向かえん。髪型と顔は仕方ないとして。
「あぁ、気付かないでごめん、たつえさん案内してあげてくれるかい?僕はちょっと買い物に行ってくるよ、さくらさん何か欲しいものはあるかい?」
「あ、いえ……特には……」
ビールと煙草だ。だがしかし……何か言い辛い……。どうやら私にもまだ、人の心が残っているようだ。
「そうかい?あ、これ……。部屋の中では遠慮して欲しいけ、ベランダでなら構わないから。じゃ、行って来ます」
「いってらっしゃいませ」
「い、いってらっしゃい」
いや、気が利きすぎだろ。煙草にライターって……超ありがてぇわ。
「うん!行って来ます!」
2回言わなくて良いから、はよいけ。何かてれんだろがい……。
くぅぅぅ!キンキンに冷えてやがるぜぇ!
風呂上がりの一杯がたまんない!じいさんめ!ビール買ってきてやがった!
そして、喫煙所で見てたのか私が吸う煙草もだ……。
そしてアイスに、ベランダ用の灰皿……。
偽善でも自己満足でもなんでも……。じいさん、アンタいい人過ぎんよ……。誰かの為に何かをする……。私にはわからんが、受けた恩は返さないとな……。
……あ~……ヤニくらで吐きそ~……。
「おや、気がついた様ですね。良かった」
「も、森山さん……ここは?」
「私の家です、ちょっとお待ちになっていてくださいね」
「はい」
じいさんが運んでくれたのか……にしても、広い部屋だな、私のアパートと同じ位あるぞ。やっぱり理事長ってのは金持ちなんだろうな。
こんな部屋ドラマとかでしか見たことない……。
おいおい、これ、子供の部屋かよ……。勉強机も豪華だな……眼鏡眼鏡っと……。かけないと、乱視で何も見えないんだ。
あったあった。枕の横にちゃんと置いておいてくれるとは嬉しい心使いだ。
中学1年生の……数学か……他のも中学1年だな……って事は娘か息子がいるのか……。
あぁ。娘か、椅子に赤いランドセルが掛かってる……。懐かしいなあれ。今は、ピンクとか色々と見かけるし。その内緑や、金銀、パール、ダイヤモンドとか出るんじゃないか?
「お待たせしました」
「い、いえ」
「食欲はありますか?」
「あ、はい……あります……」
すげぇ、腹減ってます!まったく、良い匂いさせちゃって、憎いおじさまだぜ。
「フフフ……それは良かったではこちらをどうぞ、卵粥です」
「あ、ありがとうございます……」
あぁ、じいさん、本当にありがとう!私泣いちゃいそう!
「少し、熱いのでゆっく食べてくださいね、僕は、下にいますので、何かあったら電話なり、声をかけるなりして下さい」
「はい、ありがとうございます」
わかったから、早く食べさせてくれ。腹がさっきから鳴ってんだって、最近キャベツばっかで、米とか3日前に牛丼食ったきりだからな。
おし、行ったな。いただきます!あっつ!
はぁ……本当に泣きそう……生きてるわぁ、私生きてる!じわじわと体に米パワーが広がる。ハッフハフだ!
そにしても、妙に旨い。奥さんが作ったのかね?じいさんが作ったなら、相当見直すぞ。まぁ、見下げる所なんてひとつもないけど……。
「失礼します」
「は、はい」
あぶな、吐き出しそうになったわ。入る前にノックするのは良いけど、返事の後に入って来いよ!
「お飲み物をお持ちしました。冷たいお茶でよろしかったでしょうか?」
「は、はい……ありがとうございます」
ビールがよかです。なんて言えないよね。ってかシックなメイド服……かっこよ。
じいさんと同じくらいの歳かな?喋り方からして家政婦さんぽいけど。
「お口に合いましたか?」
「はい、とても美味しいです」
めちゃくちゃ染みた!
「そうですか。それは良かった」
無料のお茶のサービスとか、本当に住む世界が違うな。さっさと食っておいとましよう。
はぁ、しかしただのお茶まで美味しく感じるな。熱いお粥を食べた後に飲むお茶。激アツ!だろ……。ってか、家政婦さん……いつまでいるのかな?なんかすげぇ見てくるし……。
「あ、あの、どうかされましたか?」
見過ぎだって、しかも何か涙ぐんでないか?痩せすぎで飢えた孤児にでも見えるのか?まぁ、否定はしないけど。
「い、いえ。すいません。懐かしい顔に見えたもので……。ご用があればまた。お呼びください、お嬢様」
「は、はい。ありがとうございます……」
懐かしい顔って、田舎の小猿か何かかな?
小さくて目がでかいけども。
流石に自虐が過ぎるか……。お嬢様になったつもりは無いけど。まぁまぁ……悪くない。
お腹いっぱいになったら、眠くなったな……しかし、娘さんが帰って来るかもだし、早く帰らねば!煙草も吸いたいし…………。
まぁ、ちょっとだけ、昼寝しようかな。30分だけ……病み上がりなんだ、ちょっとでも休まないと……まぁ……貧血……なんだ……けど……。
ヤバ!?今何時だ!スマホスマホ……。暗くて見えねぇ~!ぐっすりと寝ちゃったんだけど!……あった!スマホ!
どひゃ~!20時過ぎとるやないけ!いや、どひゃ~って何だよ?
じゃなくて、そんなことより早く帰らねば!
でも、下には家族が勢揃いしてんだろうな……。行きにくい……。萌Tシャツ1枚にジャージ……もっと良い服着て気絶すりゃ良かった。
とりあえず、部屋の外を見てみたけど……静かだな……。
てか……ひっろ、天井高っ!何処の貴族の家だよ。2階の部屋の前が空間て!ビビるわ!
下には、ソファー……リビングかな?人の気配が無いな。いくらお爺さんと言っても20時には寝ないと思うけど……。
私がいた部屋が真ん中で、左右の突き当たりを見ると。右と左に対になって部屋が2つずつ。……驚きだ。
「ひゃぁあぁ!!」
「ひぃ!?」
うぉ~ぃ!!マジで辞めろって!誰だよ!?心霊動画は作り物だから良いが、オバケ屋敷とドッキリ系は無理なんだわ!
「はぁ……。お嬢様でしたか、目がお覚めになられたのですね……下でお茶でも如何ですか?お茶菓子もありますよ」
「ありがとうございます……いただきます」
家政婦さんか……ビビった~まぁ、でもお菓子があるなら、ゆるして差し上げよう。お菓子はクッキーがよき。
はぁ……テーブルに、ソファーに、巨大なテレビ……。これ何インチンだ?あれ?チンチだっけ?テレビの大きさの……。まいいや。
奥には広いキッチンに、食卓テーブルに、何か良い椅子……。
すげぇ……。だるんだるんのジャージに素足でいるのが申し訳ねぇ~。
しかし、家政婦さん……動きが綺麗だな。
「さぁさぁ。こちらへどうぞ」
「ありがとうございます」
椅子まで引いてくれるんかい。うわ、お菓子がいっぱいあるんだけど!
「お好きに、召し上がってくださいね。あぁ、それとも、お食事にしますか?」
「いいんでしょうか?」
あんのか~い。
「えぇ、準備してありますから」
「それじゃ……いただきます……」
据え膳は食わぬが恥である。有り難く戴こう!
はぁ……紅茶ウマ!ペットボトルのとは比べものにならんて。クッキーもヤバ!100円のじゃあない!
「フフフ……お菓子を食べ過ぎると、ご飯が食べられませんよ?」
「あ、はい、すいません……」
うっかり八兵衛……。無言で黙々とボリボリ食べちゃった。
お鍋の中からぼわっと。凄く美味しそうな香りがする。あぁ、何かこういう感じ久しぶりだな……。
「はい、どうぞ」
「ありがとう。お母さん」
「あら。嬉しい」
「あ、あの、すいません……つい、うっかり……」
八兵衛が過ぎるだろ!小学生かい!感傷に浸りすぎだ。
はぁ……美味しい。何だっけこれ、ジャガイモとかウィンナー?の入ったトマトスープのやつ……。ハヤシライス?
「どうですか、ミネストローネのお味は?」
「凄く……美味しいです」
ミネストローネだ。そうそう、それ。
「良かった。私の得意料理なんですよ」
嬉しそうにしちゃって……。
まぁ、お世辞じゃ無いから、その反応は私も嬉しいけどね。ジュルジュル飲み干したいけど行儀悪いよな~。ってか、じいさん何処いったんだ?
「あの……私、佐倉公子と言います」
名前を聞いてねかったわ。先に挨拶して聞いとこ。
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「食後のデザートは如何ですか?」
「お腹がいっぱーー」
「ーーティラミス……がありますが」
「……。い、いただきます」
おいおい、なんだ?その勝ち誇った微笑みは?まぁ、良いけどさ……。
わーいケーキだぁ!ウンマ!うまうま~!コンビニのじゃねぇなこれ!ケーキとお紅茶ってこんなにあうもんなの?びっくり仰天なんだけど!
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「あの辻さん、森山さんは何処へ?」
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何で、そんなに期待した目で見るのでしょう?
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「他のご家族の方は?」
一緒に行っているのかな?娘さんも奥さんもいないし。
まさか、あの部屋は孫のか?まぁ、60辺りなら中学1年生の孫がいてもおかしくないのか?ん~わからん。数字も苦手なんだよ。パチンコの確率計算以外はな。
「ご家族は……おりません。すんでいるのは、たつえと旦那様のみです」
「え?だってあの部屋には……」
子供の物がいっぱいあったけど……。
「ただいまぁ」
「お帰りなさいませ、旦那様」
「おや、さくらさん。起きられる様になったんだね、良かった。これ、お土産……」
「あの、すいません。ありがとうございます」
タイミング良いな。まぁ、本人に聞くのが良いか……。
「ほら、これ、お土産……たつえさん、僕にもお茶くれるか?」
「かしこまりました」
たつえさん、私にニコリとされてもな……。結構大きい袋だな……。洋服に寝間着か?なんで?
「あの、これは?」
就職祝いかなんかかな?
「ごめんね。家に伺ったときに、鍵かかってたから、大家さんを呼んで開けてもらたんだその時、色々とね聞いちゃってね……」
「そ、そうですか……」
鍵?普段出るときはかけてない……。あぁ、そうか、家の中で倒れたから鍵がかかってたのか。
大家め、余計な事を……。まぁ、でもあのままだったら死んでたな。
「そこで、提案なんだけどね。今日からここで暮らさないかい?仕事も採用だから、さくらさんようの通勤用の自転車も買ってきた」
「あ、ありがとうございます。でも……あのご家族が……」
いや、何か用意周到すぎで怖いって……物件も住人もワケあり過ぎるだろ……。いい人なのは認めるけど。
寝間着に自転車まで……。B級映画やドラマなら、このまま閉じ込められて、死ぬヤツだぞ……まぁ、私の場合、閉じ込められるか、閉じこもるかの違いだけども。スマホもそのままだし。
「なんだ、たつえさん話して無いのかい?」
「旦那様が丁度お帰りになったので、直接聞いて貰えばいいかと思いましいまいして」
「なるほど。あぁ、コーヒーを入れてくれたんだね。ありがとう。たつえさん。手間が掛かるのにすまんね」
「いいえ、それよりも……」
「あぁ、そうだね……」
まったりとコーヒーをすするんじゃない、間を取り過ぎだ。気になるだろうが……。
「僕の家族はね、25年前に死んじゃったんだ……。車の事故でね、あの部屋の物は娘の物でね、何か捨てられなくて……大の大人が女々しいだろ?」
「いや、そ、そんなことは……」
重い!さっき戴いたティラミスよりも内容量が濃厚なんだが。
「あぁ、でも、娘の死を受け入れられないとかじゃなくて……何というか……寂しいのかな?」
「……………………………………………。」
なんもいえねぇ。
「まぁ、ウチはそんな感じだから、家族の事は気にしなくていいよ、ね、たつえさん」
「えぇ、お嬢様なら、たつえも大歓迎ですわ」
「そ、そうですか?」
歓迎されてもなぁ……。かわいそうとは思うけどなぁ……。私には私の暮らしがなぁ……ないなぁ……ないんだよなぁ……。
……まぁ、落ち着いて考えよう。ここで流されたらダメだ。闇落ちするパターンだ。
私は何度も繰り返せない……。
えっと……家に帰ったら、ご飯がない。ガスない。電気も止まるし、家賃も無い。お風呂も水シャワーだ……。夏はいっぱい黒いお友達が出てくる。台所でカサカサとちゃばねている。
さて……次はじいさんの話を考察しよう。
ここに住めば、美味しい飯付き、暖かい風呂付き、優しい家政婦さん付きの色んなおやつ付き、そして大画面のテレビに綺麗なお布団付きの豪邸暮らし……おまけに、仕事も自転車もついてくる。
「悩んでいる様だね、何か心配事でもあるのかな?その……僕はもう、何というか……妻が死んでしまってから、EDというヤツでね、君を襲うなんて心配もないよ」
「そ、そんなことは!……思ってません……」
ごめん、ちょっとは考えた。けど、こんなガリ女抱きたいとも思わんよな。私も嫌だ。
「旦那様!あまりにも、お嬢様に失礼ですよ!」
「す、すいません。さくらさん。僕は何というか、妻が死んでからは全然駄目でして……その、実を言いますと、そっくりなんです。さくらさんと死んだ娘が……。あそこのパチンコのお店も妻が好きで通ってたんで、行ってたんです。そしたら、さくらさんがいて……」
なるほど、謎が解けた。嫁じゃなくて、私は娘の変わりか……。
「その、死んだのは、娘が死んだのは重々承知しているんですが、さくらさんを見るたび思い出してしまいまして、何かしてあげたいなと、思いまして……すいません……全部僕の自己満足の為なんです……」
自己満足ね……まぁ、良いんじゃない?
「その……。迷惑にならないのであれば、よろしくお願いします」
タダ飯に宿付き、仕事も付いてくる、私も助かるし、じいさんも嬉しい。誰も困らん。18万勝ちの借りもあるし。
娘の変わり。やってやろうじゃないの!
「本当かい!ありがとう。さくらさん!」
じいさん、なにも泣くこたぁないじゃない。たつえさんも……。まったく……。
何年間、ここで思い出と過ごして来たんだろうか……二人だけで……。
私の貧乏もたまには役に立つもんだ。私と、じいさんと、たつえさんで丁度三人。
貧乏万歳三唱!
「すまないね。歳を取るとどうも涙もろくなってね……お仕事は明日から出来るけど、どうするかな?」
「あ……お願いします」
本当はニートしたいが、そこまで厚かましくもできんだろう。良い子を演じたろう。
「そうか、じゃ、明日は一緒に行こう。色々と説明するからね……そうだな……ここを朝9時に出よう!」
「はい、わかりました……そ、それと……お風呂と……トイレの場所を……」
朝からオションコしてないので、限界が近いし、髪がパサパサで顔がベトベトだ……。このまま仕事には向かえん。髪型と顔は仕方ないとして。
「あぁ、気付かないでごめん、たつえさん案内してあげてくれるかい?僕はちょっと買い物に行ってくるよ、さくらさん何か欲しいものはあるかい?」
「あ、いえ……特には……」
ビールと煙草だ。だがしかし……何か言い辛い……。どうやら私にもまだ、人の心が残っているようだ。
「そうかい?あ、これ……。部屋の中では遠慮して欲しいけ、ベランダでなら構わないから。じゃ、行って来ます」
「いってらっしゃいませ」
「い、いってらっしゃい」
いや、気が利きすぎだろ。煙草にライターって……超ありがてぇわ。
「うん!行って来ます!」
2回言わなくて良いから、はよいけ。何かてれんだろがい……。
くぅぅぅ!キンキンに冷えてやがるぜぇ!
風呂上がりの一杯がたまんない!じいさんめ!ビール買ってきてやがった!
そして、喫煙所で見てたのか私が吸う煙草もだ……。
そしてアイスに、ベランダ用の灰皿……。
偽善でも自己満足でもなんでも……。じいさん、アンタいい人過ぎんよ……。誰かの為に何かをする……。私にはわからんが、受けた恩は返さないとな……。
……あ~……ヤニくらで吐きそ~……。
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/863298964/650844803
パイナップル番長 あるある川柳大全(中年童貞の世界)
パイナップル番長研究所
キャラ文芸
進学するように、時期がくれば、ある程度の努力で、自然とパートナーと巡り合えて初体験して結婚できると思っていたら、現実は甘くないのですね。
我が研究所は、20年以上にわたって、特殊生物パイナップル番長を研究してきました。
パイナップル番長とは、ずばり中年童貞を具現化した姿そのものです。
今回は、パイナップル番長を吐いた川柳の収集及び研究の成果を公表したいと思います。
中年童貞ならではの切なさや滑稽さを感じていただけましたら幸いです。
好きになるには理由があります ~支社長室に神が舞い降りました~
菱沼あゆ
キャラ文芸
ある朝、クルーザーの中で目覚めた一宮深月(いちみや みつき)は、隣にイケメンだが、ちょっと苦手な支社長、飛鳥馬陽太(あすま ようた)が寝ていることに驚愕する。
大事な神事を控えていた巫女さん兼業OL 深月は思わず叫んでいた。
「神の怒りを買ってしまいます~っ」
みんなに深月の相手と認めてもらうため、神事で舞を舞うことになる陽太だったが――。
お神楽×オフィスラブ。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
博士の愛しき発明品たち!
夏夜やもり
キャラ文芸
近年まで、私と妹は常識的でゆるやかな日常を送っていました。
しかし、ご近所に住む博士の発明品で、世界と一緒に振り回されてしまいます!
そんなお話。あと斉藤さん。
【あらすじ】
氏名・年齢・性別などを問われたとき、かならず『ひみつ』と答える私は、本物の科学者と出会った!
博士は、その恐るべき科学力と体をなげうつ研究努力と独自理論によって、悍ましき発明品を次々生み出し、世界と私たちの日常を脅かす!
そんな博士と私と妹たちで繰り広げるS・Fの深淵を、共に覗きましょう。
**―――――
「ねえ、これ気になるんだけど?」
居間のソファーですっごい姿勢の妹が、適当に取り繕った『あらすじ』をひらひらさせる。
「なこが?」
「色々あるけどさ……SFってのはおこがましいんじゃない?」
「S・F(サイエンス・ファンキー)だから良いのだよ?」
「……イカレた科学?」
「イカした科学!」
少しだけ妹に同意しているが、それは胸にしまっておく。
「文句があるなら自分もお勧めしてよ」
私は少し唇尖らせ、妹に促す。
「んー、暇つぶしには最適! あたしや博士に興味があって、お暇な時にお読みください!」
「私は?」
「本編で邪魔ってくらい語るでしょ?」
「…………」
えっとね、私、これでも頑張ってますよ? いろいろ沸き上がる感情を抑えつつ……。
本編へつづく
*)小説家になろうさん・エブリスタさんにも同時投稿です。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
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