13 / 20
第十三話 ゼルバのお家①
しおりを挟む
結局ゼルバの家まで、私はお姫様抱っこで連れて行かれた。
ゼルバは有名人なので、道ゆく人たちに『その子はどなたですか?』声をかけられた。
その度にゼルバは嬉しそうな表情で、『俺の恋人です。可愛いでしょう?』と説明するので、私は顔から火が出そうだった。
部屋に入ると、壊れものを扱うようにそっとソファに下ろされる。
こんな時なのにゼルバの住むお部屋がどんな感じなのか気になって、私はキョロキョロ辺りを見回した。
部屋はベージュで統一されていた。とてもシンプルで清潔感のあるお部屋だ。
壁には鞘に収まった剣や盾などが立てかけられていて、いかにも冒険者の部屋といった感じだった。
意外なことに、部屋の隅に大きな本棚があり、そこにはびっしりと本が詰まっていた。
ゼルバは本が好きなのかしら? 知らなかったわ。私も本は大好き。今度本についてお話ししてみようかしらなどと考えて、ハッとした。
いや、今度なんてないわ! 私たちは別れたのよ! そんなことを思いながらブルブル首を振った。すると、そんな私を見ていたゼルバがクスリと笑った。
「レノン。俺の部屋に興味津々だね」
部屋を観察していたことがバレた私は赤面した。
「ご、ごめんなさい。ジロジロ見ちゃって」
「別にいいよ。気に入ってくれたなら嬉しいな。居心地のよい部屋なら、レノンも気軽に遊びにきてくれるだろ?」
「あ、遊びになんていかないわ。だって私たち、別れたんですもの」
「……」
ゼルバは無言で隣に座ると、じぃっと私の横顔を見つめた。
「俺は別れるつもりはないよ」
「ダメよ。別れて」
「嫌だよ。なんで別れなきゃいけないの?」
「さっきも言ったじゃない! 貴方に私みたいなブスは相応しくないの!」
私の言葉を聞いて、ゼルバは目を丸くした。
「レノンがブスだったら、世の中の女の子の大半は醜いよ?」
「そんなことないわ」
「そんなことあるよ。――え? レノンって自分のことブスだと思ってるの? こんなに可愛いのに?」
「そういうこと言うのやめて」
「だって可愛いもん。可愛い可愛い可愛い」
「や、やめてったら!」
私は恥ずかしくなってきて、ぽこぽことゼルバの肩を叩いた。
「あはは。真っ赤になっちゃって。可愛いんだから」
もう! なんだか揶揄われてる気がするわ!
私はムッとしながら頰を膨らませた。
そんな私を見ながら、ゼルバが優しく微笑む。
「じゃあ問題解決だね。レノンは可愛いもん」
「な、なんにも解決してないわよ」
私はモジモジと髪をいじりながら話を続ける。
「ゼルバはSランク冒険者なのよ? しかも凄くカッコいいし、みんなの憧れの的なの。そんな素敵な男性が、私の彼氏なんておかしいわ」
ゼルバは『うーん……』と唸ると、あごに手を乗せて考え込んだ。
「俺、別に普通の男だよ? 俺なんかに憧れてる人なんていないんじゃないかなぁ?」
「いるもん! 今日会った女の人も、ゼルバに恋してるみたいだったもん!」
「今日会った女の人?」
そこで私はハッとした。
まずい……。口を滑らせてしまった。あの女性のことは黙っていようと思ったのに。
私は慌てて誤魔化した。
「な、なんでもないわ」
「……」
だが、勘のいいゼルバはなんでもないで済ませてくれなかった。
ゼルバは有名人なので、道ゆく人たちに『その子はどなたですか?』声をかけられた。
その度にゼルバは嬉しそうな表情で、『俺の恋人です。可愛いでしょう?』と説明するので、私は顔から火が出そうだった。
部屋に入ると、壊れものを扱うようにそっとソファに下ろされる。
こんな時なのにゼルバの住むお部屋がどんな感じなのか気になって、私はキョロキョロ辺りを見回した。
部屋はベージュで統一されていた。とてもシンプルで清潔感のあるお部屋だ。
壁には鞘に収まった剣や盾などが立てかけられていて、いかにも冒険者の部屋といった感じだった。
意外なことに、部屋の隅に大きな本棚があり、そこにはびっしりと本が詰まっていた。
ゼルバは本が好きなのかしら? 知らなかったわ。私も本は大好き。今度本についてお話ししてみようかしらなどと考えて、ハッとした。
いや、今度なんてないわ! 私たちは別れたのよ! そんなことを思いながらブルブル首を振った。すると、そんな私を見ていたゼルバがクスリと笑った。
「レノン。俺の部屋に興味津々だね」
部屋を観察していたことがバレた私は赤面した。
「ご、ごめんなさい。ジロジロ見ちゃって」
「別にいいよ。気に入ってくれたなら嬉しいな。居心地のよい部屋なら、レノンも気軽に遊びにきてくれるだろ?」
「あ、遊びになんていかないわ。だって私たち、別れたんですもの」
「……」
ゼルバは無言で隣に座ると、じぃっと私の横顔を見つめた。
「俺は別れるつもりはないよ」
「ダメよ。別れて」
「嫌だよ。なんで別れなきゃいけないの?」
「さっきも言ったじゃない! 貴方に私みたいなブスは相応しくないの!」
私の言葉を聞いて、ゼルバは目を丸くした。
「レノンがブスだったら、世の中の女の子の大半は醜いよ?」
「そんなことないわ」
「そんなことあるよ。――え? レノンって自分のことブスだと思ってるの? こんなに可愛いのに?」
「そういうこと言うのやめて」
「だって可愛いもん。可愛い可愛い可愛い」
「や、やめてったら!」
私は恥ずかしくなってきて、ぽこぽことゼルバの肩を叩いた。
「あはは。真っ赤になっちゃって。可愛いんだから」
もう! なんだか揶揄われてる気がするわ!
私はムッとしながら頰を膨らませた。
そんな私を見ながら、ゼルバが優しく微笑む。
「じゃあ問題解決だね。レノンは可愛いもん」
「な、なんにも解決してないわよ」
私はモジモジと髪をいじりながら話を続ける。
「ゼルバはSランク冒険者なのよ? しかも凄くカッコいいし、みんなの憧れの的なの。そんな素敵な男性が、私の彼氏なんておかしいわ」
ゼルバは『うーん……』と唸ると、あごに手を乗せて考え込んだ。
「俺、別に普通の男だよ? 俺なんかに憧れてる人なんていないんじゃないかなぁ?」
「いるもん! 今日会った女の人も、ゼルバに恋してるみたいだったもん!」
「今日会った女の人?」
そこで私はハッとした。
まずい……。口を滑らせてしまった。あの女性のことは黙っていようと思ったのに。
私は慌てて誤魔化した。
「な、なんでもないわ」
「……」
だが、勘のいいゼルバはなんでもないで済ませてくれなかった。
23
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
完結「カウントダウンするラブ日傘〜卒業パーティーで婚約破棄された傷物の私に年下の美少年が迫ってきます」
まほりろ
恋愛
【完結済み】
「レイチェル・カルべ! 俺を金で買い、ミラを犬扱いし、父に土下座をさせ楽しんでいた性悪女め! 貴様との婚約を破棄し、俺は愛するミランダと結婚する!」
婚約者のアルフレッド様はそう叫ぶと、公衆の面前で私を突き飛ばした。
アルフレッド様のお隣には桃色の髪に華奢な体格の可憐な少女ミランダ様がおりました。
卒業パーティーで婚約破棄された傷物の私をお嫁に貰ってくれる人なんておりませんわ、このままでは私行き遅れ確定ですわ。
ですが私の予想に反し一枚の釣書が送られてきて……。
「ショートショートガーデン」のお題を元に作成いたしました。他のサイトにも投稿しております。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
後日談は反応が悪かったので削除しました。
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。
ゆちば
恋愛
ビリビリッ!
「む……、胸がぁぁぁッ!!」
「陛下、声がでかいです!」
◆
フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。
私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。
だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。
たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。
「【女体化の呪い】だ!」
勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?!
勢い強めの3万字ラブコメです。
全18話、5/5の昼には完結します。
他のサイトでも公開しています。
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠 結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【完結】絶世の美女から平凡な少女に生まれ変わって幸せですが、元護衛騎士が幸せではなさそうなのでどうにかしたい
大森 樹
恋愛
メラビア王国の王女であり絶世の美女キャロラインは、その美しさから隣国の王に無理矢理妻にと望まれ戦争の原因になっていた。婚約者だったジョセフ王子も暗殺され、自国の騎士も亡くなっていく状況に耐えられず自死を選んだ。
「神様……私をどうしてこんな美しい容姿にされたのですか?来世はどうか平凡な人生にしてくださいませ」
そして望み通り平民のミーナとして生まれ変わった彼女はのびのびと平和に楽しく生きていた。お金はないけど、自由で幸せ!最高!
そんなある日ミーナはボロボロの男を助ける。その男は……自分がキャロラインだった頃に最期まで自分を護ってくれた護衛騎士の男ライナスだった。死んだような瞳で生きている彼に戸惑いを覚える。
ミーナの恋のお話です。ミーナを好きな魅力的な男達も沢山現れて……彼女は最終的に誰を選ぶのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる