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第19話 パパとマコの共通点
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イルのおうちに巣くいかけた害虫駆除については、パパ指揮のもと、無事に完了したが、肝心の借金返済が片付いたわけではなかったため、パパが主導で洗い出しを行った。
パパはケインと話をするために、二人テーブルにつく。マコも傍らにチョコンと座る。ママはお茶の用意を始め、イルはそれを手伝うためにママについていった。おやつの準備もあるらしい。
リストアップした収支内容と、一族の他の遺族の状況を確認したあと、今後の対応について意思確認を行った。
「じゃあ、何にせよ、証拠品として、借金関連の証書や収入支出諸々の書類提出は必要となるから、ケインはその準備をしてほしい。裁判となるか示談となるかは、今後の流れによるけど、警察に確認を入れた上で、弁護士に丸投げしようと思う。それでいいかな?」
「はい。それで大丈夫です。よろしくお願いします」
「了解。それが終わったら、日本に行くから、その準備を進めてくれる?」
「えっ? 日本に連れて行ってくださるの? ジンさん」
「あれっ? あぁ、そういえば、ちゃんと返事を聞いてなかった気がするし、説明も不十分だったような……」
「もしかして、一緒に暮らす、というお話ですか?」
「そう」
「そ、そうですよね。実は少し不安に思ってました。いつまでとか、私の立ち位置とか、どうなるのかな~? って。今のパートのお仕事もあるし、私自身の見た目、髪もそうですけど、同じ私なのに、もう全然別人だから、聞かれたらなんて説明しよう、とか、たぶん、変に詮索されるのは、皆さんにも迷惑をかけてしまう可能性もあるかな、とか」
「あぁ、そうだよね。まず、暮らす、という部分では、強要するつもりはまったくないんだ。暮らしは別にしたいとか、何か他の目的があって別の場所に行かなくてはならないとか、再婚予定があるとかの理由があるなら、遠慮なく言って欲しい。ただ、ウチの親子は、ケインもイルも大好きで、とっくに家族だと思っているんだ。実際にも親戚だし、みんなでお風呂に入れるくらい仲良しでしょう? もうかけがえのない存在だよね。だからひとつの家族として暮らしていきたいと思ってる」
ケインの眼、頬が小刻みに震える。
「な、何度も聞いたし、今さらだけど、何でそんなに優しくしてくれるのよぉ? ダメ、込み上げてきて……止まらない……うぅ……」
ポトッ、ポトポトッ。ケインの足元に雫が落ちる。
ジンは慌てて言葉を足す。
「わわわっ、ごめん。そんなつもりじゃ……。でも家族なんだから、無条件にずっと一緒にいて良いし、もしも再婚したり仕事かなにかで遠くに行ったとしても、いつでも好きなときに帰って来れる場所になれるといいな、と思ってる。そう、絆? 縛り付けるわけでもなく結ばれた繋がり? そんな関係でいいんじゃないかな? だから、何もなければずっと一緒に暮らしていきたい。いいかな?」
ボトボトボトッ。大粒の涙が溢れ、零れ落ちる。
「うぅぅ……、どうしてそこまで……」
ハッと何かに気が付いたようなケイン。
「ううん、ジンさんもソフィアもマコトちゃんも、みんなそういう人たちなのよね。これほどの尊さを前にして、恐縮してしまうほうがよっぽど失礼だわ。ありがたくご好意に沿わせていただくことにします。わたしもみんなが大好き! 本当の家族以上に愛してる。だから、これからはわがままも言うし、たぶんたくさん困らせるわよ! 覚悟してね、ジンさん?」
「おぅ! どんとこい。あっ、でも少しお手柔らかにね?」
「アハハハ、後半が余計だったね。すごくかっこよかったのに」
「ええ? しまったぁ! 時間魔法。時よ戻れ!」
「え? そんなこともできるの?」
「なんちゃって。ウソ。そんなのできるわけがないよね?」
「フフフ、そうよね。ありがとう。おかげで気持ちも落ち着いたわ。話戻るけど、ふつうはいくら願っても決して叶うことのない、それほどに他人との壁の隔たりは遠いものよ。だから一族をいっぺんに失ってしまった3年前のあの日から、誰にも頼れない生活が始まり自分で背負い込むしかなく、その結果が過労死で危うくイルを一人ぼっちにするところだった。わたしは良かったの。もう人生の何分の一かは生きたし、死んだとしてもそれはわたしが選択した結果なのだから。でもイルは違う。まだこれからなの。まだ何にも選択させてあげられてない。あのままわたしが死んでいたら、そんなひどい人生しか開いてあげられなかったことになってたわ。改めて、救いの手を差し伸べてくれてありがとう。うぅ、また涙腺が崩壊しそう……、くっ、堪えるわ。泣いてばかりいられないもの。うん、よし、大丈夫。えーと、わたしはみんなと一緒に暮らしたい。イルもきっとそうよ。それでわたしはどうすればいいのかしら? 今の仕事を継続して家計に入れればいいのかしら?」
「わかった。家族として、一緒に暮らしてくれるんだね?」
「はい、よろしくお願いしますね」
「で、仕事の件だけど、特に家計に入れることは考えなくても大丈夫。もしやるなら自分のためだけを考えて仕事してもらっていいよ? ただね、今の仕事は辞めて欲しいんだ。さっき日本に行くって言ったのは、遊びに行くのではなくて、お引っ越し、移住するんだ。それが嫌ならこちらに残ってもらってもかまわないけど、どう? 日本で暮らしてみない?」
「えぇーっ! 日本に住めるなんて、そそ、そんな夢のようなこと。うぅーっ、行く! 行きたい! 連れてって!」
「わかった。それなら仕事を辞める手続きを進めることと、例の小口の借金をリスト化して、全部きれいにすること。これらは直ぐにかかって欲しい。それとイルの転校? の手続き。こちらは日程が決まってからになるけど、必要な手続きを押さえておいて? あとパスポート。なければ作る必要があるし、時間掛かるかもだから、早めに進めて欲しい。後は荷物の整理かな? 特に思い入れがないなら全部引き払いたいけど、大丈夫かな? あと、そうだな? 起つ日までにお墓参りはしたほうが良いかもね」
「ゎゎゎ、忙しくなるわね」
「そうだね。あっ、あと肝心なことなんだけど、ケインもイルも、髪色と眼の色が変わったのをなんとかしないといけないな。妙な詮索を受けたくないから、できれば他の誰かに会わずに済ませられればいいけど、すべてがそうはいかないよね。好奇な目で見られることもイヤだけど、不幸な歴史を繰り返さないためにも、魔女に繋がる情報や痕跡は、誰にも気取られてはならないんだ。キチンと理解できないと思うけど、これだけは絶対条件。あっ、あーーっ、そうだ。パスポート! ケインはパスポート持ってる?」
「はい? あるけど、期限切れてますね」
「うーーん。あぁ、どちらにしてもパスポートが黒髪じゃまずいか。じゃあ、明日からケインとイルとマコトは魔力行使の猛特訓だ。うん、仕方ないね。ちょうどいいから、ケインもイルも急病で休職、休学するしかないかな?」
「パスポートは黒髪ではまずいのですか?」
「いや、黒髪でもかまわないけど、出入国のたびに黒髪じゃないといけなくなるし、その変化を誰かに見られる可能性が高まるから危険性もグッと上がってしまうことになるからね。普段の髪色はオリジナルのほうがいいでしょ?」
「それもそうですね。わかりました。特訓をがんばれば髪色を戻せるのですね?」
「そういうことだね。ケイン、借金整理と直近の動きに関してはひとまず以上かな? いろいろと恥ずかしいことも聞いたと思う。済まなかったね」
「いえ。やましいことは一つもないし、唯一の汚点ともいえるサラ金の件、既に私以上にご存知のようでしたから、いまさらな感じです。だから大丈夫ですよ? 恥ずかしいことというなら、裸ですら、親子揃って、もう身体の隅々まで見られちゃってるじゃないですか? 私もイルも、みなさんには全幅の信頼しかないわ」
すべてをさらけ出してもかまわない旨を告げるケイン。清々しいね。うん、そだね、みんなでお風呂に入れる仲だし、ママなんて癒しのときに身体の内側までまさぐってたくらいだもんね。そこら辺の家族よりもずっと親密度は高いよね? ん? どうしたの? なぜか慌てまくり赤面するパパ。
「ちょ、ちょっと待った、、まま間違ってはいないけど、ひひ人聞き、とというか、はは恥ずかしすぎるよ、その言い方。そそれに、おお、思い起こしちゃうでしょ」
「うふふ、その狼狽え方。ジンさん可愛い。それに思い起こしてくれたのね? 恥ずかしいわ。けど、嬉しい。ずっと忘れないで欲しいな」
あぁ、ケインの裸をパパは想像してたのか。あれっ? でもふつうにお風呂に入れる間柄なのに、んん?
「なんでパパはそんなに焦ってるの? まだケインの裸にドキドキしてるの? そりゃあ、ケインの裸は綺麗だったけどね」
テンパり気味のパパはマコの横槍にさらに意表を突かれたみたい。
「え? あ…」
ケインがハッとして、取り繕うようにパパの言葉を遮り説明を始める。
「ああ、マ、マコちゃん? 違うのよ。ジンさん、からかうと面白いってソフィアに聞いてたから、ちょっと意地悪してみたの。だってジンさんのキスはとても気持ち良すぎて、私の顔もすごく間抜けな顔になってたと思うのよ。そんな間抜け面の緩んで大きく開いた鼻の穴の奥の奥まで見られちゃったのね。大人の女性としては、鼻の中を覗かれるのって、けっこう恥ずかしいものなのよ」
なぜかそんなケインの言葉にパパは落ち着きを取り戻していた。
「そういうものなの?」
「そうよぉ。ゴニョゴニョとかゴニョゴニョとか、見られるのはとても恥ずかしいわよ。もちろん手入れはしてるけれど、けっこう頻繁なチェックが必要で、うっかり疎かになることもあるわ。家族ならいざ知らず、ふつうは女性のそんなところまで他の誰かに見られることはないでしょ?」
「うん」
「だから、私たちはそれほどに親密なのよ? って、そんな意味で言って、ジンさんもそのことはわかっているけれど、そんな言葉を他人に聞かれる状況を想像したみたい。他人からすれば、夫婦でもないのに怪しい、って誰かに想像されるのはちょっと恥ずかしいらしいの。私はジンさん大好きだもの。ご近所で噂になるなら、それはそれで嬉しいものよ。でもジンさんにはソフィアがいるし、仕事をしているから、あっちこっちで噂になるのは相当に恥ずかしいことよ?」
「うん、そうだよね、噂になるのは恥ずかしいよね。うん、想像できる」
「だから不意を突かれたジンさんのあの慌て振り。想像してたより面白かったわね。そんなことより、マコちゃん。私の裸、そんなに綺麗だった? 私は今、このナイスバディなことが嬉しくて仕方ないの。マコちゃんの感想、聞きたいなぁ」
「ケインのボディはとっても素敵。特に胸の形がきれいだなってイルとも話してたの。オマケにその肌の質感。吸付くような、ってこういうのを言うのかなって思ったの。罪作りだよね、とも。マコもそんな胸になりたいなぁ」
「大丈夫よぉ、だってソフィアの胸、大きくて素敵よ?」
「そうだといいんだけど、マコはハーフでしょ?」
パパをチラリと見やるマコ。
「あっ! あぁ~、そ、そうねぇ。私も神様にお願いしておくわね」
「こ、こほん。まぁ、体つきはママ寄りだと思うから心配要らないんじゃないか?」
「え? パパ、どうしてそう思うの?」
「え? あぁ、マコトは日本にいたときの同い年の子たちを覚えているか?」
マコは日本での生活を回想してみる。
「うん、みんな大体だけど」
「あの子たちがふつうの日本人の幼児体型。マコトはもちろん幼いけれど、身体のパーツはシュッとしてて、手足もちょっと長くて、やっぱり北欧か魔女のママの血の濃さを強く感じるからね。それに外見的にはオレの要素はあんまり感じられなくて、ママに似ているそんな可愛いマコトが嬉しくもあり、同時に寂しくもある」
「あぁ、そうよね。ソフィアをちっちゃくした感じで瓜二つよね? とっても可愛らしいわ。でも物言いの節々から理詰めな思考回路っぽさを感じるのはジンさんの血なのかしら?」
「あぁ、やっぱりそう思う? そっかそっかぁ。たぶんいい感じにハイブリッド?」
何気に嬉しそうなパパ。
「パパとマコの共通点を探してるの? あぁ、マコのパパに似たところって、一つはっきりしたのがあるよ」
「え? どんなところ?」
「黒いところ? 悪だくみ? えーと、ケインとイルを苦しめる輩にどうやったら懲らしめられるかを考えたりするところ? パパみたいにスマートな策は思いつけてないけど、そこに思考を凝らそうとするところ? こてんぱんにやっつけられたときの喜び? そういうグフフなところ?」
「あー、そういえばマコト、やたら撃ちたがってたなぁ。何も制約がなければパパも同じ気持ちだったけど、そういうところが共通点なんだな。本当は可愛い娘を危険な目にはあわせたくないから、気持ちも微妙だよ」
「うん、心配してくれてるのはわかってるし嬉しい。でも今言っていることはちょっと違ってて、さっき言ったこともちょっと言い間違えている気がするから、言い換えるね?」
「お、おぉ」
「えーと、なんやかんや言っても、パパは無駄に争うことはしないで、できれば平和的な解決を望むでしょ? それでも争わなくてはならなくなったときも、できるだけ誰も傷付かない方法、できるだけ早く効率良く解決するための方法を考えるでしょ? その上で相手が悪なら、もう悪ささせないために徹底的に懲らしめようとするでしょ? しかも闘わなくてはならないときも絶対に負けないのは当然で、如何に効率良く、それもできれば楽しめる方法を選択するでしょ? そう、そういうところ。どうすれば勝てるかではなくては、如何に楽しむか、みたいな。もう戦術の天才だと思うし、もうとっくにマコは感化されちゃってるのかもしれないけど、パパのようになりたい。だからそういう志向性が共通点。それにその考え方は可能な限り争いや危険を回避する方向性なのだから、結果的にはマコ自身の安全にも繋がるわけでしょ?」
「あぁ、そうだな。それにしてもパパの動向をよく見ているなぁ。ありがとう。パパのやることを理解したうえで、同じ方向を目指したいと言ってくれているのか。嬉しいな。パパ冥利に尽きるよ」
「だってパパはホントにスゴいもん。パパがパパじゃないなら結婚して欲しいくらいだよ」
「う、パ、パパを持ち上げすぎだよ。今日は何の日だっけ? あぁ、涙が出そう。パパもマコトに出会えて幸せだな」
「マコはママやケインみたいな胸になれたらいいなって思っているのは本当だけど、最悪は不幸ではないくらい、そこそこの大きさがあればいいよ。もしも大きくなくても、そのときは日本人であるパパの血筋を濃く受け継いだことを誇りに思いたい。でもパパのその希有な能力、なんとか受け継げるといいなぁ、っと思ってる。パパぁ、マコにその可能性はあるかなぁ?」
「あるとも。というか、既にその領分を発揮し始めているだろ? マコトはパパとママの極上のハイブリッド。それもパパ+ママどころか、おそらくパパ×ママ、それくらいの資質の掛け合わせだと思ってる。パパなんて軽々と置き去りにするくらいすごいマコトになると思ってる」
「えぇー! そんなにすごいはずはないよ。いつもパパにできることがマコにはできなくて、そんなできない自分が歯痒いくらいだもん」
「そりゃあ、まだ5歳だからな。パパもさすがに5歳児には負けてらんないよ。でも5歳児なのにそのすごさは異常なくらいだよ。まぁ、これからがすごく楽しみだし、パパが教えられることは全部叩き込むから心配するな」
「うん。わかった。マコ頑張るよ」
「あらあら、親子が仲良しで良いわねぇ? うんうん。でもマコちゃんってやっぱりすごい子なのね? イルのことも仲良くしてあげてね?」
「マコのほうこそだよ、ケイン。今までもこれからもイルとはずっと仲好しだよ? それにイルのほうがずっとすごい子なんだよ?」
パパはケインと話をするために、二人テーブルにつく。マコも傍らにチョコンと座る。ママはお茶の用意を始め、イルはそれを手伝うためにママについていった。おやつの準備もあるらしい。
リストアップした収支内容と、一族の他の遺族の状況を確認したあと、今後の対応について意思確認を行った。
「じゃあ、何にせよ、証拠品として、借金関連の証書や収入支出諸々の書類提出は必要となるから、ケインはその準備をしてほしい。裁判となるか示談となるかは、今後の流れによるけど、警察に確認を入れた上で、弁護士に丸投げしようと思う。それでいいかな?」
「はい。それで大丈夫です。よろしくお願いします」
「了解。それが終わったら、日本に行くから、その準備を進めてくれる?」
「えっ? 日本に連れて行ってくださるの? ジンさん」
「あれっ? あぁ、そういえば、ちゃんと返事を聞いてなかった気がするし、説明も不十分だったような……」
「もしかして、一緒に暮らす、というお話ですか?」
「そう」
「そ、そうですよね。実は少し不安に思ってました。いつまでとか、私の立ち位置とか、どうなるのかな~? って。今のパートのお仕事もあるし、私自身の見た目、髪もそうですけど、同じ私なのに、もう全然別人だから、聞かれたらなんて説明しよう、とか、たぶん、変に詮索されるのは、皆さんにも迷惑をかけてしまう可能性もあるかな、とか」
「あぁ、そうだよね。まず、暮らす、という部分では、強要するつもりはまったくないんだ。暮らしは別にしたいとか、何か他の目的があって別の場所に行かなくてはならないとか、再婚予定があるとかの理由があるなら、遠慮なく言って欲しい。ただ、ウチの親子は、ケインもイルも大好きで、とっくに家族だと思っているんだ。実際にも親戚だし、みんなでお風呂に入れるくらい仲良しでしょう? もうかけがえのない存在だよね。だからひとつの家族として暮らしていきたいと思ってる」
ケインの眼、頬が小刻みに震える。
「な、何度も聞いたし、今さらだけど、何でそんなに優しくしてくれるのよぉ? ダメ、込み上げてきて……止まらない……うぅ……」
ポトッ、ポトポトッ。ケインの足元に雫が落ちる。
ジンは慌てて言葉を足す。
「わわわっ、ごめん。そんなつもりじゃ……。でも家族なんだから、無条件にずっと一緒にいて良いし、もしも再婚したり仕事かなにかで遠くに行ったとしても、いつでも好きなときに帰って来れる場所になれるといいな、と思ってる。そう、絆? 縛り付けるわけでもなく結ばれた繋がり? そんな関係でいいんじゃないかな? だから、何もなければずっと一緒に暮らしていきたい。いいかな?」
ボトボトボトッ。大粒の涙が溢れ、零れ落ちる。
「うぅぅ……、どうしてそこまで……」
ハッと何かに気が付いたようなケイン。
「ううん、ジンさんもソフィアもマコトちゃんも、みんなそういう人たちなのよね。これほどの尊さを前にして、恐縮してしまうほうがよっぽど失礼だわ。ありがたくご好意に沿わせていただくことにします。わたしもみんなが大好き! 本当の家族以上に愛してる。だから、これからはわがままも言うし、たぶんたくさん困らせるわよ! 覚悟してね、ジンさん?」
「おぅ! どんとこい。あっ、でも少しお手柔らかにね?」
「アハハハ、後半が余計だったね。すごくかっこよかったのに」
「ええ? しまったぁ! 時間魔法。時よ戻れ!」
「え? そんなこともできるの?」
「なんちゃって。ウソ。そんなのできるわけがないよね?」
「フフフ、そうよね。ありがとう。おかげで気持ちも落ち着いたわ。話戻るけど、ふつうはいくら願っても決して叶うことのない、それほどに他人との壁の隔たりは遠いものよ。だから一族をいっぺんに失ってしまった3年前のあの日から、誰にも頼れない生活が始まり自分で背負い込むしかなく、その結果が過労死で危うくイルを一人ぼっちにするところだった。わたしは良かったの。もう人生の何分の一かは生きたし、死んだとしてもそれはわたしが選択した結果なのだから。でもイルは違う。まだこれからなの。まだ何にも選択させてあげられてない。あのままわたしが死んでいたら、そんなひどい人生しか開いてあげられなかったことになってたわ。改めて、救いの手を差し伸べてくれてありがとう。うぅ、また涙腺が崩壊しそう……、くっ、堪えるわ。泣いてばかりいられないもの。うん、よし、大丈夫。えーと、わたしはみんなと一緒に暮らしたい。イルもきっとそうよ。それでわたしはどうすればいいのかしら? 今の仕事を継続して家計に入れればいいのかしら?」
「わかった。家族として、一緒に暮らしてくれるんだね?」
「はい、よろしくお願いしますね」
「で、仕事の件だけど、特に家計に入れることは考えなくても大丈夫。もしやるなら自分のためだけを考えて仕事してもらっていいよ? ただね、今の仕事は辞めて欲しいんだ。さっき日本に行くって言ったのは、遊びに行くのではなくて、お引っ越し、移住するんだ。それが嫌ならこちらに残ってもらってもかまわないけど、どう? 日本で暮らしてみない?」
「えぇーっ! 日本に住めるなんて、そそ、そんな夢のようなこと。うぅーっ、行く! 行きたい! 連れてって!」
「わかった。それなら仕事を辞める手続きを進めることと、例の小口の借金をリスト化して、全部きれいにすること。これらは直ぐにかかって欲しい。それとイルの転校? の手続き。こちらは日程が決まってからになるけど、必要な手続きを押さえておいて? あとパスポート。なければ作る必要があるし、時間掛かるかもだから、早めに進めて欲しい。後は荷物の整理かな? 特に思い入れがないなら全部引き払いたいけど、大丈夫かな? あと、そうだな? 起つ日までにお墓参りはしたほうが良いかもね」
「ゎゎゎ、忙しくなるわね」
「そうだね。あっ、あと肝心なことなんだけど、ケインもイルも、髪色と眼の色が変わったのをなんとかしないといけないな。妙な詮索を受けたくないから、できれば他の誰かに会わずに済ませられればいいけど、すべてがそうはいかないよね。好奇な目で見られることもイヤだけど、不幸な歴史を繰り返さないためにも、魔女に繋がる情報や痕跡は、誰にも気取られてはならないんだ。キチンと理解できないと思うけど、これだけは絶対条件。あっ、あーーっ、そうだ。パスポート! ケインはパスポート持ってる?」
「はい? あるけど、期限切れてますね」
「うーーん。あぁ、どちらにしてもパスポートが黒髪じゃまずいか。じゃあ、明日からケインとイルとマコトは魔力行使の猛特訓だ。うん、仕方ないね。ちょうどいいから、ケインもイルも急病で休職、休学するしかないかな?」
「パスポートは黒髪ではまずいのですか?」
「いや、黒髪でもかまわないけど、出入国のたびに黒髪じゃないといけなくなるし、その変化を誰かに見られる可能性が高まるから危険性もグッと上がってしまうことになるからね。普段の髪色はオリジナルのほうがいいでしょ?」
「それもそうですね。わかりました。特訓をがんばれば髪色を戻せるのですね?」
「そういうことだね。ケイン、借金整理と直近の動きに関してはひとまず以上かな? いろいろと恥ずかしいことも聞いたと思う。済まなかったね」
「いえ。やましいことは一つもないし、唯一の汚点ともいえるサラ金の件、既に私以上にご存知のようでしたから、いまさらな感じです。だから大丈夫ですよ? 恥ずかしいことというなら、裸ですら、親子揃って、もう身体の隅々まで見られちゃってるじゃないですか? 私もイルも、みなさんには全幅の信頼しかないわ」
すべてをさらけ出してもかまわない旨を告げるケイン。清々しいね。うん、そだね、みんなでお風呂に入れる仲だし、ママなんて癒しのときに身体の内側までまさぐってたくらいだもんね。そこら辺の家族よりもずっと親密度は高いよね? ん? どうしたの? なぜか慌てまくり赤面するパパ。
「ちょ、ちょっと待った、、まま間違ってはいないけど、ひひ人聞き、とというか、はは恥ずかしすぎるよ、その言い方。そそれに、おお、思い起こしちゃうでしょ」
「うふふ、その狼狽え方。ジンさん可愛い。それに思い起こしてくれたのね? 恥ずかしいわ。けど、嬉しい。ずっと忘れないで欲しいな」
あぁ、ケインの裸をパパは想像してたのか。あれっ? でもふつうにお風呂に入れる間柄なのに、んん?
「なんでパパはそんなに焦ってるの? まだケインの裸にドキドキしてるの? そりゃあ、ケインの裸は綺麗だったけどね」
テンパり気味のパパはマコの横槍にさらに意表を突かれたみたい。
「え? あ…」
ケインがハッとして、取り繕うようにパパの言葉を遮り説明を始める。
「ああ、マ、マコちゃん? 違うのよ。ジンさん、からかうと面白いってソフィアに聞いてたから、ちょっと意地悪してみたの。だってジンさんのキスはとても気持ち良すぎて、私の顔もすごく間抜けな顔になってたと思うのよ。そんな間抜け面の緩んで大きく開いた鼻の穴の奥の奥まで見られちゃったのね。大人の女性としては、鼻の中を覗かれるのって、けっこう恥ずかしいものなのよ」
なぜかそんなケインの言葉にパパは落ち着きを取り戻していた。
「そういうものなの?」
「そうよぉ。ゴニョゴニョとかゴニョゴニョとか、見られるのはとても恥ずかしいわよ。もちろん手入れはしてるけれど、けっこう頻繁なチェックが必要で、うっかり疎かになることもあるわ。家族ならいざ知らず、ふつうは女性のそんなところまで他の誰かに見られることはないでしょ?」
「うん」
「だから、私たちはそれほどに親密なのよ? って、そんな意味で言って、ジンさんもそのことはわかっているけれど、そんな言葉を他人に聞かれる状況を想像したみたい。他人からすれば、夫婦でもないのに怪しい、って誰かに想像されるのはちょっと恥ずかしいらしいの。私はジンさん大好きだもの。ご近所で噂になるなら、それはそれで嬉しいものよ。でもジンさんにはソフィアがいるし、仕事をしているから、あっちこっちで噂になるのは相当に恥ずかしいことよ?」
「うん、そうだよね、噂になるのは恥ずかしいよね。うん、想像できる」
「だから不意を突かれたジンさんのあの慌て振り。想像してたより面白かったわね。そんなことより、マコちゃん。私の裸、そんなに綺麗だった? 私は今、このナイスバディなことが嬉しくて仕方ないの。マコちゃんの感想、聞きたいなぁ」
「ケインのボディはとっても素敵。特に胸の形がきれいだなってイルとも話してたの。オマケにその肌の質感。吸付くような、ってこういうのを言うのかなって思ったの。罪作りだよね、とも。マコもそんな胸になりたいなぁ」
「大丈夫よぉ、だってソフィアの胸、大きくて素敵よ?」
「そうだといいんだけど、マコはハーフでしょ?」
パパをチラリと見やるマコ。
「あっ! あぁ~、そ、そうねぇ。私も神様にお願いしておくわね」
「こ、こほん。まぁ、体つきはママ寄りだと思うから心配要らないんじゃないか?」
「え? パパ、どうしてそう思うの?」
「え? あぁ、マコトは日本にいたときの同い年の子たちを覚えているか?」
マコは日本での生活を回想してみる。
「うん、みんな大体だけど」
「あの子たちがふつうの日本人の幼児体型。マコトはもちろん幼いけれど、身体のパーツはシュッとしてて、手足もちょっと長くて、やっぱり北欧か魔女のママの血の濃さを強く感じるからね。それに外見的にはオレの要素はあんまり感じられなくて、ママに似ているそんな可愛いマコトが嬉しくもあり、同時に寂しくもある」
「あぁ、そうよね。ソフィアをちっちゃくした感じで瓜二つよね? とっても可愛らしいわ。でも物言いの節々から理詰めな思考回路っぽさを感じるのはジンさんの血なのかしら?」
「あぁ、やっぱりそう思う? そっかそっかぁ。たぶんいい感じにハイブリッド?」
何気に嬉しそうなパパ。
「パパとマコの共通点を探してるの? あぁ、マコのパパに似たところって、一つはっきりしたのがあるよ」
「え? どんなところ?」
「黒いところ? 悪だくみ? えーと、ケインとイルを苦しめる輩にどうやったら懲らしめられるかを考えたりするところ? パパみたいにスマートな策は思いつけてないけど、そこに思考を凝らそうとするところ? こてんぱんにやっつけられたときの喜び? そういうグフフなところ?」
「あー、そういえばマコト、やたら撃ちたがってたなぁ。何も制約がなければパパも同じ気持ちだったけど、そういうところが共通点なんだな。本当は可愛い娘を危険な目にはあわせたくないから、気持ちも微妙だよ」
「うん、心配してくれてるのはわかってるし嬉しい。でも今言っていることはちょっと違ってて、さっき言ったこともちょっと言い間違えている気がするから、言い換えるね?」
「お、おぉ」
「えーと、なんやかんや言っても、パパは無駄に争うことはしないで、できれば平和的な解決を望むでしょ? それでも争わなくてはならなくなったときも、できるだけ誰も傷付かない方法、できるだけ早く効率良く解決するための方法を考えるでしょ? その上で相手が悪なら、もう悪ささせないために徹底的に懲らしめようとするでしょ? しかも闘わなくてはならないときも絶対に負けないのは当然で、如何に効率良く、それもできれば楽しめる方法を選択するでしょ? そう、そういうところ。どうすれば勝てるかではなくては、如何に楽しむか、みたいな。もう戦術の天才だと思うし、もうとっくにマコは感化されちゃってるのかもしれないけど、パパのようになりたい。だからそういう志向性が共通点。それにその考え方は可能な限り争いや危険を回避する方向性なのだから、結果的にはマコ自身の安全にも繋がるわけでしょ?」
「あぁ、そうだな。それにしてもパパの動向をよく見ているなぁ。ありがとう。パパのやることを理解したうえで、同じ方向を目指したいと言ってくれているのか。嬉しいな。パパ冥利に尽きるよ」
「だってパパはホントにスゴいもん。パパがパパじゃないなら結婚して欲しいくらいだよ」
「う、パ、パパを持ち上げすぎだよ。今日は何の日だっけ? あぁ、涙が出そう。パパもマコトに出会えて幸せだな」
「マコはママやケインみたいな胸になれたらいいなって思っているのは本当だけど、最悪は不幸ではないくらい、そこそこの大きさがあればいいよ。もしも大きくなくても、そのときは日本人であるパパの血筋を濃く受け継いだことを誇りに思いたい。でもパパのその希有な能力、なんとか受け継げるといいなぁ、っと思ってる。パパぁ、マコにその可能性はあるかなぁ?」
「あるとも。というか、既にその領分を発揮し始めているだろ? マコトはパパとママの極上のハイブリッド。それもパパ+ママどころか、おそらくパパ×ママ、それくらいの資質の掛け合わせだと思ってる。パパなんて軽々と置き去りにするくらいすごいマコトになると思ってる」
「えぇー! そんなにすごいはずはないよ。いつもパパにできることがマコにはできなくて、そんなできない自分が歯痒いくらいだもん」
「そりゃあ、まだ5歳だからな。パパもさすがに5歳児には負けてらんないよ。でも5歳児なのにそのすごさは異常なくらいだよ。まぁ、これからがすごく楽しみだし、パパが教えられることは全部叩き込むから心配するな」
「うん。わかった。マコ頑張るよ」
「あらあら、親子が仲良しで良いわねぇ? うんうん。でもマコちゃんってやっぱりすごい子なのね? イルのことも仲良くしてあげてね?」
「マコのほうこそだよ、ケイン。今までもこれからもイルとはずっと仲好しだよ? それにイルのほうがずっとすごい子なんだよ?」
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