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第二部 学校編

2.

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 ――女子がいるところに、小山田くんあり。

 昇降口できゃあきゃあしていたのは、小山田くんとそのファンたちだった。

 彼女たちはぼくらの姿が見えたとたん、小山田くんからばっと離れる。
 すごい徹底しているな、小山田くんのファン。

「カズ、おはよう。岩崎も、昨日ぶり」
「小山田くん、おはよー」
「おっすー。小山田とは毎日グラウンドで会ってたから、あんまありがたみねえな」
「そう言うなよ」

 さわやかな笑顔にあてられた周囲から、ぎゃああって悲鳴があがった。
 朝からあんなに興奮して大丈夫なのかな? こんなところで倒れないでね?

 小山田くんがぼくの背後を見た。

「どうしたの?」
「久遠は?」
「教室に向かったよ」
「なんだ。あいさつしようと思ったのに」

 小山田くんは礼儀正しいねえ。

「小山田も上野の幼なじみ、知ってんの?」
「5、6回? いや、もっと会ったかな?」
「えっ、そんなに会ってたの!?」

 ぼくより小山田くんと会ってる回数多いじゃん! キィちゃん、ずるい!!

 ぷりぷりするぼくに、小山田くんが苦笑した。

「久遠、補講に来てただろ?」
「あ、そうか」

 毎日、学校に来てればイヤでも会うか。

「声をかけるたびに、すっごい迷惑そうな顔されたけど、あれはあれでクセになってなー」
「小山田くんは心が広いねえ……」
「そういうんじゃねえだろ。たんに小山田がMなだけだ」
「人聞きの悪いことを言うな」

 ニヤニヤする坊主頭の岩崎くんを、小山田くんが小突く。

「カズ、ちがうからな?」
「大丈夫だよ。ぼくは気にしないから」

 小山田くんがMならMで、夢が広がるよね。アレとかソレとかさ。
 思わず、キィちゃん直伝(?)の邪悪な笑みを浮かべてしまう。

「上野は気にしないって。よかったな!」
「岩崎……おまえ、すこし黙れ」

 めずらしく低い声を出す小山田くんに、さすがの岩崎くんも口をつぐむ。

 岩崎くんはときどき空気が読めなくて、もうひとりの仲間にもよく注意をされている。
 だけど、目がくりっとしてて愛嬌があるから、憎めないんだよねえ。弟がいたら、こんな感じかも知れない。

 教室に着くと、仲間の最後のひとりがいちばん後ろの席に突っ伏していた。
 岩崎くんがさっそく近付いて、背中をばんっと叩く。

甲斐かいー朝だぞー起きろー」
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