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本編

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 ぐっと荒縄を引き絞れば、縛った相手が抗議の声をあげた。

「___ゼノヴィア、痛いぞ」
「痛くしているのです」

 染みひとつない肌をキャンバスに、縄で結ばれた均等な六角形。
 いわゆる亀甲縛りの状態で床に転がる男を、わたくしはうっとりと眺める。

 前世はSMクラブの女王様だった。
 数あるSMプレイの中でもとくに緊縛プレイが得意で、マゾヒストなM男どもを日々縛っていたわ。

 今世では残念ながら、わたくしに付き合ってくれるM男は見つからなかったけれども、マゾでもないのになぜか付き合ってくれる奇特な人間はいた。

 今、全裸で転がっている男がそれである。
 この国の第二王子で、わたくしの10年来の婚約者。名をアルバートと言う。

「おい、さすがに寒いんだが……。せめて、おまえのベッドに上げてくれ」
「イヤよ。シーツが汚れるじゃない」
「おまえって、ほんと勝手だな。婚約者のオレくらいしか、おまえのワガママに付き合える人間はいないんじゃないか?」
「おだまり!!」

 ___元女王様に口ごたえするなんて、許さなくってよ!!

 口で言ってもわからない犬には、身体でわからせるしかない。

 わたくしは殿下を教育するためにヒールをぽいっと脱ぎ捨て、殿下の中心にぶら下がっているイチモツを足で踏みつけた。

「んあっ、くぅっ……この……ッ」

 ぎゅむぎゅむと股間を踏みつけると、若い雄はたちまちかたくなる。先端からこぼれる汁を肉の棒にこすり付け、足の指でしごき上げれば、腹にくっつくかと思うほど立ち上がった。

「相変わらず、こらえ性のない犬だこと!」
「あっ、あっ、ヴィア!!」
「こら! なにを勝手にイこうとしているの!?」

 上半身と足首を縛られている殿下が、唯一自由のきく腰を使って、わたくしの足に肉の棒を擦り付けてきた。

「しつけの悪い犬にはこうよ!」

 わたくしは髪を結わえていたリボンを解くと、フル勃起している肉の棒を根元から縛り上げた。

「ぁぐっ、うぅ……!!」

 苦悶の声をあげた殿下が麗しい顔を苦痛に歪ませ、わたくしを憎々しげに見上げる。
 腰のあたりがぞくんっとしたけれど、わたくしマゾじゃないわ元女王様よ!!

 そのまま縛られてうっ血した肉の棒をじかにさわる。

 熱くてかたいわ。さすがは10代の肉の棒だわね。前世、相手をしてきた中年M男どものモノとはちがう。
 わたくしは中身のたっぷり詰まった袋を転がしながら、肉の棒を乱暴にしごいてやった。

「う、ぐっ……ヴィア……っ」

 おーほほほ。イきたくてもイけないのは、ツライでしょう? これにこりたら、わたくしへの態度をあらためることね!!

 ◆

 幼き日、婚約者であるアルバート殿下と引き合わされた瞬間、この世界が前世でプレイしていた乙女ゲームの世界であることに気が付いた。

 殿下に名を呼ばれたときは絶望したわ。

 殿下ルートで断罪される悪役令嬢の名前が、わたくしとおなじ『ゼノヴィア』という名前だったんですもの。
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