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本編
8.
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アルバートが深く息を吸い込んだ。
「この馬鹿者がっ!!」
耳がキーンとした。
なぜかものすごい勢いで怒鳴られてしまった。
「わ、わたくしが馬鹿ですって……?」
「ああ、おまえは世界一の大馬鹿だ」
アルバートの手の指が両肩にぎしりと食い込んだ。
「ちょ、いたいわ……っ」
「ヴィア、先ほどの続きだ。互いに不完全燃焼だろう?」
「えっ? わたくし、べつに……」
「オレが中途半端だ。付き合え」
ベッドにどさりと放られた。
「きゃあ!」
なにするの!? わたくし、荷物じゃなくってよ!! ふんがーと力を入れるも、わたくしの上に乗ったアルバートの身体は鉛のように重かった。
「わっ、わたくしに乱暴したら、ゆ、ゆるさないんだからっ!!」
「どう許さないんだ?」
「どうって……」
逡巡していると、ドレスの胸当てに手をかけられ引き裂かれた。ひえっ。
わたくしのむき出しになった肩や乳房に、次々と歯を立てられる。まるで肉食獣になぶられる獲物になった気分よ。
「いたいいたいいたい!!」
いやあ、やめて! 噛むのはよして!! 前世女王様なだけに、わたくし痛みには耐性がないのよー!!
「ゆるして、バート……」
「これまでおまえのすることは、すべて許してきた。今度はおまえが我慢をする番だ」
涙で潤んだ視界にアルバートの姿を映し出せば、興がそがれると手のひらで視界を遮られる。
空いているほうのアルバートの手が、わたくしのスカートの中に入ってきた。
素足を熱い手のひらが撫でてくるけれど、わたくしは官能を感じるどころではない。足を割り開かれ、びくりと震えた。
「ひぐっ!!」
わたくしの中に火のようなかたまりが入ってきた。
背中をそらし、身体中をくすぶる熱を逃すようにはっはっと息を吐いた。
「バート、むりよっ。さけちゃう、いや、こわい」
「無理じゃないだろ。さっきまでヴィアが受け入れていたものだ」
「いたいのはやだぁ、だめっ、いや、あっ、あっ」
灼熱をわたくしに埋め込んだアルバートが、目隠しをしたままわたくしを揺すり始めた。
「ヴィアの肉壺が、オレのに吸い付いてくるぞ。いやらしいな」
「いやっ、いわないで」
マゾではないので言葉で責められても、ひとつも興奮出来ないし、恥ずかしくてたまらないだけ。顔の半分が、殿下の手で隠されていることだけが、唯一の救いだわ。
わたくしの管理から解き放たれたアルバートは、自由を謳歌するように、わたくしの中におびただしい数の種を放ち始めた。
アルバートの子種をどん欲に受け入れる生殖器官にわたくしは戦慄する。
「やめてやめてあかちゃんができちゃう!!」
正直に言えば、好きな人の子を孕めるのはうれしい。けれども、身重の娘を修道院は置いてくれるかしら? もし、子どもが出来てもひとりで養っていけるかしら?
これがアルバート殿下を散々なぶってきた報いなのだとしたらひどすぎる。
「……生めばいい」
「簡単に言わないで。シングルマザーに世間の目は厳しいのよ!!」
わたくしの目をおおっているアルバートの手のひらを払いのけた。
思いのほか近くにアルバートがいて、わたくしは全身をかたくする。
「オレはゼノヴィアに、オレの子を生んでもらいたい」
「え……?」
わたくしは目を見開いた。
どういうこと? アルバートはわたくしを妾にでもしようというの?
「ヴィアはお互い好きな者同士で結ばれることがいちばん自然だと言ったな?」
「……言ったわ」
ヒロインとの幸せを願っているわ。もちろん本心からそう思っているわよ。アルバートには幸せになってほしいもの。
「オレはゼノヴィアが好きだ。ゼノヴィアと添い遂げたい」
「へ?」
なにを言っているの? あなたはヒロインと結ばれるのでしょう?
こんな展開、知らないわ。
だって、ヒロインと数多の攻略対象者たちが結ばれるまでが乙女ゲームだったんだもの。そのあとの物語なんて、想像すらしなかったわ。
「ヴィアもオレが好きだろう?」
殿下の言葉に、わたくしは即座に反応する。
「好きよ!!」
「それでいい」
わたくしの返事に満足したように、アルバートが麗しい笑顔をわたくしに見せた。
わたくし、悪役令嬢なのに王子様と結ばれてもいいの?
バートと幸せになってもいいのね?
幸せすぎて涙が出るわ!!
「ところで、ヒロインとはいったいなんなんだ?」
「バートは気にしなくてもいいの」
あなたが気にしていいのは、わたくしだけよ。
わたくしは手を伸ばし、アルバートの背中に腕を回した。
「あなたの一生を縛ってしまうことになるけれど、それでもいいのね?」
「ヴィアに縛ってもらえるなんて最高だ」
「わたくし、痛いのはいやよ」
「やさしくする」
わたくしは、こうして最高の犬を手に入れたのであった。
「この馬鹿者がっ!!」
耳がキーンとした。
なぜかものすごい勢いで怒鳴られてしまった。
「わ、わたくしが馬鹿ですって……?」
「ああ、おまえは世界一の大馬鹿だ」
アルバートの手の指が両肩にぎしりと食い込んだ。
「ちょ、いたいわ……っ」
「ヴィア、先ほどの続きだ。互いに不完全燃焼だろう?」
「えっ? わたくし、べつに……」
「オレが中途半端だ。付き合え」
ベッドにどさりと放られた。
「きゃあ!」
なにするの!? わたくし、荷物じゃなくってよ!! ふんがーと力を入れるも、わたくしの上に乗ったアルバートの身体は鉛のように重かった。
「わっ、わたくしに乱暴したら、ゆ、ゆるさないんだからっ!!」
「どう許さないんだ?」
「どうって……」
逡巡していると、ドレスの胸当てに手をかけられ引き裂かれた。ひえっ。
わたくしのむき出しになった肩や乳房に、次々と歯を立てられる。まるで肉食獣になぶられる獲物になった気分よ。
「いたいいたいいたい!!」
いやあ、やめて! 噛むのはよして!! 前世女王様なだけに、わたくし痛みには耐性がないのよー!!
「ゆるして、バート……」
「これまでおまえのすることは、すべて許してきた。今度はおまえが我慢をする番だ」
涙で潤んだ視界にアルバートの姿を映し出せば、興がそがれると手のひらで視界を遮られる。
空いているほうのアルバートの手が、わたくしのスカートの中に入ってきた。
素足を熱い手のひらが撫でてくるけれど、わたくしは官能を感じるどころではない。足を割り開かれ、びくりと震えた。
「ひぐっ!!」
わたくしの中に火のようなかたまりが入ってきた。
背中をそらし、身体中をくすぶる熱を逃すようにはっはっと息を吐いた。
「バート、むりよっ。さけちゃう、いや、こわい」
「無理じゃないだろ。さっきまでヴィアが受け入れていたものだ」
「いたいのはやだぁ、だめっ、いや、あっ、あっ」
灼熱をわたくしに埋め込んだアルバートが、目隠しをしたままわたくしを揺すり始めた。
「ヴィアの肉壺が、オレのに吸い付いてくるぞ。いやらしいな」
「いやっ、いわないで」
マゾではないので言葉で責められても、ひとつも興奮出来ないし、恥ずかしくてたまらないだけ。顔の半分が、殿下の手で隠されていることだけが、唯一の救いだわ。
わたくしの管理から解き放たれたアルバートは、自由を謳歌するように、わたくしの中におびただしい数の種を放ち始めた。
アルバートの子種をどん欲に受け入れる生殖器官にわたくしは戦慄する。
「やめてやめてあかちゃんができちゃう!!」
正直に言えば、好きな人の子を孕めるのはうれしい。けれども、身重の娘を修道院は置いてくれるかしら? もし、子どもが出来てもひとりで養っていけるかしら?
これがアルバート殿下を散々なぶってきた報いなのだとしたらひどすぎる。
「……生めばいい」
「簡単に言わないで。シングルマザーに世間の目は厳しいのよ!!」
わたくしの目をおおっているアルバートの手のひらを払いのけた。
思いのほか近くにアルバートがいて、わたくしは全身をかたくする。
「オレはゼノヴィアに、オレの子を生んでもらいたい」
「え……?」
わたくしは目を見開いた。
どういうこと? アルバートはわたくしを妾にでもしようというの?
「ヴィアはお互い好きな者同士で結ばれることがいちばん自然だと言ったな?」
「……言ったわ」
ヒロインとの幸せを願っているわ。もちろん本心からそう思っているわよ。アルバートには幸せになってほしいもの。
「オレはゼノヴィアが好きだ。ゼノヴィアと添い遂げたい」
「へ?」
なにを言っているの? あなたはヒロインと結ばれるのでしょう?
こんな展開、知らないわ。
だって、ヒロインと数多の攻略対象者たちが結ばれるまでが乙女ゲームだったんだもの。そのあとの物語なんて、想像すらしなかったわ。
「ヴィアもオレが好きだろう?」
殿下の言葉に、わたくしは即座に反応する。
「好きよ!!」
「それでいい」
わたくしの返事に満足したように、アルバートが麗しい笑顔をわたくしに見せた。
わたくし、悪役令嬢なのに王子様と結ばれてもいいの?
バートと幸せになってもいいのね?
幸せすぎて涙が出るわ!!
「ところで、ヒロインとはいったいなんなんだ?」
「バートは気にしなくてもいいの」
あなたが気にしていいのは、わたくしだけよ。
わたくしは手を伸ばし、アルバートの背中に腕を回した。
「あなたの一生を縛ってしまうことになるけれど、それでもいいのね?」
「ヴィアに縛ってもらえるなんて最高だ」
「わたくし、痛いのはいやよ」
「やさしくする」
わたくしは、こうして最高の犬を手に入れたのであった。
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