23 / 40
第21話 一番欲しい能力
しおりを挟む
……
ソフィア旅立ちのエピソードから戻る。
「本人たちを前に語るのも気が引けたが、ソフィアが王室を離れるキッカケから、ケネトの謀略、北の軍事大国:V国調査員の動き、民間機撃墜事件とソフィアの奮闘、死にかけて、婿殿に救われ、脅威の回復と覚醒、いや? 5割増くらいの強化回復と言えるか、そうして心の強い結び付きとともに大きく愛を育み、今に至るための愛の巣が出来上がったと、まぁ、ワシしか知らぬ情報も交えた、だいたいのあらましはそんなところかのぉ? ただ、ソフィアを死に追いやったテロリストの首謀者たちは、本来は憎むべき存在なのじゃが、ヤツらの犯行がなければ、ソフィアが婿殿に巡り会うことも、マコトが産まれることもなかったことを考えると、憎むに憎めなくてのう。むしろ感謝の念が絶えぬほどじゃ。皮肉な話じゃがな。それほどに、婿殿という存在の大きさ、約800年を経て引き寄せられたがごとき、運命的とも言える邂逅。嬉しくて、嬉しくてな。うぅ、ズズ。おぉ、涙腺が止められぬわ。ズズ」
「テロリストに関しては、亡くなった方たちには大変申し訳ないけれど、私も概ね同意よ。何かがひとつでも違っていたら、私は今生きていないし、当然、ジンを知ることさえなかった。ケネトやV国調査員たちは余計だったけど、いえ、南へ舵を切ったのは彼らの影響かもしれないわね。ともかく、ジンに出会えたことの喜びのほうがすべてに勝ると思っているわ。けれど、シャナ、ちょっと赤裸々すぎたわよ。ジンが恥ずかしげな表情、驚きの表情が、シャナの語りの中に時折入り混じる、ひとり福笑い的な表情の変化は楽しめたけど、16歳の頃の私、そこまで天然だったかしら? 笑いを狙ってちょっと盛ったでしょ?」
「盛ったじゃと? この阿呆もの! これでもかなりひた隠しにしたほうじゃぞ! まったく未だに自覚がないんじゃのぅ?」
「まぁまぁ、そこがソフィアらしさですから、シャナ?」
「うん、まぁ、そこもワシを楽しませてくれる才能みたいなものじゃから、これからも変わらずにいて欲しい一面でもあるがのう」
「うん。ママにもあどけない一面があったんだなぁってわかって、マコは嬉しい。でも、見知らぬ二人が運命的な出会いで恋に落ちる、その感覚がよく分からないなぁ? パパとママがお互い好きすぎて、仲睦まじいのはマコも嬉しい。でもたったの1日でどうしてそこまで好きになれるんだろう? それと、恋をすると、ただくっついてるだけで、いろいろ伝わったり、回復できたりするんでしょう? 恋の魔法、って言葉があるのは、そんな不思議な体験ができるってことなのかな? あと、どうしてか裸になる必要があるんだね? パパとは違う男の人に見られる恥ずかしさを想像したらドキドキしちゃった」
マコの言葉に、なぜか、パパとママは胸を撫で下ろす。それとともに嬉しそうな笑みを浮かべる。
「マコトのソレもソフィア譲りかのぅ。ったく、退屈させない親子で嬉しいヮ。もはや才能としか言えぬのぅ」
「フフフッ、マコちゃもマコちゃのままでいてくれて嬉しいわ。あぁ、そう、恋の魔法、確かにそう思える心の変化があるのは確かだけど、それにはそこまでの力はないわね。たぶん、魔女因子とパパ因子? が巡り会ったときだけの化学反応みたいな不思議な現象だと思うわ。だから他の普通の人は経験することはないわね。それにね、いつかマコちゃも恋をするときがきっと訪れる。そうすれば自然に理解できる。そういうものよ? 焦ることはないわ」
「うーん。なんかマコだけがわからない部分があったような、ちょっとだけ解せない感が残るけど、まぁ、いいや。ともかく、パパがスゴいんだってことだね。ママずるいよ。パパのお嫁さんだなんて。マコはパパのお嫁さんにはなれないんだよね。あぁ、でもママがお嫁さんになったから、マコが産まれたのか。ふみゅう」
「そろそろ良いかのぉ? なんか、今のマコトの一言でパパ殿のハートがズキューンと射抜かれたような気がするが……。話を戻すぞ」
「ソフィアが今日この場を設けたのは、これからいろいろなことが起こりそうな予感がすることもあるが、今初めてわかったようなこともあるから、マコトにもキチンと説明して、マコト以外には情報のすり合わせをする必要があるからなんじゃ。特にマコトに関しては、パパ殿の支援がたぶん重要になるとワシとソフィアは考えておる。最終的にどう行動するかはマコト次第じゃが、全体的なことを理解した上で、やるやらないの決断のときに、周りがやる選択を望んでいるときに、やらない選択をしたとしても、仮にそれでワシたちの誰かが命を失うことに繋がったとしても、ワシたちはマコトの選択を尊重する。うん、今最後に言ったことは、まだピンとこないだろうし、難しい内容だから、今は覚えてなくていいぞ」
「今現在、気にしておるのは、ソフィアの母親である、アイリ妃のことじゃ。先ほどの話にもあったように、撃墜事件以降、飛び火を恐れて、ヤツら、ケネトやV国調査員たちのことじゃが、しばらく平穏の中に身を潜めておるようじゃ。しかし、あれから七年。ほとぼり冷めて、そろそろ動き出すような予感がしてならぬ。それがあるから、ソフィアの死亡説が上がったままにしてあり、それでソフィアの身は安泰なのじゃが、そうなると、つぎにヤツらが狙うとしたら、アイリ妃になることは想像に難くない。わかるじゃろう?」
「うん」
「そのためには、今のうちにできることを増やしておきたい。今、まだことが起きておらぬうちにじゃ」
「できること?」
「そうじゃ。マコトを危険には晒したくないが、マコトに頼るしかない場面も必ず出てくるし、たぶんこの中で、鍛え、能力を引き出せるなら、一番スゴいのはマコトだと思っておる。万一、マコトが危険に遭遇した場合に、自身の身を守る術も身に付けておく必要もあるしな。それにもしも一連のアイリ妃救出作戦が起こった場合に、誤ってソフィアのことがヤツらに知れたとき、当然マコトのことも知れよう。そうなったときに慌てても遅いからな」
「うんうん。マコがんばるよ」
「それと、ワシら魔女の一族には不思議な力があるけれども、それはいつも力任せでのぅ。そこにパパ殿の高度な知見が加われば、何から何まですごいことができそうな予感がある。だから、パパ殿にはすごく期待しているし、これから成長していくマコトに、知的な観点での補助をしてもらえないかと思っておる」
「あぁ、そうですね。私も同意見です。今の仕事の区切りがついたなら、マコトのサポートに掛かろうかと考えているところでした」
「うんうん。そうか、ありがとう。それから、ここからも重要じゃ。これまでは魔力の扱えないパパ殿を戦力として数えていなかったが、ソフィアとの交わりでソフィアに力を供給したように、ソフィアからも魔力を扱える能力が伝承されているのではないか? とワシは睨んでおる。その根拠が、オーラが見えるようになっていることと、今まさにワシが身体を借りることができておることじゃ。そして、だからこそ感じる、奥底に秘める凄まじい量の魔力。ソフィアの力を5割増に底上げできるほどの良質高純度なパワーじゃ。この引き出しから自由自在に魔力を操れるようになったとしたら、もう、今のアニメ風でいうところの魔王が誕生するやもしれぬな。その期待も込めて、自らの研鑽も念頭に入れながら、マコトの成長に付き合って欲しいと思っておるのじゃ」
「え? やっぱりそう思いますか? マコトの成長が楽しみなのはもちろんですが、私自身の能力開発に繋がる発想はなかったから、むしろ仕事なんてしてる場合じゃないですね。いや、しかし、むむぅ……」
「それで、これから先、どのような能力が備わってほしいかという話じゃが、あっても困らないが、戦う力、というものは、その存在を他者に知れてしまうと、別の心配が生まれる。軍事力として狙われるということじゃ。もちろんないよりは在ったほうがよい。身を守るためにも重要な力じゃからのう。ただ、それよりも、一番欲しいと思っておるのは救出能力じゃ。大切な誰かを探し特定する能力や、他に見つからずに迅速に移動して、全く気付かれることなく連れ帰れる能力じゃ」
「なるほどぉ、「見つからずに連れ帰る」ですか。まさに隠密行動ですね。もし正面切って戦えば、誰かを傷付け、何かしら失うことがあるけど、何も失いたくないなら、それが一番の解決策ですものね。多くの場合、戦いは悲しみしか生みませんからね。我々にとっての勝利は何も失わないことなんですね」
「ほぅ、さすが婿殿じゃ、良いことを言うのう。何をどこまでできるのかは不明じゃが、それを目標に修練にあたってはもらえないだろうか?」
「承知しました。私の考えもシャナとほぼ同様のもので、力が他に知られることの怖さも充分理解したうえで、隠密行動により救えるものならば救いたい。日本にはそういう精神が一部に根づいていて、私にも宿っているようです。昔の時代物から、現代のアニメまで、いくつかそんな作品があって、私も好きでよく観てましたから、本質はそこにあるのかもしれません。ただ、ねずみ小僧とか、大体みんな泥棒なんですけどね。結果的にはいつも誰かを助けるための行動だったりします」
「おぉぉ、ワシもいくつか観たなぁ。ソフィアを通してじゃがな」
「そ、そうでしたか。そういう身バレしてはならない隠れたヒーローが本当にいたらなぁ? って思っていましたが、圧倒的な力がなければ実現しないって子供心に思っていました。でも、それらは身バレはしてないけど、存在は知られてるんですよね。今のシャナの話をよく考えると、存在すらも気付かせずに、秘密裏に動く必要がありますね。うーん。ハードル高いけど、この力をうまく使えばどうにかなるかな? ちょっと考えてみますね」
「よろしく頼むぞ」
「はい。まぁ、私も興味が尽きないので、マコトと楽しくやってみます」
「マコもすごーく楽しみ。早く特訓したいね」
様々なエピソードを耳にして、マコト以外の皆の意識の共有が図られたのか、この場の会話が一段落した空気を纏うとき、ひとりマコトだけは記憶の虫食い感が浮き彫りとなり、それを問いかける。
「……それはそうとさぁ、ご先祖さまや、ママの生い立ちやパパママの出会いのエピソードが聞けたから、いろいろとわかったこと、繋がったことがあってよかったなと思うんだけど、マコの生い立ち? だけがなんかモヤモヤしている気がするんだ……マコって記憶力良いほうだと思っているけど、なんかアチコチのピースが抜けているような虫食い状態な気がするんだよね」
そんなマコトの告白に、思い当たるソフィアが返す。
「あ! そうよね。マコちゃの場合、ものごころ着くまでは無用なトラブルを避けたかったから触れないようにしていたことがあるの。今なら。ううん。今こそキチンとお話ししておくべきときなんだわ」
「そうだな。今がそのときで間違いないよ、ソフィア」
「そうよね。ジン」
ジンも今まで包み隠していたことを詳らかにする良い機会だと、ソフィアの意思を後押しし、ソフィアとジンは意識を共有する。
「じゃあ、マコちゃ? あなたのエピソードについては、生まれるはずの日の1ヶ月以上前から触れなくてはならないの。今のマコちゃが身に付けている常識的なことから少し離れる話になるから、よぉーっく聞いてね?」
「え? 常識外れなの? なんか異常事態な生い立ちになるってこと? まさか、何かの事件とか? ちょっと怖いかも?」
「いや、それはたぶん大丈夫だと思うけど、あなたの記憶のピースが跳んでいる理由もわかると思うから覚悟して聞くのよ?」
常識から離れると聞いて不安になるマコト。そこは否定しても覚悟だけは問うソフィア。理由もわからずマコトはおどろおどろしい奇妙な感覚を憶える。
「え? 覚悟が必要なほどなの?」
「まぁまぁ、聞けばわかるわ」
「うん」
マコトの気持ちが整ったことを確認すると、ソフィアが語り始める。
「では始めるわ。あれはマコちゃが生まれたクリスマスイブ、初冬の気持ちよく晴れた昼下がりのことね……」
「え? 1ヶ月以上前からじゃ? ……あれ? そういえば、生まれる『はず』って、え? どういうこと?」
マコトの抱くおどろおどろしさは、やや緊張混じりにピリピリとしていたせいか、ソフィアの放つ言葉から早速違和感を感じ取り、マコトは割り込むように指摘を入れる。
「まぁまぁ。そのあたりも聞いていればわかるわ」
「う、うん」
……
ソフィア旅立ちのエピソードから戻る。
「本人たちを前に語るのも気が引けたが、ソフィアが王室を離れるキッカケから、ケネトの謀略、北の軍事大国:V国調査員の動き、民間機撃墜事件とソフィアの奮闘、死にかけて、婿殿に救われ、脅威の回復と覚醒、いや? 5割増くらいの強化回復と言えるか、そうして心の強い結び付きとともに大きく愛を育み、今に至るための愛の巣が出来上がったと、まぁ、ワシしか知らぬ情報も交えた、だいたいのあらましはそんなところかのぉ? ただ、ソフィアを死に追いやったテロリストの首謀者たちは、本来は憎むべき存在なのじゃが、ヤツらの犯行がなければ、ソフィアが婿殿に巡り会うことも、マコトが産まれることもなかったことを考えると、憎むに憎めなくてのう。むしろ感謝の念が絶えぬほどじゃ。皮肉な話じゃがな。それほどに、婿殿という存在の大きさ、約800年を経て引き寄せられたがごとき、運命的とも言える邂逅。嬉しくて、嬉しくてな。うぅ、ズズ。おぉ、涙腺が止められぬわ。ズズ」
「テロリストに関しては、亡くなった方たちには大変申し訳ないけれど、私も概ね同意よ。何かがひとつでも違っていたら、私は今生きていないし、当然、ジンを知ることさえなかった。ケネトやV国調査員たちは余計だったけど、いえ、南へ舵を切ったのは彼らの影響かもしれないわね。ともかく、ジンに出会えたことの喜びのほうがすべてに勝ると思っているわ。けれど、シャナ、ちょっと赤裸々すぎたわよ。ジンが恥ずかしげな表情、驚きの表情が、シャナの語りの中に時折入り混じる、ひとり福笑い的な表情の変化は楽しめたけど、16歳の頃の私、そこまで天然だったかしら? 笑いを狙ってちょっと盛ったでしょ?」
「盛ったじゃと? この阿呆もの! これでもかなりひた隠しにしたほうじゃぞ! まったく未だに自覚がないんじゃのぅ?」
「まぁまぁ、そこがソフィアらしさですから、シャナ?」
「うん、まぁ、そこもワシを楽しませてくれる才能みたいなものじゃから、これからも変わらずにいて欲しい一面でもあるがのう」
「うん。ママにもあどけない一面があったんだなぁってわかって、マコは嬉しい。でも、見知らぬ二人が運命的な出会いで恋に落ちる、その感覚がよく分からないなぁ? パパとママがお互い好きすぎて、仲睦まじいのはマコも嬉しい。でもたったの1日でどうしてそこまで好きになれるんだろう? それと、恋をすると、ただくっついてるだけで、いろいろ伝わったり、回復できたりするんでしょう? 恋の魔法、って言葉があるのは、そんな不思議な体験ができるってことなのかな? あと、どうしてか裸になる必要があるんだね? パパとは違う男の人に見られる恥ずかしさを想像したらドキドキしちゃった」
マコの言葉に、なぜか、パパとママは胸を撫で下ろす。それとともに嬉しそうな笑みを浮かべる。
「マコトのソレもソフィア譲りかのぅ。ったく、退屈させない親子で嬉しいヮ。もはや才能としか言えぬのぅ」
「フフフッ、マコちゃもマコちゃのままでいてくれて嬉しいわ。あぁ、そう、恋の魔法、確かにそう思える心の変化があるのは確かだけど、それにはそこまでの力はないわね。たぶん、魔女因子とパパ因子? が巡り会ったときだけの化学反応みたいな不思議な現象だと思うわ。だから他の普通の人は経験することはないわね。それにね、いつかマコちゃも恋をするときがきっと訪れる。そうすれば自然に理解できる。そういうものよ? 焦ることはないわ」
「うーん。なんかマコだけがわからない部分があったような、ちょっとだけ解せない感が残るけど、まぁ、いいや。ともかく、パパがスゴいんだってことだね。ママずるいよ。パパのお嫁さんだなんて。マコはパパのお嫁さんにはなれないんだよね。あぁ、でもママがお嫁さんになったから、マコが産まれたのか。ふみゅう」
「そろそろ良いかのぉ? なんか、今のマコトの一言でパパ殿のハートがズキューンと射抜かれたような気がするが……。話を戻すぞ」
「ソフィアが今日この場を設けたのは、これからいろいろなことが起こりそうな予感がすることもあるが、今初めてわかったようなこともあるから、マコトにもキチンと説明して、マコト以外には情報のすり合わせをする必要があるからなんじゃ。特にマコトに関しては、パパ殿の支援がたぶん重要になるとワシとソフィアは考えておる。最終的にどう行動するかはマコト次第じゃが、全体的なことを理解した上で、やるやらないの決断のときに、周りがやる選択を望んでいるときに、やらない選択をしたとしても、仮にそれでワシたちの誰かが命を失うことに繋がったとしても、ワシたちはマコトの選択を尊重する。うん、今最後に言ったことは、まだピンとこないだろうし、難しい内容だから、今は覚えてなくていいぞ」
「今現在、気にしておるのは、ソフィアの母親である、アイリ妃のことじゃ。先ほどの話にもあったように、撃墜事件以降、飛び火を恐れて、ヤツら、ケネトやV国調査員たちのことじゃが、しばらく平穏の中に身を潜めておるようじゃ。しかし、あれから七年。ほとぼり冷めて、そろそろ動き出すような予感がしてならぬ。それがあるから、ソフィアの死亡説が上がったままにしてあり、それでソフィアの身は安泰なのじゃが、そうなると、つぎにヤツらが狙うとしたら、アイリ妃になることは想像に難くない。わかるじゃろう?」
「うん」
「そのためには、今のうちにできることを増やしておきたい。今、まだことが起きておらぬうちにじゃ」
「できること?」
「そうじゃ。マコトを危険には晒したくないが、マコトに頼るしかない場面も必ず出てくるし、たぶんこの中で、鍛え、能力を引き出せるなら、一番スゴいのはマコトだと思っておる。万一、マコトが危険に遭遇した場合に、自身の身を守る術も身に付けておく必要もあるしな。それにもしも一連のアイリ妃救出作戦が起こった場合に、誤ってソフィアのことがヤツらに知れたとき、当然マコトのことも知れよう。そうなったときに慌てても遅いからな」
「うんうん。マコがんばるよ」
「それと、ワシら魔女の一族には不思議な力があるけれども、それはいつも力任せでのぅ。そこにパパ殿の高度な知見が加われば、何から何まですごいことができそうな予感がある。だから、パパ殿にはすごく期待しているし、これから成長していくマコトに、知的な観点での補助をしてもらえないかと思っておる」
「あぁ、そうですね。私も同意見です。今の仕事の区切りがついたなら、マコトのサポートに掛かろうかと考えているところでした」
「うんうん。そうか、ありがとう。それから、ここからも重要じゃ。これまでは魔力の扱えないパパ殿を戦力として数えていなかったが、ソフィアとの交わりでソフィアに力を供給したように、ソフィアからも魔力を扱える能力が伝承されているのではないか? とワシは睨んでおる。その根拠が、オーラが見えるようになっていることと、今まさにワシが身体を借りることができておることじゃ。そして、だからこそ感じる、奥底に秘める凄まじい量の魔力。ソフィアの力を5割増に底上げできるほどの良質高純度なパワーじゃ。この引き出しから自由自在に魔力を操れるようになったとしたら、もう、今のアニメ風でいうところの魔王が誕生するやもしれぬな。その期待も込めて、自らの研鑽も念頭に入れながら、マコトの成長に付き合って欲しいと思っておるのじゃ」
「え? やっぱりそう思いますか? マコトの成長が楽しみなのはもちろんですが、私自身の能力開発に繋がる発想はなかったから、むしろ仕事なんてしてる場合じゃないですね。いや、しかし、むむぅ……」
「それで、これから先、どのような能力が備わってほしいかという話じゃが、あっても困らないが、戦う力、というものは、その存在を他者に知れてしまうと、別の心配が生まれる。軍事力として狙われるということじゃ。もちろんないよりは在ったほうがよい。身を守るためにも重要な力じゃからのう。ただ、それよりも、一番欲しいと思っておるのは救出能力じゃ。大切な誰かを探し特定する能力や、他に見つからずに迅速に移動して、全く気付かれることなく連れ帰れる能力じゃ」
「なるほどぉ、「見つからずに連れ帰る」ですか。まさに隠密行動ですね。もし正面切って戦えば、誰かを傷付け、何かしら失うことがあるけど、何も失いたくないなら、それが一番の解決策ですものね。多くの場合、戦いは悲しみしか生みませんからね。我々にとっての勝利は何も失わないことなんですね」
「ほぅ、さすが婿殿じゃ、良いことを言うのう。何をどこまでできるのかは不明じゃが、それを目標に修練にあたってはもらえないだろうか?」
「承知しました。私の考えもシャナとほぼ同様のもので、力が他に知られることの怖さも充分理解したうえで、隠密行動により救えるものならば救いたい。日本にはそういう精神が一部に根づいていて、私にも宿っているようです。昔の時代物から、現代のアニメまで、いくつかそんな作品があって、私も好きでよく観てましたから、本質はそこにあるのかもしれません。ただ、ねずみ小僧とか、大体みんな泥棒なんですけどね。結果的にはいつも誰かを助けるための行動だったりします」
「おぉぉ、ワシもいくつか観たなぁ。ソフィアを通してじゃがな」
「そ、そうでしたか。そういう身バレしてはならない隠れたヒーローが本当にいたらなぁ? って思っていましたが、圧倒的な力がなければ実現しないって子供心に思っていました。でも、それらは身バレはしてないけど、存在は知られてるんですよね。今のシャナの話をよく考えると、存在すらも気付かせずに、秘密裏に動く必要がありますね。うーん。ハードル高いけど、この力をうまく使えばどうにかなるかな? ちょっと考えてみますね」
「よろしく頼むぞ」
「はい。まぁ、私も興味が尽きないので、マコトと楽しくやってみます」
「マコもすごーく楽しみ。早く特訓したいね」
様々なエピソードを耳にして、マコト以外の皆の意識の共有が図られたのか、この場の会話が一段落した空気を纏うとき、ひとりマコトだけは記憶の虫食い感が浮き彫りとなり、それを問いかける。
「……それはそうとさぁ、ご先祖さまや、ママの生い立ちやパパママの出会いのエピソードが聞けたから、いろいろとわかったこと、繋がったことがあってよかったなと思うんだけど、マコの生い立ち? だけがなんかモヤモヤしている気がするんだ……マコって記憶力良いほうだと思っているけど、なんかアチコチのピースが抜けているような虫食い状態な気がするんだよね」
そんなマコトの告白に、思い当たるソフィアが返す。
「あ! そうよね。マコちゃの場合、ものごころ着くまでは無用なトラブルを避けたかったから触れないようにしていたことがあるの。今なら。ううん。今こそキチンとお話ししておくべきときなんだわ」
「そうだな。今がそのときで間違いないよ、ソフィア」
「そうよね。ジン」
ジンも今まで包み隠していたことを詳らかにする良い機会だと、ソフィアの意思を後押しし、ソフィアとジンは意識を共有する。
「じゃあ、マコちゃ? あなたのエピソードについては、生まれるはずの日の1ヶ月以上前から触れなくてはならないの。今のマコちゃが身に付けている常識的なことから少し離れる話になるから、よぉーっく聞いてね?」
「え? 常識外れなの? なんか異常事態な生い立ちになるってこと? まさか、何かの事件とか? ちょっと怖いかも?」
「いや、それはたぶん大丈夫だと思うけど、あなたの記憶のピースが跳んでいる理由もわかると思うから覚悟して聞くのよ?」
常識から離れると聞いて不安になるマコト。そこは否定しても覚悟だけは問うソフィア。理由もわからずマコトはおどろおどろしい奇妙な感覚を憶える。
「え? 覚悟が必要なほどなの?」
「まぁまぁ、聞けばわかるわ」
「うん」
マコトの気持ちが整ったことを確認すると、ソフィアが語り始める。
「では始めるわ。あれはマコちゃが生まれたクリスマスイブ、初冬の気持ちよく晴れた昼下がりのことね……」
「え? 1ヶ月以上前からじゃ? ……あれ? そういえば、生まれる『はず』って、え? どういうこと?」
マコトの抱くおどろおどろしさは、やや緊張混じりにピリピリとしていたせいか、ソフィアの放つ言葉から早速違和感を感じ取り、マコトは割り込むように指摘を入れる。
「まぁまぁ。そのあたりも聞いていればわかるわ」
「う、うん」
……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる