SMクラブの女王様が悪役令嬢に異世界転生した結果

番外編

悪役令嬢とヒロインは故郷を思う（フライドポテト編）

「んあーMックのポテトが食べたい」

　ふとした拍子に食べたくなってくる。あのカリカリ食感と絶妙な塩加減がいいのよね。

「ヒロイン、あなた……」

　振り返ると、麗しのゼノヴィア様がいらっしゃった。
　ここは殿下の居城なので、ヴィア様がいらっしゃるのは当然か。今日は殿下に許しをいただいて、遊びに来ていたのだ。

「わたくしは、だんぜんSブウェイのポテト派よ」
「ヴィア様はSブウェイですかー。ほくほくしていてあれも美味しいですよね」
「それにオーブンで焼くから、ヘルシーなのよ」
「さすがヴィア様！　美容にもこだわっていらっしゃるんですね」
「ていうか、あなた」
「ヴィア様も」

　互いに顔を見合わせる。

「転生者なの？」
「転生者なんですか？」

　互いに転生者であることが確認出来たら、することと言えばまずは内政だ。

　さっそく厨房に入り、食材や調味料の確認をする。
　日本の乙女ゲームだから、食材も日本とおなじものが多い。

　料理人さんたちが、ヴィア様女主人の登場にあわあわしている横で、ヴィア様は気にもなさらずに厨房内を物色する。

「ゼノヴィア隊長、じゃがいも発見であります！」
「でかしました。さっそく洗いましょう！！」

　料理人見習いの少年といっしょにじゃがいもを、ワラを丸めたたわしのようなもので丸洗い。

「隊長、皮付きで揚げてもよろしいですか！？」
「無農薬でしょうから、泥さえ落ちれば問題ないでしょう」
「承知しました！」

　ヴィア様といっしょにじゃがいもをとんとんとん。ヴィア様、包丁に慣れていらっしゃる。前世はお嫁さんですか？

　油はさすがに使わせてはもらえなかった。

　料理長自らが用意してくれたたっぷりの油の中に、短冊切りしたじゃがいもを投入。
　しばらくすると、揚げたポテトのいい香りが厨房に立ち込める。

　ごくりと喉を鳴らしたのは、わたしだけではあるまい。

「いい匂いです～」
「そうね。食欲がそそられるわ」

　油をきったポテトを、ヴィア様がくださった。

「いただきます」

　うやうやしくちょうだいし、塩をちょっとだけ振りかける。

「揚げたてポテトうまああああっ！！」

　外はカリッ、中身ぽくぽく。ヴィア様も瞳を輝かせ、つぎのポテトを口にしている。ポテト食べるヴィア様もかわいい！！

「また作りましょうね」

　ヴィア様の言葉にわたしは大きくうなずいたのであった。