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第二部 学校編

3.

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「ミスコン……いや、女装コンテスト?」

 つぎの日、教室で野球部所属の岩崎くんが、甲斐くんの不機嫌な理由を教えてくれた。

「部対抗だってさ。優勝した部には、生徒会から米3俵がもらえる」
「1俵って何キロ?」
「たしか60キロ」
「すごい!!」

 それは運動部が目の色を変えそうだ。

「ラグビー部からは甲斐くんで、野球部は? 岩崎くんとか、かわいいじゃん」
「最初からかわいいのはダメなんだと。おもしろみに欠けるから」
「ほほう」

 生徒会、わかってるな。
 最初からかわいかったら、女装した姿もある程度は予想がつくもんね。

「サッカー部はだれだろ?」
「サッカー部なあ。あそこ、わりと顔いいのがそろってるよな」
「小山田くんだったらいいなあ。女装姿が見たい」
「小山田じゃ、おもしろくねえよ」
「う~ん、たしかに」

 小山田くんのお母さん、すごい美人さんだもんね。
 お母さん似の小山田くんが女装したら、あんな感じになりそうだよ。

「俺がなんだって?」
「あ、小山田くん、おはよ!」

 おはよう、と返事をする小山田くんのうしろには、甲斐くんの姿もある。

 甲斐くんは昨日のお昼からずっと不機嫌なまんまだ。
 女装コンテストがそんなに嫌なのかな? 甲斐くん、硬派だからなあ。そういった浮かれたイベントが、嫌いなのかも。

 自分の席に腰かける甲斐くんにも朝のあいさつをして、小山田くんを見上げる。

「サッカー部は女装コンテストにだれが出るの?」
「今朝の時点では、まだなにも言われてないな。まあ、だれが選ばれても先輩命令じゃ、従うしかないし」

 小山田くんが、うしろの席の甲斐くんを気遣うように見る。
 部活動って、上下関係がきびしいもんね。ぼくには無理だな。

「小山田くんと甲斐くんが女装対決したら、ぼく選べないかも」
「より抜けるほうが勝ちだ」

 岩崎くんが品のないことを口にしてくる。
 う~ん、抜けるような女装姿ねえ?

 小山田くんがにっこりと笑った。

「カズは俺を選ぶよな?」
「え」

 そりゃ、小山田くんをオカズにして抜くこともあるけど――。

「俺を選ぶだろ? カズ」

 笑顔の小山田くんの威圧感がハンパない。
 ぼくはうなずくしかなかった。
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