マシュマロ系令嬢は悪役令嬢にはなれない

きみいち

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マシュマロ系令嬢と婚約者

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 学生食堂で婚約者といっしょにランチを食べていれば、食堂に甲高い声が響き渡った。

「マリィ、見つけたわよ!」

 マリアベルが振り返ると、とりまきたちを引き連れたリリーティアがやって来た。

「リリーティアさん、騒々しいですわよ」
「そういうのいいから、シモン様を紹介してよ」
「某オリバー様とやらにご紹介いただいたのでは?」
「アイツ、使えないのよ。なんかシモン様に絶縁食らったとか言ってさあ」

 そうなんですの、と呟いて、マリアベルは何食わぬ顔で食事を進めている婚約者へと視線を戻す。

「ほら、マリィ。食べてないで早く紹介して!」

 肩を扇子で小突かれ、アイタタタと顔をしかめる。
 ガタ、と目の前の椅子が鳴った。

「私の婚約者に乱暴はやめてもらおう」
「な、なによ! マリィもおおげさよ。そんなぷよぷよしたお肉のかたまりのくせに、ちょっと突いたくらいで痛がるなんてさ」
「リリーティアさんの扇子が、ちょうどお肉の薄い部分に当たったんです」

 マリアベルが痛みにひりひりする部分を撫でていると、エマが水で濡らした冷たいタオルを持って来て肩に当ててくれる。

「リリーティア・リクールだったか。貴様の素行は目に余る。2、3日、反省房にでも入ってくるといい」
「えっ、ちょっ!?」

 冷たく言い放つ婚約者の言葉に、どこからともなく衛兵が現れた。
 衛兵たちは、リリーティアやとりまきたちの両腕をつかむとどこぞに運んでいった。

 婚約者の手際の良さに、ぽかーんとしているのはマリアベルだけではない。

「これで、私とベルの貴重な時間を邪魔するものはいなくなったな」

 晴れ晴れと笑う婚約者にマリアベルは笑みを返した。

「シモン様、ありがとうございます」

 リリーティアが反省房から出て来るまでの間、マリアベルは婚約者との時間をゆっくり楽しむのであった。
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